パンジャブ語とは? わかりやすく解説

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パンジャーブ語

(パンジャブ語 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/01 06:15 UTC 版)

パンジャーブ語
ਪੰਜਾਬੀ,پنجابی
話される国 インド
パキスタン
地域 南アジア
話者数 1億2200万人(2015年・東部西部合算)[1][2][3]
言語系統
表記体系 グルムキー文字シャームキー文字デーヴァナーガリー
公的地位
公用語 インド パンジャーブ州
少数言語として
承認
インド(連邦政府)[4]
パキスタン パンジャーブ州
言語コード
ISO 639-1 pa
ISO 639-2 pan
ISO 639-3 pan
パンジャーブ語話者の分布
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パンジャーブ語(パンジャーブご、Panjabi or Punjabi、グルムキー文字: ਪੰਜਾਬੀ , シャームキー文字پنجابی)は、インドパキスタンにまたがるパンジャーブ地方の言語である。パンジャービー語とも称される。

インド語派に属し、語順SOV型である。南アジアの言語のうち、ヒンディー語ベンガル語に次ぐ話者数を擁する。

分布

パンジャーブ語の話者の多くはパキスタン東部のパンジャーブ州に住んでおり、パキスタンで最も多い人口の39%(2017年)の母語であるにもかかわらず、パキスタンでは公用語にはされていない。パンジャーブ州都であるラホールでも、人口の大部分がパンジャーブ語話者であるにもかかわらず、書き言葉としては文芸雑誌か私信にしかパンジャーブ語は使われず、ウルドゥー語英語に比べて、その地位は高くない[5]

インドでは、インドのパンジャーブ州公用語およびデリーの第二公用語になっているほか、インド連邦レベルでも憲法第8付則に定められた22の指定言語のひとつである。近隣のハリヤーナー州ヒマーチャル・プラデーシュ州にも話者がいる。

パンジャーブ語は在外インド人の主要な言語のひとつでもある。カナダでは43万人がパンジャーブ語を母語とし(2011年)[6]イギリスでは27万人がパンジャーブ語話者である(2011年)[7]。ほかにオーストラリアアメリカ合衆国カリフォルニア州などにも分布する。

パンジャーブ語はシク教の重要な言語であり、聖典である『グル・グラント・サーヒブ』は主にこの言語で書かれている。

音声

母音はヒンディー語と同じく、短母音 a i u /ə ɪ ʊ/ と、長母音 ā ī ū e ai o au /ɑ i u e ɛ o ɔ/ がある。各長母音には対応する鼻母音がある。

子音は以下のとおり。f z x ɣ は外来語にのみ現れ、それぞれ ph j kh g と区別されないことも多い[8]

両唇音
唇歯音
歯音 そり舌音 後部歯茎音
硬口蓋音
軟口蓋音 声門音
破裂音破擦音 p ph b t th d /ʈ/ ṭh /ɖ/ c /tʃ/ ch j /dʒ/ k kh g
鼻音 m n /ɳ/
摩擦音 (f) s (z) š /ʃ/ (x) (ɣ) h /ɦ/
ふるえ音 r /ɽ/
側面音 l /ɭ/
半母音 v y /j/

パンジャーブ語の大きな特徴として、いわゆる有声帯気音の系列(gh jh ḍh ṛh dh bh)が消滅して語頭で無声無気音・語頭以外で有声無気音に変化し、その代償として声調が発達していることがあげられる[9]。h も語頭以外では、少数の例外を除いて消滅し、やはり声調に痕跡を残している。一般に、語頭に有声帯気音があった場合は低い声調になり、それ以外の箇所では先行する音節が高い声調になる。

声調 意味 パンジャーブ語 ヒンディー語
無標 むち koṛā koṛā
ハンセン病患者 kóṛā koṛhī
kòṛā ghoṛā

ヒンディー語では古い重子音が借用語以外では消滅し、その代償として母音が長母音に変化しているが、パンジャーブ語では重子音がそのまま残っている(例:buḍḍā「老いた」、ヒンディー語 būṛhā、サンスクリット vr̥ddha[10]

パンジャーブ語ではそり舌音ṇ ṛ ḷ が音素として確立している。ヒンディー語では サンスクリットからの借用語にのみ現れ、英語からの借用語を除いて 相補分布をなす。ただし、パンジャーブ語でも東部方言では ṇ/n, ḷ/l の区別をしない[8]

