田名向原遺跡とは? わかりやすく解説

田名向原遺跡

名称: 田名向原遺跡
ふりがな たなむかいはらいせき
種別 史跡
種別2:
都道府県 神奈川県
市区町村 相模原市田名
管理団体
指定年月日 1999.01.28(平成11.01.28)
指定基準 史1
特別指定年月日
追加指定年月日
解説文: 山中湖水源として相模湾流れ相模川城山湖付近水源とする境川挟まれ相模野台地には,後期旧石器時代遺跡多数分布する。この南部相模原市があり,市の西端に田名向原遺跡が位置する。この地域組合施工による約53ヘクタール区画整理事業計画され,本遺跡ほかの事前発据調査田名塩田遺跡群発掘調査団によっで実施された。
 本遺跡は,相模川左岸比高11mの低位段丘上に立地するが,遺跡の川寄りでは水成層が堆積し始め相模川下刻考慮すれば後期旧石器時代には相模川べりに位置していた。地表から探さ2・5mの約1万5千年前の地層から,各2ケ所の石器集中地点礫群一棟建物跡発見された。建物跡考えられる地点からは,径約10mの範囲に主に黒曜石製の180点ほどの石槍少量スクレイパーナイフ形石器、製作の際に生じた多量石核剥片など,合計3,000近く石器出土した周囲には多孔質安山岩の拳大の礫,敲石磨石台石など約130点と,凝灰岩石核大型剥片原石など合計220点が環状巡っていた。内部10ケ所には柱穴考えられる30~60cmの褐色部がほぼ等間隔円形並びその内側にも2ケ所発見された。またほぼ中央部には径90と65cmの2ケ所の焚き火跡が確認された。なお多量に出土した黒曜石石器と本遺跡から150m離れた同時期の地点から発見され9点黒曜石原石は,信州産が主体であり同地域との強い結びつきうかがえる
 旧石器時代人々遊動生活送り落し穴礫群石器集中地点除けば,ほとんど土地に生活痕跡残さないこのような状況の中,旧石器時代末に当たる本遺跡遺構は、炉跡、柱穴思われる穴,外周の円礫群などを持つ日本最古確実な建物跡である。相模川べりにあるという特色持ちその大きさや2基の地床炉をもつなどの特殊性から見て,川を遡上するサケ捕獲目的逗留し解体加工した作業場建物推定するともできる。晩氷期温暖化とともに遺跡川筋低地進出し集団による内水面漁労定住へ契機になった考えられている。また信州系を主体として箱根系の黒曜石搬入されており,当時集団移動実態川べりでの生業・生活の様相を知るなど,l日石時代から縄文時代過渡期における歴史的発展経緯を伺わせる貴重な遺跡である。よって史跡指定し保護しようとするものである

田名向原遺跡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/01 06:48 UTC 版)

旧石器時代建物遺構の原寸復元模型(史跡田名向原遺跡公園)
田名向原
遺跡
遺跡の位置

田名向原遺跡(たなむかいはらいせき)は、神奈川県相模原市中央区田名塩田に所在する後期旧石器時代末(約20,000年前-18,000年前)から縄文時代古墳時代にかけての複合遺跡である。国の史跡

遺跡概要

相模川左岸の比高11メートルの低位段丘上に立地している。遺跡の川寄りでは水成層の堆積がみられ、後期旧石器時代の本遺跡は相模川べりに位置していたと推定される。

本遺跡は田名塩田地区にある遺跡群(田名塩田遺跡群)の1つで[1]土地区画整理事業(住宅地化)に伴って1989年(平成元年)から発掘調査が行われ、古墳時代古墳群(谷原古墳群)や縄文時代などが発見されていたが、1997年平成9年)の調査で旧石器時代の平地建物跡と推定される遺構(住居状遺構)が発見された。住居状遺構は、直径約10メートルの円形の範囲を円礫(川原石)で囲んだものであり、内部からは柱穴12基と焚き火跡2箇所が検出されている。本遺構は、川辺に接していたと考えられ、サケマス類の季節的・集約的な漁場につくられた半定住用の建物と推定されている。

