ちちぶたまかい‐こくりつこうえん〔ちちぶたまかひコクリツコウヱン〕【秩父多摩甲斐国立公園】
秩父多摩甲斐国立公園
[両神山]
首都圏南部に住む人が最初に登山を始める対象として、また、週末の軽いハイキングから沢登りや主稜線の縦走まで、さまざまなレベルで親まれているのが、関東平野の西を限るこの公園と、丹沢国定公園の山々である。都心の高層ビルから、どこまでも続く家並みの彼方に遠く望まれるこれらの山々は、見るたびに郷愁にも似た思いを呼び起こすものだ。
主稜線と前衛の山々
[秋の昇仙峡]
公園区域は、奥多摩と奥秩父と呼ばれる山域を中心に、秩父山地の主要部を含む。昭和25年に秩父多摩国立公園として指定され、平成12年に今の名称に変更された。
地質は東部では、砂岩や石灰岩などの堆積岩、南西部は花崗岩などの火成岩からなる非火山性の山地である。高度は、最も高い奥秩父の主稜線は2,400〜2,600mあり、主峰の金峰(きんぷ)山(2,599m)をはじめ、甲武信(こぶし)ヶ岳、国師(こくし)ヶ岳、雲取山などが連なり、最高峰は北奥千丈(おくせんじょう)岳(2,601m)である。この山域の山は、多くが山頂か、その直下まで樹林に覆われているが、岩が露出し、岩峰が林立する瑞牆(みずがき)山が西端にある。東端の三峰(みつみね)山は尾根上に三峰神社がある。
また、三峰山の西北には離れて、特徴のある山容の両神山がある。
主稜線の前衛となる多摩川上流部の奥多摩と呼ばれる一帯は、御岳(みたけ)神社のある御岳山をはじめ、大岳山、御前山、川苔(かわのり)山、三頭(みとう)山など、西が高く東に向かって次第に低くなる1,000〜1,500mの稜線を連ねる。稜線の起伏はさほど大きくないが、山腹の傾斜はわりあい急な山々が多く、ポピュラーな登山コースとなっている。
この地域は多摩川、荒川、千曲(ちくま)川、富士川の源流にあたり、多摩川上流部は、東京都の水源林の役割を果たしている。多摩川やその支流の秋川、奥多摩湖などでは水辺で遊ぶ人も多く、キャンプ場などの施設が多い。また、南西部の花崗岩地域には、断崖に囲まれた深い渓谷があり、笛吹(ふえふき)川西沢や御岳(みたけ)昇仙峡(しょうせんきょう)など変化に富んだ景観をつくっている。
人工林と自然林の割合
[日原鍾乳洞]
植生は、山麓部は広くスギ、ヒノキ、カラマツの人工林に置き換えられており、公園区域内の人工林の比率も40%以上と高い。しかし、中腹以上にはブナ、イヌブナ、ツガなどの、亜高山帯にはシラビソやオオシラビソなどの自然林が広がっている。標高が比較的低いため、高山帯は狭く、金峰山から国師ヶ岳にかけて、わずかにハイマツ群落があるだけである。また、日原(にっぱら)など石灰岩地域には、鍾乳洞があり、チチブミネバリなど、この地質に固有の植物が見られる。また、比較的急峻で深い谷と自然林は、動物たちのよいすみかとなり、ツキノワグマ、カモシカなどの哺乳類や、クマタカをはじめとする多くの鳥類が生息している。
峠と山里
この公園の魅力として、稜線だけでなく、峠や山里を歩くこともあげられよう。山麓は、どこも人の息づかいが感じられる。秩父と信州を結ぶコメツガの森に覆われた十文字峠、中里介山(なかざとかいざん)の小説でも有名な大菩薩(だいぼさつ)峠、さらには雁坂峠、木賊(とくさ)峠、信州峠など、昔からの生活道であるが、近代登山の黎明期から岳人に好んで歩かれ、今もすぐれたハイキングコースである峠も多い。
旧街道に沿うひなびた集落や、急斜面にはりつくように人家と畑が散在する山村のたたずまいも、この地域の山に親しんだ人には、原風景として心に刻み込まれているのではないだろうか。
関連リンク
- 秩父多摩甲斐国立公園 (環境省ホームページ)
秩父多摩甲斐国立公園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/23 03:08 UTC 版)
秩父多摩甲斐国立公園 Chichibu-Tama-Kai National Park |
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指定区域 | 北緯35度52分08秒 東経138度56分45秒 / 北緯35.86889度 東経138.94583度座標: 北緯35度52分08秒 東経138度56分45秒 / 北緯35.86889度 東経138.94583度 |
