神奈川県 概要

神奈川県

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/31 22:55 UTC 版)

概要

神奈川県は関東地方の南西部に位置する県で首都圏の一角を成し、元の相模国全域と武蔵国の一部が該当する。面積は2416.33平方キロメートル(km2)で国土の約0.6%を占め[3]、これは都道府県中第43位の規模である[3][注釈 3]

みなとみらいの夜景

人口は9,214,617人(2024年3月1日現在)[4] で、総人口の約6.9%を占める。

東日本に属するが、場合によっては中日本に分類されることもある。例として県内を通る東名高速道路中央自動車道小田原厚木道路中日本高速道路の管轄である。

横浜市を中心に企業の進出が活発であり、2021年の神奈川県への本社移転数は327社で東京都に次ぐ第2位。転入超過は146社で全国トップとなっている。また、32年連続で県内転入が県外転出を上回っている[5]

県東部の川崎市横浜市は、都市化工業化が進んでおり、東京湾に面した京浜工業地帯の一角を形成する。県西部は緑豊かな丹沢山地から足柄山地箱根山が連なり、酒匂川が流れる足柄平野には小田原城城下町小田原市が開ける。県中央部は相模原市厚木市海老名市などの平野部で都市化工業化が進んでおり、相模川が流れ平塚市から相模湾に注ぐ。県南東部は、海沿いに茅ヶ崎市藤沢市が開け、鎌倉幕府が置かれた鎌倉市から、明治以来の軍港都市・横須賀市がある三浦半島にかけて、三浦丘陵が連なる。

新都心横浜みなとみらい21横浜赤レンガ倉庫元町横浜中華街といった都市部観光地だけでなく、箱根茅ヶ崎江の島といったリゾート地にも恵まれている事から日本全国から観光客が訪れる県になっている。

概史

県域は、古くは相模国の中心である相模湾沿岸部と相模川流域部が栄えた。川崎市と横浜市の大部分を占める武蔵国の領域は、古東海道(矢倉沢往還)沿いと東京湾沿岸を中心に小規模な農漁村が形成された。相模国府は所在地が特定されていないが、現在の平塚市、大磯町、海老名市、小田原市域に置かれていたという説がある。

平安時代から武士団の活動が活発化し、末期には征夷大将軍源頼朝により鎌倉鎌倉幕府が置かれた。鎌倉時代の始まりである(開幕の時期は諸説あり)。鎌倉には鶴岡八幡宮を筆頭に神社仏閣が多数建立され、鎌倉五山も整備され、武士の都として機能した。その後、執権北条氏によって運営された鎌倉幕府は元寇の恩賞を分け与えられず、全国的に反乱を招く。幕府自体も新田義貞の鎌倉攻めにより滅亡。足利尊氏による室町時代へと時代は移る。室町時代には鎌倉公方が東の将軍府として置かれるも、政権争いが絶えず、最終的に鎌倉公方茨城県古河に移り古河公方となり、武家の都・鎌倉の終焉を迎える。その際に鎌倉の街並みも破壊され、現在に至る街の連続性は失われた。

戦国時代には北条早雲が相模・伊豆を切り取り、日本最初の戦国大名となる。その後5代続いた後北条氏の拠点である小田原は隆盛を誇り、関東制覇に邁進した。当時の小田原城下の発展は西の山口に対し、東の小田原とまで言われた。日本最初の上水道も、この時代に整備された。しかし豊臣秀吉の快進撃の前に降伏を余儀なくされ、戦国大名としての北条氏は断絶に至った。秀吉の全国制覇の際、北条氏の領土は徳川家康に移り、家康は拠点を小田原から江戸に移した。その後江戸時代には江戸幕府の置かれた江戸への交通路として東海道が整備され、東京湾沿岸部の開発が進んだ。県域には幕府直轄の代官支配地と旗本御家人の所領が多く配された。江戸時代中期以降、県域内に本拠を置いた大名領()は西部の小田原藩(小田原市)及び規模の小さい2藩(荻野山中藩(厚木市中荻野)、武蔵金沢藩(六浦藩、横浜市金沢区))のみであるが、一方で県域外に本拠を置く大名の飛地領が多く置かれ(烏山藩栃木県那須烏山市)、佐倉藩千葉県佐倉市)、西大平藩愛知県岡崎市)など)、県域内の支配はモザイク状に細分されていた。幕末には横浜港が開港され、明治時代に入ると東京湾沿岸部を中心として発展した。

