ジャズ ジャズの概要

ジャズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 19:59 UTC 版)

ジャズ
様式的起源 ブルース[1]ラグタイム[2]
文化的起源 19世紀、アメリカ南部(諸説あり)
使用楽器 ピアノトランペットトロンボーンサクソフォンクラリネットフルート鍵盤楽器コントラバスドラムギター
派生ジャンル
サブジャンル
  • アヴァンギャルド・ジャズ
  • ビッグバンド
  • ビバップ
  • チェンバー・ジャズ
  • クール・ジャズ
  • フリー・ジャズ
  • ジプシー・ジャズ
  • ハード・バップ
  • ラテン・ジャズ
  • コンテンポラリー・ジャズ
  • モード・ジャズ
  • ネオバップ英語版
  • ポスト・バップ
  • プログレッシブ・ジャズ英語版
  • ソウル・ジャズ
  • スウィング・ジャズ
  • トラッド・ジャズ
  • 融合ジャンル
  • アシッドジャズ
  • アフロビート
  • ボサノヴァ
  • クロスオーバー・ジャズ英語版
  • ダンスバンド英語版
  • フリー・ファンク
  • インド・ジャズ英語版
  • ジャム・バンド
  • パンク・ジャズ
  • ジャズ・ロック
  • ジャズ・ラップ
  • マンボ英語版
  • ニュージャズ
  • スカ・ジャズ
  • スムーズジャズ
  • スウィング・リバイバル
  • 関連項目
  • スタンダード・ナンバー
  • テンプレートを表示

    概要

    ジャズの特徴は、スウィングするリズムや、裏の音符の多いシンコペーションのあるリズム、初期にブルースの影響を受けた(ブルーノートもあったが、これは基本的にはブルースである)複雑なコード、複雑なスケール、コールアンドレスポンス・ボーカル、ポリリズム即興演奏などである。ジャズのルーツは、西アフリカの文化と音楽的表現、そして黒人の伝統にある[6][7]

    ジャズが世界中に広まるにつれ、国や地域、地元の音楽文化が取り入れられ、さまざまなスタイルが生まれた。ニューオリンズのジャズは1910年代初頭に始まり、それまでのブラスバンドのマーチ、フランスのカドリーユ、ラグタイム、ブルースに、ポリフォニックな即興演奏を組み合わせたものであった。ただ、ジャズの淵源は、ニューオリンズといった一地域のみに求められるものではない[8]。アメリカ各地では、様々な形式のポピュラー音楽が現れており、そしてそれらは、共通の起源[9]や音楽的方向性を持ちながらも、個々の状況に応じて発展していった[8]。1930年代には、アレンジされたダンス志向のスウィングビッグバンド、カンザス・シティ・ジャズ、ジプシー・ジャズ(ミュゼットワルツを強調したスタイル)などのスタイルが知られるようになった。初期のジャズの代表的なミュージシャンには、ルイ・アームストロング[10]デューク・エリントンらがいた[11]白人のポール・ホワイトマンを”キング・オブ・ジャズ”と呼んだ評論家たちは、後にその誤りを自嘲的に語ることになった[12]。1940年代に登場したチャーリー・パーカーらによるビバップは、ジャズをスウィングのようなダンサブルな娯楽音楽から、速いテンポで演奏され、複雑な即興演奏を多用する、ミュージシャン主導の音楽へと変化させた。1940年代末には、白人寄りのクール・ジャズが登場した。

    1950年代半ばには黒人主体のハード・バップが登場し、同ジャンルはサックスやピアノの演奏にリズム&ブルースゴスペル、ブルースなどの影響を取り入れた。1950年代後半には、モードを音楽構造の基礎とするモードジャズ(モーダル・ジャズ)が発展し、即興・アドリヴが重視された。フリー・ジャズは、西洋音楽の規則的な音階や拍子、形式的な音楽構造にとらわれない自由な演奏を追求したが、それはそれまで長年構築されてきた西洋音楽の秩序を崩壊させるものであった。1960年代末から1970年代前半にかけては、ジャズとロックのリズム、電気楽器を組み合わせたクロスオーバーが登場し、70年代後半にはジャズ・ロック・フュージョンへと変化した。1980年代には、スムーズジャズと呼ばれるジャズ・フュージョンの後継である商業的なジャズが成功を収め、ラジオで放送された。1990年代に入ると、ジャズ・ラップやニュー・ジャズなど、さまざまなスタイルやジャンルが登場した。

