パンジャタワー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/25 11:40 UTC 版)
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この記事は現役競走馬を扱っています。
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パンジャタワー | ||||||||||||
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第76回朝日杯FSパドック(2024年12月15日)
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欧字表記 | Panja Tower[1] | |||||||||||
品種 | サラブレッド[1] | |||||||||||
性別 | 牡[1] | |||||||||||
毛色 | 鹿毛[1] | |||||||||||
生誕 | 2022年2月21日(3歳)[1] | |||||||||||
父 | タワーオブロンドン[1] | |||||||||||
母 | クラークスデール[1] | |||||||||||
母の父 | ヴィクトワールピサ[1] | |||||||||||
生国 | ![]() |
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生産者 | チャンピオンズファーム[1] | |||||||||||
馬主 | (株)Deep Creek[1] | |||||||||||
調教師 | 橋口慎介(栗東)[1] | |||||||||||
競走成績 | ||||||||||||
生涯成績 | 6戦4勝[1] | |||||||||||
獲得賞金 | 2億2923万円[1] (2025年8月24日現在) |
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パンジャタワー(欧字名:Panja Tower、2022年2月21日 - )は、日本の競走馬[1]。主な勝ち鞍に2024年の京王杯2歳ステークス、2025年のNHKマイルカップ、キーンランドカップ。
経歴
デビューまで
2022年2月21日、北海道新ひだか町のチャンピオンズファームで生まれる[1]。母クラークスデールは未出走馬であり、2019年のノーザンファーム繁殖牝馬セールにおいて税抜150万円で落札された[2]。牧場関係者からの生まれた当初の評価は「目立たない」といったものが多く、チャンピオンズファーム代表の中村明人は「生まれたときはそれほど目立つ子じゃなかったですが、チャンピオンヒルズの坂路ですごく動いていたので、〝めちゃめちゃ走る〟と周囲に言われるほどでした。」と語っている[3]。また牧場のスタッフは、「生まれた頃から目立たず、病気もせず、良い意味で印象に残らないような馬」と述懐する一方で「メンタルはかなり強く、物事に動じない一面も持ち合わせていました」とも評している[4]。
本馬のオーナーとなる株式会社Deep Creekは、不動産業を営む深澤朝房が代表を務める法人。馬の購入に際しては必ず目を見て選ぶという深澤は、牧場でこの馬を見初めた理由に「戦う目をしていた」ことのほか、ジェネラスなどの名馬を兄弟に持つシンコウエルメスの血が入った父系、ロジユニヴァースといった名馬を輩出しているソニンクがいる母系といった血統面の理由も挙げている[5]。
深澤の用いる冠名「パンジャ」に、父名の一部を組み合わせ[6]「パンジャタワー」と命名された同馬は、栗東トレーニングセンターの橋口慎介厩舎に入厩。初対面時の印象を橋口は「小さい馬で、(中略)ほかの馬と比べても幼かった」と振り返っており、のちの活躍には「ここまでの馬になるとは正直、思いませんでしたね」と語っている[7]。その後、デビュー直前の追い切り前の取材で橋口は「CWで追い切る予定ですが、動くと思いますよ」と述べ、レースでもタッグを組む松山弘平の騎乗で行われた追い切りではオープンクラスの古馬に先着[8]。また「ゲートも速い方だと思います」ともコメントした[8]。
2歳(2024年)
デビューを9月8日の中京競馬場で行われた新馬戦で迎えると、2着馬に半馬身差をつけて勝利[9]。鞍上の松山は、スタートを出ることができず枠も良くなかったものの能力で勝ち切ることができた、着差以上に強い競馬であったとデビュー戦を評価している[9]。
続く2戦目には11月2日の京王杯2歳ステークスに出走。道中は折り合いに専念し中団を進むと、直線に向いてから大外に持ち出し最速の上がりを見せて優勝、重賞初制覇を果たした[10]。タワーオブロンドン産駒のJRA重賞初勝利となった[11]ほか、オーナーである深澤にとっても馬主歴19年目で初の重賞制覇となった[12]。松山は、4コーナーでは想定より外に出され距離のロスが多かったうえ、悪天候による重馬場の影響も不安視していたものの、パンジャタワーがしっかりこなしたことで「能力の高さを感じたレースでした」と振り返っている[13]。
