かく‐ゆうごう〔‐ユウガフ〕【核融合】
【核融合】(かくゆうごう)
原子核が融合して別の元素に変わる時の質量減少分を、エネルギーとして取り出す核反応の一種。
エネルギー放出量は核分裂反応の1/10であるが、原子そのものが軽いため、同じ質量を核融合させると結果的に核分裂を上回るエネルギーが取り出せる。
太陽をはじめとする恒星のエネルギー源としても有名である。
発見された当初は「人類には絶対に手に出来ないエネルギー」とも言われていたが、第二次世界大戦後、核分裂爆弾のエネルギーを利用して水素原子(重水素)を圧縮・融合させ、ヘリウムに変わる反応を利用する水素爆弾が実用化された。
もっとも、あまりに強大な破壊力のため、核兵器の中でも特に抑止力として用いられる戦略核兵器としてのみ利用できる関係上、兵器としての水素爆弾が日の目を見た事はない。
放射性廃棄物が少なく(反応のタイプによっては全く放射性廃棄物が出ない)、また燃料である水素は水からほぼ無尽蔵に取り出せるため、将来の化石燃料に変わるエネルギー源として、民生分野で核融合炉が研究されている。
しかし、その膨大なエネルギー制御と融合方法に難があるため、実用化には至っていない。
また「放射性廃棄物は少ない」といっても、中性子や電磁波は放出される為、炉そのものが放射性物質となってしまうのも問題になっている。
核融合
核融合
核融合反応
原子核物理学 | ||||||||||||||
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放射性崩壊 核分裂反応 原子核融合 | ||||||||||||||
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核融合反応を連続的に発生させエネルギー源として利用する核融合炉も古くから研究されており、フィクション作品にはよく登場するが、現実には技術的な困難を伴うため2023年現在実用化はされていない[1][2]。
解説
1920年代及び30年代に、ジョン・コッククロフトに代表される粒子加速器の研究に従事していた物理学者たちは、陽子(水素原子核)や他の軽い核に高いエネルギー(数keV)を与え入射粒子として加速し、標的となっている軽い核に当てると、核の電気的反発力や核力によって入射粒子は破壊を伴いながら、標的と融合し大きなエネルギーが解放されること、すなわち核融合反応(nuclear fusion)を発見していた。この大きなエネルギーは、アインシュタインによって主張された関係式 E = mc2 を満たす形で、融合した核の質量の一部がエネルギーに変換されるため発生する。しかしながら、加速器による核融合反応では、少数の核融合物を作るために大量のエネルギーが必要であり、もし実用に供するような連続的な核融合反応を起こすのであれば摂氏数億度もの高温が必要となることから、以後に発見された核分裂反応ほどには当初は着目されなかった。
上記の摂氏数億度の高温を用いる核融合は特に熱核反応(thermonuclear reaction)と呼ばれるが、熱核反応の燃料としては、原子核の荷電が小さく原子核同士が接近しやすい軽い核種で反応自体も速いといった理由から三重水素や二重水素といった水素の重い同位体が理想的と言われる[3]。
融合の種類によっては融合の結果放出されるエネルギー量が多いことから、水素爆弾などの大量破壊兵器に用いられる[4]。ただし、水素爆弾は核分裂反応を利用して起爆する必要がある。
また平和利用目的として核融合炉によるエネルギー利用も研究されている。核分裂反応に比べて、反応を起こすために必要な技術的なハードルが高く、世界各国において様々な実験装置が建設され、実用化に向けた研究開発が進められている。近年、スタートアップを含む民間による核融合炉の開発も活発になっている[5][6]。
核融合の種類
- 熱核融合
- 超高温により起こる核融合。本項で詳説する。
- 衝突核融合
- 原子核を直接に衝突させて起こす核融合。原子核の研究において使用される。
- スピン偏極核融合
- 陽子と中性子の角運動量のパラメータ(スピン)を制御する事により核融合反応を制御する。
- ピクノ核融合
- 非常に高密度の星(白色矮星)の内部で起こっていると考えられている核融合反応。電子が原子核のクーロン力を強く遮断して、低温の状態でも零点振動による量子トンネル効果により核融合が起こる。
- ミューオン触媒核融合
