こくどそうごうかいはつ‐ほう〔コクドソウガフカイハツハフ〕【国土総合開発法】
国土形成計画法
国土総合開発法(1950年)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 08:12 UTC 版)
「北上特定地域総合開発計画」の記事における「国土総合開発法(1950年)」の解説
こうして新たな治水計画である「北上川上流改訂改修計画」が定められたが、北上川下流の迫川や江合川は宮城県によって独自に河川開発が進められており、上流との整合性が求められた。また先述した食糧不足解消のためのかんがい整備による農地開墾、さらに戦時中の電力施設空襲による打ち続く電力不足の解消を図るための水力発電開発が必要となり、これらを効率的に組み合わせて地域経済の発展を加速化させるには、物部長穂が提唱した「水系一貫開発」が合理的であるとの考えが政府や経済安定本部、建設省(河川事業管掌。現・国土交通省)、農林省(かんがい事業管掌)、商工省(電力事業管掌。現・経済産業省)で支配的となった。背景にあるのはアメリカ合衆国大統領・フランクリン・ルーズベルトが推進したニューディール政策の根幹、TVAの成功である。世界恐慌以後不況が深刻だったアメリカの経済を短期間で回復させ、太平洋戦争勝利の原動力となったTVAが日本復興の鍵であると彼らは見ていた。総司令部民政局官僚の多くがニューディール政策の信奉者(ニューディーラー)であったことも影響している。 1950年(昭和25年)第2次吉田内閣は「国土総合開発法案」の制定を閣議決定し、国会にて可決・成立させ国土総合開発法が成立した。「国土を総合的に利用し、開発し、及び促進し、並びに産業立地の適正化を図る」(第一条)を最終目的としている。この中で第二条第一項では「水その他の天然資源の利用に関する事項」を、さらに第二項では「水害、風害その他の災害の防除に関する事項」を定めた。これは河川開発を念頭に置いたものであり、第十条第一項における「地域指定の理由」の中で選定された地域は、そのほとんどが日本における重要な水系と一致した地域開発となっている。従って国土総合開発法では、より強力な河川開発を推進することが産業育成の要であると考えられた。 同法の施行後北海道を除く全国から多くの地域が指定地域に名乗りを挙げたが、最終的に二十二箇所の地域が対象地域として選定され(対象地域については一覧表を参照)、ここに特定地域総合開発計画が決定した。東北地方では岩木川・十和田湖を中心とした「岩木川・十和田特定地域総合開発計画」(青森県)、米代川・雄物川を中心とした「阿仁・田沢特定地域総合開発計画」(秋田県)、名取川を中心とした「仙塩特定地域総合開発計画」(宮城県)、最上川を中心とした「最上特定地域総合開発計画」(山形県)、只見川を中心とした「只見特定地域総合開発計画」(福島県・新潟県)ほか一地域が指定された。北上川については岩手県・宮城県の複数県にまたがり、北上川水系のみならず隣接する鳴瀬川水系を含めた形で「北上特定地域総合開発計画」が定められた。ここにおいて、治水と農地かんがい、そして水力発電を目的とした大規模な河川総合開発事業がスタートした。
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