あしずりうわかい‐こくりつこうえん〔‐コクリツコウヱン〕【足摺宇和海国立公園】
足摺宇和海国立公園
[大堂海岸]
足摺岬から臼碆(うすばえ)の付近は、黒潮が陸地に接近しているところである。岬に立てば、濃紺の流れが渦を巻くさまに、その勢いを感じることができる。流量が毎秒5,000万トンと聞いても数字が大きすぎて実感を持てない。しかし、地球規模の壮大な物質循環を、そのわずかな片鱗でも眼前にしていることに、想像力がふくらむ。
足摺地域
[足摺岬]
黒潮の洗う四国西南部の海岸と、内陸の滑床(なめとこ)渓谷などを含む公園である。昭和47年、国定公園から国立公園に格上げ指定された。
南部地域は隆起海岸で、断崖が連続する豪壮な景観である。これに対して北部は沈降海岸で、出入りの多い繊細な景観が展開する。
足摺岬は四国最南端の地である。岬から西方の臼碆にかけては、高さ80〜100mの断崖となり、白山洞門などの海食洞が多い。段丘の上はウバメガシ、ツバキ、タブノキなどの照葉樹林で、ツバキのトンネルを行く歩道がある。背後の台地上にある金剛福寺は空海の創建である。
さらにその西の竜串海岸は、「大竹小竹」、「夢の浮橋」、「蛙の千匹連れ」などと名付けられた奇勝が連続する。崩れやすい砂岩が海食や風食を受けてできたものである。この地区の海中には、シコロサンゴの群体をはじめとする造礁サンゴが多く、華やかな魚類とともに亜熱帯的な海中景観をつくっており、海中展望塔やグラスボートでも探勝できる。しかし、近年サンゴ類の衰退が見られることから、サンゴの海を取り戻すための自然再生事業が着手されている。
また、見残は、空海も見残した難所というところからの命名であり、今も車では行けない。ここには波形がそのまま化石になった化石漣痕(れんこん)などの珍しい構造が見られ、奇岩も多い。
これより北部は再び断崖が現れ、大月半島南岸の大堂海岸などに顕著である。半島の先にある沖ノ島には、七つ洞などの景勝があるが、造礁サンゴがあり、ダイバーや釣り人に人気がある。海中公園地区が竜串や沖ノ島などに指定されている。
宇和海地域
愛媛県側の海岸は、島嶼(とうしょ)の多い宇和海の南部、宇和島市以南が公園に含まれる。一帯は典型的なリアス式海岸で、出入りの多い海岸線が半島と湾入を交錯させ、沖合に多くの島を配する。景勝地としては、奇岩の多い天嶬鼻(てんぎばな)の断崖や鹿島の洞窟などがある。日振(ひぶり)島は、10世紀に反乱を起こした藤原純友が本拠地とした島である。
この地区の海中にも造礁サンゴがあり、愛南町の鹿島周辺に宇和海海中公園地区が指定されている。水中展望船など、さまざまな探勝の手段がある。
内陸部に3ヵ所ある飛び地の一つ、滑床渓谷は目黒川の上流にある延長約12kmの渓谷である。花崗岩の平滑な河床を持ち、千畳敷、出合滑などの景勝がある。雪輪(ゆきわ)の滝はこの渓谷の白眉で、幅20m長さ80mの1枚岩を滑り落ちている。
足摺から室戸にかけての地域は、ニホンカワウソの生息が最後に確認されていた地域である。かつて全国にごくふつうに生息し、親しまれてきたこの動物は、明治以降急激に減少してしまった。まだわずかな個体が、生存している可能性はまったくないわけではないが、確実な目撃記録は、昭和54年に須崎市新荘川で死体が発見されて以来、もう長い間絶えたままだ。賢く警戒心の強いこのけものが、まだ人目を忍んでひっそりと生き続けていることを、また、これからも生き続けてくれることを願うのみである。
関連リンク
- 足摺宇和海国立公園 (環境省ホームページ)
足摺宇和海国立公園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/26 21:06 UTC 版)
足摺宇和海国立公園 Ashizuri-Uwakai National Park | |
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指定区域 | 北緯32度43分24秒 東経133度1分12秒 / 北緯32.72333度 東経133.02000度座標: 北緯32度43分24秒 東経133度1分12秒 / 北緯32.72333度 東経133.02000度 |
分類 | 国立公園 |
面積 | 11,345ha[3] |
前身 | 足摺国定公園 |
指定日 | 1972年11月10日 |
運営者 | 環境省 |
年来園者数 | 196万人(2010年)[4] |
事務所 | 中国四国地方環境事務所 |
事務所所在地 |
〒700-0907 岡山県岡山市北区下石井1-4-1 岡山第2合同庁舎11階 |
公式サイト | 足摺宇和海国立公園(環境省) |
足摺宇和海国立公園(あしずりうわかいこくりつこうえん)は、四国南西部、高知県足摺岬~愛媛県宇和海沿岸に至る国立公園である。面積は、11,345ha。
概要
元々は「渭南海岸」という名称で検討されていたが、「足摺」の名称で指定された。
指定区域の殆どを海岸が占めるが、滑床渓谷や篠山、法華津峠といった内陸部にも指定地が点在している。
また、海中公園が多く、竜串、樫西、勤崎、尻貝、宇和海、沖ノ島の6ヶ所が指定されている。
歴史
景勝地
ビジターセンター
利用者数は2008年(平成20年)[5]。
センター名 | 設置者 | 所在地 | 利用者数(人) |
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高知県立足摺海洋館[6] | 高知県 | 高知県土佐清水市三崎4032 | 44,695 |
脚注
- ^ “足摺宇和海国立公園の区域図 (足摺地域)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “足摺宇和海国立公園の区域図 (宇和海地域)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “足摺宇和海国立公園の公園紹介”. 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “国立公園の利用者数(公園、年次別)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ 環境省自然ふれあい推進室"表II-9 国立公園内ビジターセンター等利用者数"自然公園等利用者数調(2013年3月16日閲覧。)
- ^ 高知県立足摺海洋館ホームページ
関連項目
外部リンク
「足摺宇和海国立公園」の例文・使い方・用例・文例
- 足摺宇和海国立公園という国立公園
足摺宇和海国立公園と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
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