函館湾とは? わかりやすく解説

はこだて‐わん【函館湾】

読み方:はこだてわん

北海道南西部津軽海峡面した湾。函館山噴火したのち、亀田半島との間に陸繋島(りくけいとう)ができて形成された。ガン・カモなどの生息地


函館湾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/11 18:22 UTC 版)

函館湾(はこだてわん)は、渡島半島の南部に位置する津軽海峡に面したであり[1]函館山の南の大鼻岬と松前半島東部の葛登支岬を結ぶ線の北側に位置している[2]

地理

函館湾の地図

函館山陸繋島とし、亀田半島との間で陸繋砂州(トンボロ)が形成され[3]、その西側に位置する湾である。湾口は幅8.4キロメートル、面積は65km2。湾内と湾口部の最大水深は共に58メートルであり、湾口の水深は湾奥に向かって漸減する。南側は津軽海峡に面する。行政区域としては函館市から北斗市にまたがっていて、湾の東側には函館港がある[2]

東端の函館山から北斗市街までは弓形の砂浜海岸となっており、その西側は海岸段丘となって海食崖を形成する地点で終端している。

自然環境

函館湾
函館湾の位置
函館湾上の薄明光線

津軽海峡および函館湾などの沿岸部の海洋生態系は地理的な条件から津軽暖流および親潮対馬暖流[4]と流入する河川からの影響(水温や栄養素や生活排水工場排水など)、渡島半島下北半島津軽半島などの沿岸地形に由来する海流などに左右され[5]、津軽暖流の流入量が変動するとそれに伴って植物プランクトンの発生状況をはじめとした生態系にも変化が見られる。植物プランクトンの全てが有益ではなく、2015年以降は毎年カレニアミキモトイに由来する赤潮の発生が報告されている。また、これらの赤潮の拡大には天候やアンモニア塩などの外的要因も関連している[1][6]

函館湾や近海ではサケマイワシカタクチイワシマアジマサバイカナゴマダイマガレイマコガレイクロソイアイナメノリホッキ貝ホタテガイアサリコンブなどの多様な生物が生息しており[5]、函館湾でも古くから漁業が営まれてきた湾の中央部から西側では漁獲されているが、赤潮や環境汚染による影響を受けやすいためにこれらの生息状況の把握には長期的なモニタリングを要する[6]

函館市の近海や津軽海峡や対岸の陸奥湾は現在でもミンククジラカマイルカ[7]イシイルカシャチなどの生息域としても知られており[5][8]、過去には函館湾の一帯にもセミクジラコククジラザトウクジラのような沿岸性の大型鯨類やイルカなどが見られていたと推測されるが、現在の函館湾での鯨類の日常的な出現は限られている[5][8][9][10]。また、函館港の開港のきっかけとなったのが捕鯨であり、日米和親条約の締結後に米国の捕鯨船などの補給用に開港されて以降は函館湾や近海でも捕鯨が行われた。函館の捕鯨業には指導役として江戸幕府からジョン万次郎が派遣されたり、アメリカ合衆国[5]プロイセン(現ドイツ)の捕鯨関係者も携わっていたとされている。その他、弥生町には現在でもセミクジラを模したクジラの供養塔が存在する[9][11][12]

また、青森県各地の遺跡からの痕跡や過去の捕獲記録が残されていることから、ニホンアシカ絶滅種)やトド[13]キタオットセイアザラシなども津軽海峡の一帯で見られた可能性がある[14][15][16]

大型魚類としてはウバザメオニイトマキエイ(マンタ)やマンボウなどが確認されており[17]、近年の気温と海水温の上昇はウミガメのような本来は暖かい海域を好む生物が津軽海峡に出現するきっかけになっていることが考えられる[4]

湾の利用状況

函館山から望む函館湾最奥部。

従来使われていた福山波止場[注 1]よりも波浪の影響が少ない事から、19世紀半ばに湾内東側に函館港が整備されて本州北海道を結ぶ物流拠点となった。以降は港を中心に栄えて、現在では東部の函館港周辺の臨海部にはフェリーなどの埠頭の他、造船業、製網業の工場などが立ち並んでいる。また西側の北斗市街地には長さ2キロメートルにおよぶ太平洋セメントの専用桟橋がある。

