核膜と核膜孔
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 15:30 UTC 版)
詳細は「核膜」および「核膜孔」を参照 核膜は、内膜と外膜の2層の脂質二重膜によって構成される。内膜と外膜は互いに平行で 10–50 nm 離れている。核膜は核を完全に包んで細胞質から遺伝物質を分離するとともに、高分子が核質と細胞質の間を自由に拡散することを防ぐ障壁の役割を果たしている。外膜は粗面小胞体の膜と連続しており、粗面小胞体膜と同様にリボソームが点在している。内膜と外膜の間の領域は perinuclear space と呼ばれ、粗面小胞体内腔と連続している。 核膜孔は核膜を通過するチャネルである。複数のタンパク質から構成されており、それらはヌクレオポリンと総称されている。核膜孔はおよそ 125 MDa で、約50 (酵母) から 数百 (脊椎動物) のタンパク質で構成されている。孔の直径は約 100 nm であるが、孔の中心部には調節システムが位置しているため、分子が自由に拡散する間隙は約 9 nm の幅しかない。このサイズ選択性のため、水溶性の低分子は通過できる一方、核酸やタンパク質などの巨大な分子は不適切な出入りが防がれており、核内外への輸送は能動的になされる必要がある。典型的な哺乳類細胞の核膜には約3000から4000の核膜孔があり、内膜と外膜が融合する地点のそれぞれに8回対称のリング状の構造が存在している。そのリングから核質側へは核バスケット (nuclear basket) と呼ばれる構造が突出しており、細胞質側へは一連のフィラメントが伸びている。両方の構造が核輸送タンパク質の結合に関与している。 ほとんどのタンパク質、リボソームのサブユニット、そしていくつかのDNAは、カリオフェリンとして知られる輸送因子ファミリーによって、核膜孔複合体を通って輸送される。核内への移動を媒介するカリオフェリンはインポーチン、核外への移動を媒介するものはエクスポーチンと呼ばれる。ほとんどのカリオフェリンはその積み荷 (cargo) と直接相互作用するが、いくつかのものはアダプタータンパク質を利用する。コルチゾールやアルドステロンのようなステロイドホルモンや、細胞間シグナル伝達に関与する他の脂溶性低分子は細胞膜を通過して細胞質へ拡散するが、そこで核内受容体に結合し核へと輸送される。核内受容体はリガンドが結合時には転写因子として機能し、リガンドがないときには、その多くが遺伝子発現を抑制するヒストン脱アセチル化酵素として機能する。
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