- ミュー粒子(負ミューオン)は電子と同様にマイナスの電荷をもつ粒子だが、電子の約200倍の質量を持つので束縛軌道半径が約200分の1である。そのため、電子を負ミューオンに置き換えると原子核同士が接近しやすくなり核融合が起こりやすくなる。負ミューオンは消滅までに何度もこの反応に関与できるのであたかも触媒のように作用する。
- 常温核融合
- 室温から摂氏数百度程度の、熱核融合に比べて低い温度で核融合が起こる反応。1989年3月に米ユタ大学の研究者がこの現象を発表した。当時は再現性にばらつきがあったため否定されたが、その後、ナノ金属加工技術や電子顕微鏡の発展により2010年頃から再現性が高まり、熱核反応とは別の物で原理は不明だがとりあえず熱は出ることが分かり再評価されている[7][8]。
各種核融合反応
D-T反応

太陽より小さいサイズの星では、陽子-陽子連鎖反応が支配的である 次の、軽水素(陽子、p)どうしが直接反応する水素核融合を、陽子-陽子連鎖反応、p-pチェインなどと呼ぶ。一般に宇宙分野での核融合とはこの反応を指すことが多く、太陽の中心核で主に起こっている核融合反応である。4つの水素原子から1つのヘリウム4が生成される反応では以下の過程を経る。
太陽より重い星では、CNOサイクルが支配的である 次の、炭素(C)・窒素(N)・酸素(O) を触媒とした水素核融合を、CNOサイクルと呼ぶ。星の中心温度が約1400万-3000万Kで稼働し、約2000万Kを超えると、p-pチェインよりCNOサイクルのほうが優勢になり、その反応が活発になる。
- (a-1)
ケイ素の燃焼まで進行した恒星の断面図 中心温度が15億 Kを超えると、炭素も核融合を始める(炭素燃焼過程)。さらに恒星が十分な質量を持っていれば、ネオン燃焼過程、酸素燃焼過程、ケイ素燃焼過程を経て安定した鉄56(最も安定な核種はニッケル62。詳細は鉄参照)が作られ、中心での核融合反応は終了する。星は内側から、鉄 ( Fe ) の核、ケイ素 ( Si ) の球殻、酸素 ( O ) の球殻、ネオン ( Ne ) の球殻、炭素 ( C ) の球殻、ヘリウム ( He ) の球殻、水素 ( H ) の 最外層からなる、所謂タマネギ状の構造へと形成され、中心以外の各層で核融合が進行する。
超新星爆発
中心温度が100億 Kを超えると、黒体放射の光子のエネルギーが核子の結合エネルギーと同程度になるため、鉄の光分解が起こる。
- (a-1)
核融合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/05 05:39 UTC 版)
1950年代に研究が開始された当初は核融合を目的に開発されていたが、不安定性を克服できず、一時期は下火になっていた。近年ではZピンチで直接核融合を起こすのではなく、ZマシンのようにZピンチからの強力な放射を慣性核融合のドライバーとして利用しようという研究が進められ、再び研究が活発になりつつある。
※この「核融合」の解説は、「Zピンチ」の解説の一部です。
「核融合」を含む「Zピンチ」の記事については、「Zピンチ」の概要を参照ください。
核融合
「核融合」の例文・使い方・用例・文例
- その物理学者は核融合の潜在的な危険性に気づいていた。
- 核融合.
- 核融合による発電は理論的には可能であるが, 今のところは技術的に不可能である.
- 核融合反応は 6 千万度から 7 千万度にわたる熱を発生する.
- エネルギーを発生させるために制御された核融合を使う原子炉
- 核融合の研究で使われるドーナツ形の小室
- 室温またはその近くでの核融合
- 固体または液体またはガスとは別の物質の第四状態と星と核融合炉に存在する
- 核融合反応
- 核融合炉の炉心のプラズマを囲む部分
- 核融合によるエネルギー
- 核融合装置で,プラズマ中に電流を流し磁場閉じ込めを行う方式
- 熱核融合反応を利用する装置に用いる材料
- ハイブリッド炉という,核分裂と核融合を利用した原子炉
- 核融合装置で,外部に取り付けた磁場コイルによりプラズマの磁場閉じ込めを行う方式
- 燃料をレーザー光線で圧縮,加熱して反応を引き起こす核融合炉
- 核融合反応による巨大な爆発力をもつ核兵器
- 国際熱核融合実験炉(ITER)は南フランスのカダラッシュに建設されることが決まった。
- ITER計画は,太陽上の核融合反応を再現することによってエネルギーを生成することをめざす。
- 核融合エネルギーは今世紀末には商業化されると考えられている。
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