岩屑雪崩
別名:岩屑なだれ、岩屑流
山が崩壊して、雪崩のように麓まで流れ落ちる現象。主に、火山の噴火などに伴う山体崩壊の結果として発生する。
岩屑雪崩は、膨大な量の土砂・岩屑が、表層雪崩の要領で高速に滑り落ちてくるという特徴がある。高速である分だけ、遠方へ到達しやすい性質もある。
寛政年間に発生した「島原大変肥後迷惑」と呼ばれる眉山の山体崩壊では、3億立方メートルを優に超える体積の土砂・岩屑が岩屑雪崩となって崩れ落ちたとされる。
文部科学省は2012年5月、富士山の真下に巨大地震の震源となりうる活断層が存在する可能性があることを発表した。この活断層を震源としてマグニチュード7級の地震が発生した場合、富士山が崩壊し岩屑雪崩を起こす可能性もあるという。
がんせつ‐なだれ【岩×屑雪‐崩】
読み方:がんせつなだれ
⇒岩屑流
山体崩壊
(岩屑なだれ から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/15 06:19 UTC 版)
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山体崩壊(さんたいほうかい、sector collapse)とは、火山などに代表される脆弱な地質条件の山体の一部が地震動や噴火、深層風化などが引き金となって大規模な崩壊を起こす現象である。
崩壊のメカニズム
火山活動に関連するもの
火山活動によって火山が成長をするに従って、急峻で不安定な地形が生み出されることになる。また火山の成立から時間が経過する中で、風化作用や火山体内部での熱水作用などの結果、火山そのものがもろく崩れやすくなっていく。そのような中、強い地震動や噴火が引き金となって火山体の一部が大規模に崩壊する山体崩壊が発生する。
山体崩壊時には崩壊した火山体がふもとに向かって一気になだれ落ちる岩屑なだれ(がんせつなだれ、debris avalanche)という現象が発生し、その結果、火山そのものは大きく崩壊し、岩屑なだれが堆積した場所には、崩落した火山体の中でばらばらになりきらなかった部分が多数の小さな丘を作る。これを流れ山と呼ぶ。崩壊した山体があった場所にはU字状の大きな窪地が生じ、これを馬蹄形カルデラと呼ぶ。
山体崩壊は噴火と比べると発生回数が少なく、比較的稀な現象ではあるが、これまで多くの火山で発生しており、一つの火山で複数回発生することも稀ではない。またかつては火山の一生の末期に発生すると考えられていたが、紀元前500〜800年頃に発生したと見られる富士山の御殿場岩なだれなどのように、必ずしもそうとは限らない。
風化の進行によるもの
変成岩や火山噴出物などで形成された山体、破砕帯に位置する山体などは深層風化が生じやすく、集中豪雨や地震または何らきっかけがないまま突発的に大規模な山体崩壊を生じさせる。形態的に、巨大な地すべり性崩壊、深層崩壊、転倒型の崩壊(トップリング)が知られている。
地震動によるもの
主な山体崩壊の歴史
- 887年 仁和地震による八ヶ岳山麓の崩壊
- 1586年 天正地震による帰雲山の崩壊(これにより内ヶ島氏が滅亡した)
- 1640年 北海道駒ケ岳の噴火に伴う崩壊
- 1707年 宝永地震による大谷崩れおよび五剣山の崩壊
- 1741年 渡島大島の噴火に伴う崩壊
- 1751年 宝暦高田地震による名立崩れ
- 1792年 島原半島眉山の崩壊(後述、島原大変肥後迷惑も参照)
- 1815年 1815年のタンボラ山噴火に伴う崩壊(インドネシア・スンバワ島)
- 1847年 善光寺地震による岩倉山の崩壊
- 1858年 飛越地震による鳶山崩れ(大鳶崩れ)
- 1883年 1883年のクラカタウの噴火に伴う崩壊(インドネシア・スンダ海峡)
- 1888年 リッター島噴火に伴う崩壊
- 1888年 磐梯山噴火に伴う崩壊(後述)
- 1911年 稗田山崩れ(長野県小谷村)
- 1961年 昭和36年梅雨前線豪雨による大西山の崩壊
- 1980年 セント・ヘレンズ山の噴火に伴う崩壊(アメリカ合衆国・ワシントン州)

大谷崩れ、鳶山崩れ、稗田山崩れを「日本三大崩れ」と称することがある。
島原半島
