米代川とは? わかりやすく解説

よねしろ‐がわ〔‐がは〕【米代川】

読み方:よねしろがわ

秋田県北部西流する川。奥羽山脈中に源を発し能代(のしろ)で日本海に注ぐ。長さ136キロ流域秋田杉鉱産物舟運利用された。河口部能代川ともいう。


米代川

秋田杉かおる清き流れの米代川
米代川は、秋田青森岩手県境にまたがる中岳に源を発してます。この流域流れ集め岩手県安代町南下し、やがて西に向き変えて秋田県へ。花輪盆地大館盆地鷹巣盆地経て二ツ井町付近支川最大流域面積を持つ阿仁川藤琴川などと合流し能代市河口部へとながれ日本海そそいでます。途中支川合流させると流域面積4,100km2流路延長136kmの1級河川です。

名勝地、「県立自然公園きみまち阪」の脇を流れる米代川流
名勝地、「県立自然公園きみまち阪」の脇を流れる米代川

河川概要
水系米代川水系
河川名米代川
幹川流路延長136km
流域面積4,100km2
流域内人28万人
流域関係都県秋田県青森県岩手県

米代川流域図
○拡大図
1.米代川の歴史
"米代川は、江戸時代木材鉱石大量に運ぶ手段として舟運が行われてきました舟運発達した背景には、上流域に160にものぼる鉱山付近の山々が天然秋田杉宝庫である事等があげられます。"


米代川は、江戸時代木材鉱石大量に運ぶ手段として舟運が行われていました舟運発達した背景には、上流域に160にものぼる鉱山や、付近の山々が天然秋田杉宝庫である事等があげられます。舟運には様々な工夫ありました。米代川のように大きな川と阿仁川のような中小の川では、積み荷種類によって大小の舟を使い分けをしていました中流から下流部で活躍した舟は、細長く水切り適した「長舟」という丈夫なもので、帆長約18m、幅7.5m、端高約6.6mという大型舟。一方水深浅く流量少な支川では、阿仁川でよく使われた「ズアイ舟」や舟を2艘並べた「ニハイ舟」が主流で、幅も約1mほどと小型でした。
また、木材は山の上流部から木を丸太にして、筏に組んで川を下って運びました。筏は水量がたくさんないと利用できないので、雪解けから田植え前までの期間、米代川は筏のラッシュとなったほどです。

【秋田杉を組んだ筏流し】
秋田杉組んだ筏流し


江戸時代後期紀行家・菅江真澄は、米代川の上流から河口まで巡り歩き流域での様子図絵文章とで「菅江真澄遊覧記」に記してます。 例えば、二ツ井町きみまち阪から見下ろす米代川と七座山雄大な景色をはじめ、滝などの景勝地多く記録小又川阿仁川などの支川もたびたび訪ね歩いてます。
【菅原真澄「阿仁の沢水」(写本)県立博物館所蔵】
菅原真澄「阿仁沢水」(写本県立博物館所蔵
2.地域の中の米代川
"米代川は、ジェットスキー野球サッカーグランドゴルフゲートボール等に利用されています。又、毎年8月全国鮎釣り大会開催され全国から釣り客が訪れてます。さらに伝統的な「なべっこ」や「鯱流し」などの行事開催されています。"


1)観光・景勝地
米代川流域は、河口部において日本海沿いに連なる日本最大規模面積である黒松風の松原」や、二ツ井町の米代川沿川の県立自然公園きみまち阪、県の名勝地として指定されている小又峡白神山地などの豊かな自然による名勝・景勝地が分布し行楽期に多く観光客賑わってます。

【風の松原】

風の松原
1㎞総延長14日本最大規模の大きさを誇る黒松で、能代市日本海沿岸部に位置します江戸時代から防砂林として植裁はじまったもので、現在は樹齢100年を超す黒松700本程あり、環境省日本の音風景100選選ばれています。


【小又峡(三階滝)】
出典能代河川国道事務所資料

小又峡三階滝)】
小又峡は、森吉山東麓ノロ川原に源を発し大小100越える爆布、おう穴、深渕から成る原生峡で、県の名勝天然記念物指定されます。


きみまち阪公園七座山
きみまち阪公園
出典能代河川国道事務所資料
七座山
出典能代河川国道事務所資料

県立自然公園きみまち阪
その昔天地大観、みなこにあつまる」と詠われた名勝地です。大きな奇岩がそびえる屏風岩が一番の名所であり、眼下蛇行する米代川と、原生林七座山眺望しています。きみまち阪」は、東北巡幸中の明治天皇皇后からの便り和歌)を受け取った天皇思い出の地として、のちに当時宮内省通じて命名されました。
3.米代川の自然環境
"米代川は、鳥類繁殖地渡り鳥中継地、生息地越冬地としての役割担っております。又、大館盆地から河口までは魚類遡上妨げとなる工作物がなく河川連続性確保されているため、春から初夏にかけて多くシロウオアユサクラマス遡上や、降海型イトヨなどがみられます。"


