社会風刺とは? わかりやすく解説

社会風刺

作者如月文実

収載図書4コマ物語 起承転落
出版社文芸社
刊行年月2002.2


風刺

(社会風刺 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/22 07:58 UTC 版)

ジョージ・クルックシャンク画、ロシア遠征に失敗したナポレオンを風刺した漫画。ロウソク立てに据えられて、コサック兵に芯切りバサミで首を切られそうになっている。題名は『Snuffing out Boney!(墓に行け!)』

風刺(ふうし、: satire, : satire)とは、社会や人物の欠点や罪悪を遠回しに批判すること[1]。尚、風刺諷刺の代用表記である[2]

概説

風刺とは、何らかの実在の対象(たとえば具体的な人物、組織国家など)の欠点や愚かしさを暴きだす表現手法である。文章、絵画、映像 等で使われる。

現実を攻撃対象としているということは、風刺は憤り(怒り)に発する(根本動機になっている)ということであり、その点で、冷静な皮肉モラリスト風の描写、(パロディーなどの)戯作文学などとは一線を画している(つまり、異なっている)[3][注 1][注 2] [注 3][注 4]

だが、憤り(怒り)の直接的な表現である 《呪い》や《悪口》や《抗議》などは風刺とは言えない[3]。風刺であるためには、批判対象に対して距離をとり、自分の憤りを抑制して表現する必要がある[3]この独特な態度(つまり、怒りが表現を行う根本動機となっているが、その怒りを抑制しつつ表現する、という態度)こそが風刺の本質である[3]。そしてその表現方法は、対象の誇張的変形を伴い、機知を示すことが多い[3]

歴史

西欧の文学における風刺は、紀元前5世紀より、基本的に戯曲の形式による社会論評の形式として受け入れられた。古代ギリシアの劇作家アリストパネス(紀元前446年頃 - 紀元前385年頃)は、もっとも知られた風刺作家の一人である。

しばしば「風刺詩の始祖」とされるのは紀元前2世紀古代ローマの詩人ガイウス・ルキリウスである[3]

古典期の著名な風刺作家たちは、古代ローマ帝国(の早期)に活躍しており、具体的にはホラティウスペルシウス英語版ユウェナリスがいる[3]。ホラティウスは、ルキリウスの風刺詩をふまえつつ「上品で 打ち解けた表現」を風刺詩に与えた[3]。ペルシウスは難解な表現を用いた[3]。ウウェナリスは情熱的で激しい表現を見せた[3]。彼らは、後世の作品に大きな影響を与えることになった。特にユウェナリスは近世において「風刺詩の模範」とされた[3]

[いつ?]ケルト人の社会においては、吟遊詩人の風刺は(呪いと同様に)物理的な効果をもたらし得る、と考えられていた[要出典]

中世初期には、風刺作品の例は僅かにしか見られない。12世紀における中世中期の到来と近世口語文学の誕生により、風刺文学は復権を成し遂げた。しかしながら、この時代の風刺作品では公の人物に対する直接の風刺は稀であり、風刺は専ら寓話的な用法に用いられていた。文学作品の登場人物は時おり風刺の題材として取り上げられたが、実在の人物や制度が取り上げられることは滅多に無かった。

風刺によるこれより直接的な社会論評は16世紀に再び始まり、フランソワ・ラブレーの作品のような茶番劇(ファース)がより真剣な問題に取り組み、結果として王権の怒りを買うこととなった。しかし、最も偉大な風刺作家達は、合理主義を掲げた17世紀および18世紀の思想運動である啓蒙時代と共に現れた。この時、団体や個人に対する狡猾にして辛辣な風刺化は、民衆の武器となった。ガリヴァー旅行記でイギリス社会を痛烈に批判したジョナサン・スウィフトなどが代表例である。

19世紀の小説家マーク・トゥエインは、風刺新聞から長編小説に及ぶ様々な形式の風刺作品を発表した、最も有名なアメリカの風刺作家である。また同じ19世紀、ロシアにおいてはイヴァン・クルィロフの『寓話』が当時のロシア貴族社会を痛烈に風刺した。

