沙流川とは? わかりやすく解説

さる‐がわ〔‐がは〕【沙流川】

読み方:さるがわ

北海道中南部流れ太平洋に注ぐ川。日高山脈に源を発する上流にはエゾマツトドマツ原生林がある。長さ104キロ


沙流川

大自然の懐に抱かれて、アイヌ文化優駿の里を潤すたくましい川
沙流川は、日高山脈北海道日高町日勝峠近くに源を発し、ほぼ南西方向に流下している。途中芽室岳(1,754m)、ルベシベ山(1,740m)、チロロ岳(1,880m)等に源を発するウエンザル川、ペンケヌシ川、パンケヌシ川等と合流し日高町市街地至り、さらに戸蔦別岳(1,960m)、幌尻岳(2,052m)に源を発する額平川等の支川合流し平取町本町市街地経て門別町富川にて太平洋注いでいる、流域面積1,350km2幹川流路延長104kmの河川です。

沙流川河口より上流方向
沙流川河口より上流方向

河川概要
水系沙流川水系
河川名沙流川
幹川流路延長 104km
流域面積1,350km2
流域内人13,000
流域関係都県北海道

沙流川流域図
○拡大図
1.沙流川の歴史
"流域にはアイヌ語地名数多くあり、また数々遺跡などから、近世アイヌ文化期に至るまでの営みを知ることができます地域に住むアイヌの人々の間には、チプサンケ等、今もその文化受け継がれています。一方和人入植江戸末期で、流域農業漁業軽種馬生産通じ発展してきました。"


明治時代の地名
沙流川は原名アイヌ語で「シシリムカ」と言い、「満潮毎に集まる砂が多くて、その河口ふさがって高台になっている」という意味ですが、その流域アイヌ民族の「サル・ウン・クル」(葦原・住む・人々一族中心地であり、その後郡制時代には「沙流郡」といったことなどから「サル」がそのまま河川の名称として使われるようになったと言われています。
沙流川の流域には、先史時代から人々の生活足跡残されており、アイヌ文化時代にあっては道内有数コタン集落)が形成されいました流域にはその土地特徴歴史を知る重要な手がかりとなるアイヌ語地名数多くあり、また、数々遺跡発掘されていて、旧石器時代から近世アイヌ文化期に至るまで、絶え間なく人間営みのあったことをうかがい知ることができます。特に平取町においては発掘され多く遺跡から中近世アイヌ文化期に二風谷地区周辺道内有数規模集落形成していたことが知られています。地域に住む人々の間には、チプサンケ(舟おろしの儀式)等、今もその文化受け継がれており、平取町においてはそのアイヌ文化後世伝えるため、様々な学習・教育活動が行われている他、アイヌ文化保存会による文化伝承活動などが積極的に実践されています。
一方流域和人による開墾江戸時代末期から始まりました明治末期には原木輸送のため、鉄道開通するなど、交通の要衝として、商工業とともに現在の市街地発達してきました流域での水産業歴史古く江戸時代末期にはコンブ投石実施によるコンブ養殖記録残ってます。軽種馬生産明治末期端を発しその後戦中戦後の混乱期除き徐々に規模拡大してきました流域農業の主要作物である水稲は、明治前半から栽培始められ大正から昭和にかけては門別町平取町において稲作作付け志向強くなり沙流川水系水源とする水田増加しましたが、昭和30年代以降堤防の整備が進むまでは、外水氾濫による大きな洪水災害をたびたび受けていました
下流域の市街地と田園地帯
下流域市街地田園地帯
沙流川の河川改修北海道第1期拓殖計画時代大正期小規模な護岸始まり戦後になって計画的な工事手掛けられるようになり、堤防などの整備進められるとともに昭和57年から洪水調節などを目的としたダムの建設進められ平成9年には二風谷ダム完成しました

2.地域の中の沙流川
"沙流川流域軽種馬生産育成基幹産業一つであることから、高水敷採草放牧地として広く利用されています。また、門別町平取町都市区域においては広場・公園緑地などが整備されスポーツ散策多目的に利用されています。また河川空間利用した行事としてししゃもまつりやチプサンケなどがあります。"


