後志利別川とは? わかりやすく解説

しりべしとしべつ‐がわ〔‐がは〕【後志利別川】

読み方:しりべしとしべつがわ

北海道南西部流れる川。内浦湾に近い長万部(おしゃまんべ)岳に源を発し日本海に注ぐ。長さ80キロ流域温帯気候北限十勝川支流利別川区別するため、名に「後志」がつけられた。


後志利別川

清流ふるさと」後志利別川
後志利別川は、北海道今金町島牧村長万部町町村付近狩場山東端にある太平山から長万部岳に至る山岳稜線分水界とし、山間部流下し、美利河ダムでピリカベツ川等を合流したのち、今金町住吉平野部入り今金市街部北檜山町幾つも支川合わせながら、瀬棚町日本海注いでます。流域面積720km2流路延長80kmの道南唯一の一級河川です。

今金町中心部を流れる後志利別川
今金町中心部流れる後志利別川

河川概要
水系後志利別川水系
河川名後志利別川
幹川流路延長80km
流域面積720km2
流域内人16,000
流域関係都県北海道

後志利別川流域図
○拡大図
1.後志利別川の歴史
"後志利別川流域は、河口瀬棚ニシン漁場サケマス漁によって発展しましたが、明治以前乱獲がたたり資源減少傾向たどったかことから、北海道初のサケ資源保護に関する規制しました。"

後志利別川は、さかのぼること天明5年(1785)に幕府により初めての蝦夷地調査が行われ、寛政9年(1798)に編纂された「松前地並西蝦夷地明細記」には「セタナイ川」と記されています。また、弘化2年(1845)の西蝦夷地踏査では、後志利別川をさかのぼった時の様子が「蝦夷日記」に記されマコマナイなど現在も使われている地名出てます。明治2年7月開拓使設置され新政府蝦夷地呼ばれた一帯北海道名付け北海道開拓スタートしました北海道1186郡に分けられ瀬棚郡現在の後志支庁檜山支庁北部地域含んだ後志国」とされました。後志利別川の「後志」は、ここから付けられと言われています。
渡船の様子(昭和4年頃)
渡船様子昭和4年頃)
開拓使時代瀬棚郡海岸線道路しかなく、利別原野原始林覆われており瀬棚から現在の北檜山町今金町へと入るには、後志利別川河口から小舟で川をのぼるしかありませんでした。しかし古くから渡船場ありましたが、この時代川沿いにあったいくつかのアイヌ集落捕獲したサケ運搬に川を利用していたものの、流域上下する舟便呼べるものではありませんでした


ニシンの水揚げ状況(明治30年頃)
ニシン水揚げ状況
明治30年頃)
新撰北海道史より
後志利別川流域は、河口瀬棚ニシン漁場サケマス漁によって発展しましたが、明治以前から漁業による乱獲がたたり、漁業資源減少傾向たどったことから、網の制限や川での洗濯食器類の洗物を禁止し、川の汚染防止規制行っており、サケ資源保護に関する規制としては、北海道内最初のものではないか思われます。また、支川種川ではサケ産卵遡上する期間、河川での漁獲禁止し密漁防止産卵床保護努め天然繁殖による増殖を図る種川制度を採っていました



川尻材木流送滞積場(明治末期)
川尻材木流送滞積場(明治末期
今金史より
瀬棚郡での稲作は、明治24年(1891)の試作始まりますが、本格化にはさらに時間が必要でありました流域林業の歴史古く寛永14年(1637)に松前城前身である福山城消失後の再建のため現在の檜山から用材を伐り出したのが始まりとされており、明治25年(1892)には清国向けの輸出始まり、後志利別川河口には枕木用のナラトド松用材などの貯木場ができ賑わっていました

2.地域の中の後志利別川
"後志利別川では、清流を守るためのNPO法人によるサケ稚魚放流植樹パネル展などの河川愛護活動イベント等様々な活動が行われています。後志利別川は、北海道河川では貴重な天然アユ生息しており、本州方面からも多くファン訪れてます。"


