ふじはこねいず‐こくりつこうえん〔ふじはこねいづコクリツコウヱン〕【富士箱根伊豆国立公園】
富士箱根伊豆国立公園
広大な裾野から優美な曲線を描いて次第に高まり、白雪をいただく山頂が鮮烈に空を截って立つ。富士山は多くの日本人にとって、単に日本の中心部に立つ最高峰という以上に、心の奥深くに根ざし、精神的な意味をも持っている山である。だが、これは決して日本人だけの感覚ではないようだ。幕末に日本に来たイギリスの外交官ミットフォードは、着任の翌日に横浜から富士山を見たときの名状しがたい興奮が、生涯消えることはないだろうと記している(『ある英国外交官の明治維新』による)。富士は、日本の象徴として世界に通じる名山なのである。
人気ナンバーワンの公園
日本の国立・国定公園中、最も訪れる人の多い公園である。この地域については、明治44年(1911)、帝国議会で富士山を中心とする地域を国設の公園にしようとする「国設大公園設置ニ関スル建議」が提出され、可決された経緯がある。国立公園設置に向けての、国レベルでの最初の動きであるが、実現したのは昭和11年であった。このときの区域は富士山と箱根地区のみで、名称も富士箱根国立公園であり、その後30年に伊豆半島を加えて今の名称になった。また、39年には国定公園だった伊豆七島を編入している。
富士山(3,776m)は成立の新しい火山で、近世まで活動していたため、高山植生は乏しい。ハイマツもなく、低木状のカラマツが高所まで登っている。山頂への登山道は4本あるが、富士スバルラインと富士山スカイラインが標高2,300〜2,400mの5合目までつけられているので、一般にはこの5合目から出発することが多い。
北麓の青木ヶ原樹海は貞観6年(864)の噴火の際、流れ出した溶岩流の上に成立している。ツガ、ヒノキ、ミズナラ、ブナなどからなる森林で、地表には溶岩樹形や洞穴が見られる。北麓の富士五湖も火山活動によって生まれた湖沼群である。また、西南から西麓にかけては白糸の滝や田貫(たぬき)湖、朝霧高原がある。
箱根地域
[磯の観察会]
箱根火山群は三重式火山である。新旧二つの外輪山をつくる金時山や明神ヶ岳など、中央火口丘の神山(1,438m)や駒ヶ岳など、噴気のある大涌谷(おおわくだに)、火口原の仙石原、泥流によりせき止められた芦ノ湖と、典型的な火山地形がコンパクトに集合している。湯本、強羅(ごうら)、塔ノ沢など、温泉も豊富である。
箱根は古くは修験道の地であり、また、東西交通の要衝であったが、風光のすぐれていることは江戸時代から知られていた。明治になると、横浜に居留する外国人に保養地としての評価が定まり、発展した。戦後の復興期には有料道路、ロープウェイをはじめ、宿泊施設、ゴルフ場などが急速に増えた。日本有数の保養地である。
伊豆地域
伊豆半島は、海岸線と天城連峰などが区域に含まれる。相模湾に面する半島の東岸は海岸線が単調で変化に乏しいが、城ヶ崎海岸や南端の石廊(いろう)崎には、海食崖が発達している。一方、駿河湾に面する西岸は、海食崖や砂浜、溺れ谷などがあって島も多く、変化に富んでいる。波勝(はがち)崎の海食崖は高さ250mに達し、堂ヶ島は岩礁の多い断崖である。公園内や近隣に伊東、熱川(あたがわ)、湯ヶ島など温泉が多い。
天城連峰は万三郎岳(1,405m)を最高峰とし、万二郎岳、遠笠山などを連ねる山群である。天城峠の東側にはブナ林があり、八丁池はモリアオガエルの生息地として知られる。
伊豆諸島は大島から八丈島までの伊豆七島で、いずれも火山島であり、大島の三原山と三宅島の雄山(おやま)は今も活動している。各島とも温暖な気候と豊かな海が魅力である。御蔵(みくら)島南岸には、高さ480mに達する日本最大級の海食崖がある。
パークボランティアの活動
国立公園で、来訪者にマナーの向上を呼びかけ、自然観察を手助けしたり、美化清掃活動や施設の簡単な維持補修などの作業に広く大勢の人の協力を求めるため、環境省では昭和60年からパークボランティアの制度を始めた。
現在、全国の国立公園の39地区で、1,800名以上が活動している。パークボランティアは各地方環境事務所が募集・登録し、地区の自然保護官による指導の下に、多岐にわたる活動を行っている。
関連リンク
- 富士箱根伊豆国立公園 (環境省ホームページ)
富士箱根伊豆国立公園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/21 16:56 UTC 版)
富士箱根伊豆国立公園 Fuji-Hakone-Izu National Park | |
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指定区域 | 北緯34度40分00秒 東経139度00分00秒 / 北緯34.66667度 東経139.00000度座標: 北緯34度40分00秒 東経139度00分00秒 / 北緯34.66667度 東経139.00000度 |
分類 | 国立公園 |
面積 | 121,695 ha[4] |
指定日 | 1936年2月1日 |
運営者 | 環境省 |
年来園者数 | 11,250万人(2010年)[5] |
事務所 | 関東地方環境事務所 |
事務所所在地 |
〒330-6018 埼玉県さいたま市中央区新都心11-2 明治安田生命さいたま新都心ビル18階 |
公式サイト | 富士箱根伊豆国立公園(環境省) |
富士箱根伊豆国立公園(ふじはこねいずこくりつこうえん)は、神奈川県、静岡県、東京都、山梨県にまたがる国立公園である。
概要
