吉野熊野国立公園とは? わかりやすく解説

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よしのくまの‐こくりつこうえん〔‐コクリツコウヱン〕【吉野熊野国立公園】

読み方:よしのくまのこくりつこうえん

奈良三重和歌山の3県にまたがる国立公園吉野山大峰山大台ヶ原山熊野川熊野灘潮岬などが含まれ熊野信仰南朝史跡が多い。


吉野熊野国立公園

写真:大台ヶ原から望む大峰山脈
大台ヶ原から望む大峰山脈

地図

紀伊山地山並みは広い。谷は深く谷筋平野盆地などの平坦地ほとんどない。この地域日本有数多雨地帯でもあり、全域濃密な森林包まれている。

このような山の深さこそ、熊野信仰を育んだ土壌となった違いない信者全国から集まり紀伊伊勢の2方面から熊野向かった。旧熊野街道いわゆる熊野古道歩く人は、「(あり)の熊野詣でといわれるほど多かった伝えられる

この公園原始性の高い地域ありながら基底には、救済求めた人々の徴(しるし)が、通奏低音のように響いている。

大峰・大台地域

紀伊半島中央部南北に走る大峰山脈から大台おおだい)ヶ原にかけての山地と、その中を深くえぐる熊野川新宮川)とその支流北山川峡谷、さらに尾鷲(おわせ)から潮(しおの)岬にかけての海岸区域とする公園である。昭和11年指定され24年潮岬地区を、40年洞川地区50年鬼ヶ城以北海岸追加した

大峰山脈紀伊半島脊梁のような位置にあり、八剣山(仏経ぶっきょう)ヶ岳・1,915m)を最高峰として壮年期重畳たる山並みが続く。

山脈北端に立つ吉野山は、7世紀役行者えんのぎょうじゃ)の開基以来修験道の地として、また、南北朝時代南朝拠点として知られ史跡が多い。金峯山寺きんぷせんじ)の神木サクラであることから、信者によって全山ヤマザクラ植えられた。一目千本といわれ、花時には壮観である。

大峰山山上ヶ岳・1,719m)は、修験行場中心であり、今も女人禁制通している唯一の山である。吉野山から続く大峰奥駈(おくがけ)道が、峰伝いにはるか南の熊野本宮大社まで延びている。

大台ヶ原大峰山脈東側にあり、高見山から延び台高山脈南端位置する標高1,500m隆起準平原で、年間雨量は約4,800mmと多い。トウヒウラジロモミブナなどの自然林まとまって残っている。

大型台風による倒木契機とした植生の変化や、ニホンジカ増加などの影響森林植生衰退しており、植生回復のための再生事業が手がけられている。北東麓を刻む大杉谷伊勢の宮川の源流部であり、深いV字峡谷をつくり、七ツ釜滝千尋(せんひろ)滝などの瀑布連続する

熊野川流域と海岸部

写真:熊野川の筏下り
熊野川の筏下り

熊野川深い森林地帯を流れる。流域面積が狭いわりに流長が長い水量多く、かつて、伐採した木材を運ぶ筏(いかだ)流しが盛んであった支流北山川には北山峡瀞峡どろきょう)がある。瀞峡は下、上、奥の3部分かれ下瀞瀞八丁どろはっちょう)は、滝が後退してできた深い淵の連続する函状の峡谷である。中部山岳黒部川などとともに日本有数峡谷であり、この公園代表する景勝である。

那智山は、那智勝浦町西北にある妙法山烏帽子(えぼし)山などからなる山域で、熊野三山一つ熊野那智大社中腹にある。平安から鎌倉時代盛んだった熊野信仰中心地であり、大門坂から大社へのコケむした石段石畳の道が古道面影伝えている。

写真:橋杭岩
橋杭岩

神社北方1kmには、那智滝がある。那智川4つの谷にかかる那智四十八滝一の滝で、落差133m、国内屈指の名瀑であり、熊野那智大社別宮・飛滝(ひろう)権現御神体である。その背後には、神域として守られてきたうっそうたる照葉樹林広がり那智原始林呼ばれる三山合わせた一帯は、平成16年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として、吉野・大峰、高野などの霊場熊野古道とともに世界文化遺産登録された。

熊野川新宮市で海に入るが、そこから北へ熊野市までの海岸は、七里御浜呼ばれる礫浜であり、北端鬼ヶ城から北は沈降海岸海岸線出入りが多い。新宮から南には勝浦温泉橋杭(はしくい)岩などがあって、本州最南端の潮岬へと続く。橋杭岩大小40ほどの岩の塔が列柱のように一列並んでいる。

熊野古道

写真:大門坂
大門坂

熊野三社への参詣道は、伊勢から南下する伊勢路紀伊田辺から熊野那智大社海岸回り大辺路(おおへち)、熊野本宮大社への中辺路(なかへち)、高野山から熊野本宮へ向かう小辺路(こへち)などがあり、伊勢路中辺路多く利用された。

い山中を通っていたため、部分的に近代改変免れ、今も石畳の道や王子社(熊野権現末社)の石碑など残っている。昭和53年には、文化庁熊野参詣道を「歴史の道」に指定平成16年には世界文化遺産登録された。

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関連リンク


吉野熊野国立公園

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 04:16 UTC 版)

吉野熊野国立公園
Yoshino-Kumano National Park
指定区域
奈良県三重県和歌山県にまたがる紀伊半島の山岳部、河谷部および海岸部[1][2]
北緯33度47分56秒 東経135度56分24秒 / 北緯33.79889度 東経135.94000度 / 33.79889; 135.94000座標: 北緯33度47分56秒 東経135度56分24秒 / 北緯33.79889度 東経135.94000度 / 33.79889; 135.94000
分類 国立公園
面積 59,798ha[3][4]
指定日 1936年[5]2月1日[4][6]
運営者 環境省
年来園者数 812万人(2010年)[7]
事務所 近畿地方環境事務所
事務所所在地 530-0043
大阪府大阪市北区天満橋一丁目8番75号
公式サイト 吉野熊野国立公園(環境省)
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吉野熊野国立公園(よしのくまのこくりつこうえん)は、奈良県三重県和歌山県紀伊半島3県に跨がる国立公園である。総面積59,798ha[4]、半分以上の区域が奈良県に属する。1936年昭和11年)[5][6]2月1日に指定された[4]

概要

紀伊半島の中央部から南西岸までの山岳・河川・海岸の自然に恵まれた、広大な地域を占める公園。

大きく3つの部分に分かれており、吉野大峯山を中心とする山岳部熊野川とその支流北山川流域からなる河谷部熊野灘枯木灘に面し、那智山一帯を含む海岸部から構成されている。

データ

  • 公園区域:59,798ha(奈良県31,313ha、三重県16,982ha、和歌山県11,503ha)[4]
    • 特別保護地区:4,308ha(奈良県3,475ha、三重県885ha、和歌山県115ha)[4]
    • 特別地域:15,787ha(奈良県6,588ha、三重県4,744ha、和歌山県4,455ha)[4]
    • 普通地域:39,703ha(奈良県21,257ha、三重県11,353ha、和歌山県6,933ha)[4]

自然

山岳部

春の吉野山と金峯山寺(右上)
八経ヶ岳と周辺の山容
大台ヶ原山頂周辺の風景

山岳部は、大きく分けると大峰山脈(大峯山脈)と大台ヶ原一帯(台高山脈)に分けられる。地質的には、主に古生代中生代変成岩などからなる山岳地帯である。

山岳部の北端は、仏教史跡と寺院、の名所として知られる吉野山である。ここから、標高1914.6 m八剣山(仏経ヶ岳)を最高峰として山上ヶ岳大普賢岳弥山釈迦ヶ岳、涅槃岳などが南に連なるが、これらの山々は古来大峯奥駈道と呼ばれる修験道の行場であり、関連する社寺や文化財史跡が多い。なかでも、熊野三山熊野本宮大社熊野速玉大社熊野那智大社)は、世界遺産紀伊山地の霊場と参詣道」に登録(2004年7月1日)されたことで[4]、一層広く知られるようになった。

大台ヶ原は、標高1500 m前後に広がる、日本ではまれな非火山性の隆起準平原で国内でも有数の多雨地帯となっている[8]。広大なブナトウヒなどの原生的な樹林が残るほか[4]シカカモシカなどの大型哺乳類を初め、多くの鳥類両生類昆虫類などが棲息する。シャクナゲの自生地が有名だが、シカによる食害が深刻である。

河谷部

熊野川
瀞八丁

紀伊半島は日本でも有数の多雨地帯であるが、河谷部を構成する熊野川とその支流の北山川も、その源流は大峰山脈・大台ヶ原である。特に北山川は、その中・下流域において激しく浸食と蛇行を繰り返し、深いV字谷を刻む。九里峡から奥の渓谷は瀞峡(どろきょう)の名で名高い。下流から下瀞・上瀞・奥瀞に分かれるが、瀞八丁として知られる下瀞の上流は、国の特別名勝に指定されている。熊野川本流との合流後も、新宮市内の千穂ヶ峯付近まで、侵食崖や岩壁にかかる滝などの景観が続き、訪れる者の目を楽しませる。

海岸部

那智滝
海金剛
円月島

海岸部には、海食や地質活動の結果生じた、変化に富んだ奇観が多数見られる。海岸部の景観は大きく分けると以下の3つの部分に大別できる。尾鷲から鬼ヶ城にかけての主として三重県部分はリアス式海岸をなし、鬼ヶ城から新宮までの七里御浜は直線的で防潮防風の海岸林を備えた礫浜となっている。

新宮から勝浦湾を経て本州最南端の潮岬までは特に屈曲の多いリアス式海岸の景観を見せるとともに、太平洋岸には海蝕地形(海蝕洞海蝕崖)がよく発達しているのを見ることが出来る。

この地域は熊野灘枯木灘を流れる黒潮の影響を受けて温暖である。暖帯常緑広葉樹林照葉樹林)が分布しており、その林床にはリュウビンタイやユノミネシダなど、本来は亜熱帯を本拠とする植物も生育するほどである。

また、串本近辺の海域は海中景観に優れ、1970年(昭和45年)に日本初の海中公園「串本海中公園」(自然公園法の改正に伴い「串本海域公園」に名称変更)として指定された[10]イシサンゴ類や熱帯魚類が見られるほか、とりわけ潮岬の周辺や二木島付近ではサンゴが広範に生息している。

那智勝浦の内陸部にある那智山一帯は、那智原始林の深い自然林を擁し、単一の落差日本最長の那智滝がある。また、那智滝を神体とする自然信仰を基盤とした聖地でもあり、古来の様相を今に伝えている。

2015年平成27年)9月24日に、和歌山県内の二つの県立自然公園(熊野枯木灘海岸県立自然公園、田辺南部白浜海岸県立自然公園)の公園地域が編入された[6][11][12]。これにより、千里の浜(みなべ町)、天神崎神島奇絶峡ひき岩群(田辺市)、三段壁千畳敷志原海岸(白浜町)、江須崎、黒島、枯木灘海岸一帯(すさみ町)などが同公園に含まれた。

観光名所

寺社

温泉

ビジターセンター

利用者数は2008年(平成20年)[13]

センター名 設置者 所在地 利用者数(人)
大台ヶ原ビジターセンター 環境省 奈良県吉野郡上北山村小橡660-1 43,258
宇久井ビジターセンター 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町宇久井830 7,484

関係自治体

奈良県
三重県
和歌山県

画像

切手

脚注

  1. ^ 吉野熊野国立公園の区域図(北部)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
  2. ^ 吉野熊野国立公園の区域図(南部)” (PDF). 環境省. 2016年10月6日閲覧。
  3. ^ 吉野熊野国立公園の公園紹介”. 環境省. 2012年10月6日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j 吉野熊野国立公園 - 奈良県水循環・森林・景観環境部景観・自然環境課
  5. ^ a b 県民の友 令和3年(2021)12月号” (PDF). 和歌山県広報課. p. 4 (2021年10月1日). 2023年3月1日閲覧。
  6. ^ a b c d 広報田辺 平成30年5月号” (PDF). 田辺市企画情報課. p. 2-7 (2018年5月1日). 2023年3月1日閲覧。
  7. ^ 国立公園の利用者数(公園、年次別)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
  8. ^ a b 奈良、三重県境にまたがる「白骨林」がすごい!インスタ映え国立公園”. withnews (2018年1月2日). 2023年3月1日閲覧。
  9. ^ “淡水魚類の研究を通して身近な自然を考えるきっかけに 自分が伝えたいことを直接的・間接的に展示に込める”. 徳島新聞. (2022年8月29日). オリジナルの2022年8月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220829090714/https://www.topics.or.jp/articles/-/758405 2023年3月1日閲覧。 
  10. ^ a b “玄関水槽やデッキ改修 串本海中公園がリニューアルオープン”. 紀伊民報. (2022年4月22日). オリジナルの2022年4月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220422162713/https://www.agara.co.jp/article/194511 2023年3月1日閲覧。 
  11. ^ 【お知らせ】吉野熊野国立公園の大規模拡張・海域公園地区指定に伴う各種行為規制及び許可申請手続きついて”. 環境省近畿地方環境事務所 (2015年10月21日). 2023年3月1日閲覧。
  12. ^ くしもと議会だより 2015年12月号” (PDF). 串本町議会. p. 12 (2015年12月). 2023年3月1日閲覧。
  13. ^ 環境省自然ふれあい推進室"表II-9 国立公園内ビジターセンター等利用者数"自然公園等利用者数調(2013年3月16日閲覧。)

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76% |||||



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