方言

パンジャーブ語の「方言」

グリアソンは、インド言語調査において、西で話されているパンジャーブ語を「ラフンダー語」というパンジャーブ語とは異なる言語であると主張した。どこまでをひとつの言語とするかについては議論が分かれる。

パティヤーラーにあるパンジャービ大学英語版: Punjabi University Patiala)では以下のように分類している[11]

  • バッティアーニー方言
  • ラティー方言
  • マルワイー方言
  • ポワディー方言
  • パハーリー方言
  • ドアビー方言
  • カングリー方言
  • チャンビアリー方言
  • ドグリー方言
  • ワジェーラワディー方言
  • バール・ディ・ボディー方言
  • ジャンゴチー方言
  • ジャトキー方言
  • チェナブリー方言

この中では、ドーグリー語のようにインド政府によって1個の独立した言語として認められているものも含まれる。

エスノローグの18版では、次のように分類している[12]

これは一見グリアソンの分類にしたがっているようだが、エスノローグのいう西パンジャーブ語とはパキスタンのパンジャーブ語のことにすぎず、実際にはインドの東パンジャーブ語とのちがいはきわめて小さい(サライキ語との違いはずっと大きい)。

表記

パキスタンではシャームキー文字(シャー・ムキー体)というナスタアリーク体を変えたアラビア文字を用いる。 インドではシャーラダー文字の系統のグルムキー文字を用いる。パンジャーブ州以外の住民はデーヴァナーガリー文字を用いることもある。

脚注

  1. ^ Punjabi, Eastern”. Ethnologue. Ethnologue. 2017年7月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月13日閲覧。
  2. ^ Punjabi, Western”. Ethnologue. Ethnologue. 2017年7月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月13日閲覧。
  3. ^ エスノローグ18版の Punjabi, East と Punjabi, West の合計
  4. ^ インド憲法附則8で指定。インドの公用語の一覧も参照
  5. ^ Jain (2007) 3.1
  6. ^ Census Profile”. Statistics Canada (2015年2月9日). 2015年8月21日閲覧。
  7. ^ 2011 Census: Quick Statistics for England and Wales, March 2011”. Office for National Statistics (2013年1月30日). 2015年8月21日閲覧。
  8. ^ a b Shackle (2007) 2.2
  9. ^ Shackle (2007) 2.4
  10. ^ Shackle (2007) 2.3
  11. ^ Online Punjabi Teaching: Introduction”. 2013年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月17日閲覧。 (archive.org)
  12. ^ Indo-Aryan”. Ethnologue (2015年). 2015年8月20日閲覧。

参考文献

  • Jain, Dhanesh (2007) [2003]. “Sociolinguistics of the Indo-Aryan Languages”. In George Cardona; Dhanesh Jain. Indo-Aryan Languages. Routledge. ISBN 020394531X 
  • Shackle, Christopher (2007) [2003]. “Panjabi”. In George Cardona; Dhanesh Jain. Indo-Aryan Languages. Routledge. ISBN 020394531X 

関連文献

  • Bhatia, T. "Punjabi: A Cognitive-Descriptive Grammar", 1993. p 279. ISBN 0-415-00320-2
  • The Times of India - "Punjabi, Urdu made official languages in Delhi" 25 June 2003
  • Canadian Census Data (2001)
  • Advanced Centre for Technical Development of Punjabi Language, Literature and Culture
  • Masica, CP, "The Indo-Aryan Languages", ISBN 0-521-29944-6, p 20

関連項目

外部リンク


パンジャブ語

出典:『Wiktionary』 (2018/07/01 22:23 UTC 版)

名詞

パンジャブ (-ご)

  1. インド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派属すインド・アーリア語インドパキスタン国境位置するパンジャブ地方使用される言語インドパンジャーブ州公用語およびデリー第二公用語表記については、パキスタンではシャー・ムキー体というナスターリーク体を変えたアラビア文字用いインドではシャーラダー文字系統グルムキー文字用いる。パンジャーブ州以外の住民デーヴァナーガリー文字用いることもある。言語コードISO 639-2/RA) A2:pa A3:pan

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