化学シフト
化学シフト
化学シフト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/13 01:52 UTC 版)
核磁気共鳴における化学シフト(英語: chemical shift)とは、核スピン周囲の電子の空間的分布の違いにより、核スピンに働く見かけ上の静磁場や共鳴周波数が変化することをいう。
- 1 化学シフトとは
- 2 化学シフトの概要
- 3 化学シフト異方性
化学シフト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 07:30 UTC 版)
詳細は「化学シフト」を参照 原子核の周りには通常は電子が運動している。運動している電子は磁場を作り出すため、これにより原子核のラーモア周波数は影響を受ける。原子核の周りの電子の状態はその原子がどのような化学結合をしているのかに影響を受ける。そのため、その原子が構成している物質の違いによってラーモア周波数も異なる。この物質によるラーモア周波数の違いを化学シフト(ケミカルシフト)という。ハミルトニアンの化学シフト項は以下のように表せる。 H ^ = γ I ⋅ σ ⋅ B 0 {\displaystyle {\hat {H}}=\gamma I\cdot \sigma \cdot \mathbf {B} _{0}} ここで、σは化学シフトテンソルあるいは遮蔽テンソルと呼ばれる。このときのラーモア周波数は以下のようになる。 γ B 0 { [ ( 1 − σ x x ) α x ] 2 + [ ( 1 − σ y y ) α y ] 2 + [ ( 1 − σ z z ) α z ] 2 } 1 2 {\displaystyle \gamma B_{0}\left\{\left[(1-\sigma _{x}x)\alpha _{x}\right]^{2}+\left[(1-\sigma _{y}y)\alpha _{y}\right]^{2}+\left[(1-\sigma _{z}z)\alpha _{z}\right]^{2}\right\}^{\frac {1}{2}}} ここでσxx、σyy、σzzは化学シフトテンソルの主値、αx、αy、αzは主軸から見た静磁場B0の方向余弦である。 観測している原子核が充分に速く等方的に運動している場合には、化学シフトテンソルは平均化されてスカラーσで表すことができる。これを遮蔽定数という。このときのラーモア周波数は以下のようになる。 γ ( 1 − σ ) B 0 {\displaystyle \gamma (1-\sigma )B_{0}} いずれの場合もラーモア周波数は静磁場B0に比例する。化学シフトの値を議論する場合には、この磁場依存性をなくすためにラーモア周波数をγB0で割った無次元数を利用することが多い。
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化学シフト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/03 17:44 UTC 版)
結合エネルギーのずれは化学シフトと呼ばれる。核磁気共鳴における化学シフトと同様に、周囲の原子との相互作用に由来する。単体元素Aを基準にしたときの化合物Bの化学シフト Δ E A B {\displaystyle \Delta E_{A}^{B}} は次のように表せる。 Δ E A B = K ( q A − q B ) + ( V A − V B ) {\displaystyle \Delta E_{A}^{B}=K(q_{A}-q_{B})+(V_{A}-V_{B})} K q A = q A / r A , V {\displaystyle Kq_{A}=q_{A}/r_{A,V}} V A = ∑ q A / R {\displaystyle V_{A}=\sum {q_{A}/R}} ここで K {\displaystyle K} はカップリング定数で内殻電子と価電子の2電子積分、 q {\displaystyle q} は価電子の有効電荷、 V {\displaystyle V} はマーデルングポテンシャル(イオン結晶中の各格子点の静電ポテンシャルを表す)、 r {\displaystyle r} は価電子殻の平均軌道半径である。この式の第1項目は内殻電子と価電子との電子-電子相互作用の差に相当する。
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化学シフト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/03 17:45 UTC 版)
測定によって得られたピークの位置は、そのままの周波数の値で表すと磁場の強度に依存してしまうため、基準物質からの周波数差を磁場の強度で割った、化学シフト δ で表す(δ = (吸収のあった電磁波の周波数 − 基準物質の吸収周波数)/(磁場の強度) )。化学シフトは普通数–数百ヘルツであるのに対し、一般的なNMR装置の磁場強度は数百メガヘルツなので、δの値はppmで表す。CW-NMRが良く使われていた時代の名残で、高周波数(δが大きい)側を低磁場、低周波数(δが小さい)側を高磁場と呼ぶ。また初期のNMRの文献では化学シフトτが使用されていることがある。τスケールの化学シフトはδスケールの化学シフトとτ=10-δの関係がある。 基準物質としては1Hや13Cではテトラメチルシラン (TMS) を用い、このシグナルを0 ppmとする。通常は内部標準として試料溶液に溶解するが、測定溶媒が重水などの時はTMSが溶解しないので外部標準とするか、別の物質が用いられる。また、1Hでは溶媒中に含まれる未重水素化体、13Cでは溶媒自身ピークが基準に用いられることもある。化学シフトは測定する化合物の構造や電気的・物理的状況、溶媒などにより決まり、これらから得られる情報を利用して化合物の同定や構造の推定を行う。有機分子の部分構造と化学シフト値には相関があり構造の推定に利用できる。またデータ集やスペクトルデータベースも利用できる。