その後、12月15日の朝日杯フューチュリティステークスまで駒を進める。レース前に橋口は「初めての距離だがマイルまではこなせると思います」とコメントしていたが[14]、4番人気の支持で挑んだレースでは直線で伸びを欠き12着に敗れる[15]。橋口は敗因について「現状は距離が若干長かったのかも」「スピードもありすぎますから」と分析し、来年再びマイルに挑戦することを目標としてファルコンステークスからNHKマイルカップへの出走を示唆し、パンジャタワーを放牧に出した[15]。
3歳(2025年)
年明けは橋口が想定していたように、3月22日のファルコンステークスへ向かった。勝利した京王杯2歳ステークス同じ1400mであり、1週前追い切りでも猛時計を叩き出したことから橋口も自信を見せていた[16]ものの、単勝4.5倍の1番人気に応えられず4着に敗れる[17]。松山に代わって手綱を取った藤岡佑介は、「3コーナーで下が悪いところを走って、そのタイミングで手応えが悪くなった」と敗因を分析した[17]。
敗戦後、一時は葵ステークスを使う計画も立てられたが、オーナーの深澤がGIへの出走意欲を示したことから、橋口への打診のうえでNHKマイルカップへの出走が決まった[3][18]。手綱は再び松山に戻り、馬の状態も良かったことから橋口は特に指示を出さず、松山に任せる形でレースに挑んだ[19]。レースではスタートを上手に出ると馬のペースで道中を進み、最終直線で懸命に追うと、最後は猛追する3番人気のマジックサンズ(武豊)をアタマ差で退け9番人気ながら勝利を掴んだ[19]。ハナ差の3着には12番人気のチェルビアット(マイケル・ディー)も迫り大激戦となったため、橋口は当初は負けたように思ったという[19][7]。この勝利で、オーナーの深澤と生産者のチャンピオンズファームはともにGI初制覇を挙げることとなった[3][20]。なお優勝後の談話で、深澤はパンジャタワーの東京優駿(日本ダービー)への出走も示唆していた[20]が、実現はしていない。
夏は8月24日のキーンランドカップに、引き継ぎ松山とのタッグで向かった。出走メンバーの中で唯一のGI馬であり、2番人気の支持を受けてレースに挑むと、最初こそ出負けしたが徐々に外へ持ち出し、最後は瞬発力を生かして豪快に差し切り勝ちを果たした[21]。この勝利で鞍上の松山はJRAの全10場での重賞制覇を達成[21]。レース前から参戦を表明していたオーストラリアの重賞・ゴールデンイーグルに向け、松山は「いい前哨戦になったと思う」と話した[21]。
競走成績
以下の内容は、JBISサーチ[22]およびnetkeiba.com[23]の情報に基づく。
競走日 | 競馬場 | 競走名 | 格 | 距離(馬場) | 頭 数 |
枠 番 |
馬 番 |
オッズ (人気) |
着順 | タイム (上り3F) |
着差 | 騎手 | 斤量 [kg] |
1着馬(2着馬) | 馬体重 [kg] |
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2024. 9. 8 | 中京 | 2歳新馬 | 芝1200m(良) | 7 | 3 | 3 | 1.6 (1人) | 1着 | 1:09.7(34.2) | -0.1 | 松山弘平 | 55 | (タガノアンファン) | 468 | |
11. 2 | 東京 | 京王杯2歳S | GII | 芝1400m(稍) | 14 | 5 | 7 | 21.0 (8人) | 1着 | 1:21.2(33.8) | -0.1 | 松山弘平 | 56 | (マイネルチケット) | 480 |
12.15 | 京都 | 朝日杯FS | GI | 芝1600m(良) | 16 | 6 | 12 | 9.0 (4人) | 12着 | 1:35.8(35.0) | 1.7 | 松山弘平 | 56 | アドマイヤズーム | 486 |
2025. 3.22 | 中京 | ファルコンS | GIII | 芝1400m(良) | 18 | 2 | 4 | 4.5 (1人) | 4着 | 1:21.1(34.6) | 0.1 | 藤岡佑介 | 57 | ヤンキーバローズ | 484 |
5.11 | 東京 | NHKマイルC | GI | 芝1600m(良) | 18 | 6 | 11 | 26.1 (9人) | 1着 | 1:31.7(34.2) | 0.0 | 松山弘平 | 57 | (マジックサンズ) | 480 |
8.24 | 札幌 | キーンランドC | GIII | 芝1200m(良) | 16 | 3 | 5 | 5.5 (2人) | 1着 | 1:08.2(33.9) | -0.1 | 松山弘平 | 57 | (ペアポルックス) | 488 |
- 競走成績は2025年8月24日現在