トマトのハウス栽培
トマトハウス栽培
沙流川流域では、シシャモ漁が古くら行われ、そのすだれ干し季節の風物詩となり地域代表する特産品となってます。一方流域3町の農業作物水稲大半占めていましたが、近年では水稲にかわりトマトきゅうり軟白長ネギなどの割合増加してます。特に平取町においては米の生産調整の始まる昭和40年代後半よりトマトハウス栽培始め近年は、休止している水田でその面積拡大してます。現在では水稲大きく上回る生産額となり、収穫量北海道で最も多い地域となってます。

河川敷での採草放牧
河川敷での採草放牧
軽種馬生産名馬シンボリルドルフ輩出するなど、全国の約2割を生産しており、河川空間利用でも、河川敷採草放牧地として広く利用されています。
門別町平取町都市区域においてはうるおいやすらぎ得られる貴重なオープンスペースとして、河川敷広場・公園緑地などが整備されスポーツ散策魚釣り多目的に利用されています。

河川敷の公園緑地
河川敷公園緑地
また、河川空間利用したイベントとしては、富川地区ししゃもまつりや門別夏まつり二風谷地区の「にぶたに湖水祭り」(二風谷ダム湖)やチプサンケ(沙流川、アイヌ文化の舟おろしの儀式)、平取町最大祭りである沙流川祭り等が実施されています。また平取町ではアイヌ文化紹介するアイヌ文化博物館地域の歴史や自然・二風谷ダム等を紹介する沙流川歴史館には、町外から多数観光客訪れており、地元ではこれら地域独特の観光資源生かし、さらに体験学習志向しながら、観光関連産業発達活性化目指しています。


にぶたに湖水まつりチプサンケ(舟おろしの儀式)河川の利用状況
にぶたに湖水まつりチプサンケ
(舟おろしの儀式)
河川利用状況


3.沙流川の自然環境
"上流日高山脈襟裳国定公園属し日勝峠付近のエゾマツ・ダケカンバ群落は「沙流川源流原始林」として国の天然記念物指定されています。哺乳類ではエゾシカヒグマクロテンなどが生息し鳥類猛禽類生息または飛来し水辺ガンカモ類渡り中継となってます。魚類はサケ・マス、シシャモ等が遡上しています。"


日高の山々
日高山々
流川はその源を日高山脈発し流域形状はほぼ南西から北東にのび、幹川流路延長104kmに対して流域平均幅は約13kmと細長い形状になってます。上流部山腹斜面急峻で峰々を連ねた竜門峡のような渓谷清流から成る景観連続してます。中~下流部では山腹斜面はやや緩くなり、河岸段丘発達顕著で、河川沿って農地国道連続して河床堆積土砂多くなり瀬や淵がみられるようになります

平取町のすずらん
平取町すずらん
流域植生は、流域面積の約9割を占め森林植生代表されその分布は、温帯低山帯亜寒帯及び高山帯区分されます。上流日高山脈襟裳国定公園属し、特に日勝峠付近のエゾマツ・ダケカンバ群落は「沙流川源流原始林」として国の天然記念物指定されています。支川額平川の沿川、平取町芽生付近に広がる野生スズラン群生地(約15ha)は日本一広さであり、毎年6月上旬開かれる1週間鑑賞会とその前後には1万人前後の観光客訪れます

域内動物は、哺乳類キタキツネタヌキ大型エゾシカヒグマ貴重種ではクロテンなどが確認されています。鳥類ハヤブサクマタカオオタカオジロワシなどの猛禽類生息または飛来し水辺オオハクチョウヒシクイなどのガンカモ類渡り中継地となるほかアオサギ生息してます。魚類サケサクラマス等が遡上するほか、北海道太平洋沿岸にのみ分布する日本固有の魚種であるシシャモが、秋から冬の産卵期遡上ます。

日高町 三岡峡
日高町 三岡
上流部は、竜門峡・千呂露峡・轟ガロウのような渓谷地形両岸を覆う森林美、幌尻岳・千呂露岳や貫気別山等の山岳景観構成されています。中下流部は遠く山々背景牧歌的田園風景広がりサラブレッド走り回る採草放牧地公園緑地など広がってます。
尚、沙流川上中流部には神居古潭帯と呼ばれる地層分布しており、日高累層群、輝岩質岩、蛇紋岩構成されますが、全般に脆弱地すべり土砂崩落起こしやすい地層となってます。
4.沙流川の主な災害