一方で、湾内への生活排水[6]工場排水の流入が増えて海水が汚染されたため、1980年から北海道によって函館湾流域下水道が整備され、1990年に供用が始まった。

湾岸の市町村

注釈

  1. ^ 松前福山波止場跡。現在の松前港より東の松前城地先の海岸にある。

出典

  1. ^ a b 北海道大学 (2024年10月1日). “函館湾の植物プランクトン季節変化メカニズムを解明 ~秋季から冬季にかけてのカレニア赤潮の発生長期化を初報告~”. 海洋研究開発機構. 2025年7月2日閲覧。
  2. ^ a b 函館湾”. 公益財団法人国際エメックスセンター. 2021年9月10日閲覧。
  3. ^ 函館市史 銭亀沢編 p.152-153
  4. ^ a b 北斗市役所・経済部・水産商工労働課 (2022年10月11日). “アカウミガメに "異変" 海水温 "上昇" で北海道に 産卵場所も "激減" で…”. 日テレNEWS24 (日本テレビ放送網). https://news.ntv.co.jp/category/society/a65433087666441bb7ff5c08ec7538e0 2025年7月2日閲覧。 
  5. ^ a b c d e 河村章人、中野秀樹、田中博之、佐藤理夫、藤瀬良弘、西田清徳 (1983). “青函連絡船による津軽海峡のイルカ類目視観察(結果)”. 鯨研通信 (日本観類研究所) 351・352: 29-52. 
  6. ^ a b c 北斗市役所・経済部・水産商工労働課 (2020年1月9日). “函館湾漁場環境保全 - 函館湾の漁場環境保全について”. 北斗市. 2025年7月2日閲覧。
  7. ^ 堀本高矩、金子拓未、柴田泰宙、松石隆 (2009). “津軽海峡内でのカマイルカの回遊”. 日本セトロジー研究 (日本セトロジー研究会、J-STAGE) 19: 13-15. https://www.jstage.jst.go.jp/article/cetology/19/0/19_3/_pdf 2025年7月1日閲覧。. 
  8. ^ a b 野田一郎 (2024年2月19日). “函館湾に体長7mミンククジラの死骸が漂着 専門家が調査、病死か”. 朝日新聞. https://www.asahi.com/articles/ASS2M5HG9S2MIIPE005.html 2025年7月1日閲覧。 
  9. ^ a b 松石隆『出動!イルカ・クジラ110番: 海岸線3066kmから視えた寄鯨の科学』海文堂出版〈北水ブックス〉、2018年11月1日、106–107頁。ISBN 978-4303800024 
  10. ^ FMいるかの名前の由来 & FMいるかの歴史”. [FMいるか]]. 2025年7月1日閲覧。
  11. ^ 松石隆 (2018年3月16日). “函館市と捕鯨”. 函館市. 2025年7月1日閲覧。
  12. ^ 函館市 / 函館市地域史料アーカイブ (2018年3月16日). “新しい産業分野をめぐって”. ADEAC. 2025年7月1日閲覧。
  13. ^ “函館山の海岸に焼き印を押されたトドを発見”. 北海道新聞. (2006年4月11日). https://www.hokkaido-np.co.jp/movies/detail/5293094919001/ 2025年7月1日閲覧。 
  14. ^ 青森県自然保護課, 2 青森県レッドリストに掲載されている希少野生生物の生息・生育状況, 5-33頁,
  15. ^ 宇仁義和「北海道近海の近代海獣猟業の統計と関連資料」『知床博物館研究報告』第22巻、斜里町立知床博物館、2001年3月、81-92頁、 CRID 1390292815272342528doi:10.24484/sitereports.125197-87140 
  16. ^ 小林由美, 條野真奈美, 後藤陽子, 服部薫, 桜井泰憲「渡島半島日本海沿岸における海生哺乳類,特に鰭脚類の出現と漁業被害」『北海道大学水産科学研究彙報』第61巻第2-3号、北海道大学大学院水産科学研究院、2011年12月、75-82頁、 CRID 1050282813987317888hdl:2115/48641ISSN 1346-1842 
  17. ^ 塩垣優(青森県水産総合研究センター内水面研究所). “青森県の海産魚類”. 増養殖研究所. 2025年7月12日閲覧。

参考文献

  • 『日本地名大辞典 1.北海道』 角川書店、1987年

座標: 北緯41度47分21.2秒 東経140度39分58.3秒 / 北緯41.789222度 東経140.666194度 / 41.789222; 140.666194




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