戦前・戦後を通じて、京浜工業地帯周辺における商工業の発展と東京一極集中に伴うベッドタウン化などにより人口も増加したため、県内には過疎地域自立促進特別措置法によって指定された過疎地域が長らく存在しなかった。しかし、2017年3月31日付で足柄下郡真鶴町が過疎地域に指定された[6]。また、後述(#人口)のように横須賀市や小田原市、三浦市など人口の停滞ないし減少が顕著な地域もあり、また足柄上地域などに中山間地域を抱えている点に他都道府県と変わりはない。

名称

県名は東海道筋に古くから栄えた宿場町神奈川宿(現・横浜市神奈川区)、および幕末戸部町(現・横浜市西区紅葉ケ丘)に置かれた神奈川奉行所に由来する[7]。これら「神奈川」の由来は、京急本線京急東神奈川駅近くに流れていた長さ300メートルほどの小川の名前からで、現在は道路になっている[8]


注釈

  1. ^ 海上を隔てて隣接。
  2. ^ 「神奈川県の色」(1978年1月31日制定)によれば「青(日本工業規格乙8721準拠の標準色票2.5PB 5/10)」。愛称は「かながわブルー」。
  3. ^ 前後は、42位が佐賀県で、44位が沖縄県
  4. ^ 高座(たかくら)・愛甲(あゆかわ)・余綾(よるき)・大住(おほすみ)・足上(あしのかみ)・足下(あしのしも)・鎌倉(かまくら)・御浦(みうら)(『延喜式』による)
  5. ^ 橘樹(たちばな)・都筑(つづき)・久良(くらき)(延喜式による)
  6. ^ 大磯町国府本郷辺りと推定されている。
  7. ^ 当初は陸奥出羽を含めた十二カ国であったが、奥州探題設置に伴い権限低下。
  8. ^
    ともに生きる社会かながわ憲章
    一 私たちは、あたたかい心をもって、すべての人のいのちを大切にします
    一 私たちは、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します
    一 私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します
    一 私たちは、この憲章の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組みます
    出典:[38]
  9. ^ 以前は福岡県福岡市北九州市の2市が100万人を上回っていたが、2005年以降北九州市の人口は100万人を割っている。
  10. ^ 京王相模原線には都営の、小田急小田原線・多摩線には東京メトロの、東急東横線(みなとみらい線を含む)には東武西武、東京メトロの、東急目黒線には東京メトロ、都営、埼玉高速鉄道の、東急田園都市線には東武、東京メトロの、京急本線には京成、都営、千葉ニュータウン鉄道北総の車両が乗り入れている。

