くしろ‐がわ〔‐がは〕【釧路川】
釧路川
釧路川は、阿寒国立公園の一角をなす屈斜路湖に源を発し、蛇行を続けながら緩流し、弟子屈町中心部を貫流して標茶町市街地付近で南西に転じ、釧路平野東部の縁を根室段丘に沿って流れ、釧路湿原を蛇行しながらゆっくり南流し、釧路町の岩保木山西麓から新釧路川を通って太平洋の釧路港外に注ぐ流域面積2,510km2、流路延長154kmの河川です。 |
![]() |
釧路湿原を流れる釧路川 |
河川概要 |
|
![]() ○拡大図 |
1.釧路川の歴史 |
"大正9年の洪水を契機に翌年から新水路事業が開始され、昭和5年に新釧路川が誕生し、今日の釧路地域発展の礎となりました。また、広大な釧路湿原の自然の洪水調節機能を「横提」により高め、釧路市街地を洪水から守っています。" |
釧路川流域の発展を支えた釧路川 |
2.地域の中の釧路川 |
"近年、タンチョウ等のすむ釧路湿原の面積は、著しく減少しており、そのため、釧路川では、地域住民、NPO、関係行政機関、専門家等で構成する「釧路湿原自然再生協議会」を開催し、官民一体となった自然環境の保全・再生を進めています。" |
地域住民と一体で守る釧路川 ■川とのふれあいと憩いの場 釧路湿原を含めた釧路川流域では、地域住民による良好な河川環境づくりに貢献するボランティア活動や、子供たちが良好な自然と触れ合い体験する機会となるイベントが行われています。また、訪れる人々は釧路湿原の雄大な景観に触れることや湿原内を蛇行する河川を川下りすることができることから、釧路川流域は、観光資源としても重要なものと位置付けられています。さらに、釧路市~標茶町の区間における釧路川の河川敷は、河川緑地としてグランド、遊技広場、カヌーポートとして整備されており、地域住民の憩いの場として活用されています。
■みんなで守り学べる釧路川
また、釧路湿原国立公園連絡協議会で主催される「こどもレンジャー」では、湿原への移入種やエゾシカについての調査や学習会のほか、クリーンウォークなどの奉仕活動が行われており、さらには、釧路国際ウェットランドセンターにおいて、関連団体との共催で釧路川の河川環境観察会も実施されています。なお、釧路市からは「釧路湿原で学ぶ」と題した修学旅行のための手引きが編集・発行されています。 ■釧路川と文学
■釧路湿原本来の姿を蘇らせる川づくり
|
3.釧路川の自然環境 |
"屈斜路湖に流れを発する、釧路川の豊かで穏やかな流れは、釧路湿原の優れた自然環境と共に、タンチョウ、キタサンショウウオなどに代表される貴重な生物を育み、訪れる人々に大自然の豊かさを実感させるものです。" |
幾多の生命を育む釧路川 ■釧路川の地勢
流域の地形・地質は、上流域は屈斜路、摩周火山群が分布する火山地帯であり、主として火山岩類から構成されています。中流域は丘陵台地で流域の2/3を占めており、地質としては、火山砕屑物が主成分となっています。下流域は沖積低地、海岸砂丘、釧路湿原といった標高10m以下の領域で占められ、地質時代では現世や沖積世と言われる最も新しい時代の堆積物で構成されており、地表は厚さ2~4m低層泥炭により覆われています。特に流域最大の特徴となる釧路湿原は、天然記念物及びラムサール条約の登録地や国立公園に指定されるなど、国際的にも注目されています。 釧路川上流部には天然のダムとなる屈斜路湖、中下流部に遊水池となる釧路湿原があるため、河川流況としては平水・渇水流量が比較的大きく、安定した穏やかな特性を示しています。 ■釧路川の植物
■釧路川の動物 流域一帯にはエゾシカが分布しているほか、上流域の山岳地帯にはヒグマも生息しています。釧路湿原やその周辺では、国内で唯一繁殖しているキタサンショウウオ、特別天然記念物であるタンチョウなどの貴重な生物が生息しており、塘路湖では釧路川の歴史を物語るクロイサザアミが確認されています。河跡湖や池塘などで形成される止水的環境においては、水生植物のイヌイトモやトンボ類のイイジマルリボシヤンマに代表される国内でも生息地が限られる動植物の極めて貴重な生息・生育環境が維持されています。また、釧路川には幻の魚と言われるイトウが生息するほか、サケやマス、シシャモが遡上産卵し、この地域では、塘路湖のワカサギとともに、これらの魚の増殖事業に力を入れています。
|
4.釧路川の主な災害 |
"釧路川の主要な洪水は、戦前では大正9年8月の低気圧がもたらした洪水で、新釧路川開通前の下流部の釧路市街地が浸水しました。戦後では、昭和35年3月の高温と大雨による融雪出水により、浸水家屋2204戸を生じた洪水があります。" |
釧路川の主要な洪水は、戦前では大正9年8月の低気圧がもたらした長雨による洪水があります。当時は新釧路川開通前であり下流部の釧路市街地が浸水しました。戦後では、昭和35年3月の低気圧による高温と大雨によって融雪出水が生じ、床下浸水1482戸、床上浸水722戸の被害をもたらした洪水があります。
|
(注:この情報は2008年2月現在のものです)
釧路川
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/03 21:36 UTC 版)
釧路川 | |
---|---|
![]()
写真上/蛇行する釧路川 2009年8月撮影