米代川流域は、原生的なブナ天然林世界最大級の規模分布し世界自然遺産登録され白神山地をはじめ、十和田八幡平国立公園4つ県立公園があり、山麓中心に豊かな自然環境恵まれてます。
また、上流域奥羽山脈は、山麓中心にスギ植林地があり、阿仁川の上流部ではスギ天然林分布しそれより標高が高い区域にはブナ林分布してます。

【世界自然遺産の白神山地】【原生的なブナ天然林】
世界自然遺産白神山地原生的なブナ天然林


源流から花輪盆地の上流部は、沿川に河岸段丘発達しブナアオモリトドマツコナラ群落みられるほか、カジカヤマメエゾイワナなどが生息してます。
中流部大館市十二所から二ッ井にかけては、狭窄を介して東西細長く広がる大館鷹巣の各盆地のほぼ中央流れており、この区間連続した瀬と淵及び中州存在し秋にアユ産卵する姿が随所見られるほか、河川敷内で湧水しているワンドにはトミヨ営巣する箇所あります
河畔はオニグルミ・ヤナギ類の高木群落主体とする植生河畔林形成されササゴイなどのサギ類や、ジネズミキツネなどが生息し、自然豊かな河川環境となってます。
能代平野広がる下流部は、河床勾配緩く川幅広くなり穏やかな流れとなっており。高水敷にはヤナギ類高木群落オギ群落等が分布しサギ類やオシドリキツネなどが生息してます。また水際には抽水植物コウホネ群落形成しているほか、河口にはハマヒルガオ等の砂丘植生見られます。魚類数多く生息しており、大館盆地から河口までは魚類遡上妨げとなる工作物がなく河川連続性確保されているため、春から初夏にかけて多くシロウオアユサクラマス遡上や、降海型イトヨなどがみられます。
【米代川の代表的な魚種である天然アユ】
【米代川の代表的な魚種である天然アユ
4.米代川の主な災害


発生発生原因被害市町村被害状況等</TD
昭和47年7月9日 大雨(47.7豪雨 能代市
二ッ井町、
藤里町
合川町
森吉町
家屋倒壊流出11,000戸、
農地被害約8,300ha、
公共被害186ヶ所
昭和55年4月6日 融雪 能代市
二ッ井町、
鷹巣町
農地被害約1,700ha、
家屋浸水300戸、
公共被害439ヶ所

(注:この情報2008年2月現在のものです)

米代川

読み方:ヨネシロガワ(yoneshirogawa)

所在 岩手県秋田県

水系 米代川水系

等級 1級


米代川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/05 14:21 UTC 版)

米代川
七座山秋田県能代市)付近にて大きく屈曲する米代川。2012年5月
水系 一級水系 米代川
種別 一級河川
延長 136 km
平均流量 254 m3/s
(二ツ井水位観測所 2005年)
流域面積 4,100[1] km2
水源 中岳 (鹿角市・八幡平市)(岩手県/秋田県)
水源の標高 1,024 m
河口・合流先 日本海能代市
流域 日本
岩手県秋田県
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米代川(よねしろがわ)は、主に秋田県の北部を流れ日本海に注ぐ米代川水系本流の一級河川である。東北地方第5の大河で、秋田県内では流域面積雄物川に次ぐ。河口付近では「能代川」とも呼ばれる。大日本帝国海軍軽巡洋艦能代はこの能代川から名付けられている。

地理

岩手県八幡平市田山地区で主に中岳などから流れる河川を集める。米代川本流はだんぶり長者屋敷跡とされる八幡平市長者前から流れる河川で、根石川と八幡平市平又で合流し、八幡平市田山地区から西へ進み、八幡平市兄畑地区で八幡平から北流する兄川を合わせる。秋田県に入ると徐々に北に転じ、鹿角市毛馬内からは概ね西へ流れる。大館市南部を通り、北秋田市(阿仁地方)を北流してきた阿仁川能代市二ツ井地域で合わせ、能代市で日本海に注ぐ。

八幡平市田山地区で合流する瀬ノ沢川は、中岳四角岳北部の秋田県側を源流とし、最長流路にあたる。

太平洋に面し、分水嶺たる奥羽山脈の東側に位置する岩手県では珍しい日本海に注ぐ川である。

北秋田市今泉の薬師山より米代川上流方向を望む
能代市河口付近
日本海に注ぐ米代川の河口。対岸の彼方に白神山地を望む

歴史

米代川の語源は「米のとぎ汁のような白い川」と言われている[2]。上流部に住んでいた人たちが川で米をとぐと、川が真っ白になるほどだったという説のほかに、米代川源流地区(現在の岩手県八幡平市田山)にいた、だんぶり長者の米のとぎ汁だとする伝説もある。また、これは915年十和田湖火山が大噴火を起こした際の火砕流火山灰で白く濁った川の色を表現したとも言われている。なお、現在の米代川の色は緑色をしている。