発生発生原因被災市町村被害状況
昭和37年8月台風門別町平取町日高町死者2名、負傷者2名
家屋全壊1戸、家屋半壊1戸、家屋流失4戸
床上浸水76戸、床下浸水42
平成4年8月台風門別町平取町日高町家屋半壊3戸
家屋浸水133
田畑被害1,542ha
平成15年8月台風門別町平取町日高町家屋浸水42
田畑被害318ha


(注:この情報2008年2月現在のものです)

沙流川

読み方:サルガワ(sarugawa)

所在 北海道

水系 沙流川水系

等級 1級


沙流川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/03 21:35 UTC 版)

沙流川

写真上/沙流川(富川) 日高本線から河口側を望む
写真下/沙流川(平取) 平取橋より下流側を望む
水系 一級水系 沙流川
種別 一級河川
延長 104 km
平均流量 58.0 m3/s
(平取観測所 2000年)
流域面積 1,350 km2
水源 熊見山日高町
水源の標高 1,175 m
河口・合流先 太平洋(日高町)
流域 日本
北海道日高振興局管内

テンプレートを表示

沙流川(さるがわ)は、北海道日高振興局管内を流れ太平洋に注ぐ一級河川。沙流川水系の本流である。2004年には国土交通省が行っている全国一級河川の水質調査で1位に選ばれている。

地理

北海道沙流郡日高町北東部の上川郡清水町との境界にある日高山脈北部の熊見山(標高1,175m)に源を発し南西に流れる。二風谷ダムを経由して、日高町字富浜と日高町富川南の境界から太平洋に注ぐ。

上流部は切り立った渓谷で、中流は河岸段丘、下流部は扇状地となっている。中流に最大のアイヌ集落である平取(びらとり)コタンがある。

源流域の日勝峠付近は、北海道における冷温帯上部の代表的森林として、1970年(昭和45年)12月4日に沙流川源流原始林の名称で、国の天然記念物天然保護区域)に指定されている。

地名由来

沙流川の名は、アイヌ語の「サラ」Sar=葭原(よしはら)あるいは「サル・ウン・クル」(葭原に住む人々)に由来。原名をシシリㇺカ:Sisirmkaと呼ばれるが、これは、「満潮毎に集まる砂が多くて、その河口がふさがって高台になっている」という意味である[1][2]。なお、アイヌ語では北見の「斜里」と混同される恐れがあるので、こちらを「マッネ・サラ」(女性のサラ)、「斜里」の方を「ピンネ・サラ」(男性のサラ)と呼んで区別する[3]

先住民族アイヌの神揺「カムィユカㇻ」(Kamui Yukar)には、英雄神オキクルミの妹が謠う謠の中に「シシリムカ アコロコタン」(Shishirmuka a=kor kotan : シシリムカなるわがふるさとの)という節があり、シシリムカという川の呼び名が、アイヌの神々が沙流川を指して呼ぶときの呼び名で、またそこがアイヌの神々の故郷(先住民にとっての神域)であることを示している[4]

流域の自治体

北海道
沙流郡日高町平取町日高町(富川)

治水および利水

中流域には日高電源一貫開発計画[5]の中心河川としてほくでんエコエナジーにより出力3,000kW二風谷ダムが建設され、電力供給と洪水調節が行われている。

災害史

有史以来、以下の水害記録が残る[6]

主要ダム

一次
支川名
(本川)
二次
支川名
三次
支川名
ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m3)
型式 事業者 備考
沙流川 ウエンザル川 奥沙流ダム 30.0 530 重力式 北海道電力
沙流川 岩知志ダム 33.0 5,040 重力式 北海道電力
沙流川 額平川 宿主別川 平取ダム 56.5 45,800 重力式 北海道開発局
沙流川 二風谷ダム 32.0 27,100 重力式 北海道開発局
  • 備考:黄欄は建設中もしくは計画中のダム(2012年現在)。

