標準電極電位
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標準電極電位(ひょうじゅんでんきょくでんい、英: standard electrode potential)は、ある電気化学反応(電極反応)について、標準状態(反応に関与する全ての化学種の活量が1かつ平衡状態となっている時)の電極電位である。標準電位(ひょうじゅんでんい、英: standard potential)、標準還元電位(ひょうじゅんかんげんでんい、英: standard reduction potential)とも呼ばれる。
理論
標準電極電位は標準水素電極の電位を基準(0 ボルト)として表すと約束されている。したがって、標準水素電極と測定対象の電極を組み合わせて作った電池の標準状態における起電力は標準電極電位と等しい。このとき、規約により標準水素電極の電極反応は酸化反応(アノード反応)として表すことになっているので、測定対象電極の電極反応は全て還元反応(カソード反応)として表現される。
以下で具体例を挙げて説明する。
例:酸素還元反応の標準電極電位
例として、次のような酸素の還元反応の標準電極電位について考える。
- (カソード反応)
基準となる標準水素電極の反応は次の通り。
- (アノード反応)
上記の2つの電極反応による電池を考え、この電池の標準状態・平衡状態における電気化学ポテンシャルのつり合いを考えてゆく。 (ちなみにこの電池は、水素酸素燃料電池の反応そのものである。)
酸素電極(カソード)の還元反応については
水素電極(アノード)の酸化反応については
と表すことが出来る。(電子の電気化学ポテンシャルが酸素側(μce-)と水素側(μae-)で区別されていることに注意を要する。)
上記二つのポテンシャルの式を合わせて電池系全体のポテンシャルの釣り合いを考えると
単体の物質の標準生成ギブズエネルギーは0と約束されているので
となるから、上の式を整理すると、
ここで、この電池の起電力Eは、水素電極の電極電位(φaとおく)に対する酸素電極の電極電位(φcとおく)との差だから、
ここで、Fはファラデー定数である。
ネルンストの提案により標準水素電極の電極電位(φa)は0ボルトと約束されているので、
以上より、酸素の還元反応O2 + 4H+ + 4e- → 2H2Oの標準電極電位は1.229ボルトとなる。
一般的な標準電極電位の求め方
一般に、電極反応におけるギブズエネルギー変化ΔrG0に対応する標準電極電位をE0とおくと、
の関係がある。(は対象となる電気化学反応にともなって移動する電子の数。はファラデー定数)
代表的な標準電極電位
各単体における標準電極電位(V)
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|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Li
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-3.045 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
K
|
-2.925 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Ca
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-2.840 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Na
|
-2.714 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Mg
|
-2.356 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Al
|
-1.676 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Zn
|
-0.763 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Fe
|
-0.440 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Ni
|
-0.257 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Sn
|
-0.138 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Pb
|
-0.126 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
0.000
|
H
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
0.340
|
Cu
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
0.796
|
Hg
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
0.799
|
Ag
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.188
|
Pt
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.520
|
Au
|
半反応式と標準電極電位
測定方法
ある酸化還元反応の標準電極電位は、基準電極(参照電極)との電位差として、サイクリックボルタンメトリー等によって測定できる。ただし、溶媒や電極による影響を受け、またネルンストの式にしたがって水素イオン指数によっても変化する。
標準電極電位を使った起電力の求め方
ある全反応の は、それを構成している還元半反応の の差に等しい。したがって、2つの還元半反応を組み合わせた全反応のの値は、それらの半反応のの差に等しい。例えば、銅と亜鉛を使った電池の起電力は次のように求められる。
それぞれの還元半反応式は、
である。この差をとると、
であるので、この反応は自発的に起こる。
関連項目
標準電極電位
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 13:24 UTC 版)
化学電池は2つの電極の活物質の電位差によって起電力が生じる。各々の活物質はその物質の濃度や温度などで電極電位が変わるが、標準的な状態での電極電位はそれぞれ一定の値であることが知られている。標準的な状態での電極電位を下表で示す。標準的な状態とは25℃での活量1での値となる。活量が1とは、物質の濃度を示しており、固体と液体はそのまま全量、気体は1気圧であり、溶質はモル濃度が活量にあたる。濃度や温度による電極電位の変動量はネルンストの式によって算出できる。 負極電極電位(V)正極電極電位(V)Li+/Li -3.040 Cu2+/Cu 0.347 Zn2+/Zn -0.763 Fe3+/Fe2+ 0.771 Cd2+/Cd -0.403 Br3-/Br- 1.087 Pb2+/Pb -0.126 O2/H2O 1.229 CdSO4/Pb -0.355 Ce4+/Se3+ 1.61 H+/H2 -0.000 PbO2/PbSO4 1.685 H2SO3/CH3OH 0.044 MnO2/MnOOH 0.15 ZnSO22-/Zn -1.22 Ag2O/Ag 0.342 H2/OH- -0.828 O2/OH- 0.342 Cd(OH)2/Cd -0.825 NiOOH/Ni(OH)2 0.49
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