この大噴火は日本列島の過去2000年で最大の噴火とも言われ、毛馬内・大館・鷹巣・二ツ井に大量の火山噴火物を流出させ、せき止め湖を造り、現在の能代南中学校付近に大量の軽石を堆積させた[3]。これらによって、米代川の流れは影響を受け、低地に建てられた建物は土砂に埋まり、人々は高台に避難するという大災害となった。胡桃館遺跡七座山天神貯木場から発見された遺跡はこのとき埋没したものと考えられている。これほどの大災害なのにもかかわらず、文献による被害の記録はまったく残っておらず、三湖伝説に人々はその記憶をとどめたと考えられている。

米代川流域には鉱山地帯が多く尾去沢鉱山小坂鉱山大葛鉱山阿仁鉱山太良鉱山などの鉱山から出る鉱石は米代川での舟運で運ばれた。また、この地区は優れた材木の産地でもあり、これらも米代川を使って運ばれた(木材流送)。特に丸太を筏にして川に流す筏流しは1964年まで続いた。これらの輸送はその後鉄道森林鉄道トラックによる輸送に移行していった。

河口付近は能代川とも呼ばれており、明治の文豪幸田露伴は「遊行雑記」において「このあたりより能代川を左にして下る。此の路の景色いと好し。川は激しき流れならねど、水清くして悠々逼らず、それとも知れぬ樹々の色深く紅葉せるが、岸よりさし出でて影を浸せる、まことに錦をさらすかと見ゆ。」 と米代川の景観を讃え、帆船が行き交う当時の様子などを書き残している。

本流の主な船場

十二所から上流方向に、「四十八瀬」と言われる難所があり、十二所の一つ上流にある沢尻船場が、最終遡行地だった。明治初期に「四十八瀬」が改修され、能代から鹿角まで航行できるようになった[4]

  • 能代 - 鶴形 - 切石 - 二ツ井 - 荷上場 - 小繋 - 麻生 - 鷹巣 - 扇田 - 十二所

木材流送

道路の整備が途上で自動車も発達していない時代には、上流で伐採した木材(秋田スギ)を短期間にかつ大量に輸送する手段は木材流送しかなかった。米代川は水量が豊富であることなどから、全国的に見てもいかだ流しに適した川であり、1965年前後に姿を消すまで盛んに行われていた[5]

近年の災害

古くからたびたび氾濫の記録がある。 1947年(昭和22年)の夏には増水の被害があり、同年8月に鷹巣町および周辺町村で行われた昭和天皇の戦後巡幸では、水害の被災者や救助、復旧に尽力した者を慰問する要素が含まれた[6]。近年でも1972年にも大規模な洪水(昭和47年7月豪雨)が発生。山本郡二ツ井町(現・能代市)では8日に堤防が決壊し、町内の中心部が浸水または水没した。 同日21時頃には、上流の素波里ダム緊急放水が余儀なくされ[7]、 翌9日午後1時過ぎには能代市の中川原堤防が決壊、同地区及び周辺地域で家屋や田畑に大きな被害が出たほか市内全域が停電した。この洪水による被害総額は120億円に及んだが、奇跡的に死者は1人も出なかった。

1983年5月26日の日本海中部地震の際には、この地震にともなって発生した津波が米代川河口から逆流し、堤防の一部が損壊する被害が出た。

流域の自治体

岩手県
八幡平市
秋田県
鹿角市大館市北秋田市能代市

支流

最大支流の阿仁川をはじめ、大小85の支流がある。 ※括弧内は流域の自治体

並行する交通

鉄道

道路

主な橋梁

  • 湯瀬五橋(鹿角市)- 八幡平橋・天狗橋・渓谷橋・笹の渡橋・居熊井橋の五つの橋が連続して架かっている
  • 翔鷹大橋(北秋田市)- 蟹沢大橋・今泉高架橋・今泉跨線橋が一体となっている
  • 能代大橋(能代市)- 河川専用橋として米代川最長で、最も下流に架かる橋

関連項目

脚注

  1. ^ 流域の概要”. 東北地方整備局 能代河川国道事務所. 2018年8月13日閲覧。
  2. ^ 米代川ガイドブック【米代川のふるさと】”. www.thr.mlit.go.jp. 2019年9月5日閲覧。
  3. ^ 現在は圃場整備によって、田の中にあった軽石の山は取り除かれている。
  4. ^ 『米代川読本』無明舎出版、2005年、37頁。ISBN 4895443817 
  5. ^ 斎藤栄吉「いかだ」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p25 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行
  6. ^ 宮内庁『昭和天皇実録第十』東京書籍、2017年3月30日、409頁。 ISBN 978-4-487-74410-7 
  7. ^ 「東北豪雨 一万三千人が避難」『朝日新聞』昭和47年(1972年)7月9日朝刊、13版、22面



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