山体崩壊とは? わかりやすく解説

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さんたい‐ほうかい〔‐ホウクワイ〕【山体崩壊】

読み方:さんたいほうかい

山体火山活動地震などによって、大規模な崩壊起こすこと。1980年米国活火山セントヘレンズ起きたものでは、山頂から中腹までが崩壊し直径1.5キロメートルもの巨大な火口形成され、その標高400メートルほど低くなった。


山体崩壊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/15 06:19 UTC 版)

山体崩壊前のセント・ヘレンズ山(1980年)
山体崩壊後のセント・ヘレンズ山(1982年)

山体崩壊(さんたいほうかい、sector collapse)とは、火山などに代表される脆弱な地質条件の山体の一部が地震動噴火、深層風化などが引き金となって大規模な崩壊を起こす現象である。

崩壊のメカニズム

火山活動に関連するもの

火山活動によって火山が成長をするに従って、急峻で不安定な地形が生み出されることになる。また火山の成立から時間が経過する中で、風化作用や火山体内部での熱水作用などの結果、火山そのものがもろく崩れやすくなっていく。そのような中、強い地震動や噴火が引き金となって火山体の一部が大規模に崩壊する山体崩壊が発生する。

セント・ヘレンズ山(左奥)の岩屑なだれ堆積物。流れ山が形成されている。(2016年)

山体崩壊時には崩壊した火山体がふもとに向かって一気になだれ落ちる岩屑なだれ(がんせつなだれ、debris avalanche)という現象が発生し、その結果、火山そのものは大きく崩壊し、岩屑なだれが堆積した場所には、崩落した火山体の中でばらばらになりきらなかった部分が多数の小さなを作る。これを流れ山と呼ぶ。崩壊した山体があった場所にはU字状の大きな窪地が生じ、これを馬蹄形カルデラと呼ぶ。

山体崩壊は噴火と比べると発生回数が少なく、比較的稀な現象ではあるが、これまで多くの火山で発生しており、一つの火山で複数回発生することも稀ではない。またかつては火山の一生の末期に発生すると考えられていたが、紀元前500〜800年頃に発生したと見られる富士山の御殿場岩なだれなどのように、必ずしもそうとは限らない。

風化の進行によるもの

変成岩火山噴出物などで形成された山体、破砕帯に位置する山体などは深層風化が生じやすく、集中豪雨地震または何らきっかけがないまま突発的に大規模な山体崩壊を生じさせる。形態的に、巨大な地すべり性崩壊、深層崩壊、転倒型の崩壊(トップリング)が知られている。

地震動によるもの

主な山体崩壊の歴史

1586年の天正地震による帰雲山西面の山体崩壊(中央部)
田の原の駐車場から望む長野県西部地震による御嶽山の南面の山体崩壊(2010年8月撮影)

大谷崩れ、鳶山崩れ、稗田山崩れを「日本三大崩れ」と称することがある。

島原半島

1792年、雲仙岳の眉山の山体崩壊が発生。大規模な岩屑なだれが発生し、有明海に流れ込んで大きな津波を引き起こした。眉山の崩壊の原因はまだはっきりしていない点が多いが、地震動によるものとの説が有力である。この崩壊は、対岸の熊本県側に達する津波を生じさせ、死者15,000人を越える災害となった。

磐梯山

1888年、水蒸気爆発が引き金となって磐梯火山で大規模な崩壊が発生。岩屑なだれによって長瀬川がせき止められ、桧原湖小野川湖秋元湖五色沼などの湖沼ができた。磐梯山の場合、山から湧いていた温泉により岩石の風化が進んでいたことが崩壊の要因となった。

その他

20世紀末以降の研究によれば、ハワイ諸島カナリア諸島の巨大盾状火山で、桁違いに巨大な山体崩壊が度々発生してきたことが明らかになった。この崩壊の結果、北太平洋または北大西洋一帯に波高数十メートルの津波が押し寄せたと見られている。

近い将来に噴火するとされる富士山でも、大規模な山体崩壊が起きるのではないかと懸念されている。

山体崩壊の影響

山体崩壊はしばしば河道閉塞とその決壊による洪水・土石流をもたらす。大谷崩れの安倍川、鳶山崩れの常願寺川のように、源流部に大量の土砂が堆積し、長年にわたって大雨の度に土砂が流出するようになることもある。

