強塩基
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/31 05:49 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動これらに次ぐ強塩基としてはアルカリ土類金属などの水酸化物、および分子性のものとしてプロトン化された陽イオンが共鳴安定化されるグアニジンなどがある。
- 水酸化カルシウム ()
- 水酸化ストロンチウム ()
- 水酸化バリウム ()
- 水酸化ユウロピウム(II) ()
- 水酸化タリウム(I) ()
- グアニジン ()
金属の水酸化物の塩基強度は、金属イオンの電荷が小さく、イオン半径が大きいほど水酸化物イオンとの静電気力が弱くなり、強塩基となり水に対する溶解度および溶解度積も大きくなる。また塩基強度は金属の電気陰性度が小さいほどイオン結合性が強くなり大きくなる。 従って、金属アクアイオンの酸解離定数pKaは電荷をe、イオン半径をrとしてe2/rとほぼ直線関係にあり、金属アクアイオンのpKaが大きく加水分解しにくいものほど、その金属の水酸化物は強塩基であることになる。
また水酸化物および酸化物をアンモニア水に溶解して得られるアンミン錯体の水酸化物なども強塩基である。
- ジアンミン銀(I)水酸化物 ()
- テトラアンミン銅(II)水酸化物 ()
さらにアルキルスルホニウムおよびアルキル(アリール)ヨードニウムなどの水酸化物も強塩基である。
- 水酸化トリメチルスルホニウム ()
- 水酸化ジフェニルヨードニウム ()
超塩基
希薄水溶液中における塩基性は水平化効果により水酸化物イオンの塩基強度に制限されるが、非水溶媒中ではさらにプロトンを引き抜く力の強い強塩基性媒体が実現可能である。このような強塩基性媒体を超塩基(ちょうえんき、superbase)もしくは超強塩基(ちょうきょうえんき)と呼ぶ。ただし現在のところ超塩基の明確な定義はない[5]。一方、酸度関数 H− > 26 のものを超塩基とする提案もあり、これは超酸の定義がほぼH0 > −12 と中性 H 0 = 7 の 1019 倍、酸性が強いことに対応し、1019 倍以上、塩基性が強いものを超塩基と呼ぶというものである[5]。
超塩基の塩基性強度は、媒体中に指示薬として微量添加された弱酸HAのプロトン解離の程度によるハメットの酸度関数H_により表される。ここで は水素イオンの活量、 および は指示薬の活量係数を表す。
この H− の数値が大きいほど媒体の塩基性は強く、この中ではより弱い酸でもプロトン解離を引き起こすことになる。
無機固体超塩基
固体の超塩基としては酸化カルシウム CaO などがあり、これは H− > 26.5 であり酸化物イオンO2−が塩基点としてはたらく。また、酸化マグネシウム MgO に金属ナトリウムを添加した固体はさらに強い塩基性を発揮し、H− > 35 にも及ぶ[5]。
アルコキシド・有機金属類
溶液としてはアルコキシドのアルコール溶液および有機溶媒にアルキルリチウムなどを溶解したものはプロトンを引き抜く作用が強く、有機合成において強塩基として用いられる[5]。グリニャール試薬もアルキルアニオンを発生させるため超塩基の一種と見做される。
また、同じ塩基の溶液であっても陽イオン、陰イオン伴に溶媒和しやすくイオンを安定化させるようなプロトン性溶媒よりも、主に陽イオンのみに溶媒和し塩基である陰イオンに対しては裸の状態を保ち、塩基性を十分発揮させるような非プロトン性溶媒の溶液の方がより強い塩基性となる[5]。例えば 0.01 mol · dm−3 ナトリウムエトキシド C2H5ONa のエタノール溶液は H− = 13.99 であるが、同濃度のナトリウムエトキシドのエタノール (5 mol%) + ジメチルスルホキシド (95 mol%) 混合溶媒の溶液では H− = 20.68 である[6]。
有機超塩基
プロトン付加した陽イオンが共鳴安定化され、かつ求核性の低いジアザビシクロウンデセンおよびジアザビシクロノネンなども有機合成において超塩基として有用である。85 % エチレンジアミン水溶液は H− = 19.0 であり、90 % ヒドラジン水溶液は H− = 19、また純エタノールアミンは H− = 15.35 である[4]。有機塩基としてグアニジンよりもさらに強力なリン原子をプロトン受容体としたフォスファゼン塩基はフォスファゼンユニット N3P=N の数が2 – 5 と多くなるほど塩基性は飛躍的に増大し、アセトニトリル中における共役酸 HB+ の pKa はユニットが 1 個のもので 27 程度、5 個のものでは pKa > 50 にも達するものがある。また同じくリン原子をプロトン受容体とする同様に強力な塩基としてフットボール型のプロアザフォスファトラン塩基 P(RNCH2CH2)3N がある。
脚注
参考文献
- F.A. コットン, G. ウィルキンソン(著)、 中原 勝儼(訳) 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年。
- F. Albert Cotton and Geoffrey Wilkinson (1980). Advanced Inorganic Chemistry : A Comprehensive Text (Fourth ed.). Interscience.