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化学シフト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/19 00:41 UTC 版)
化学シフトによるスピンの時間変化はつぎのように表すことができる。 I y → ( π δ I t ) I z I y c o s ( 2 π δ I t ) − I x s i n ( 2 π δ I t ) {\displaystyle I_{y}{\xrightarrow {\quad (\pi \delta _{I}t)I_{z}\quad }}I_{y}cos(2\pi \delta _{I}t)-I_{x}sin(2\pi \delta _{I}t)} ここで δ I {\displaystyle \delta _{I}} は、トランスミッター周波数から測ったIスピンのシフトである。Sスピンの化学シフトも同様に扱うことができる。 異種核スピンの場合は、個々のスピンに別の回転系が設定されるから、それぞれの化学シフトはそれぞれの回転系におけるトランスミッター周波数からの相対値として表現する。
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化学シフト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/16 16:42 UTC 版)
13C化学シフトは1Hと同じ原理に従うが、化学シフトの典型的な範囲は1Hよりも約20倍広い。13C NMR化学シフトの基準物質として通常はテトラメチルシラン(TMS)中の炭素(0.0 ppm)が用いられる 。 13C-NMRにおける典型的な化学シフト
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化学シフト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/09 07:20 UTC 版)
以下の表に示す化学シフトの値(記号δで表される)は精密ではないものの、特徴をよく表わしている。したがってこれらは主に参考値とみなされる。実際の測定値の表中の値からのズレは±0.2 ppmの範囲にあることが多いが、それより大きい場合もある。厳密な化学シフト値は分子構造や溶媒、温度、NMRの磁場、近接する官能基など様々な要素に影響される。水素原子核は、その水素が結合している原子の軌道混成や電子的効果(英語版)に対して敏感である。原子核は電子求引性基によって脱遮蔽されやすい。脱遮蔽された原子核はより高い化学シフト値を示すが、遮蔽されたままの原子核はより低い化学シフト値を示す。 電子求引性の置換基として-OH、-OCOR、-OR、-NO2、ハロゲンなどがある。これらの官能基はCα上のH原子で2–4 ppm、Cβ上の水素原子で1–2 ppmの化学シフトを引き起こす。Cαは脂肪族化合物では観測対象としている置換基が直接結合しているC原子で、CβはCαに結合している炭素原子である。カルボニル基やオレフィンのフラグメント、芳香環に含まれる炭素はsp2混成の炭素であり、これらはCαに1–2 ppmの化学シフトを引き起こす。 -OH、-NH2、-SHなどの不安定なプロトンは特有の化学シフト値を示さない。しかしそれらの共鳴はD2Oの重水素が化合物の[[1H]]原子を置換する反応でピークが消失することで確認できる。この方法はD2Oシェイクと呼ばれる。酸性プロトンも溶媒がメタノール-d4など酸性重水素イオンを含む場合はシグナルが抑制される。炭素に結合していないプロトンを特定する場合の代替手法としてプロトンと、それに結合する原子の隣の炭素の相互作用を調べる異核種単一量子コヒーレンス法(英語版)(HSQC法)が用いられる。炭素原子に結合していない水素原子はHSQCスペクトルで交差ピークを持たないことから特定できる。 官能基CH3CH2CHCH2R 0.8 1.3 1.6 C=C 1.6 2.0 2.6 C≡C 1.7 2.2 2.8 C6H5 2.3 2.6 2.9 F 4.3 4.4 4.8 Cl 3.0 3.4 4.0 Br 2.7 3.4 4.1 I 2.2 3.2 4.2 OH 3.3 3.5 3.8 OR 3.3 3.4 3.7 OC6H5 3.8 4.0 4.3 OCOR 3.6 4.1 5.0 OCOC6H5 3.9 4.2 5.1 OCOCF3 4.0 4.4 — CHO 2.2 2.4 2.5 COR 2.1 2.2 2.6 COOH 2.1 2.3 2.6 COOR 2.0 2.3 2.5 CONR2 2.0 2.1 2.4 CN 2.1 2.5 3.0 NH2 2.5 2.7 3.0 NR2 2.2 2.4 2.8 NRC6H5 2.6 3.0 3.6 NR3+ 3.0 3.1 3.6 NHCOR 2.9 3.3 3.7 NO2 4.1 4.2 4.4 SR 2.1 2.5 3.1 SOR 2.6 3.1 — =O (脂肪族アルデヒド) — — 9.5 =O (芳香族アルデヒド) — — 10 M-H (金属水素化物) — — 2999500000000000000♠−5 ~ 2998850000000000000♠−15
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