分類 | 国立公園 |
面積 | 126,259ha[2] |
指定日 | 1950年7月10日 |
運営者 | 環境省 |
年来園者数 | 1,430万人(2010年)[3] |
事務所 | 関東地方環境事務所 |
事務所所在地 | 〒330-6018 埼玉県さいたま市中央区新都心11-2 明治安田生命さいたま新都心ビル18階 |
公式サイト | 秩父多摩甲斐国立公園(環境省) |
秩父多摩甲斐国立公園(ちちぶたまかいこくりつこうえん、英語: Chichibu Tama Kai National Park)は、北奥千丈岳を最高峰とする奥秩父山塊を中心とする、埼玉県、山梨県、長野県、東京都に跨る国立公園。面積126,259ha。
日本百名山に数えられる金峰山、瑞牆山、大菩薩嶺、雲取山や、渓谷美で知られる西沢渓谷、東沢渓谷や御岳昇仙峡などがよく知られる。また三峰山(三峯神社)や御岳山(武蔵御嶽神社)でも有名。
概要
奥秩父山塊を中心とした埼玉、東京、山梨、長野の一都三県に跨る国立公園で、1950年(昭和25年)7月10日に国立公園に指定された。指定当初より秩父多摩国立公園の名称であったが、同公園の指定エリア126,259ヘクタール中の約37パーセント、46,834ヘクタールと最大の面積を占める山梨県の名称が冠されていないことから、名称変更の要望が山梨県により行われ、2000年(平成12年)8月10日に現在の秩父多摩甲斐国立公園に名称が変更された。
針葉樹を主体とする深い原生林と、西沢渓谷、御岳昇仙峡などの清流周辺の自然環境の美しさについて、大正から昭和にかけ活躍した登山家田部重治の著書により、緑の渓谷美としてその魅力を広く世に知らされた。
経緯
- 1950年7月10日 - 秩父多摩国立公園として、国立公園に指定される。
- 1955年3月30日 - 特別地域の指定及び主な利用計画が決定される。
- 2000年8月10日 - 秩父多摩国立公園から秩父多摩甲斐国立公園に名称が変更される。
画像
秩父多摩甲斐国立公園の風景
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特別名勝 御岳昇仙峡 覚円峰
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西沢渓谷七ツ釜五段の滝
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金峰山
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瑞牆山
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大菩薩嶺
ビジターセンター
利用者数は2008年(平成20年)[4]。
センター名 | 設置者 | 所在地 | 利用者数(人) |
---|---|---|---|
三峰ビジターセンター | 埼玉県 | 埼玉県秩父市三峰8-1 | 32,000 |
山のふるさと村ビジターセンター | 東京都 | 東京都西多摩郡奥多摩町川野1740 | 97,793 |
御岳ビジターセンター | 東京都青梅市御岳山38-5 | 63,751 | |
奥多摩ビジターセンター | 東京都西多摩郡奥多摩町氷川171-1 | 31,530 |
関連項目
脚注
- ^ “秩父多摩甲斐国立公園の区域図” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “秩父多摩甲斐国立公園の公園紹介”. 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “国立公園の利用者数(公園、年次別)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ 環境省自然ふれあい推進室"表II-9 国立公園内ビジターセンター等利用者数"自然公園等利用者数調(2013年3月18日閲覧。)
外部リンク
- 秩父多摩甲斐国立公園
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