人と河川とのふれあい環境としての後志利別川では、その清流を守るためのNPO法人後志利別川清流保護の会」等の団体による河川愛護活動、川の楽しみを広げる催しイベント等様々な活動が行われています。 川をきれいに等の運動進めている団体グループ支援するラブリバー制度平成元年から創設され、後志利別川は平成5年7月適用河川として認定されています。
サケ稚魚放流
サケ稚魚放流
後志利別川清流保護の会」では、サケ稚魚放流植樹パネル展などを行い、後志利別川の河川環境豊かな水質資源を守る活動行ってます。
また、自然環境保全目的とした川の探検隊といった、川を知り、川に親しみながら川を大切にしていく河川愛護気持ち育て百年前の豊かで清らかな川をよみがえらせる」ことを目標とした活動展開されています。川の色々なものの探検川遊び水質調査砂金採取体験など盛りだくさんです。

アユ釣り
アユ釣り

水面利用に関しては、後志利別川はサケふ化事業が盛んで、毎年稚魚放流行ってます。また、北海道河川では貴重な天然アユ生息する河川でもあり、時期になると、本州方面からも多くファン訪れます


河原で遊ぶ
河原で遊ぶ

河川空間利用に関しては、後志利別川のと緑のオープンスペース活用し住民スポーツの場、憩いの場交流の場として、流域3町の交流一役を果たす河川緑地公園あります堤防盛土桜の木植えられている桜づつみは、街のシンボル的な存在となってます。


美利河ダム
美利河ダム

後志利別川上流には美利河ダム直轄)があり、ダム下公園では、スポーツ野外活動等に多く方々利用されています。


特別豪雪地帯指定されている地域においてはを流すためのを後志利別川から取り込み流す消流雪用水導入事業全国先駆けて利用開始してます。
3.後志利別川の自然環境
"後志利別川流域は、ブナ代表種とした温帯林北限エゾマツ分布の南限である黒松内低地帯含まれます。後志利別川は、サケマス遡上河川とされ、他の魚種も豊富です。国土交通省実施している清流河川ランキングでは、7回日本一輝いてます。"


後志利別川流域の地形は、台地にある盆地状の平野低地によって構成されています。

ブナ
ブナ
流域植生は、北海道中でも最も植物種の多い地域であり、ブナ代表種とした温帯林北限エゾマツ分布の南限である黒松内低地帯南西域に含まれています。

流域動物は、ヒグマキタキツネエゾリス等の哺乳類山岳地帯でみられ、鳥類天然記念物指定されているオジロワシクマゲラ等がみられます。


後志利別川は、サケマス遡上河川とされ、カワヤツメアユ内水面漁業設定されており、他にウグイフクドジョウなど魚種豊富に確認されています。
また、環境庁によって絶滅おそれがある種として指定されているエゾサンショウウオ生息確認されています。
オジロワシカワヤツメエゾサンショウウオ
オジロワシカワヤツメエゾサンショウウオ

沿川の植生は、木本群落ヤナギ高水敷広く分布し多年生草本群落ヨシ類が全川の水際~高水敷分布してます。中・上流部の山地ではブナ・ミズナラ自然植生それより下流部牧草植栽されているところが多いが、種々の群落遷移している区域確認されています。河口部では左右岸に砂丘植物群落であるハマニンニクコウボウムギ群落分布してます。相対的には半自然的な環境下にあり、海鳥野鳥休憩給餌の場として良好な生息環境備えてます。

後志利別川年平均水質(BOD)経年変化図
国土交通省では、昭和62年以来毎年全国1級河川のうち国が管理する166河川について、BOD生物化学的酸素要求量:値が高いほど川が汚れている)という水質を表す一つ指標用いて清流河川ランキング発表してます。後志利別川では、過去16回のうち7回日本一輝いた実績持っており、平成14年度も「清流日本一となってます。
4.後志利別川の主な災害
"春の融雪出水及び夏季台風等による出水などがありますが、昭和以降主な災害記載してます。"


発生発生原因被災市町村被害状況
昭和4年8月台風今金町
北檜山町
瀬棚町
死者12
流出戸数70戸以上
農地冠水2,400ha
昭和36年7月梅雨前線同上橋梁流出1カ所
家屋全半壊4戸
浸水家屋217
昭和37年8月台風9号同上床上浸水599戸
床下浸水958戸
田畑流出243ha
昭和50年8月温帯低気圧同上床上浸水55
床下浸水149
農作物被害1,447ha
平成11年8月前線低気圧同上床上浸水2戸
床下浸水26
内水被害面積877ha


(注:この情報2008年2月現在のものです)

後志利別川

読み方:シリベシトシベツガワ(shiribeshitoshibetsugawa)

所在 北海道

水系 後志利別川水系

等級 1級


後志利別川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/03 21:30 UTC 版)