エピソード
- 管理調教師の橋口と、NHKマイルカップ優勝時の鞍上である松山は、ともに池添兼雄厩舎への所属経験があった。このタッグでのGI勝利に、橋口は「一緒に勝ててうれしかったですね。『いつかGⅠを勝ちたいね』という話はいつもしていましたが、それが現実になって本当に良かったです」と語った[18]。松山もまた優勝騎手インタビューで「パンジャタワーと勝てたことがうれしい。橋口先生も自分も池添兼雄厩舎で育ったので、一緒に勝ててうれしいです」と話しており[24]、池添からも「おめでとう」とメールがあった[7]。
- オーナーの深澤は第75代横綱である大の里の東京後援会に所属しており、大の里の横綱昇進にあたって、パンジャタワーの馬名や会社名などを刻んだ三つ揃いの化粧まわしを進呈している[25]。
血統表
パンジャタワーの血統 | (血統表の出典)[§ 1] | |||
父系 | ゴーンウェスト系/ミスタープロスペクター系 |
[§ 2] | ||
父
タワーオブロンドン 2015 鹿毛 |
父の父
Raven's Pass2005 栗毛 |
Elusive Quality | Gone West | |
Touch of Greatness | ||||
Ascutney | Lord At War | |||
Right Word | ||||
父の母
*スノーパイン2010 芦毛 |
Dalakhani | Darshaan | ||
Daltawa | ||||
*シンコウエルメス | Sadler's Wells | |||
Doff the Derby | ||||
母
クラークスデール 2016 黒鹿毛 |
ヴィクトワールピサ 2007 黒鹿毛 |
ネオユニヴァース | *サンデーサイレンス | |
*ポインテッドパス | ||||
*ホワイトウォーターアフェア | Machiavellian | |||
Much Too Risky | ||||
母の母
アコースティクス2001 鹿毛 |
Cape Cross | Green Desert | ||
Park Appeal | ||||
*ソニンク | Machiavellian | |||
Sonic Lady | ||||
母系(F-No.) | (FN:B3) | [§ 3] | ||
5代内の近親交配 | Machiavellian:M4×M4、Mr. Prospector:S5×M5×M5 | [§ 4] | ||
出典 |
- 伯父に2009年東京優駿勝ち馬のロジユニヴァース。
- 4代母Sonic Ladyは1986年アイリッシュ1000ギニーなどGI3勝。
脚注
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p “パンジャタワー”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2024年11月2日閲覧。
- ^ “【NHKマイルC】血のドラマだ!繁殖セール150万円の未出走馬から生まれたパンジャタワー”. 日刊スポーツ (2025年5月11日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ a b c “【NHKマイルC】「葵Sに行くプランもあった」パンジャタワー大駆けVの舞台裏 下にはアドマイヤマーズの牡馬も”. 東スポ競馬. 東京スポーツ (2025年5月11日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ “2025年05月11日 NHKマイルC G1 | 重賞ウィナーレポート”. 競走馬のふるさと案内所. 日本軽種馬協会. 2025年8月25日閲覧。
- ^ 『週刊Gallop』2025年6月1日号 16-17頁
- ^ “競走馬情報 JRA”. 日本中央競馬会. 2024年11月2日閲覧。
- ^ a b c “NHKマイルCをパンジャタワーで勝った橋口調教師が喜びを語る 「ここまでの馬になるとは正直、思いませんでした」”. スポーツ報知. 報知新聞社 (2025年5月14日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ a b “母系にGI馬複数 師も太鼓判押すパンジャタワー/関西馬メイクデビュー情報”. netkeiba.com. ネットドリーマーズ (2025年9月2日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ a b “【メイクデビュー】タワーオブロンドン産駒パンジャタワーが接戦を制して新馬勝ち(中京4R)”. ラジオNIKKEI. 日経ラジオ社 (2024年9月8日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ “2024年11月02日 京王杯2歳S G2 | 重賞ウィナーレポート”. 競走馬のふるさと案内所. 日本軽種馬協会. 2025年8月25日閲覧。