    詳細

    ジャズクラブ、ブルーノート東京

    卑猥な意味をもつという"jass(ジャス)"によるとする説や、19世紀からアメリカ南部の黒人が使っていた性行為などの性的意味、熱狂や急速なテンポ・リズムを意味するスラングのjazz(ジャズ)によるとする説などがある。jassという言葉の意味は様々に変化し、上記のような特徴をもつ黒人音楽を、ジャズと称するようになった時期も明らかではない。作曲家のジェリー・ロール・モートンは、ラグタイム時代からスウィングジャズ時代まで活動した[13]

    1916年にシカゴで活動していたジョニー・ステイン英語版をリーダーとする白人バンドが、jassということばにヒントを得てバンド名を"Stein's Dixieland Jass Band(ステインのディキシーjassバンド)"とし、これからジャズと称されるようになった、という記録がある。 同年10月にはアメリカの芸能誌『バラエティー』が「ジャズバンド結成」と報じたことを契機に一般化した[14]。 このグループはさらに"Original Dixieland Jass Band(オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンド)"と改名、1917年1月に史上最初のジャズ・レコードを録音したが、そのレコードのラベルには"jass band"と印刷されていた[15]

    ビバップ[16]やフリー・ジャズのような革新性、スウィング・ジャズやヴォーカル・ジャズのような保守性、大衆性、商業主義が混在しながらジャズ音楽は存続してきた。革新性は主に黒人ミュージシャンによって推し進められた芸術音楽としての一面、保守性は白人富裕層中流階級向けの音楽としての一面、また大衆性や商業主義は大衆音楽ポピュラー音楽として発展した一面を表していた。なお、ジャズは60年代の公民権運動ヒッピー文化などのカウンターカルチャーとは、方向性が異なっていたが、ときに交わることもあった。

    革新性

    ジャクソン・ポロックアクション・ペインティングを模した絵画。ジャクソン・ポロックの絵画は、オーネット・コールマンのアルバム『Free Jazz』のジャケットデザインに使用された

    ジャズは、欧州をルーツとするクラシック音楽への対抗や人種差別への抵抗、そして自由な音楽性を探求する音楽だった。それが60年代初頭までは時代の先端として存在し、新たな演奏スタイルが誕生し、ジャズをより幅広い音楽ジャンルへと変化させた。1940年代後半におけるビバップの誕生は即興演奏の飛躍的発展として、また1950年代におけるビートニク[17][18]に共感する若者からの支持を獲得した(ビートニクジャズ喫茶を参照)。革新的ビバップ、西洋音楽からの分離を志向したフリー・ジャズロックとの融合を目指したジャズ・ロックなど、新たな音楽ジャンルが模索されていった。「多様性」は、ジャズの特徴でもあり、演奏スタイルは多様である。白人・黒人の混合文化はジャズの初期からの傾向でもあるが、1970年代半ばのフュージョン以降は停滞し、保守的なものになった。なお黒人主導の反抗的で自由な音楽性は、ヒップホップ・ミュージックに受け継がれたという意見がある[19]

    また一部ビバップやフリー・ジャズなどのより革新的な演奏スタイルは、即興的で混沌としており、大衆性・商業性には結びつかず、現在でもジャズの中では前衛的ジャンルと認識されている[20]。一方で、ビバップ、フリージャズなどの革新を追い求める姿勢は、ジャズを芸術性も含む音楽ジャンル[21]であると認識させ、ジャズを長く嫌いであった人間にも魅力的に感じさせる場合がある[22]