その反面、磐梯山の山体崩壊によって誕生した檜原湖や、北海道駒ケ岳の山体崩壊で生まれた大沼、小沼などの湖沼群のように、堰き止め湖が形成されて後世の観光名所となることもある。紀元前1,000年頃の箱根火山神山で発生した山体崩壊では芦ノ湖が誕生し、また紀元前466年に発生した鳥海山の山体崩壊は、かつて松尾芭蕉もその美しさを称えた松島と並び称される名勝、象潟を生み出した[2]

脚注

  1. ^ 宮地直道:富士山の大規模噴火と山体崩壊日本火山学会第11回公開講座
  2. ^ 「象潟」の成り立ち(象潟町郷土資料館)

関連項目

外部リンク


山体崩壊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 06:52 UTC 版)

1888年の磐梯山噴火」の記事における「山体崩壊」の解説

小磐梯消滅させた山体崩壊は、崩壊部分ボーリング調査結果滑りやすい性質凝灰岩層をすべり面として山体崩れたものであった考えられている。 小磐梯崩壊した跡には、南北約2キロメートル東西1.52.1キロメートル深さ100400メートル馬蹄カルデラ出来た。なお馬蹄型カルデラ北側については、岩屑なだれ流下した方向に当たるためにカルデラ壁は無い。カルデラ壁は垂直に近く崩れやすいため、噴火直後から崩落続いている。 馬蹄型のカルデラ北部から、桧原湖南岸付近までの約3キロメートル、幅約600メートル深さ4080メートルの、アバランシュバレーと呼ばれる谷底平らな箱状の谷が形成されている。このアバランシュバレーは山体崩壊による岩屑なだれ山肌削ったか、または地すべり誘発させたことによって形成されたものと考えられている。 岩屑なだれ時速80キロメートル山麓向けて流れ下った考えられている。岩屑なだれ山麓流れ下って磐梯山山頂部から北側から北東側にかけて約34平方キロメートル範囲扇形広がり長瀬川やその支流の谷を埋め尽くした。最も長距離流れたものは北側に約15キロメートル流れ下った主流はアバランシュバレーを通って長瀬川の上方面向かった考えられ、アバランシュバレーの延長線上に分布する流れ山規模密度は特に大きい。岩屑なだれ主流長瀬川の上方面流れ下ったため、長瀬川の上流部は最も厚い堆積物堰き止められることになり、その結果として最も大きな桧原湖形成された。更に岩屑なだれ長瀬川支流小野川堰き止めて小野川湖同じく長瀬川支流中津川大倉川堰き止めて秋元湖形成された。また、岩屑なだれ堆積地は起伏富んでおり、低い場所には溜まり五色沼などの小湖沼数多く形成されることになった。 なお、山体崩壊は火山の噴火だけではなく地震等によっても誘発される噴火による山体崩壊の岩屑なだれと非火山性のものとは、流動性違いがあるとの研究があり、1888年の磐梯山噴火時の岩屑なだれ性質は、噴火よるものとよく合致しているとの分析結果がある。 岩屑なだれ流れ下り堆積した磐梯山北麓には広い範囲流れ山分布している。流れ山陸地ばかりでなく、桧原湖小野川湖秋元湖などの湖底にも分布している。流れ山大きさ底部数十メートルから200メートル程度、高さは数メートルから20メートル以下のものがほとんどである。また山体崩壊の岩屑なだれは、応力低下するにつれて急速に粘度上昇する非ニュートン流体チキソトロピー的な性質知られている。そのため自然堤防側端崖、末端崖といった地形形成するが、磐梯山北麓でははっきりとした自然堤防側端崖、末端崖は確認できない。これは1888年の磐梯山噴火における岩屑なだれは、チキソトロピー性質薄かった可能性や、噴火以前原地形影響受けた可能性指摘されている。

※この「山体崩壊」の解説は、「1888年の磐梯山噴火」の解説の一部です。
「山体崩壊」を含む「1888年の磐梯山噴火」の記事については、「1888年の磐梯山噴火」の概要を参照ください。

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