方言連続体とは? わかりやすく解説

方言連続体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/02 18:07 UTC 版)

方言連続体(ほうげんれんぞくたい)とは、複数の近似した言語体系があり、それらの間に明確な境界線がなく、徐々に一つの体系から他の体系に移り変わっていく場合、その連続した言語体系群全体を指していう言葉である。

概要

方言連続体を形成している言語体系群はある程度の相互理解性や類似性を持つために、同一言語の「方言」と解釈する事も可能である。

しかし、方言連続体が地理的に広く、多くの言語変種が含まれる場合、変種Aと変種Bは通じ、変種Bと変種Cも通じ、変種Cと変種Dも通じるが、変種Aと変種Dはほとんど、もしくは全く通じないという場合も存在する。

例として、ドイツ語の方言連続体は非常に広く、低地ドイツ語に含まれる標準オランダ語高地ドイツ語を基にした標準ドイツ語の間では相互理解性は低い。標準オランダ語の変化したアフリカーンス語と、高地ドイツ語が変化したイディッシュ語アシュケナジム・ユダヤ人が使用するドイツ語)では更に相互理解性は低くなる。ドイツの言語学会では(政治的な意図から)従来はこうした差異は方言の範囲としていたが、近年になって北西ドイツ諸方言とされていた言語を低ザクセン語として承認する動きが生じる[1][2]など、逆にかつては単一の言語の「方言」とされていたものが現在では別の「言語」であるとされるケースも増加している(ヨーロッパで顕著な傾向である)。

ロマンス諸語も各語とも一つの方言連続体に属するとする見解が多い[3]が、フランスイタリアスペインという大国の政治的背景から「ラテン語方言」として扱われる事は少なく、別言語とされるのが一般的である。

客観的判断が下せない以上、言語体系を「方言」とするか「言語」とするかは政治的な意図に左右されるケースが多く、学術的評価は必ずしも拘束力を持たない。

成立要因

言語学者フェルディナン・ド・ソシュールは、言語が分化(方言化)する過程において、地理的に連続している地域での分化が一定の連続性を持った形になるのは「自然」であり、それが全く異質な言語として分離した場合も、何らかの原因で中間に位置する方言が消失したに過ぎないと述べている。中間方言が失われる原因として、ソシュールは移民や、社会の要求に応じて作られた標準語共通語が連続体の一部のみに新たな変化を与える事(つまりは言語の置き換え)などを挙げている。

その一例を挙げれば、ドイツ東北部のベルリンで、低地ドイツ語に属する低ザクセン語のうち東低地ドイツ語のベルリン方言が高地ドイツ語に属する中部ドイツ語のうち東中部ドイツ語としてベルリン方言に同化され消失したケースがある。

方言連続体の例

関連項目

脚注

  1. ^ エスノローグ「低ザクセン語」
  2. ^ 国際標準化機構 (ISO)
  3. ^ コンカニ語-言語か方言か フェルディナン・ド・ソシュール一般言語学講義』内の言語地理学の項で同様の見解がなされている。
  4. ^ * 亀井孝河野六郎千野栄一編著、『言語学大辞典セレクション・ヨーロッパの言語』三省堂、1998年

方言連続体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/04 06:49 UTC 版)

語族」の記事における「方言連続体」の解説

「方言連続体」を参照 いくつかの緊密な語族群、およびより大きな語族多く分枝は、方言連続体の形をとり、語族内の個々言語明確な識別、定義、カウント可能にする明確な境界が無い。ただしアラビア語のように、連続体両端存在する方言差異が非常に大きく相互理解性ない場合連続体単一言語として意味のあるものとはみなせない。 言語多様性は、社会的または政治的な考慮事項に応じて言語または方言のいずれとも見做され得る。したがって情報源によって、(特に時間の経過とともに、)特定の語族内で全く異なる数の内包言語数が示される可能性がある。たとえば、日琉語族分類は、内包言語唯一日本語のみ(琉球言葉方言とみなす場合とされるともあれば、20近く言語含まれるとされる場合もある。琉球語日本語の方言ではなく日琉語族内の別個の言語として分類されるまでは、日本語孤立した言語所属言語がただ1つ語族であった

※この「方言連続体」の解説は、「語族」の解説の一部です。
「方言連続体」を含む「語族」の記事については、「語族」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「方言連続体」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「方言連続体」の関連用語

方言連続体のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



方言連続体のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの方言連続体 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの語族 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS