鶴見川とは? わかりやすく解説

鶴見川

いのちと暮らし地球につなぐ鶴見川流域再生ビジョン
鶴見川は、東京都町田市上小山田町にその源を発し多摩丘陵川崎市流れ横浜市の鶴見川多目的遊水地通り大きく蛇行しながら京浜工業地帯鶴見区生麦東京湾注いでます。流域面積235km2流路延長42.5kmの一級河川です。また、流域の形が動物バクの姿に似ていることから、鶴見川流域は「バク流域」としても親しまれています。

鶴見川多目的遊水地(横浜市港北区)
鶴見川多目的遊水地横浜市港北区

河川概要
水系鶴見川水系
河川名鶴見川
幹川流路延長42.5km
流域面積235km2
流域内人184万人
流域関係都県東京都神奈川県

鶴見川流域図
○拡大図
1.鶴見川の歴史
"昔から大雨のたびに洪水氾濫もたらしてきた鶴見川は、川の規模小さく水害を受けやすい地形的条件もあって、ごく最近まで貴重な緑の空間数多く残していました。しかし、昭和40年頃からの急速な都市化によって、現在では、鶴見川は国内でも有数典型的な都市河川となってます。"

江戸時代までの鶴見川〕
丘陵地台地の間を蛇行しながら緩やかな勾配流れる鶴見川は、河床浅く川沿い低くて平らな沖積地連なっている地形的特徴により、昔から大雨のたびに洪水氾濫もたらしてきました
戦国時代末期から江戸時代にかけて、日本各地で有力大名による大規模な治水事業実施され広大な新田開発盛んに行われましたが、鶴見川流域では、水害を受けやすい土地条件など災いして江戸時代入って開発規模小さいものでした。また、江戸時代に鶴見川は舟運にもかなり利用されるようになり、年貢米はじめとする物資輸送が盛んとなりました。しかし、利根川などとは異なり、鶴見川は川の規模小さいことから、往来できる舟の大きさ限られいましたこうした地形的事情もあって、鶴見川流域は、江戸近接しているという地理的条件恵まれながらも、社会経済的に発展してきた地域とは言えず、東京横浜という大都市挟まれ地域ありながら、ごく最近まで貴重な緑の空間数多く残すことができたのではないでしょうか

明治時代以降の鶴見川と流域市街化
鶴見川流域の市街地の変化
鶴見川流域市街地変化
明治時代に入ると、日本最初鉄道が鶴見川を横断して新橋横浜間に開通し横浜生麦地区などでは海面埋め立てが行われるようになり、鶴見川河口部では京浜工業地帯の礎が築かれいきましたその後大正12年関東大震災第二次世界大戦により、横浜市一帯大きな被害受けましたが、復興とともに沿岸部埋め立て道路網の整備など、工業化が更に進められいきました
戦後昭和30年頃の鶴見川流域は、自然豊かな環境数多く残されいましたが、昭和40年頃からこの鶴見川流域著し市街化進みました国際都市横浜位置し首都東京にも近いという地理的条件により、下流域では京浜工業地帯発達し昭和39年には東海道新幹線開通し新横浜駅開業しましたその後第三京浜田園都市線東名高速開通など、主要交通機関発達伴って中流域中心に急速な都市化進みましたその結果、現在では鶴見川は国内でも有数典型的な都市河川となってます。
2.地域の中の鶴見川
"鶴見川流域では、市民行政企業構成された「ふれあって鶴見川」実行委員会設置し市民参加型の様々な各種イベント企画・主催して、都市河川ならではの様々な問題対す取り組みとしての総合治水対策」や「鶴見川流域マスタープラン」を推進していく必要性PRするために、流域が一体となって広報活動展開してます。"

