塩基
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酸と塩基 |
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化学において、塩基(えんき、英: base)とは、一部の化学物質を指す総称である。具体的な定義は後述。酸の対義語。
概要
一般に、プロトン(H+)を受け取る、または電子対を与える化学種[1]。歴史上、概念の拡大を伴いながら、幾つかの定義が考えられた。
塩基としてはたらく性質を塩基性(えんきせい)といい、水溶液の塩基性はアルカリ性ともいう。
酸・塩基は相対的な概念である。ある物質に対する塩基が、他の物質に対して酸であることが多い。例えば、水は塩化水素に対して塩基である(H+を奪う)が、アンモニアに対して酸である(H+を与える)。
英語 Base の語源
錬金術用語 "the matrix" の類義語として、1717年にフランスの化学者 Louis Lémery が使用したのが最初である[7]。錬金術師のパラケルススは、普遍的な酸か潜在原理が土壌の matrix もしくは wombに含侵することで天然に存在する塩が地中で生まれると主張した。その理論を近代化学に導入したのが フランスの化学者 Guillaume-François Rouelle で、中性塩がアルカリ水溶液等と酸を混ぜ合わせる事で生成されることを明らかにした。18世紀における既知の酸のほとんどが揮発性か蒸留可能な"spirits"で、一方、塩基は酸を「結晶状態の塩か凝固した状態」の形を与え、定着させられる"Base"と考えられた。
出典
- ^ base - IUPAC Gold Book
- ^ 『理化学辞典』 第五版, 岩波書店
- ^ Ullmann, M. (1986). “AL-ḲILY”. In Bosworth, C. E. [英語版]; van Donzel, E. [英語版]; Lewis, B.; Pellat, Ch. [英語版] (eds.). The Encyclopaedia of Islam, New Edition, Volume V: Khe–Mahi. Leiden: E. J. Brill. ISBN 90-04-07819-3.
- ^ Définitions lexicographiques et étymologiques de « alcali » du Trésor de la langue française informatisé, sur le site du Centre national de ressources textuelles et lexicales
- ^ Brønsted base - IUPAC Gold Book
- ^ Lewis base - IUPAC Gold Book
- ^ Jensen, William B. (2006). “The origin of the term "base"”. The Journal of Chemical Education 83 (8): 1130. Bibcode: 2006JChEd..83.1130J. doi:10.1021/ed083p1130. オリジナルの4 March 2016時点におけるアーカイブ。 .
関連項目
外部リンク
弱塩基
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弱塩基水溶液のpHは塩基解離定数を使って見積もることができる。弱塩基は、部分的に電離して水酸化物イオン OH− を放出するタイプのものよりも、溶媒の水分子 H2O から水素イオン H+ を引き抜くことで水酸化物イオン OH− を生成するタイプの方が多い。 B + H 2 O ↽ − − ⇀ HB + + OH − {\displaystyle {\ce {B + H2O <=> HB+ + OH^-}}} このときの塩基解離定数 Kb は K b = [ O H − ] [ H B + ] [ B ] {\displaystyle K_{\text{b}}={\frac {[\mathrm {OH^{-}} ][\mathrm {HB^{+}} ]}{[\mathrm {B} ]}}} と表すことができる。弱酸の場合と同様に考えると、弱塩基の希薄溶液の水酸化物イオン濃度 [OH−] は次式で与えられる。 [ O H − ] = 1 2 ( K b 2 + 4 C B K b − K b ) {\displaystyle [\mathrm {OH^{-}} ]={\frac {1}{2}}\left({\sqrt {{K_{\text{b}}}^{2}+4C_{\text{B}}K_{\text{b}}}}-K_{\text{b}}\right)} ここで CB は弱塩基の初期濃度である。CB が塩基解離定数 Kb よりも十分に大きいときは [ O H − ] = C B K b {\displaystyle [\mathrm {OH^{-}} ]={\sqrt {C_{\text{B}}K_{\text{b}}}}} と近似できるので、25℃におけるpHは次式で与えられる。 p H = 14.00 + 1 2 log 10 C B K b ( m o l / L ) 2 {\displaystyle \mathrm {pH} =14.00+{\frac {1}{2}}\log _{10}{\frac {C_{\text{B}}K_{\text{b}}}{\mathrm {(mol/L)^{2}} }}} CB = 0.1 mol/L のアンモニア水 アンモニアの塩基解離定数 Kb は 10−4.75 mol/L である。 pH = 14.00 + 1/2(−4.75 + log10 0.1) = 11.1 CNa2CO3 = 0.1 mol/L の炭酸ナトリウム水溶液 炭酸ナトリウム Na2CO3 はイオン結晶であり、水に溶けるとナトリウムイオンと炭酸イオンに完全に電離する。水に溶けた炭酸イオン CO32− が塩基として働くので、塩基の初期濃度 CB は CNa2CO3 に等しい。炭酸イオン CO32− の塩基解離定数 Kb は 10−3.67 mol/L である。 pH = 14.00 + 1/2(−3.67 + log10 0.1) = 11.7 炭酸イオンは弱塩基であるが、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムの水溶液は強いアルカリ性を示す。アンモニアも弱塩基であるが、モル濃度が 0.1 mol/L、すなわち質量パーセント濃度が0.2%程度の比較的薄いアンモニア水でも、そのpHは11を超える。これらの例は、強塩基 Mg(OH)2 の水溶液が弱アルカリ性を示すのと対照的である。
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