後志利別川

写真上/美利河ダムより俯瞰する後志利別川
写真下/後志利別川 瑪脳橋より下流を望む
水系 一級水系 後志利別川
種別 一級河川
延長 80 [1] km
平均流量 27.55 m3/s
(今金観測所 2000年)
流域面積 720 [1] km2
水源 長万部岳(今金町北緯42度35分11.5秒 東経140度11分19.4秒
水源の標高 972 [1] m
河口・合流先 日本海せたな町北緯42度25分29.6秒 東経139度50分37.2秒
流域 日本
北海道檜山振興局管内

テンプレートを表示
長万部岳付近から後志利別川は流れる。

後志利別川(しりべしとしべつがわ)は、北海道檜山振興局管内を流れ日本海に注ぐ一級河川。後志利別川水系の本流である。

国土交通省が公表している一級河川の水質現況において、1987年から2012年まで通算14回、「水質が最も良好な河川」となっている(全国の一級河川で最多)[2][3]

流路

北海道瀬棚郡今金町北東部の山越郡長万部町との境界にある長万部岳付近に源を発し南へ流れる。美利河ダムを経て西へ流路を変え、久遠郡せたな町北檜山区兜野と、せたな町瀬棚区南川の境界から日本海へ注ぐ。

河川名の由来

アイヌ語の「ツウシベツ」(山の走り根・大きい・川)、「ト・ウシ・ベツ」(沼の多くある川)、「トゥッ・ペッ」(蛇川・縄川)、「チュシ・ペッ」(網・川)等の説があるが、アイヌの伝承にも違った意味が出てくることから、どれも推定の域を出ないと考えられている[4][5][6]十勝川水系の利別川と区別するために旧国名の「後志」を冠したものである。流域は現在は檜山振興局管内であるが、かつては後志国の範囲であった。

流域の自治体

北海道
瀬棚郡今金町久遠郡せたな町

治水および利水

上流域には後志利別川総合開発事業の中核事業として出力4,000kW美利河ダムが建設され、電力供給と灌漑および洪水調節が行われている。

主要ダム

一次
支川名
(本川)
二次
支川名
三次
支川名
ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m3)
型式 事業者 備考
後志利別川 美利河ダム 40.0 18,000 重力式・ロックフィル複合 北海道開発局
後志利別川 真駒内川 真駒内ダム 34.3 6,480 ロックフィルダム 北海道開発局

支流

括弧内は流域の自治体

  • ピリカベツ川(今金町、美利河ダムに流入)
  • ニセイベツ川(今金町、美利河ダムに流入)
  • チュウシベツ川(今金町、美利河ダムに流入)
  • 珍古辺川(今金町)
  • 上ハカイマップ川(今金町)
  • 下ハカイマップ川(今金町)
  • メップ川(今金町)
    • 左股川(今金町)
  • チブタウシナイ川(今金町)
  • 田代川(今金町)
  • トマンケシナイ川(今金町)
  • オチャラッペ川(今金町)
    • 善右衛門沢川(今金町)
    • 畑の沢川(今金町)
    • 濁川(今金町)
    • 馬場川(今金町)
  • パンケオイチャヌンペ川(今金町)
  • 利別目名川(今金町、せたな町)
    • 武沢川(せたな町)
    • ポン目名川(せたな町)
  • 不逢川(せたな町)
  • トンケ川(せたな町)
  • 冷水川(せたな町)
    • 下の沢川(せたな町)
  • 丸山川(せたな町)
  • 鍼川(せたな町)
    • 丸山川分水路(せたな町)
  • 真駒内川(せたな町)
    • 長淵川(せたな町)

並行する交通

鉄道

1987年3月16日まで、国鉄瀬棚線が並行していた。

道路

主な橋梁

注釈

  1. ^ a b c 後志利別川水系河川整備基本方針 : 国土交通省河川局
  2. ^ 国土交通省 水質ベスト5の変遷
  3. ^ 平成25年北海道内一級河川の水質現況” (PDF). 国土交通省北海道開発局. 2015年5月23日閲覧。
  4. ^ 北海道の川ポータル 後志利別川”. 北海道開発局. 2015年5月23日閲覧。
  5. ^ お勧め!!檜山管内日本一 後志利別川”. 北海道桧山振興局. 2015年5月23日閲覧。
  6. ^ 北海道開発局, 国土交通省. “後志利別川”. 北海道開発局. 2019年9月6日閲覧。

関連項目

外部リンク




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