- ^ “【京王杯2歳S結果】8番人気パンジャタワーが接戦を制す タワーオブロンドン産駒の重賞初制覇”. netkeiba.com. ネットドリーマーズ (2024年11月2日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ “山梨日日新聞のポスト”. X (2024年11月15日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ “【松山弘平コラム】京王杯2歳Sを勝ったパンジャタワー、クビ差も着差以上に強い競馬 朝日杯FSが楽しみ”. 中日スポーツ・東京中日スポーツ. 中日新聞社 (2024年11月9日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ “【朝日杯FS】(12)パンジャタワー 坂路をキビキビ 橋口師「マイルまではこなせると思う」”. スポニチ競馬. スポーツニッポン (2024年12月15日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ a b “朝日杯FS12着のパンジャタワーは放牧へ 来年5月のNHKマイルCを目指す【次走報】”. 東スポ競馬. 東京スポーツ (2024年12月17日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ “【ファルコンS】重賞馬パンジャタワーが実績ある距離で巻き返す 橋口調教師「1600メートルは長かった」”. スポーツ報知. 報知新聞社 (2025年3月18日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ a b “【ファルコンS・1番人気の敗因】パンジャタワーは4着まで 藤岡佑介「3コーナーで下が悪いところを走って…」”. 東スポ競馬. 東京スポーツ (2025年3月22日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ a b “【GⅠ裏話 NHKマイルC】パンジャタワーを管理する橋口慎介調教師 父の金言を胸に深い絆で結ばれる松山弘平騎手とさらなる高みを目指す”. サンスポZBAT. 産経新聞社 (2025年7月21日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ a b c “【NHKマイルC】(東京)直線終盤で抜け出したパンジャタワーが押し切りGI初制覇”. ラジオNIKKEI. 日経ラジオ社 (2025年5月11日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ a b “【NHKマイルC】パンジャタワーのDeep Creek深澤朝房代表、GⅠ初制覇 周囲の「おめでとう」で勝利を確認”. サンスポZBAT. 産経新聞社 (2025年5月12日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ a b c “【キーンランドC】貫禄の走りでG1馬の底力を知らしめたパンジャタワー 次走は1着賞金約5億円レース参戦、鞍上はJRA全10場重賞Vを成し遂げた松山と橋口師は明言”. 中日スポーツ・東京中日スポーツ. 中日新聞社 (2025年8月24日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ “パンジャタワー 競走成績”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2025年8月25日閲覧。
- ^ “パンジャタワーの競走成績”. netkeiba.com. Net Dreamers Co., Ltd.. 2025年8月25日閲覧。
- ^ “【NHKマイルC】松山弘平騎手・勝利インタビュー「パンジャタワーと勝てたことがうれしい」”. サンスポZBAT. 産経新聞社 (2025年5月11日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ “新横綱大の里に〝唯一無二〟の三つぞろい化粧まわし…武田信玄、不動明王、天馬 GⅠ馬パンジャタワーのオーナー・深澤朝房氏から贈呈”. サンスポZBAT. 産経新聞社 (2025年6月17日). 2025年8月25日閲覧。
- ^ a b c “血統情報:5代血統表|パンジャタワー”. JBISサーチ. 日本軽種馬協会. 2024年11月2日閲覧。
- ^ a b c d “パンジャタワーの血統表”. netkeiba.com. 2024年11月2日閲覧。
参考文献
- 『週刊Gallop』2025年6月1日号(産経新聞社)
- 「【THE FACE】深澤朝房オーナー~パンジャタワー」
外部リンク
- パンジャタワーのページへのリンク