近畿地方整備局
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近畿地方整備局 きんきちほうせいびきょく |
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役職 | |
局長 | 長谷川 朋弘 |
副局長 | 魚谷 憲 黒川 剛 |
組織 | |
上部組織 | 国土交通省 |
出先機関 | (本文参照) |
概要 | |
所在地 | 〒540-8586 大阪市中央区大手前3-1-41 大手前合同庁舎 |
ウェブサイト | |
国土交通省近畿地方整備局 |
近畿地方整備局(きんきちほうせいびきょく)は、国土交通省の地方支分部局である地方整備局の一つ。近畿地方全域(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)、北陸地方のうち福井県[1]を管轄地域とする。
所在地および管轄区域
- 本局所在地:〒540-8900 大阪府大阪市中央区大手前三丁目 大手前合同庁舎
- 管轄区域:滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県・福井県[1]。
- 管轄区域には次の特例がある。
- 河川関係事務については、水系単位で管轄区分がなされるため、上記各府県内の河川のうち木曽川水系に属する河川の流域のうち滋賀県内の区域、雲出川水系に属する河川の流域のうち奈良県内の区域については中部地方整備局の、大聖寺川水系に属する河川の流域のうち福井県内の区域は北陸地方整備局の管轄区域となる。また、淀川水系及び新宮川水系に属する河川の流域のうち三重県内の区域、九頭竜川水系に属する河川の流域のうち岐阜県内の区域[注 1]は近畿地方整備局の管轄区域となる[3]。
- 道路関係事務のうち、維持管理に関して福井県内の中部縦貫自動車道油坂峠出入口以東、奈良県内の名阪国道針IC以東は中部地方整備局の管轄区域、兵庫県内の鳥取自動車道は中国地方整備局の管轄区域、新規整備・改良改築事業に関して福井県内の国道8号牛ノ谷道路は、北陸地方整備局の管轄区域となる[3]。また、岐阜県内の国道417号冠山峠道路(知事権限代行事業)は、福井河川国道事務所が担当している[3][4][5]。
- 港湾空港関係事務について、福井県は北陸地方整備局の管轄区域となる[6]。
- 管轄区域には次の特例がある。
沿革
- 1874年(明治7年)3月 - 淀川改良工事に着手するため、「内務省大阪出張土木寮」を設置。翌年には「内務省土木寮大阪分局」に、さらに翌々年の1877年(明治10年)には「内務省淀川出張土木局」に改組[7]。
- 1886年(明治19年)7月 - 第四区土木監督署に改組、中部地方西部及び近畿一円の直轄工事の施工と管轄府県の土木事業の監督を行う。
- 1894年(明治27年)7月 - 第五区土木監督署に改称、管轄区域を近畿地方及び徳島県・高知県に変更。
- 1905年(明治38年)4月 - 土木監督署を廃止し、土木監督業務は本省直轄事務に移行。出先機関は直轄土木工事を担当する土木出張所となり、全国が4区域に再編され、内務省大阪土木出張所が置かれる。
- 1919年(大正8年)4月 - 内務省神戸土木出張所が置かれ、大阪土木出張所の管轄範囲を変更。
- 1943年(昭和18年)11月 - 組織再編により神戸土木出張所について港湾事業の運輸通信省移管に伴い運輸逓信省第三港湾建設部となり、兵庫県と鳥取・島根・岡山・広島の各県を管轄範囲とする。港湾事業以外は大阪土木出張所に統合の上で、内務省近畿土木出張所に改組。
- 1948年(昭和23年)1月 - 内務省解体により総理府建設院の出先機関である建設院近畿地方建設局に移管。同年7月には建設省に再移管。
