インド語派とは? わかりやすく解説

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インド‐ごは【インド語派】


インド語群

(インド語派 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/14 06:35 UTC 版)

インド語群
話される地域 南アジア
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
下位言語
ISO 639-5 inc
インド語派の分布(ウルドゥー語はHindiの範囲に含まれている。ロマ語ドマリ語、ロマヴレン語はこの地図の範囲に含まれていない。)
  中央語群
  東部語群
  北部語群
  北西語群
  南部語群
  シンハラ・モルジブ諸語

インド語群インド・アーリア語群Indo-Aryan languages)とは、インド・イラン語派の下位分類のひとつで、インド・ヨーロッパ語族に属する。主にインド亜大陸に分布する。

SILの推計によれば209言語が属し、母語としている人口は9億人以上と最も多い言語群である。代表的なものとして、ヒンディー語ウルドゥー語をまとめたヒンドゥスターニー語(5億4000万人)、ベンガル語(2億人)、パンジャーブ語(1億人)、マラーティー語(7000万人)、グジャラート語(4500万人)、オリヤー語(3000万人)、シンド語(2000万人)がある。

名称

インドにはインド・ヨーロッパ語族の言語のほかにもドラヴィダ語族ムンダ語派チベット・ビルマ語派などの言語が話されている。インド語群(英語: Indic)という名前では「インドの言語」という意味だと誤解される可能性があるため、インド・アーリア語群(英語: Indo-Aryan)と呼ぶことも多い[1]

歴史

インド語群のうち最も古いものは、ヴェーダで用いられているヴェーダ語である。ヴェーダ語の中でも最古の部分はアヴェスター語などの古代イラン語ときわめてよく似ている。ほかに紀元前14世紀の小アジアにあったミタンニ王国の王名や神名、およびミタンニ人キックリの文書の中にインド・アーリア語と思われる語彙が出現する。

続いて紀元前5世紀頃に、サンスクリット語が文法家のパーニニの手で標準化・成文化された。これが後の紀元前2世紀頃に古典サンスクリット語として完成する。しかし、パーニニの時代、既にヴェーダ語からの変化が目立っている。また、パーニニが確立したサンスクリットは古いヴェーダに回帰したわけではなく、同時代に既に分化していたインド諸語にも影響を受けている。

古い時代に現れるサンスクリット以外の俗語的な言語を総称して中期インド・アーリア語またはプラークリットと呼ぶ。プラークリットの最も早い刻文は紀元前3世紀のアショーカ王碑文に現れている。プラークリットは全体的にサンスクリットよりも新しい語形・文法を持つが、語彙によっては古典サンスクリットやヴェーダ語よりも古い起源を持つものもある。

10世紀以降になると現代につながる新インド・アーリア語の文献が出現する。デーヴァセーナのスラーヴァカチャール(930年頃)がヒンディー語では最古の書物とされる。

そして13世紀から16世紀にかけてのイスラム勢力の拡大がインド語派に大きな影響を与えた。ムガル帝国の繁栄のもとで、イスラーム宮廷の権威によりペルシア語が支配的になったのである。しかしそのペルシア語の地位は、現地語文法をもとにアラビア語ペルシア語語彙を大量に導入したヒンドゥスターニー語に取って代わられた。現代のヒンディー語(特に口語)でも語彙の多くはペルシア語アラビア語由来のものになっている。

この言語状況が変化したのは1947年のインド・パキスタン分離独立時である。ヒンドゥー教徒の用いるヒンドゥスターニー語ヒンディー語としてインド公用語に採用され、より「インド的」な言語を目指してサンスクリット化、つまりトゥルシーダース時代への回帰とでもいうべきものが行われた。ウルドゥー語とも共通するペルシア語・アラビア語由来の専門用語はサンスクリット語のそれに、時に大規模に、また複合語も用いて置き換えられたのである。一方ムスリムのそれはウルドゥー語としてパキスタンの公用語となり、更なるアラビア語ペルシア語の語彙の追加が行われた。現在ウルドゥー語はアラブ=ペルシア化を、ヒンディー語はサンスクリット化を受けている。しかし文法は依然一様であるため連続体といってよいだろう。一方口語では大多数の住民が2言語の混交したものを話しており、それはヒンドゥスターニー語とよばれている。