支流

括弧内は流域の自治体

  • ウエンザル川(日高町)
  • パンケヌシ川(日高町)
    • 曲り沢川(日高町)
    • 二の沢川(日高町)
  • 千呂露川(日高町)
    • 三岐沢川(日高町)
    • 二岐沢川(日高町)
  • ペンケウシャップ川(日高町)
  • パンケウシャップ川(日高町)
  • 岡春部川(日高町)
  • 仁世宇川(平取町)
  • 池売川(平取町)
  • ポロケシオマップ川(平取町)
  • 額平川(平取町)
    • ニセイハオマナイ川(平取町)
    • 宿主別川(平取町)
    • アブシ川(平取町)
    • 貫気別川(平取町)
      • ニタツナイ川(平取町)
      • セタナイ川(平取町)
    • 荷負川(平取町)
  • 看看川(平取町、普通河川
  • シケレベ川(平取町)
  • 二風谷川(平取町)
  • アベツ川(平取町)
  • オバウシナイ川(平取町)
  • シラウ川(平取町、日高町)

主な橋梁

  • 嶺雲大橋 - 国道274号
  • 浪の沢橋 - 国道274号
  • 清流橋 - 国道274号
  • 中の沢橋 - 国道274号
  • 岩魚橋 - 国道274号
  • 新清見橋(国道274号)
  • ニセクシュマナイ橋(国道274号)
  • 上滝橋(国道274号)
  • 清瀬橋 - 国道274号
  • 岩瀬橋 - 国道274号
  • 日栄橋 - 国道274号
  • 大颱橋 - 国道274号
  • 千呂露橋 - 国道274号
  • 岩石橋
  • みどり橋(人道橋)
  • 右左府橋 - 北海道道847号三岩日高線
  • 三岡橋 - 北海道道847号三岩日高線
  • 日高大橋 - 国道237号
  • 三岩橋 - 国道237号
  • 黄金橋
  • 景勝橋 - 国道237号
  • 竜門橋 - 国道237号
  • 平和橋
  • 幌去橋 - 国道237号
  • 振内橋 - 国道237号
  • 池売橋 - 北海道道797号貫気別振内線
  • 幌毛志橋
  • 長知内橋 - 国道237号
  • 二風谷ダム管理橋
  • 平取橋
  • 新平取大橋 - 国道237号
  • 荷菜大橋
  • 紫雲古津川向大橋
  • 沙流川橋 - 国道235号

関連項目

脚注

  1. ^ 水管理・国土保全局 (2016年). “沙流川の歴史” (jp). 北海道地方の河川情報. 国土交通省. 2023年12月14日閲覧。
  2. ^ 室蘭開発建設部, 国土交通省北海道開発局. “沙流川流域概要”. 室蘭開発建設部. 2019年9月6日閲覧。
  3. ^ アイヌ語地名リスト シベ~セツ P61-70P”. アイヌ語地名リスト. 北海道 環境生活部 アイヌ政策推進室 (2007年). 2019年7月11日閲覧。
  4. ^ 京助, 金田一『アイヌ聖典』世界文庫刊行會、1923年1月15日、298頁。「沙流川の古名なりといひ、アイヌ間にはこの川の名 Sar pet なれど、神々の方で呼ぶ名はShishirimuka なりといふ。」  ※引用部はカムィユカラを記録した金田一京助が「シシリムカ」というアイヌ語につけた注釈。
  5. ^ 日高電源一貫開発 新エネルギー財団
  6. ^ 竹内裕希子「2003 年 8 月台風 10 号による北海道日高地方の水害 -沙流川・鵡川の場合」防災科学技術研究所主要災害調査 第39号 2006年1月 20頁
  7. ^ 日勝峠、来秋にも開通へ 復旧工法に見通しWEBみんぽう(2016年11月30日)2016年12月4日閲覧

出典・外部リンク


沙流川(さるかわ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 09:21 UTC 版)

銀の匙 Silver Spoon」の記事における「沙流川(さるかわ)」の解説

八軒らが3年時の馬術大会で対戦した日高農業高校馬術部員。西川と同じ新ひだか第4中学出身対戦相手へ「心理戦」と称して女性部員ナンパをしかけるという性悪大会でも「ゆさぶり」と称して御影ナンパし、かつての同級生である西川貶めるが、それに腹を立てた馬術部男子部員の逆撃に精神ズタズタにされ、団体戦はもちろん翌日個人戦でも集中力奪われいいところなく大会終えてしまった。

※この「沙流川(さるかわ)」の解説は、「銀の匙 Silver Spoon」の解説の一部です。
「沙流川(さるかわ)」を含む「銀の匙 Silver Spoon」の記事については、「銀の匙 Silver Spoon」の概要を参照ください。

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