- 1958年(昭和33年)12月 - 建設省近畿地方建設局が大阪市西区土佐堀通二丁目から、同市東区(現中央区)大手前一丁目(大阪地方合同庁舎1号館)へ移転。
- 2001年(平成13年)1月6日 - 省庁再編により国土交通省発足。建設省近畿地方建設局と、運輸省第三港湾建設局の一部を統合し国土交通省近畿地方整備局を設置。
- 2010年(平成22年)3月28日 - 鳥取自動車道佐用JCT - 大原IC間開通により、兵庫県内の区間(佐用本線料金所以北)の維持管理を近畿地方整備局から中国地方整備局へ移管[8]。
- 2016年(平成28年)4月1日 - 奈良県内の名阪国道針IC以東が近畿地方整備局から中部地方整備局へ移管。
- 2022年(令和4年)11月21日 - 近畿地方整備局(港湾空港部を除く)が大阪市中央区大手前一丁目から同区大手前三丁目(大手前合同庁舎)へ移転[9]。
出先機関
名称 | 区分 | 管轄区域・施設 | 所在地 |
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福井河川国道事務所[4][5] | 河川 | 九頭竜川 北川 |
福井県福井市 |
砂防 | 真名川流域 | ||
海岸調査 | 福井県加越沿岸及び若狭湾沿岸 | ||
道路 | 国道8号 国道27号 国道158号(中部縦貫自動車道のみ) 国道161号 国道365号(栃ノ木峠道路トンネル以南区間の改築のみ) 国道417号(冠山峠道路の築造のみ) |
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足羽川ダム工事事務所 | ダム建設 | 足羽川ダム(部子川) | 福井県福井市 |
琵琶湖河川事務所 | 河川 | 淀川上流 | 滋賀県大津市 |
ダム再開発 | 天ヶ瀬ダム | ||
大戸川ダム工事事務所[10] | ダム建設 | 大戸川ダム(大戸川)[10] | 滋賀県大津市 |
滋賀国道事務所 | 道路 | 国道1号 国道8号 国道21号 国道161号(琵琶湖西縦貫道路含む) 国道307号 |
滋賀県大津市 |
福知山河川国道事務所 | 河川 | 由良川 | 京都府福知山市 |
道路 | 国道9号 国道27号 国道312号 |
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京都国道事務所 | 道路 | 国道1号 国道9号 国道24号 国道163号 国道171号 国道478号 |
京都府京都市下京区 |
淀川河川事務所 | 河川 | 淀川下流 木津川下流 |
大阪府枚方市 |
海岸調査 | 大阪府大阪湾沿岸 | ||
猪名川河川事務所 | 河川 | 猪名川 | 大阪府池田市 |
大和川河川事務所 | 河川 | 大和川 | 大阪府柏原市 |
地すべり防止 | 大和川流域(亀の瀬) | ||
大阪国道事務所 | 道路 | 国道1号 国道2号 国道25号 国道26号 国道43号 国道163号 国道165号 国道171号 国道481号 |
大阪府大阪市城東区 |
浪速国道事務所 | 道路 | 国道1号 国道2号 国道26号 国道163号 |
大阪府枚方市 |
姫路河川国道事務所 | 河川 | 加古川 揖保川 |
兵庫県姫路市 |
海岸調査 | 兵庫県大阪湾沿岸、播磨沿岸及び淡路沿岸 | ||
道路 | 国道2号 国道29号 |
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豊岡河川国道事務所 | 河川 | 円山川 | 兵庫県豊岡市 |
海岸調査 | 兵庫県但馬沿岸 | ||
道路 | 国道9号 国道483号 |
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六甲砂防事務所 | 砂防 | 六甲山系 | 兵庫県神戸市東灘区 |
兵庫国道事務所 | 道路 | 国道2号 国道28号 国道43号 国道171号 国道175号 国道176号 |
兵庫県神戸市中央区 |
紀伊山系砂防事務所[注 2] | 砂防 | 紀伊山系 木津川流域 |
奈良県五條市 |
奈良国道事務所 | 道路 | 国道24号 国道25号(名阪国道) 国道163号 国道165号 国道168号(直轄権限代行区間) 国道169号(直轄権限代行区間) |
奈良県奈良市 |
和歌山河川国道事務所 | 河川 | 紀の川 | 和歌山県和歌山市 |
海岸調査 | 和歌山県熊野灘沿岸及び紀州灘沿岸 | ||
道路 | 国道24号 国道26号 国道42号 |
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紀南河川国道事務所 | 河川 | 熊野川 | 和歌山県田辺市 |
道路 | 国道42号 国道169号 近畿自動車道松原那智勝浦線 |
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木津川上流河川事務所[12] | 河川 | 木津川上流 上野遊水地 |
三重県名張市 |
九頭竜川ダム統合管理事務所 | ダム群連携 ダム管理 |
九頭竜川上流ダム群 九頭竜ダム(九頭竜川) 真名川ダム(真名川) |
福井県大野市 |
淀川ダム統合管理事務所 | ダム群連携 | 淀川ダム群 国土交通省管理 天ヶ瀬ダム(淀川) 瀬田川洗堰(淀川) 水資源機構管理 比奈知ダム(名張川) 室生ダム(宇陀川) 青蓮寺ダム(青蓮寺川) 日吉ダム(桂川) 布目ダム(布目川) 高山ダム(名張川) |
大阪府枚方市 |
ダム管理 | 天ヶ瀬ダム | ||
紀の川ダム統合管理事務所 | ダム群連携 ダム管理 |
紀の川・熊野川ダム群 大滝ダム(紀の川) 猿谷ダム(熊野川) |
奈良県五條市 |
近畿技術事務所 | 建設技術 調査・試験・開発 |
大阪府枚方市 | |
近畿道路メンテナンスセンター[注 3] | 道路 | 大阪府枚方市 | |
国営明石海峡公園事務所 | 国営公園管理 | 国営明石海峡公園 | 兵庫県神戸市中央区 |
国営飛鳥歴史公園事務所 | 国営公園管理 | 国営飛鳥歴史公園 国営平城宮跡歴史公園 |
奈良県高市郡明日香村 |
京都営繕事務所 | 官庁営繕 | 福井県 滋賀県 京都府 奈良県 大阪府(高槻市、枚方市、茨木市、交野市及び三島郡に限る。) |
京都府京都市左京区 |
舞鶴港湾事務所 | 港湾整備 | 舞鶴港 柴山港 |
京都府舞鶴市 |
大阪港湾・空港整備事務所 | 空港整備 港湾整備 |
大阪国際空港(伊丹空港) 大阪港 堺泉北港 阪南港 |
空港:大阪府豊中市 港湾:大阪府大阪市港区 |
神戸港湾事務所 | 港湾整備 | 神戸港 姫路港 尼崎西宮芦屋港 東播磨港 |
兵庫県神戸市中央区 |
和歌山港湾事務所 | 港湾整備 | 和歌山下津港 日高港 |
和歌山県和歌山市 |
神戸港湾空港調査技術事務所 | 港湾空港技術 調査・試験・開発 |
兵庫県神戸市中央区 |
- 廃止組織
脚注
注釈
出典
- ^ a b 国土交通省組織令(平成十二年政令第二百五十五号)第二百六条
- ^ 河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第二条
- ^ a b c 地方整備局組織規則(平成十三年国土交通省令第二十一号)別表第一
- ^ a b “冠山峠道路、23年に開通見通し 岐阜―福井間50分短縮”. 岐阜新聞Web (2021年4月28日). 2021年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月27日閲覧。
- ^ a b “福井~岐阜間の難所貫通「冠山峠道路」トンネル全て完成 2023年開通向け工事大詰め”. 乗りものニュース (2021年8月6日). 2022年1月27日閲覧。
- ^ 国土交通省組織令(平成十二年政令第二百五十五号)第二百六条第2項
- ^ 国土交通省近畿地方整備局企画部企画課. “近畿地方整備局の紹介・沿革”. 2010年10月31日閲覧。
- ^ “鳥取自動車道(佐用本線料金所~鳥取IC) 鳥取河川国道事務所が管理します” (PDF). 国土交通省中国地方整備局鳥取河川国道事務所 (2010年3月26日). 2016年10月1日閲覧。
- ^ “近畿地方整備局の新庁舎への移転について~近畿地方整備局(港湾空港部を除く)が大手前合同庁舎に移転します~”. 国土交通省近畿地方整備局 (2022年9月27日). 2022年12月6日閲覧。
- ^ a b “大戸川ダム建設へ計画変更 近畿地方整備局、6府県容認”. 日本経済新聞. (2021年2月12日) 2022年1月27日閲覧。
- ^ a b 地方整備局組織規則の一部を改正する省令(平成二十九年三月三十一日国土交通省令第二十五号)
- ^ “県のエリア分類「無理ある」 伊賀市長が本紙記事の感想 生活実態に合った境界線を”. 読売新聞オンライン. (2021年1月27日). オリジナルの2021年2月1日時点におけるアーカイブ。 2022年1月27日閲覧。
- ^ 地方整備局組織規則の一部を改正する省令(令和二年三月三十一日国土交通省令第三十一号)
- ^ a b c d 地方整備局組織規則の一部を改正する省令(平成二十一年三月三十一日国土交通省令第十九号)
- ^ 地方整備局組織規則の一部を改正する省令(平成二十二年四月一日国土交通省令第二十三号)
- ^ 地方整備局組織規則の一部を改正する省令(平成二十四年四月六日国土交通省令第四十六号)
関連項目
外部リンク
近畿地方整備局
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「国土交通省直轄ダム」の記事における「近畿地方整備局」の解説
近畿地方整備局管内では管理中ダム9基(取水ダム含む)、施工・ダム再開発事業・再生事業中4基の計13基を管理・施工している。ただし河川法第17条の兼用工作物として管内最大の直轄ダムである九頭竜ダム(九頭竜川)は電源開発と、淀川大堰(淀川)は水資源開発公団(現在の独立行政法人水資源機構)との共同事業として建設されている。 管内に大阪市、京都市、神戸市などの大都市と西日本最大の河川・淀川を擁する関係上、淀川水系の河川開発は最重要であった。古くは行基の頃より手掛けられた淀川の治水は1900年(明治33年)より実施された淀川改良工事で新淀川開削のほか琵琶湖の水位を調整する南郷洗堰(淀川)が建設され、さらに琵琶湖河水統制事業が1943年(昭和18年)より実施されて治水のほか水力発電、灌漑を目的に1952年(昭和27年)完成する。ところが1953年(昭和28年)台風13号が淀川、由良川に過去最悪となる水害を起こし、根本的な河川改修が求められた。この結果淀川水系改修基本計画が定められ淀川本流に天ヶ瀬ダムが建設されたほか瀬田川洗堰(淀川)の改築、木津川や桂川といった大支流に多目的ダムを建設する計画が立案された。その後淀川水系の河川開発は大阪市など関西圏の人口増加や阪神工業地帯の拡充による水道需要の急増に伴い、水資源開発に重点が移ったことから1962年(昭和37年)に水資源開発促進法に拠る淀川水系水資源開発基本計画が策定され、旧建設省が計画していた高山ダム(名張川)は水資源開発公団に事業を移管させた。以後、淀川水系の多目的ダム事業は水資源開発公団が主体で行い、青蓮寺(青蓮寺川)、室生(宇陀川)、一庫(一庫大路次川)、布目(布目川)、比奈知(名張川)、日吉(桂川)の各ダムが建設された。また1972年(昭和47年)琵琶湖総合開発特別措置法制定により建設省・水資源開発公団・滋賀県および琵琶湖沿岸市町村が一体的に参加した琵琶湖総合開発事業が実施され、琵琶湖の多目的ダム化が図られた。これに関連し1971年(昭和46年)の淀川水系工事実施基本計画に伴い、琵琶湖に関連する河川での多目的ダム事業が計画され、丹生ダム(高時川)や大戸川ダム(大戸川)が計画された。琵琶湖の湖水流出は瀬田川洗堰で調節されるが、国直轄管理下で操作するためいわゆる「琵琶湖の水止めたろか」と滋賀県が止めることはできない(当該項目参照)。 淀川と同時期に総合開発が実施された河川としては紀の川がある。紀の川の水を奈良盆地へ導水する吉野川分水計画は奈良県300年来の悲願であったが、水利権を巡る下流の和歌山県との対立は激化し単独での事業遂行は不可能だった。戦後1949年(昭和24年)に農林省(現在の農林水産省)主導による十津川・紀の川総合開発計画で新宮川(熊野川)の水を紀の川へ導水、さらに紀の川の水を奈良盆地に導水して奈良・和歌山両県の水需要を満たす計画が立案。同事業は1950年(昭和25年)の国土総合開発法に基づく吉野熊野特定地域総合開発計画に組み入れられ、新宮川・紀の川間導水の要である猿谷ダム(熊野川)を皮切りに農林省直轄ダムとして大迫(紀の川)、津風呂(津風呂川)、山田(野田原川)の各ダムが完成し奈良県の悲願である吉野川分水が達成された。ところが1959年(昭和34年)の伊勢湾台風で紀の川流域は水害による大きな被害を受け、治水目的の多目的ダム建設が急務となり紀の川本流に大滝ダムが計画されることになる。 このほか九頭竜川水系は九頭竜ダムを核にした電源開発と北陸電力による奥越電源開発計画が競合していたが、伊勢湾台風や第二室戸台風による九頭竜川の洪水を機に建設省が九頭竜ダム計画に参入。電源開発との共同事業で1968年(昭和43年)に完成させるが、1965年(昭和40年)9月の奥越豪雨は笹生川ダム(真名川)の治水機能を喪失させ、当時の大野郡西谷村(現在の大野市)に壊滅的被害を与えた。このため支流真名川の総合開発も計画され1977年(昭和52年)真名川ダムが完成する。その後九頭竜川中流部の治水・利水を目的に九頭竜川鳴鹿大堰(九頭竜川)が完成し、福井市などへの利水も強化された。こうした中発生した2004年(平成16年)の平成16年7月福井豪雨において、真名川流域では真名川ダムの洪水調節で下流域への洪水被害をほぼ皆無に抑えた反面、強固な反対運動で足羽川ダム事業が凍結していた足羽川流域では福井市内で堤防が決壊するなど死者を出す大きな被害を生じ、同じ降水量にも関わらず対照的な結果をもたらした。福井豪雨以後ダム建設再開要望が福井市など流域市町村より高まり、穴あきダムとして足羽川支流の部子川に建設する新ダム計画となった。前原誠司国土交通大臣(当時)はダム事業再検証対象としたが、2012年(平成24年)にダムは事業継続となる。加古川水系は農林水産省による広域農業水利事業により鴨川ダム(鴨川)、呑吐(どんど)ダム(志染川)など農林水産省直轄ダムが支流に建設されていたが、治水・利水を目的として水系初の直轄ダムである加古川大堰(加古川)が1988年(昭和63年)に完成した。 管内におけるダム事業と移転住民の摩擦では大滝ダムが特に知られる。1962年(昭和37年)より計画に着手したが吉野郡川上村で399戸487世帯が移転対象となり激しい反対運動が繰り広げられ、さらに試験的に貯水を行う試験湛水中に川上村白屋地区で地すべりが発生。