すな‐やつめ【砂八目】
砂八目
スナヤツメ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/01/14 05:13 UTC 版)
| スナヤツメ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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キタスナヤツメ Lethenteron mitsukurii
北海道札幌市。シンタイプ標本。
ミナミスナヤツメ Lethenteron hattai
福岡県筑後川水系。成体。 |
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| 保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 絶滅危惧II類(環境省レッドリスト) |
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| 分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| Lethenteron spp.[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| スナヤツメ[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 隠蔽種 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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スナヤツメ(砂八目、Lethenteron spp.)はヤツメウナギ科の淡水魚である。
分布
鹿児島県、宮崎県を除く九州以北[3]。沿海州、中国北部、朝鮮半島に生息している。河川の下流域に生息している。日本に分布する個体群のアロザイム解析を行った結果、2群に分かれるとする報告がある[4]。それらは暫定的に「北方種」「南方種」に分けられている[5]。この仲間は原始的な魚類とされるが研究者によっては魚類ではないとみなすものもある。
南方種の分布の西限である長崎県では1914年(大正3年)の報告を最後に、発見例がなく2022年(令和4年)に県内で絶滅したとみなされたが、同年11月に西海市の河川で発見され、絶滅種の指定が外された[6]。
種分化
近縁種のカワヤツメ(回遊型)あるいはその祖先種から出現した矮小成熟個体が何らかの原因で海洋との往来を阻まれた後、非寄生性で河川型(陸封型)の集団が独立し本種に分化したと考えられている[4]。
日本産のスナヤツメ類の分類は混乱しており、以前はスナヤツメL. reissneri、シベリアヤツメL. kessleri、カワヤツメL. japonicumの3種に分類されていたが[7]、遺伝学的研究により、日本産のスナヤツメには遺伝的に区別可能な北方型と南方型が存在することや、これらの2型がロシア産のL. reissneriとは別種であることが明らかになった[8]。
2024年12月、水産研究・教育機構水産大学校、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、京都大学大学院理学研究科、および北海道教育大学国際地域学科の研究グループは、日本産カワヤツメ属について遺伝学的・形態学的再検討を行い、2種の新種Lethenteron satoi ウチワスナヤツメ(新標準和名)とLethenteron hattai ミナミスナヤツメ(新標準和名)を報告し、Lethenteron mitsukurii キタスナヤツメ(新標準和名)、 Lethenteron reissneri シベリアヤツメ、Lethenteron camtschaticum カワヤツメと合わせて計5種が存在することを発表した[9]。
- Lethenteron camtschaticum (Tilesius, 1811) カワヤツメ Arctic lamprey[10]
- 北極圏に分布[11]。カワヤツメ属では唯一寄生性であり回遊を行う[10][11]。L. japonicum (von Martens, 1868) はシノニムとされる[10][11]。
- Lethenteron hattai Iwata, Sakai & Goto, 2024 ミナミスナヤツメ Southern Japanese brook lamprey[11]
- タイプ産地は山口県下関市の稲見川(木屋川水系)[11]。本州の秋田県以南、四国、九州北部、朝鮮半島南部に分布[2][11]。鰓孔間の下側に感丘群がある[11]。
- Lethenteron mitsukurii (Hatta, 1901) キタスナヤツメ Northern Japanese brook lamprey[11]
- タイプ産地は北海道札幌市[11]。北海道から本州の滋賀県にかけて分布[11]。L. matsubarai Vladykov & Kott, 1978をシノニムとする説もある[10]。
- Lethenteron satoi Sakai, Iwata & Watanabe, 2024 ウチワスナヤツメ Fan-tailed brook lamprey[11]
- タイプ産地である北海道の月寒川からのみ記録がある[11]。尾鰭は丸くうちわ状になる[11]。
- Lethenteron reissneri (Dybowski, 1869) シベリアヤツメ Far Eastern brook lamprey[12]
- 北海道、アムール川流域のシルカ川・松花江水系、エニセイ川水系のアンガラ川流域に分布[10]。 L. matsubarai Vladykov & Kott, 1978をシノニムとする説もある[11]。