- 田中元治 『酸と塩基』 裳華房〈基礎化学選書 8〉、1971年。
- G. Schwarzenbach (1936). Z. physik. Chem. 176 A (133).
- シャロー 『溶液内の化学反応と平衡』 藤永太一郎、佐藤昌憲訳、丸善、1975年。
- 田部浩三、野依良治 『超強酸・超強塩基』 講談社、1980年。
- 日本化学会編 『化学便覧 基礎編 II』 丸善、1993年、改訂 4。
関連項目
強塩基
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 01:21 UTC 版)
希薄水溶液中においては、水酸化物イオン活量 aOH− も mol/L 単位で表した水酸化物イオン濃度 [OH−] の数値にほぼ等しいと近似できる。よって水酸化物イオン指数は以下の式で近似することができる。 p O H = − log 10 [ O H − ] m o l / L = log 10 1 [ O H − ] / ( m o l / L ) {\displaystyle \mathrm {pOH} =-\log _{10}{\frac {[\mathrm {OH} ^{-}]}{\mathrm {mol/L} }}=\log _{10}{\frac {1}{[\mathrm {OH} ^{-}]/(\mathrm {mol/L} )}}} 適度な濃度(1 mol/L ないし 1 μmol/L、すなわち 100 - 10−6 mol/L)の水酸化ナトリウム水溶液の水酸化物イオン濃度 [OH−] は、水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度 CNaOH に等しい。よって水酸化ナトリウム水溶液のpOHは、この式から直ちに計算することができる。25℃におけるアルカリ性の水溶液のpHは、関係式 pH + pOH = 14.00 から計算できる。 CNaOH = 0.01 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液 pOH = −log10 0.01 = 2 pH = 14.00 − 2 = 12 水酸化カリウムなどの他のアルカリ金属の水酸化物の場合も、アルカリのモル濃度 CMOH が 100 - 10−6 mol/L の範囲にあるなら、水酸化ナトリウム水溶液と同様にpOHを計算できる。溶質が強塩基ではなく弱塩基の場合は、後述するように、塩基解離平衡や加水分解を考慮する必要がある。 第2族元素(アルカリ土類金属)の水酸化物は、金属イオン1モルにつき水酸化物イオンを2モル含むイオン結晶である。これらの結晶が水に溶けるとき、濃度が十分に低ければ水酸化物イオン濃度 [OH−] は水酸化物 M(OH)2 (M = Mg, Ca, Ba など) の濃度 CM(OH)2 の2倍に等しい。水酸化物の濃度が高くなると、金属イオンの加水分解 M 2 + + OH − ↽ − − ⇀ M ( OH ) + {\displaystyle {\ce {M^2+ + OH^- <=> M(OH)+}}} が起こるので、[OH−] は 2CM(OH)2 よりも小さくなる。しかしながら、第2族元素の金属イオンはアルカリ金属イオンに次いで加水分解しにくいイオンであり、また第2族元素の水酸化物の水への溶解度は比較的小さいので、簡単のため、[OH−] = 2CM(OH)2 と置いてpOHを計算することが多い。 水酸化カルシウムの飽和水溶液 25℃における飽和水溶液のモル濃度は 20.3×10−3 mol/L である。 pOH = −log10(2×20.3×10−3) = 1.4 pH = 14.00 − 1.4 = 12.6 水酸化マグネシウムの飽和水溶液 25℃における飽和水溶液のモル濃度は 16.6×10−5 mol/L である。 pOH = −log10(2×16.6×10−5) = 3.5 pH = 14.00 − 3.5 = 10.5 水酸化マグネシウムは強塩基であるが、水に対する溶解度が低いため、その水溶液は弱アルカリ性になる。
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