県 | 静岡県 | 山梨県 | 東京都 | 神奈川県 | その他[注釈 1] |
---|---|---|---|---|---|
面積比 | 38.4% | 30.2% | 22.6% | 8.5% | 0.3% |
- 年間利用者数:1億人以上/年
- 施設:
- 箱根ビジターセンター
- 田貫湖ふれあい自然塾
-
1949年に発行された記念切手
歴史
- 1936年2月1日、富士箱根国立公園として十和田国立公園(現・十和田八幡平国立公園)、吉野熊野国立公園、大山国立公園(現・大山隠岐国立公園)とともに指定。
- 1955年3月15日、伊豆半島地域が編入、現在の富士箱根伊豆国立公園に名称が変更。
- 1964年7月7日、伊豆諸島地域に指定されていた国定公園「伊豆七島国定公園(1955年4月1日指定)」が編入。
- 2017年3月30日、富士箱根伊豆国立公園指定80周年記念事業の一環として「富士山がある風景100選」を選定。→詳細は「富士山がある風景100選」を参照
主な指定地
「富士山」「箱根」「伊豆半島」「伊豆諸島」の4つのエリアで構成され、火山活動に由来する山・湖・島などの自然が指定されている。
富士山地域
富士山とその火山活動による地形。
自然公園法により特別地域のうち特に重要な区域を「特別保護地区」といい、富士山地域は以下が該当する。
自治体 | 面積(ha) |
---|---|
山梨県富士吉田市内 | 533 |
西八代郡上九一色村内 | 1,133 |
南都留郡山中湖村内 | 57 |
南都留郡富士河口湖町内 | 6 |
南都留郡鳴沢村内 | 1,500 |
静岡県富士宮市内 | 463 |
富士市内 | 38 |
御殿場市内 | 287 |
駿東郡小山町内 | 220 |
富士山頂浅間神社奥宮境内地の全部 | 405 |
箱根地域
箱根山とその火山活動による地形。
伊豆半島
切り立った海岸線。第四紀火山が浸食されて形成された山稜や、活動中の伊豆東部火山群による地形。
- 東部
- 西部
伊豆諸島の北部
ビジターセンター
利用者数は2008年(平成20年)[9]。
センター名 | 設置者 | 所在地 | 利用者数(人) |
---|---|---|---|
箱根ビジターセンター | 環境省 | 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根164 | 71,660 |
田貫湖ふれあい自然塾 | 静岡県富士宮市佐折633-14 | 116,876 | |
八丈ビジターセンター | 東京都 | 東京都八丈町大賀郷2843 | 23,546 |
山梨県立富士ビジターセンター | 山梨県 | 山梨県南都留郡富士河口湖町船津6663-1 | 265,700 |
その他
静岡県賀茂郡南伊豆町の奥石廊には伊豆半島で唯一[10]、および日本全国でも有数のユウスゲの群生地があり[11]、一帯は「奥石廊ユウスゲ公園」として整備されている[12]。
脚注
注釈
出典
- ^ “富士箱根伊豆国立公園の区域図(富士山・箱根地域)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “富士箱根伊豆国立公園の区域図(伊豆半島地域)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “富士箱根伊豆国立公園の区域図(伊豆諸島地域)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “富士箱根伊豆国立公園の公園紹介”. 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “国立公園の利用者数(公園、年次別)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ 環境省 基礎情報 富士箱根伊豆国立公園
- ^ 富士山地域 - 環境省 (PDF)
- ^ a b c 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 日本の第四紀火山 本州の火山
- ^ 環境省自然ふれあい推進室"表II-9 国立公園内ビジターセンター等利用者数"自然公園等利用者数調(2013年3月18日閲覧。)
- ^ 『静岡新聞』1998年7月11日朝刊13頁「海風に揺れるかれんな花―南伊豆・奥石廊のユウスゲが見ごろ(ウオッチング)」(静岡新聞社)
- ^ 『静岡新聞』1999年7月7日朝刊17頁「夏の夕を彩る、かれんな花 ユウスゲ花壇が満開に―南伊豆」(静岡新聞社)
- ^ “奥石廊ユウスゲ公園”. 南伊豆町ホームページ. 南伊豆町 (2002年4月25日). 2024年1月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月1日閲覧。
関連項目
外部リンク
「富士箱根伊豆国立公園」の例文・使い方・用例・文例
富士箱根伊豆国立公園と同じ種類の言葉
国立公園に関連する言葉 | 大山隠岐国立公園 大雪山国立公園 富士箱根伊豆国立公園 小笠原国立公園 山陰海岸国立公園 |
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蓮生寺公園 秋留台公園 富士箱根伊豆国立公園 東京都立奥多摩湖畔公園 山のふるさと村 富士森公園 |
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