20世紀において、風刺はオルダス・ハクスリージョージ・オーウェルなどの作家により、ヨーロッパを席捲する社会変動の危険性に対する、真剣かつ恐るべき論評に用いられた。よりユーモラスな風刺は、ピーター・クック(コメディアン)英語版アラン・ベネットジョナサン・ミラー英語版デヴィッド・フロストエレノア・ブロン英語版ダドリー・ムーアといった有名人らや、テレビ番組『That Was The Week That Was』によってリードされた風刺ブームにより、1960年代初めのイギリスで復興期を迎えた。今日でも風刺は社会的な論評と表現の形式として人気を保ち続けているが、風刺は常にユーモラスな物でなければならないという認識が広まりつつある(必ずしも風刺はユーモラスな物とは限らない)。

ポップ・カルチャーおよび公共メディアにおける風刺

いくつかの風刺作品での誇張表現は、大勢の人々に信じ込まれてしまう程に巧妙である。これらの作品における風刺の性質は、公には理解されないのかもしれない。その結果として、風刺作品の作家や制作者が激しい非難に晒された実例も存在する。2001年にイギリスのテレビ放送局チャンネル4は、児童性的虐待小児性愛問題に翻弄される現代ジャーナリズムを揶揄し風刺する意図の、パロディ時事問題シリーズ『Brass Eye』の特別番組を放映した。ユーモアの主題にするには「重大すぎる」と多くの人間から考えられている問題を、この番組が揶揄したことに激怒した視聴者から、放送局へ莫大な数の苦情が寄せられた。架空の馬鹿げたハードロック・バンドのドキュメンタリーであるパロディ映画『This is Spinal Tap』は、何人かの批評家からノンフィクションと間違えられた。

時おり、政治的あるいは社会的な指摘に用いられる事により、風刺は社会に変化をもたらしえる。例を挙げれば、漫画ドゥーンズベリー』が、州内でマイノリティに身分証の所持を義務付ける人種差別法を施行していたフロリダ州を風刺したすぐ後に撤廃され、改正法がドゥーンズベリー法という愛称で呼ばれるに至った。

2000年のカナダ国政選挙戦においては、カナダ同盟(旧改革党)による、十分な量の請願書がある場合には住民投票を義務付けるというシステムの提案が、「この1時間は22分(This Hour Has 22 Minutes)」という番組内で諷刺されたことで不評を買い、やがて撤回されてしまった。

風刺はコメディにおいて、頻繁に使用されつつあるように見える。多くの現代コメディ番組がある程度の風刺を用いており、コメディアニメも同様である。これらには『ザ・シンプソンズ』『ファーザー・オブ・ザ・プライド』『ファミリー・ガイ』『フューチュラマ』、更にオスカー賞を受賞した『ウォレスとグルミット/ペンギンに気をつけろ!』その他が含まれる。これらの作品はいずれも違ったタイプのコメディであるが、どれもある程度の風刺の上に成り立っている。その風刺の範囲は、『ザ・シンプソンズ』の社会時評から、『ファーザー・オブ・ザ・プライド』のジークフリード&ロイの人造ジャングルでの動物たちの生活にまで及ぶ。


著名な風刺作品の例

脚注

注釈

  1. ^ 風刺はパロディとは異なる。風刺は書き手の根本動機が憤りだ、という点で異なる。風刺のなかのいくつかのタイプのひとつ、「笑いで包んだ風刺」が、鑑賞する側から見てどのように感じられるか、鑑賞するにつれてどのように印象が変化してゆくか解説すると、風刺は、一見した段階(第一印象)ではユーモアに包まれているが、それは一種の偽装であり、鑑賞者が表に表れている《笑える要素》をじっくりとかみしめているうちに、いつのまにか、その下から「何らかの実在の対象に対する 本物の怒り」が現れてくるのであり、(第一印象とは裏腹に)、次第に いわゆる《笑えない要素》が根底に横たわっていることが感じられるようになるわけである。
  2. ^ またパロディ滑稽な効果をもたらすために、誇張された方法で他の芸術作品を模倣するユーモアの一形式である。それゆえにパロディは何らかの模倣による表現である。それに対して、風刺は必ずしも模倣ではない。
  3. ^ 「風刺」はしばしば対象を嘲笑的に(つまり、批判でありながら、笑いを誘うように)表現する。だが風刺にとって、笑いを誘うことは必須ではない。 風刺は(怒りを抑制している、というのが本質で)必ずしもユーモラスである必要はなく、事実、多くの風刺作品は悲劇に含まれる。(風刺はしばしば笑いを誘う表現を伴うが、実は風刺にとっては、ユーモアは(怒りを抑制しつつ表現するための、いくつかある手段のひとつであり)、あくまで二次的である。他方、全てのパロディは必然的にユーモラスな調子を帯びている。そこも異なっているのである。
  4. ^ なお、風刺を導入するバーレスクの形式は、2つの異なるカテゴリーへ分類できる。自然からそのままに採用された主題を高尚な形式で扱う「ハイ・バーレスク」と、叙事詩や詩の様式で伝統的に扱われる主題を採用し、それを貶める「ロウ・バーレスク」である。