対策工事などで運用を開始するまで51年を費やし、日本の長期化ダム事業の代表格となった。また建設省が施工し京都府に管理が移管された大野ダム(由良川)は蜷川虎三京都府知事(当時)の奔走により補償交渉が妥結するという状況であった。一方で水没戸数が大野郡和泉村(現在の大野市)で529戸と大滝ダムを上回る規模の九頭竜ダムでは、施工を担当した電源開発が「補償交渉終了まで工事は実施しない」という方針を打ち出し、大滝ダムとは対照的にわずか2年で補償交渉を妥結に導いた。この原則は「九頭竜補償方式」と名づけられ以後電源開発によるダム事業の大原則となる。そして2005年(平成17年)に国土交通省の諮問機関である淀川水系流域委員会が答申した計画5ダム(丹生、大戸川、余野川、川上、天ヶ瀬ダム再開発)の事業中止答申は流域自治体に大きな影響を与え、国土交通省は一旦5事業を中止する意向を示したものの流域自治体が反発。その後嘉田由紀子滋賀県知事によるダム事業見直し政策などで状況は二転三転し淀川水系の河川開発は混乱を来たした。結果5ダムのうち余野川と丹生が中止(後述)、大戸川・川上・天ヶ瀬ダム再開発事業は事業が継続している。また関西国際空港関連事業として大阪府が水利権を有していた紀の川大堰(紀の川)では、当時の橋下徹大阪府知事が2009年(平成21年)に水利権を返上している。 施工中のダムとしては足羽川ダム、大戸川ダム、天ヶ瀬ダム再開発のほか九頭竜ダムなどの貯水容量再配分などによる治水安全度向上を軸とした九頭竜川上流ダム再編事業が施工中である。なお、管内における一級河川のうち北川、円山川、揖保川、大和川水系には直轄ダムが建設されていない。大和川を除く3水系は本流にダムが建設されていないが、支流に補助多目的ダムが福井県や兵庫県、奈良県により建設、施工されている。また淀川水系の主要な支流のうち、木津川本流にはダムが建設されていない。ダム管理上の新たな問題点として天ヶ瀬ダムでは自殺者が急増したことにより一時緊急的にダムの立入を禁止し、現在はダムの夜間訪問が禁止されている。自殺防止対策として飛び降り防止柵や青色照明灯を導入するなどの対策により、2011年(平成23年)度における自殺者はゼロとなっている。 所在水系河川ダム型式高さ総貯水容量着工完成分類水特法備考福井 九頭竜川 部子川 足羽川ダム 重力 96.0 28,700 1983 2026 治水 指定 福井 九頭竜川 九頭竜川 九頭竜ダム ロックフィル 128.0 353,000 1962 1968 兼用 再生事業中 福井 九頭竜川 九頭竜川 九頭竜川鳴鹿大堰 堰 5.7 667 1989 2003 特定 福井 九頭竜川 真名川 真名川ダム アーチ 127.5 115,000 1965 1977 特定 滋賀 淀川 淀川 瀬田川洗堰 堰 - 27,500,000 1900 1905 1961年改築貯水容量は琵琶湖 滋賀 淀川 大戸川 大戸川ダム 重力 67.5 21,900 1978 未定 治水 指定 京都 淀川 淀川 天ヶ瀬ダム アーチ 73.0 26,280 1955 1964 特定 再開発中 大阪 淀川 淀川 淀川大堰 堰 - - 1971 1984 兼用 兵庫 加古川 加古川 加古川大堰 堰 6.0 1,960 1979 1988 特定 奈良 新宮川 池津川 池津川取水ダム 重力 16.8 - - 1956 奈良 紀の川 紀の川 大滝ダム 重力 100.0 84,000 1962 2013 特定 9条等指定 奈良 新宮川 熊野川 猿谷ダム 重力 74.0 23,300 1950 1957 和歌山 紀の川 紀の川 紀の川大堰 堰 7.1 2,900 1978 2009 特定
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