- オビ川流域に分布するL. kessleri (Anikin, 1905) は別種であり、日本に分布しない[11]。
特徴
外見はウナギに似ており、幼生、成魚とも鰓穴(えらあな)が7つあり、口は丸い吸盤状で顎がない。成魚の口器は吸盤状で内側に3対の歯がある。成長すると約200ミリメートル程度。近縁種のカワヤツメ(寄生性)とは異なり、非寄生性で海へ下らず一生淡水で生活する[3]。
食性
「アンモシーテス」と呼ばれる幼生期は、目がなくミミズのように見える。デトリタスや藻類などを食べる。4年後の秋に成体になり、140 - 190ミリメートルで変態して眼が現れるが、一方で消化系がなくなり、翌春の産卵期を過ぎて死ぬまで何も食べなくなる。春になると産卵し寿命を終える。
開眼
スナヤツメは一生のうちのほとんどを目を閉じた状態で過ごし、産卵期にわずかに開く程度とされる。
人間との関わり
近年、水路のコンクリート化や谷戸の開発によって減少している。
食用にはされない[13]。
出典
- ^ 後藤晃「スナヤツメ北方種」「スナヤツメ南方種」、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室 編『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-4 汽水・淡水魚類』ぎょうせい、2015年、256-259頁。
- ^ a b c 中坊徹次「カワヤツメ属」、中坊徹次 編・監修『小学館の図鑑Z 日本魚類館』小学館、2018年、8-9頁。
- ^ a b “スナヤツメ”. 河川生態ナレッジデータベース. 国土交通省 国土技術政策総合研究所 (2012年2月26日). 2015年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月4日閲覧。
- ^ a b “ヤツメウナギの種分化”. 富山大学理学部生物学科 山崎研究室 (2007年10月19日). 2017年3月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月4日閲覧。
- ^ 佐藤陽一「スナヤツメ」『徳島県希少野生生物保護管理マニュアル 2010』徳島県県民環境部自然環境課、2010年、15-16頁。2023年7月4日閲覧。
- ^ 「スナヤツメ、100年ぶり見つけた 昨年、県が絶滅種指定 /長崎県」『朝日新聞』2023年6月23日、21頁。
- ^ 山崎裕治・岩田明久「シベリアヤツメの本州における初記録」『魚類学雑誌』第44巻 1号、日本魚類学会、1997年、51-55頁。
- ^ 山崎裕治・後藤晃「ヤツメウナギ類における系統分類と種分化研究の現状と課題」『魚類学雑誌』第47 巻 1号、日本魚類学会、2000年、1-28頁。
- ^ “新種ウチワスナヤツメとミナミスナヤツメを報告 ―日本産カワヤツメ属は2新種を含む5種に―”. 水産研究・教育機構. 2025年3月1日閲覧。
- ^ a b c d e Alexander M. Naseka & Claude B. Renaud (2020). Morphology-based taxonomic re-assessment of the Arctic lamprey, Lethenteron camtschaticum (Tilesius, 1811) and taxonomic position of other members of the genus. ZooKeys 991: 1-67. https://doi.org/10.3897/zookeys.991.54938
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o Harumi Sakai, Akihisa Iwata, Katsutoshi Watanabe & Akira Goto (2024). Taxonomic re-examination of Japanese brook lampreys of the genus Lethenteron with descriptions of two new species, Lethenteron satoi sp. nov. and Lethenteron hattai sp. nov., and re-description of Lethenteron mitsukurii. Ichthyological Research 72, 289–319. https://doi.org/10.1007/s10228-024-00997-7
- ^ Claude Renaud & Alexander Naseka (2015). Redescription of the Far Eastern brook lamprey Lethenteron reissneri (Dybowski, 1869) (Petromyzontidae). ZooKeys 506: 75-93. https://doi.org/10.3897/zookeys.506.9817.
- ^ “スナヤツメ(すなやつめ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 百科事典マイペディア. DIGITALIO. 2025年3月1日閲覧。
外部リンク
- 神奈川県水産技術センター 内水面試験場 スナヤツメ
- 岡田雋、邦産ヤツメの変態後に於ける外部形態変化 陸水学雑誌 Vol.7 (1937) No.1 P.1-8, doi:10.3739/rikusui.7.1
- スナヤツメ(南方種)のCT/3Dモデル(アジア淡水魚・淡水生物データベース ffish.asia)
固有名詞の分類
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