出典

  1. ^ デジタル大辞泉「風刺」
  2. ^ 文心雕龍・書記』より「刺者達也 詩人諷刺」
  3. ^ a b c d e f g h i j k 小学館『日本大百科全書』「風刺」

関連項目



社会風刺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 02:12 UTC 版)

ビートたけし」の記事における「社会風刺」の解説

ツービート時代からの漫才もとより、『週刊ポスト連載の「毒針巷談」(その後世紀末毒談」を経て21世紀毒談」)や『新潮45連載東京スポーツ連載ビートたけし本紙客員編集長世相メッタ斬り』、テレビ番組ビートたけしのTVタックル』などで世相風刺する発言多く行っており、それが話題となることもある。例えば、1990年代に「『北野党』を立ち上げる」と冗談発言したことが大きく取り上げられたこともあった。 別の一例としては、1992年に『新潮45』の連載にて「『地球やさしく』なんかできない」のタイトルで、「地球優しくしたいなら人間殺さないといけない」と、当時政財界マスコミによる「エコロジーブーム」の欺瞞性および浅薄さを皮肉った。この「『地球やさしく』- 」は、同年6月18日付け朝日新聞に「ビートたけし地球環境」と題した環境問題への無関心戒める社説掲載されるなど反響呼んだ。なお、この文章1996年山形大学教育学部入学試験小論文試験出題にも使用された。 原子力発電については「原子力発電批判するような人たちは、すぐに『もし地震起きて原子炉壊れたらどうなるんだ』とか言うじゃないですか。ということは逆に原子力発電所としては、地震起きて大丈夫なように、他の施設以上に気を使っているはず。だから、地震起きたら、本当はここへ逃げるのが一番安全だったりする(笑)でも、新し技術に対しては『危険だ』と叫ぶ、オオカミ少年の方がマスコミ的にはウケがいい」「東京湾原発作れ」と称賛とも皮肉ともとれる発言をしている。 「北朝鮮による日本人拉致問題テーマにした映画作りたい」と2008年7月21日放送分「TVタックル2時間スペシャル収録発言したが、その場面がすべてカットされたことが「週刊文春2008年7月24日号で報じられことがあるニッポン放送オールナイトニッポン』にて、日本テレビから同局が「チャリティー番組」として放送し募金活動行っている『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』への出演オファー受けたが、拒否したことを明かしている。さらに「出るなら全員ノーギャラにすべき」と発言し偽善番組とも述べている。 『情報7daysニュースキャスター』で、当時アメリカ合衆国大統領バラク・オバマ同性婚支持する事を表明したニュース取り上げた際に「同性婚認められたら、そのうち動物との結婚認められるようになったりね」「結婚した2人が子ども育てるっていうけど、その子どもはどういう風になっていくんでしょうね。お前のお母さんお父さん?とか言われんじゃないの」とギャグとして発言しすぐさま渡辺えりから「どうしてそういうこと言うんですか」と反論されたことがある。 ただし、たけし本人はこういった発言あまりにも大きく取り上げられたり、反応されたりすることに対し、「芸人言っていることを一々真面目に取り上げるな」などと述べている。また、芸能ネタを語る事もあるが、話している事の中にはたけしの創作含まれていることが著書語られており、「嘘の情報源は俺」とも述べている。

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