1792年、雲仙岳の眉山の山体崩壊が発生。大規模な岩屑なだれが発生し、有明海に流れ込んで大きな津波を引き起こした。眉山の崩壊の原因はまだはっきりしていない点が多いが、地震動によるものとの説が有力である。この崩壊は、対岸の熊本県側に達する津波を生じさせ、死者15,000人を越える災害となった。
磐梯山
1888年、水蒸気爆発が引き金となって磐梯火山で大規模な崩壊が発生。岩屑なだれによって長瀬川がせき止められ、桧原湖、小野川湖、秋元湖、五色沼などの湖沼ができた。磐梯山の場合、山から湧いていた温泉により岩石の風化が進んでいたことが崩壊の要因となった。
その他
20世紀末以降の研究によれば、ハワイ諸島やカナリア諸島の巨大盾状火山で、桁違いに巨大な山体崩壊が度々発生してきたことが明らかになった。この崩壊の結果、北太平洋または北大西洋一帯に波高数十メートルの津波が押し寄せたと見られている。
近い将来に噴火するとされる富士山でも、大規模な山体崩壊が起きるのではないかと懸念されている。
山体崩壊の影響
山体崩壊はしばしば河道閉塞とその決壊による洪水・土石流をもたらす。大谷崩れの安倍川、鳶山崩れの常願寺川のように、源流部に大量の土砂が堆積し、長年にわたって大雨の度に土砂が流出するようになることもある。
その反面、磐梯山の山体崩壊によって誕生した檜原湖や、北海道駒ケ岳の山体崩壊で生まれた大沼、小沼などの湖沼群のように、堰き止め湖が形成されて後世の観光名所となることもある。紀元前1,000年頃の箱根火山の神山で発生した山体崩壊では芦ノ湖が誕生し、また紀元前466年に発生した鳥海山の山体崩壊は、かつて松尾芭蕉もその美しさを称えた松島と並び称される名勝、象潟を生み出した[2]。
脚注
- ^ 宮地直道:富士山の大規模噴火と山体崩壊日本火山学会第11回公開講座
- ^ 「象潟」の成り立ち(象潟町郷土資料館)
関連項目
外部リンク
- 吉田英嗣:土砂供給源としてみた日本の第四紀火山における巨大山体崩壊地学雑誌 2010年 119巻 3号 p.568-578, doi:10.5026/jgeography.119.568
- 西本晴男:火山地域における火山泥流,泥流,土石流の表現方法に関する考察 砂防学会誌 2010年 63巻 2号 p.26-37, doi:10.11475/sabo.63.2_26
岩屑なだれ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/08 14:18 UTC 版)
戸室山は爆発によって西側(金沢市街側)山腹が崩壊しており、その山麓に岩屑なだれ堆積物が分布する。流れ山と呼ばれる多数の小丘をつくるとともに、大量の岩塊が含まれる。戸室山の基盤高度は東側で約400m、西側で約300mであり、西側へ約6度傾く斜面上にあり、崩壊した部分は溶岩円頂丘底面の最大傾斜方向に当たる。戸室山は底面積1.25km2、基盤からの高さ200mで、体積は0.111km3と推定される。戸室山の三日月型の山体について、南北の尾根の同じ高さの地点を直線で結んだ形が本来のものと仮定して崩壊によって失われた凹部の体積を計測すると0.016km3となる。北陸周辺の火山体崩壊の例には、1984年の御岳南斜面の伝上崩壊(0.036km3)、4400年前の白山東斜面の大白川岩屑流(0.13km3)などがある。戸室山の崩壊はこれらより小規模だが、緩傾斜の丘陵上の比較的なだらかな溶岩円頂丘なのに、全体積の10%以上が崩壊した点で特異である。 1999年、この岩屑なだれによる流れ山中にトチノキが巻き込まれた露頭が発見され、岩屑なだれ発生時の14Cによる年代測定が可能となった。半減期5568年を用いた経過年は18200±200年であった(最新値5730年を用いると18700±200年)。この年代は最終氷期・後期更新世を示す。 この岩屑なだれの理由は、火山の基盤となった地形面が金沢市方向(西)に傾斜していることと、溶岩円頂丘が形成された際、この傾斜の影響で溶岩円頂丘の下流側の斜面が急傾斜に作られていたためと考えられる。 有史以降、記録に残る噴火はない。
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