この語派にはヒンドゥスターニー語以外にもアラビア語や、比較的近縁の言語であるペルシア語の影響を強く受けた言語が多く、同時に南方のドラヴィダ諸語へ大きな影響を与えた語派でもある。アラビア語ペルシア語の影響もインド語派を通じてドラヴィダ諸語に伝播された。

下位分類

インド・アーリア語の分類は困難が大きい。また、どこまでを方言差とし、どこまでを言語差とするかも決定するのが難しい。これは、ほかの言語と異なり、インドの大部分の言語が孤立して発展したわけではなく、たがいに交流を持ちながら発展してきたこと、および多くの話者が多言語使用者であることによる。インド・アーリア語全体をひとつの巨大な方言連続体とみることもできる[2]

通常は、ジョージ・エイブラハム・グリアソンのインド言語調査による分類を基本的に踏襲しているが、学者によってパンジャーブ語や西パハール語群を北西語群に、ビハール語を中央語群に、グジャラート語を南部語群に含めるなどの違いがある[3]

古代語

中央語群

ヒンディー語群英語版とも。

東部語群

北部語群

パハール語群とも。

北西語群

南部語群

関連項目

外部リンク

脚注

  1. ^ 辻直四郎「梵語」『世界言語概説』 1巻、研究社、1952年、65頁。 ただし辻の用語では「インド・アリアン語派」。
  2. ^ Masica (1993) p.25
  3. ^ Masica (1993) pp.446-456 にさまざまな分類を載せる

参考文献

  • Madhav Deshpande (1979). Sociolinguistic attitudes in India: An historical reconstruction. Ann Arbor: Karoma Publishers. ISBN 0-8972-0007-1, ISBN 0-8972-0008-X (pbk).
  • Erdosy, George. (1995). The Indo-Aryans of ancient South Asia: Language, material culture and ethnicity. Berlin: Walter de Gruyter. ISBN 3-1101-4447-6.
  • Jain, Dhanesh; & George Cardona (2003). The Indo-Aryan languages. London: Routledge.ISBN 0-7007-1130-9.
  • Kobayashi, Masato.; & George Cardona (2004). Historical phonology of old Indo-Aryan consonants. Tokyo: Research Institute for Languages and Cultures of Asia and Africa, Tokyo University of Foreign Studies. ISBN 4-8729-7894-3.
  • Masica, Colin P. (1993) [1991]. The Indo-Aryan languages. Cambridge: Cambridge University Press. ISBN 0521299446 
  • Misra, Satya Swarup. (1980). Fresh light on Indo-European classification and chronology. Varanasi: Ashutosh Prakashan Sansthan.
  • Misra, Satya Swarup. (1991-1993). The Old-Indo-Aryan, a historical & comparative grammar (Vols. 1-2). Varanasi: Ashutosh Prakashan Sansthan.
  • Sen, Sukumar. (1995). Syntactic studies of Indo-Aryan languages. Tokyo: Institute for the Study of Languages and Foreign Cultures of Asia and Africa, Tokyo University of Foreign Studies.
  • Vacek, Jaroslav. (1976). The sibilants in Old Indo-Aryan: A contribution to the history of a linguistic area. Prague: Charles University.
  •  『シャクンタラー姫カーリダーサ作。辻直四郎訳.岩波文庫(1977年)
  •  『サンスクリット』ピエール=シルヴァン・フィリオザ.白水社(2006年)

インド語派

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/06/08 23:25 UTC 版)

指令法」の記事における「インド語派」の解説

ヴェーダ語の古層(主にリグ・ヴェーダ)には指令法広く使われる。 例: Indrasya nu vīryāṇi pra vocam (いま、インドラ英雄的諸行為をわたしは告げよう) より時代新し文献では、否定辞 mā とともに禁止を表す固定的な表現用途限られる

※この「インド語派」の解説は、「指令法」の解説の一部です。
「インド語派」を含む「指令法」の記事については、「指令法」の概要を参照ください。

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