また、二次加工をともなう剥片や大量の母岩石核も集中して見つかっており、旧石器時代人の石器製作の場として利用されたと推定されている。槍先形石器の石材には長野県産、伊豆産、および箱根産の黒曜石が用いられ、遠隔地との交流も示唆される。成形された石器では尖頭器193点のほかナイフ形石器50点あまりが出土した。

本遺跡の建物跡は、炉跡、柱穴、外周の円礫群などをともない、確実なものとしては大阪府藤井寺市はさみ山遺跡例などに並び、日本列島で10例程度しか確認されていない列島最古級の建物跡である[2]

本遺跡は、1999年平成11年)1月28日に国の史跡に指定され[3]相模原市によって史跡環境整備が進められた。

史跡田名向原遺跡公園

2007年(平成19年)3月31日には遺跡公園「史跡田名向原遺跡公園」として開園した。旧石器時代の住居状遺構のほか、同じ田名向原遺跡(田名塩田遺跡群)内で検出された縄文時代竪穴建物の復元建物や、古墳時代谷原古墳群の第12号墳の移築古墳が野外展示されている。また、公園用地内で発見された谷原13号墳・谷原14号墳は、埋め戻し保存の形で公園内に現地保存されている[4]。2009年(平成21年)4月には、県道を挟んで公園の向かいに史跡田名向原遺跡旧石器時代学習館が開館した[5]

所在地

相模原市中央区田名塩田3-313-3

交通

JR相模線原当麻駅から「望地キャンプ場入口」行き「塩田下」下車

参考画像

脚注

  1. ^ 展示内容(田名向原遺跡)”. 相模原市教育委員会 (2021年6月29日). 2022年2月14日閲覧。
  2. ^ 堤 2009, pp. 67–71.
  3. ^ 相模原市教育委員会『国指定史跡 田名向原遺跡保存整備報告書』相模原市教育委員会、2009年3月31日、1頁。 
  4. ^ 施設案内 史跡田名向原遺跡旧石器時代学習館(旧石器ハテナ館)”. 相模原市教育委員会 (2023年5月26日). 2025年3月1日閲覧。
  5. ^ 整備の経緯”. 相模原市教育委員会 (2018年4月13日). 2022年2月14日閲覧。

参考文献

  • 堤, 隆『ビジュアル版・旧石器時代ガイドブック』新泉社〈シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊第2巻〉、2009年8月25日。ISBN 9784787709301 

関連項目

外部リンク

座標: 北緯35度31分43.3秒 東経139度21分19.8秒 / 北緯35.528694度 東経139.355500度 / 35.528694; 139.355500


田名向原遺跡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 10:13 UTC 版)

史跡田名向原遺跡旧石器時代学習館」の記事における「田名向原遺跡」の解説

遺跡田名塩田地区にある遺跡田名塩田遺跡群)の1つで、土地区画整理事業住宅地化)に伴って1989年平成元年)から発掘調査が行われ、古墳時代古墳群谷原古墳群)や縄文時代などが発見されていたが、1997年平成9年)の旧石器時代調査で、約2万年前建物跡住居)と推定される遺構発見された。日本の旧石器時代住居遺構極めて発見例少なく人類定住化歴史を知るうえで貴重な遺跡として1999年平成11年1月に国の史跡指定された。 現地遺構保存整備などをへて、2007年平成19年3月31日に「史跡田名向原遺跡公園」として公園化された。旧石器時代住居遺構のほか、同じ田名向原遺跡内から発見され縄文時代竪穴住居復元住居や、古墳時代谷原古墳群第12号墳の移築古墳野外展示されている。また、公園用地内で発見され谷原13号墳・谷原14号墳は、埋め戻し保存の形で公園内現地保存されている。

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