出典

  1. ^ 「平成19年10月1日現在推計人口」、総務省統計局。
  2. ^ 平成17年国勢調査・第1次基本集計結果 「結果の概要」(表2 都道府県別主要指標)、総務省統計局。
  3. ^ a b 「都道府県別面積」(平成19年度面積)、国土地理院。
  4. ^ 「神奈川県の人口と世帯」、神奈川県統計センター。
  5. ^ 神奈川県の「転入超過」、2021年は2年ぶりの全国トップに (PDF) 帝国データバンク 横浜支店。
  6. ^ 過疎市町村Map・神奈川県、全国過疎地域自立促進連盟。
  7. ^ 「情報誌『有鄰』第401号『なぜ横浜県ではなく神奈川県なのか』」樋口雄一有隣堂、平成13年4月10日。
  8. ^ 『かながわの川』神奈川新聞社かなしん出版、10ページ
  9. ^ 全国都道府県市区町村別面積調 国土地理院 2013年11月28日閲覧
  10. ^ 神奈川県 市区町村の役所・役場及び東西南北端点の経度緯度(世界測地系) 国土地理院 2013年2月22日閲覧
  11. ^ 神奈川県内の市町村 - 神奈川県ホームページ
  12. ^ a b c d e f g h i 県央地域県政総合センター”. 神奈川県. 2021年1月10日閲覧。
  13. ^ 神奈川考古学会 2010, pp. 62–75.
  14. ^ かながわ考古学財団 2010, pp. 8–9.
  15. ^ a b 平塚市博物館 2005, pp. 42–43.
  16. ^ 小田原市文化部文化財課. “千代寺院跡(千代廃寺)”. 小田原市. 2022年5月21日閲覧。
  17. ^ 平塚市社会教育課. “「国厨」墨書土器他 稲荷前A遺跡第1地点 1号竪穴住居址出土資料一括”. 平塚市. 2022年5月21日閲覧。
  18. ^ かながわ考古学財団 2010, pp. 66–67.
  19. ^ 神奈川考古学会 2015, p. 44.
  20. ^ 大貫英明「都の支配と自立への道」 神崎彰利・大貫英明・福島金治・西川武臣『神奈川県の歴史』山川出版社、2001年、42-45頁
  21. ^ 西川武臣「国際社会への船出とかわる世の中」 神崎彰利・大貫英明・福島金治・西川武臣『神奈川県の歴史』山川出版社、2001年、254-256頁
  22. ^ 佐野真由子『オールコックの江戸』中公新書、2003年、ISBN 9784121017109
  23. ^ 慶応4年太政官布告第178 - 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
  24. ^ 慶応4年太政官布告第178欄外 - 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
  25. ^ 明治元年太政官布告第482 - 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
  26. ^ 明治元年太政官布告第778 - 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
  27. ^ 県名の由来・立庁記念日 - 神奈川県
  28. ^ 明治4年太政官布告第594号 - 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
  29. ^ 明治5年8月19日太政官 - 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
  30. ^ 明治9年太政官布告第53号 - 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
  31. ^ 西川武臣「国際社会への船出とかわる世の中」 神崎彰利・大貫英明・福島金治・西川武臣『神奈川県の歴史』山川出版社、2001年、270-271ページ
  32. ^ 神奈川県管内図(明治24年) - 藤沢市教育委員会
  33. ^ 東京府及神奈川県境域変更ニ関スル法律(明治26年法律第12号)
  34. ^ 土浦、減水の後に飢餓の恐怖『東京朝日新聞』(昭和13年7月2日夕刊)『昭和ニュース辞典第6巻 昭和12年-昭和13年』p224
  35. ^ 死者・不明百人越す、関東各地の被害『東京日日新聞』(昭和13年9月3日夕刊)『昭和ニュース辞典第6巻 昭和12年-昭和13年』p224
  36. ^ 東京湾、三浦半島などの海水浴に制限令(昭和19年8月11日 毎日新聞(東京))『昭和ニュース辞典第8巻 昭和17年/昭和20年』p68 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  37. ^ 神奈川県下の空襲被害状況”. 神奈川県警. 2022年8月16日閲覧。
  38. ^ a b ともに生きる社会かながわ憲章 神奈川県 2021年10月10日閲覧。
  39. ^ 神奈川県 (2018年5月24日). “神奈川県議会 県議会の歴史 歴代議長・副議長一覧” (日本語). 神奈川県. http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/p80213.html 2018年9月19日閲覧。 
  40. ^ 神奈川県議会会派別議員数
  41. ^ 神奈川県 (2018年4月11日). “神奈川県議会議員の定数、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関する条例の改正について” (日本語). 神奈川県. http://www.pref.kanagawa.jp/docs/em7/cnt/f5/p807451.html 2018年9月19日閲覧。 
  42. ^ かながわインターネット放送局
  43. ^ 総務省|選挙の種類”. 総務省. 2018年9月19日閲覧。
  44. ^ 平成20(2008)年度神奈川県県民経済計算
  45. ^ 国税庁 酒税関係統括表
  46. ^ 放送普及基本計画第2の2の(1)のウの規定による一般放送事業者の行う超短波放送のうちの外国語放送を行う放送局の放送対象地域(総務省)
  47. ^ TOKYO FM× 東京タワー頂上新アンテナ送信記念 TOWER OF LOVE - TOKYO FM 80.0MHz
  48. ^ J-WAVE会社情報
  49. ^ 湘南マジックウェィブとは”. SEISA コミュニティ FM放送局. 2017年10月12日閲覧。
  50. ^ グラウンド紹介”. 横浜キヤノンイーグルス. 2021年8月9日閲覧。
  51. ^ 県の観光客数が4年連続で過去最高に、商工労働部商業観光流通課観光室、2009年(平成21年)6月9日発表。
  52. ^ 旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究VIII(2007年度旅行・観光消費動向調査結果と経済効果の推計)”. 国土交通省 (2008年3月). 2013年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月28日閲覧。
  53. ^ 神奈川県のインバウンド需要”. 訪日ラボ. 2020年6月26日閲覧。
  54. ^ 神奈川県






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