鶴見川の流域活動

鶴見川流域では、急激な都市化により水田森林等による保水遊水機能低下し短時間大量に降雨が川へ集まってしまうなどの典型的な都市河川ならではの様々な問題発生してきました
このため昭和55年からは、鶴見川を河道だけでなく流域全体として捉え市民や行政などが一体となって総合治水対策」を全国先駆けて推し進め一定の成果収めてきました。しかし、都市における水害対策極めて重要であり、鶴見川流域における「総合治水対策」も、より一層取り組み求められるようになりました
鶴見川・いき・いきセミナー
鶴見川・いき・いきセミナー
鶴見川いかだフェスティバル
鶴見川いかだフェスティバル
この「総合治水対策」を推進していくためには、流域市民理解協力不可欠なため、昭和62年5月15日を「総合治水の日」として定め、「総合治水対策」をPRするために毎年その日中心とした「ふれあって鶴見川」キャンペーン実施し様々な市民参加型のイベント展開してきました。そして、平成14年度からは「広げようバク流域バク仲間」(総合治水365日バク流域総合キャンペーン)をタイトルに、通年流域が一体となって総合治水推進のための広報活動展開し、さらに、平成16年度からは、〝水循環系健全化〟をキーワードに「総合治水対策」をより発展させたかたちで推し進めていくため策定された「鶴見川流域マスタープラン」の普及・啓発活動取り組んでます。
具体的な広報活動取り組みとして、鶴見川流域様々な活動をしている市民団体方々流域自治体地元マスコミ関係者方などで構成された「ふれあって鶴見川」実行委員会設置し流域題材とした学習会開催したり、委員会連携しながら様々な各種イベント企画・主催して、参加してくれた市民一人一人に鶴見川流域への関心高めてもらえるように、市民行政企業連携協力し合いながら、流域で一体となって広報活動取り組んでます。
3.鶴見川の自然環境
"鶴見川流域では、急速な市街化によって緑地などが激減してしまいましたが、源流域など、まだ自然が多く見られるところも残ってます。源流域丘陵地帯などに残る谷戸雑木林では、オオタカホトケドジョウなどの貴重種生息確認されていて、多種多様な生物貴重な生息地になってます。"


鶴見川源流域に拡がる雑木林
鶴見川源流域拡がる雑木林
ホトケドジョウ
ホトケドジョウ
タモロコ
タモロコ
鶴見川流域は、昭和40年頃からの急速な市街化によって緑地田畑激減しましたが、源流域など、現在でも自然の姿を数多く残している地域あります
源流域丘陵地帯では、湧水などの浸食によって複雑に刻み込まれ地形である谷戸がまだ数多く残っていて、クヌギコナラ等の雑木林広がってます。また、この地域は、水域ホトケドジョウ森林ではオオタカなどの貴重種生息確認されていて、鶴見川流域でも最大の、多様な生物生息地になってます。
源流域から続く多摩丘陵流れ上流域では、人工的な護岸整備がされているものの、オイカワタモロコ等の魚類数多く見られます。
多摩丘陵抜け下末吉台地流下する中流域は、新横浜などの市街地近接してますが比較的広い高水敷両岸残されている箇所多くヨシオギ等の群落形成されオオヨシキリセッカ等の野鳥貴重な生息地にもなっています。
下流域では、事業所住宅密集し河口部京浜工業地帯になっていますが、残存する干潟では多様な生物確認されています。
4.鶴見川の主な災害
"鶴見川は、地形的条件など災いして、昔から大雨のたびに洪水氾濫おこしてきました戦後主な災害実績としては、昭和33年41年51年57年台風による洪水災害あげられ流域甚大な被害もたらしました。"


発生発生原因被災市町村被害状況
昭和33年9月26日狩野川台風神奈川県横浜市
川崎市
東京都町田市
死傷者 約240
被災家屋 約66,000
昭和41年6月28日台風4号神奈川県横浜市
川崎市
東京都町田市
死傷者 約100
被災家屋 約67,000
昭和51年9月9日台風17号神奈川県横浜市
川崎市
被災家屋 約4,800
昭和56年10月22日台風24号神奈川県横浜市
川崎市
被災家屋 約420
昭和57年9月12日台風18号神奈川県横浜市
川崎市
被災家屋 約5,500

昭和51年9月台風17号出水状況(生麦地区)昭和57年9月台風18号出水状況(鶴見区向井町)
昭和51年9月台風17号出水状況生麦地区昭和57年9月台風18号出水状況鶴見区向井町
5.その他
"鶴見川流域では、都市河川ならではの様々な問題対策として「総合治水対策」を全国先駆けて推し進め一定の成果収めてきましたが、改善できない課題多く残ってます。そこで、〝水循環系健全化〟をキーワードに「総合治水対策」をより発展させた「鶴見川流域マスタープラン」を策定しました。"

鶴見川流域マスタープラン

総合治水対策
鶴見川流域は、昭和40年頃から急速な都市化進み流域水田森林などによる保水遊水機能低下してしまったため、短時間大量降雨が川へ流れ込んでしまい、洪水引き起こしやすくなってしまうなどの、典型的な都市河川ならではの様々な問題浮き彫りになってきました
このような問題対策として、昭和55年から、鶴見川を河川だけでなく流域全体として捉え市民や行政などが一体となって取り組む総合治水対策」を全国先駆けて推し進め一定の成果収めてきましたしかしながら治水中心とした対策だけでは、環境面などでの改善できない課題多く残ってます。

〔鶴見川流域マスタープラン
流域をとりまく多くの課題
そこで、平成16年、「総合治水対策」の多自然・多機能化進め、〝水循環系健全化〟をキーワードに、流域が一体となって問題解決取り組むための方策などを示す「鶴見川流域マスタープラン」を策定しました
そして、「いのちと暮らし地球につなぐ鶴見川流域再生ビジョン」をキャッチフレーズとして市民行政企業一つ流域として連携協働しながら「鶴見川流域マスタープラン」を推進してます。

鶴見川流域水マスタープラン

(注:この情報2008年2月現在のものです)

鶴見川

読み方:ツルミガワ(tsurumigawa)

所在 東京都神奈川県

水系 鶴見川水系

等級 1級


鶴見川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/04 13:38 UTC 版)

鶴見川
鷹野大橋付近
水系 一級水系 鶴見川
種別 一級河川
延長 42.5 km
平均流量 10.1 m3/s
(亀の子橋観測所 2000年)
流域面積 235 km2
水源 多摩丘陵
東京都町田市上小山田町
水源の標高 170 m
河口・合流先 東京湾(神奈川県)
流域 日本
東京都神奈川県

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鶴見橋(現・鶴見川橋)。19世紀初めの『江戸名所図会』より。
鶴見川の遊歩道沿いに設置されている標識(「鶴見川流域共通サイン」)。「バクの形の流域」であることが記載されている。東京都町田市図師町・宮川橋付近

鶴見川(つるみがわ)は、東京都および神奈川県を流れる。鶴見川水系の幹川で、一級河川に指定されている。東京都町田市上小山田町の泉を源流とし、神奈川県横浜市鶴見区の河口から東京湾に注ぐ。全長42.5km、流域面積235km2、支川数は10。2005年(平成17年)4月に特定都市河川浸水被害対策法に基づく特定都市河川に指定された。

概要

鶴見川は、東京都および神奈川県を流れる河川である。その流域は、東京都町田市、神奈川県川崎市横浜市の3市(2政令指定都市を含む)からなり、一級河川に指定されている[1][2]。流域の形がバクに似ていることから「バクの流域」を愛称とし、しばしばバクが鶴見川流域の河川管理行政においてマスコットとして用いられる。河口から第三京浜道路までの17.4kmは、国土交通省京浜河川事務所の直轄管理区間となっており、第三京浜道路より上流の区間は神奈川県または東京都が管理する[3]

流路延長は42.5km、流域面積は235km2。流域内人口は約188万人で、流域内人口密度は全国109水系中第1位の8,000人/km2となっている(いずれも2004年(平成16年))。流域の土地利用は、宅地等の市街地が約85%、森林や農地等が約15%で、市街地化が進んでいる[4]。河川水は、農業用水または工業用水に利用されている。なお、流域の生活用水は流域外から導入されている。流域の下水道普及率は高く、人口増加に伴い、下水処理水の流入も増加している。

流域は、源流域に緑地地域が多く残り、中流域まで高水敷が広がる。中上流域には絶滅危惧種に指定される淡水魚や鳥類、昆虫類も生息し、下流域には汽水性の魚類、エビ・カニ・ウニ類、貝類や海鳥が生息する。国土交通省の調査による河川の区域面積あたりの利用者数は、十勝川に次いで多く、特に散策の利用者は全国で最も多い。中流域の鶴見川サイクリングコースや堤防上の歩道、森永橋付近にある横浜市鶴見川漕艇場など、河川利用を促進する施設も整備されている。

一方、鶴見川は、古くから洪水氾濫を繰り返す暴れ川として恐れられた。流域の市街地化が進んだことで、保水・浸透機能が低下し、大雨による水位の増大が激しくなり、一旦氾濫すると大きな浸水被害が生じる危険性も高まった。このため、全国に先駆けて1979年(昭和54年)から「総合治水対策」に取り組み、2005年(平成17年)4月には全国で初めて、特定都市河川浸水被害対策法3条に基づく、特定都市河川および特定都市河川流域に指定された[5]

また、例年、国土交通省が発表する河川の水質調査では、ワーストランキングの2位から3位となることが多い。水質は、1960年代から1980年代に比べれば大幅な改善が見られ、環境基準はほぼ達成された。しかし、流域の市街地化は今も続いており、なお大きな課題となっている。

語源

鶴見区の資料によると2つの説がある[6][7]

  • 大きく湾曲して、ぐっと水の流れがゆるやかになっている鶴見川の地形に由来する。「ツル」は川の流れが淀む状態で「トロ」(瀞)と同じ由来であり、「ミ」は「周り・巡り」を表す言葉である。
  • 鎌倉時代の史料からも現れており、源頼朝がこの地でを放ったという伝説からこの名がついた。

流域の自治体

東京都
町田市稲城市
神奈川県
川崎市横浜市

地理

鶴見川流域の概要(「鶴見川流域水害対策計画」より)
鶴見川源流泉のひろば
鶴見川源流泉のひろばの池
鶴見川上流端(東京都町田市上小山田町・新橋)の標識

鶴見川の源流は、東京都町田市の北部、多摩市との境に近い上小山田町にある多摩丘陵の谷戸群(低湿地)の一角、田中谷戸(標高約100 - 150 m)の湧水を水源とする数本の細流である。源流域下端には「鶴見川源流泉のひろば」が整備されている。源流を発した鶴見川は、神奈川県川崎市麻生区岡上と町田市三輪町の付近で真光寺川と、川崎市麻生区下麻生麻生川と合流し、横浜市青葉区を縦断する。東名高速道路の下を抜けて、横浜市緑区都筑区の境界に沿い、下末吉台地に挟まれた沖積低地の入り口付近である緑区中山恩田川と合流する。この辺りまで、鶴見川は谷本川(やもとがわ)とも呼ばれ、源流からおおむね南東に流れる。恩田川と合流した鶴見川は、利水の基準地点とされる落合橋付近から東流し、港北区新横浜付近で鳥山川と合流すると蛇行して北へ向かう。再び蛇行して東流すると、港北区綱島付近で早渕川と合流し、鶴見区駒岡付近で矢上川と合流する。鷹野大橋付近から左岸に川崎市幸区と接しながら、南東へ緩やかに蛇行し始め、治水の基準地点とされる末吉橋付近から鶴見区を貫き、同区末広町大黒町の河口から東京湾に注ぐ。

鶴見川流域は、標高80mから150mの低い丘陵地帯が分水界をなし、河床勾配は、源流から恩田川合流付近までの上流部で約1/250、沖積低地の中下流部で約1/1000の緩勾配となる。流域の大半が大きく起伏した丘陵・台地のため、かつては開発されることもなく、自然豊かな環境・景観が形成されていた。しかし、1960年代(昭和30年代半ば)に始まる高度経済成長期から、流域周辺は人口が急増し、住宅地として急速に開発が進められた。1958年(昭和33年)には流域内の市街地率は約10%、人口は約45万人であったが、2003年(平成15年)には市街地率約85%、人口約188万人となっている。この市街地化の結果、谷戸や低平地の農地はほとんど姿を消し、自然主体の流域から都市主体の流域へと変貌した。

鶴見川流域の地形・地質は、大きく2つに分けられる。流域全体の7割を占める源流付近から上中流域にかけての丘陵・台地は、保水・浸透機能が高い赤土関東ローム層で覆われており、残り3割を占める中下流域の沖積低地は、シルト質(砂と粘土との中間の大きさの砕屑物。沈泥。)の軟弱な地盤となっている。

流域の気候は太平洋側気候に属し、冬季は晴天乾燥、夏季は高温多湿な日が多く、概して温和な気候といえる。流域の年間総雨量は1,400mmから1,600mmで、秋季の雨量が多い。

生物

ヨコハマヒザクラ(横浜緋桜。横浜市鶴見区上末吉付近の堤防上)

今も源流付近に残る広い緑地や、流域の市街地内に点在する緑地などは、保水・浸透機能を有する貴重な自然環境と自然景観を形成している。源流付近の湧水が集まる水域には、絶滅危惧種であるホトケドジョウギバチスナヤツメなどの魚類が、流域にはオオタカをはじめとする猛禽類が生息し、上流域には同じく絶滅危惧種のタコノアシ、カンエンガヤツリなどの植生が見られる。中流域の高水敷には、メヒシバクズヨシオギなどの群落が広がり、オオヨシキリなどの鳥類の繁殖地や、絶滅危惧種であるヨコハマナガゴミムシの国内唯一の生息地が確認されている。下流域には高水敷の緑地は少ないものの、汽水性の水域にはスズキマハゼマゴチコイなどの魚類や、ケフサイソガニ、ユビナガスジエビなどのエビ・カニ類、流域にはユリカモメホシハジロ、絶滅危惧種であるコアジサシなどの鳥類が生息する。

また、一部の堤防上には、サクラツツジなどの植栽も行われている。特に、横浜市鶴見区内では、区役所の支援と区民の活動により、ヒカンザクラの園芸品種である「ヨコハマヒザクラ」が多く植えられている[8]

2002年(平成14年)8月には、中流域から下流域に至る豊富な魚貝類に誘われたのか、アゴヒゲアザラシタマちゃんが東京湾から遡上した[9]

利用

鶴見川の河川水は、主に農業用水と工業用水に利用されている。農業用水は、流域の開発に伴い減少しつつも、約130haの耕地の灌漑に利用されている。最大取水量は、かんがい用水として1.616m3/s(慣行、21件)、工業用水として0.555m3/s(許可、1件)。農業用水の取水は中流域の亀の子橋より上流域に点在し、工業用水の取水は河口部にほど近い東亞合成のみである。なお、鶴見川流域では、生活用水のほとんどが流域外から導水されている。

また、鶴見川流域では下水道の整備が進んでおり、すべての処理区で普及率90%を超えている。鶴見川には、麻生水処理センター(川崎市)、鶴見川クリーンセンター(町田市)、成瀬クリーンセンター(町田市)、都筑水再生センター(横浜市)、港北水再生センター(横浜市)、加瀬水処理センター(川崎市)、北部第一水再生センター(横浜市)の計7つの処理場から下水処理水が流入している。流域人口の増加を受けて、下水処理水の放流量は増加している。下水道の普及は、鶴見川の水質改善に大きな役割を果たしたものの、下水処理水に多く含まれるアンモニア態窒素[10]などが、鶴見川の水質に特徴的な傾向を与えている。

一方、鶴見川は、国土交通省が行っている「河川水辺の国勢調査(河川空間利用実態調査)」によれば、区域面積あたりの年間利用者数が、十勝川に次いで多い[11]。特に、散策の利用者数は全国1位(42.9万人/年・km2)となっている[12]

治水

鶴見川は、古くから洪水氾濫を繰り返す暴れ川として恐れられた[注釈 1]。特に大規模な河川改修計画を策定する契機となった1938年(昭和13年)から、2004年(平成16年)までの約70年間に、主なものだけでも17回の水害に見舞われた。流域の年間降水量は約1,400mmから1,600mm程度であり、水害の要因のほとんどは台風性の降雨によるものである。

治水について懸念された結果、1985年より治水対策の切り札として多目的遊水地として新横浜公園の整備が進められ、2003年6月より運用を開始した。

この遊水地により運用以降の鶴見川は氾濫を免れている。

水質

鶴見川の水質は、1980年代には環境基準を大きく超えていたが、その後は下水道の普及や水質汚濁防止法等による排水規制の実施などにより改善が進み、BOD75%値[14][15]でみるとほぼ全ての地点で環境基準値が達成されている。しかし、下水処理水の影響を大きく受ける中流部では、依然として環境基準値が達成されておらず、大きな課題となっている。

国土交通省が発表する一級河川(直轄管理区間、166河川)における水質調査(BOD値による河川水質状況)では、例年、ワーストランキングの2位から3位となっており、さらなる水質改善努力が続けられている[16]。なお、同調査によれば、ダイオキシン類については、水質・底質ともに環境基準値の2分の1以下となっている。

細菌による汚染

1978年(昭和53年)3月、鶴見川河口付近の河川水からコレラ菌(エルトール型)が検出された。当時の厚生省は、本件において河川水からコレラに感染する可能性はないと発表したものの、住民には動揺が広がった。結局、川崎市高津区内の医院に設置された浄化槽から、支流の有馬川を経て、鶴見川を汚染していたものと判明した[17]

この件の後、全国各地の自治体で各地方衛生研究所を中心に、河川水の定点観測が始められた。神奈川県と横浜市、川崎市でも、各衛生研究所(衛検)が、河川水の細菌学的定点観測を継続している。鶴見川では、臨港鶴見川橋、川向橋(以上、横浜市衛検)、末吉橋(川崎市衛検)を定点として観測されている。一般的なコレラ菌 (O1) は検出されるものの、毒素を産生する菌が検出されたことはない[18]

シアン化合物による汚染

1970年11月、上流のめっき工場からシアン化合物が流出。鶴見川に流れ込んだ。影響は本川のほか流域の井戸水にも及び、同月19日には緑区川和町のパン工場の井戸で0.22ppmのシアンが検出された。この数値は翌日には0.05ppmへと低下したものの、川から500m離れた井戸からもシアンが検出されるなど影響は広がった。横浜市公害センターはシアンによる汚染がゼロになるまで当該井戸水の飲用を禁止した[19]

支流

鶴見川は、主なものだけで、支流の矢上川をはじめとして、早渕川鳥山川、大熊川、鴨居川恩田川麻生川真光寺川と、二次支流の砂田川、梅田川の合わせて10支川が合流し、東京湾に注いでいる。

上流より記載(支流および二次支流)

橋梁

鶴見川沿いの主な施設

上流より記載

注釈

  1. ^ 宝暦9年(1759年)に「善水令」つまり治水に功績があると認められていた普請方・佐久間東川が鶴見橋の見分をして幅を縮めるよう上申していた[13]

脚注

  1. ^ 河川法4条1項、河川法第四条第一項の水系を指定する政令31号。
  2. ^ なお、鶴見川は、旧河川法に基づき、1967年(昭和42年)5月に、建設大臣から一級水系の指定を受けている。
  3. ^ 支川については、矢上川早渕川鳥山川の一部が国交省管理区間となっている他は、神奈川県、東京都、横浜市などの管理区間となっている。
  4. ^ 河川整備基本方針>鶴見川水系・鶴見川水系流域及び河川の概要” (PDF). 国土交通省. 2012年1月3日閲覧。
  5. ^ 鶴見川を特定都市河川の第1号に指定、国土交通省河川局、2005年(平成17年)3月24日。
  6. ^ つるみ区のプロフィール 区の歩みと現状・誕生・地勢・略年表”. 平成23年度版 つるみ区の白書. 横浜市鶴見区役所. 2019年9月6日閲覧。
  7. ^ 第15回:鶴見地名考”. www.city.yokohama.lg.jp. 2019年9月6日閲覧。
  8. ^ 鶴見川沿いの植樹事業について、横浜市市民活力推進局。
  9. ^ タマちゃんは、2002年8月7日に多摩川丸子橋付近に現れた後、8月25日から8月30日まで鶴見川にとどまり、その後、帷子川大岡川中川荒川など、東京湾に注ぐ河川各所に出没した。
  10. ^ アンモニア態窒素 (NH4-N) とは、水中にアンモニウム塩として含まれている窒素のことで、主として、屎尿や家庭下水中の有機物の分解などに起因し、富栄養化などに関わる水質汚濁の指標となる。
  11. ^ 平成15年度・河川水辺の国勢調査(河川空間利用実態調査)、国土交通省河川局。
  12. ^ 平成15年度・調査対象河川区域面積あたりの年間利用者数ベスト10、同上。
  13. ^ 三村竹清『近世能書傳』二見書房、1930年、P.314頁。 
  14. ^ BOD(Biochemical Oxygen Demand、生物化学的酸素要求量)とは、水中の好気性微生物の増殖や呼吸によって消費される酸素量のこと。水の有機物汚染が大きければその有機物を栄養分とする微生物の活動も活発になり、微生物によって消費される酸素の量も増加する。そのため、BOD値が大きければ水中の有機物汚染が大きいことを示すため、水の有機物汚染の指標とされる。
  15. ^ BOD75%値とは、年間の日平均値の全データ(n個)を値の小さいものから順に並べ、「0.75×n番目」のデータの値をいう。BOD75%値と環境基準値を比較することで、年間日数の4分の3 (75%) における、基準値達成状況が分かる。
  16. ^ 「平成18年度・全国一級河川の水質現況の公表について」、国土交通省河川局。
  17. ^ 地方衛生研究所全国協議会、健康危機事例集「鶴見川・有馬川水系のコレラ菌汚染」、大阪府立公衆衛生研究所。
  18. ^ 「神奈川県の感染症」、神奈川県衛生研究所。
  19. ^ 33ヶ所からシアン検出 横浜谷本川流域の井戸『朝日新聞』1970年(昭和45年)11月21日朝刊 12版 22面
  20. ^ "噂の現場「川崎市の水管橋撤去で横浜市民の避難路がなくなる!?」". 噂の東京マガジン. 28 September 2014. TBSネットワーク. TBSテレビ
  21. ^ 水管橋、撤去はじまる”. タウンニュース社 (2016年1月21日). 2016年5月14日閲覧。
  22. ^ 新設人道橋について(新鶴見橋~末吉橋間の人道橋整備ニュース)”. 横浜市. 2022年2月19日閲覧。

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