写真下/釧路湿原大橋の新釧路川 2013年1月撮影 |
|
水系 | 一級水系 釧路川 |
種別 | 一級河川 |
延長 | 154 km |
平均流量 | 29.28 m3/s (標茶観測所 2000年) |
流域面積 | 2,510 km2 |
水源 | 屈斜路湖(弟子屈町) |
水源の標高 | 121 m |
河口・合流先 | 太平洋(釧路市) |
流域 | ![]() 北海道釧路総合振興局管内 |


釧路川(くしろがわ)は、北海道東部を流れ太平洋に注ぐ一級河川。釧路川水系の本流である。下流部の両岸には日本最大の湿原である釧路湿原を形成している。
地理
北海道川上郡弟子屈町の屈斜路湖に源を発し、弟子屈町や標茶町の市街地を南へ流れ、日本最大の湿原である釧路湿原の中に入る。釧路郡釧路町の岩保木地点からは、人工河川である「新釧路川」となり、釧路市釧路港の東港区と西港区の間から太平洋に注ぐ。
高低差が少ないため一級河川には珍しく釧路川本流にはダムが設置されていない。
夏季をメインに一年中全国からカヌーの愛好者が川下りのために訪れる。カヌーポイントはいくつかあるが、細岡付近の湿原地帯、塘路付近、屈斜路湖側の源流部分などがある。
2010年、釧路湿原の自然再生事業の一環として直線になっていた茅沼地域の釧路川を約30年ぶりに蛇行に戻した[1]。
釧路川河口の釧路港中央埠頭から釧路町木場の水面貯木場まで木材をいかだによって運搬する光景が風物詩となっていたが水面貯木場の老朽化により2014年度で廃止となった[2]。
地名由来
アイヌ語の「クスリ」(薬・温泉)に由来する。水源の屈斜路湖はアイヌ語で「クスリ・トゥ」(薬・温泉の湖)と呼ばれるため、そこから流出する河川を意味するという説や、上流に温泉が数多いところから、その流出水を入れる川であるとする説がある。また、釧路川に西別・根室・斜里・小清水・美幌等へ行ける幹線通路があったところから、「クシ・ペッ」(川から川へ通り抜けることのできる川)という別説もある[3]。
流域の自治体
自然
1970年代の魚類調査では、
が本流に、支流には他にニジマスとエゾトミヨも見られた[4]。
治水
釧路川は釧路港に大量の土砂を運び込み、たびたび洪水も起こしていたため、1931年に岩保木水門から全長11キロの人工河川分水路を開削し、これを「新釧路川」とした。1967年に一級河川の指定を受けた際分水路を幹川と認定したため、北海道開発局が管理することとなった分水路を「釧路川(新水路部)」とし、引き続き北海道の管理下に置かれたかつての下流部を「旧釧路川」とする名称変更を行った。しかし釧路市民は慣れ親しんだ釧路川に「旧」の烙印を押されることに不満を抱き、長年に渡って名称復帰を訴え、その結果2001年4月5日に国土交通大臣の告示により、それぞれ「新釧路川」「釧路川」の名称に戻された。幹川は引き続き「新釧路川」である。
2014年、「新釧路川」は土木学会選奨土木遺産に選ばれる[5]。
利水
新釧路川の河口にある日本製紙釧路工場で製紙プラント用の工業用水として利水される。
河川施設
- 岩保木水門(いわぼっきすいもん) - 釧路川下流部(旧釧路川)を切り分ける水門。
支流
太字内は流路中の湖沼
- 尾札部川(屈斜路湖)
- 鐺別川
- 最栄利別川
- 仁多川
- 磯分内川
- オタツニウシ川
- ポン多和川
- 多和川
- オソベツ川
- チョウマナイ川
- クニクンナイ川
- シロンド川
- 旧オソベツ川
- ヌマオロ川
- コッタロ川
- シラルトロエトロ川(シラルトロ湖)
- アレキナイ川(塘路湖)
- モアレキナイ川
- チョクベツ川
- ホマカイ川
- 達古武川(達古武沼)
- 久著呂川
- 新釧路川(分流)
- 雪裡川
- 茂雪裡川
- 幌呂川
- 茂幌呂川
- 鶴居芦別川
- ツルハシナイ川
- 仁々志別川
- オリヨマップ川
- 雪裡川
- 旧雪裡川
- 別保川
- 上別保川
- オビラシケ川
- サンタクンベ川
- 武佐川
- アセッツリ川(釧路市と釧路町の境界となる川)
橋梁
関連項目
- 細岡展望台
- 阿寒川 - 大正時代まで釧路川水系だった河川。治水工事の歴史など。
- クーちゃん
- 釧路フィッシャーマンズワーフMOO
- 旧愛国飛行場 - 新釧路川左岸も敷地の一部として使用されていた。
- 日本製紙釧路工場
脚注
- ^ “蛇行復活「生き物増えた」 標茶で住民が釧路川調査”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年7月16日)
- ^ “釧路川 いかだ搬送始まる 本年度で廃止の水面貯木場へ”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年7月4日)
- ^ 北海道開発局, 国土交通省. “釧路川”. 北海道開発局. 2019年9月6日閲覧。
- ^ 針生勤「釧路湿原に生息する魚 塘路湖・春採湖」、『日本の湖沼と渓谷』第1巻(北海道 I)(ぎょうせい、1987年)79頁表。
- ^ “土木学会 平成26年度度選奨土木遺産 新釧路川”. www.jsce.or.jp. 2022年6月8日閲覧。
外部リンク
固有名詞の分類
- 釧路川のページへのリンク