    保守性

    禁酒法時代を代表する高級ナイトクラブ、「コットン・クラブ」。デューク・エリントン楽団のジャズライブは、白人富裕層から人気を博した。

    1910年代にクラシック音楽に倣った編成であるビッグバンド(後のスウィング・ジャズ)が誕生すると、それを機にハーレム・ルネサンスの後押しもあってジャズクラブジャズバーニューヨークの各所で開店されていった。しかしコットン・クラブをはじめとしたナイトクラブでは、演奏者は黒人でありながらも、顧客は白人の富裕層・中流層が多かった。それはジャズを、サロン音楽的ジャンルとしても定着させた。ジャズの世界では、ジョージ・ガーシュウィンベニー・グッドマングレン・ミラースタン・ケントンギル・エヴァンスらの白人音楽家による白人ジャズも、常に存在した。


    大衆性・商業主義

    保守主義・商業主義の象徴であったエンターテイナー、フランク・シナトラ。

    ジャズは、白人のメインカルチャーとは異なる、都市の黒人による洗練された音楽として登場したが、ラグタイムからの音楽性を受け継いだ当初から、大衆音楽としての側面があった。大衆文化に寄り添い、また商業性を意識した音楽性は、1940年代の芸術音楽であるビバップの誕生までは、ジャズの主要な特徴として認識された。ビッグバンドやスウィング・ジャズは、クラブやバーで演奏されるだけでなく、ダンスホールで演奏される、大衆のためのダンス・ミュージックとしての役割も担い、狂騒の20年代を文化的側面から支えた(ジャズ・エイジ)。あるいはヴォーカル・ジャズも同様に大衆からの人気を博し、ポピュラー音楽の一翼を担っていた。代表的なジャズ・ヴォーカリストとしては、アフロアメリカンのビリー・ホリデイサラ・ヴォーンエラ・フィッツジェラルドナット・キング・コール、白人のビング・クロスビーフランク・シナトラペギー・リートニー・ベネットペリー・コモローズマリー・クルーニーパティ・ペイジなどがいた。彼らの中には稀代のエンターテイナーとして歴史に名を残した者もいる。またルイ・アームストロングチェット・ベイカーのように、演奏・ヴォーカルともに活躍した者もいた。


    注釈

    1. ^ 戦前のブルース・マンにはロバート・ジョンソン、チャーリー・パットンらがいた。
    2. ^ 1920年の「メイプルリーフ・ラグ」を作曲。彼の友人が紹介した。
    3. ^ ドイツ人。相棒はフランシス・ウルフ。
    4. ^ 表題曲でマイルスはブルージーな即興演奏を披露している。
    5. ^ ジャンヌ・モローが出演したサスペンス映画。
    6. ^ 以下の3つの基準で禁止された。「1).旋律の美しさを失った騒擾的なるリズム音楽。2).余りに扇情的淫蕩的感情を抱かしめる音楽。3).怠惰感を抱かしめる様な退廃的或は亡国的なる音楽」[43]
    7. ^ 11PM』オープニング・テーマ曲の作曲者。

    出典

    1. ^ blues and jazz cincyblues 2023年4月1日閲覧
    2. ^ ラグタイム  Jazzhistorytree.com 2023年4月1日閲覧
    3. ^ Jazz Origins in New Orleans – New Orleans Jazz National Historical Park”. National Park Service. 2017年3月19日閲覧。
    4. ^ Germuska. “"The Jazz Book": A Map of Jazz Styles”. WNUR-FM, Northwestern University. 2017年3月19日閲覧。
    5. ^ Roth, Russell (1952). “On the Instrumental Origins of Jazz”. American Quarterly 4 (4): 305–16. doi:10.2307/3031415. ISSN 0003-0678. JSTOR 3031415. 
    6. ^ Ferris, Jean (1993) America's Musical Landscape. Brown and Benchmark. ISBN 0-697-12516-5. pp. 228, 233.
    7. ^ Starr, Larry, and Christopher Waterman. "Popular Jazz and Swing: America's Original Art Form." IIP Digital. Oxford University Press, 26 July 2008.
    8. ^ a b Hennessey, Thomas (1973). From Jazz to Swing: Black Jazz Musicians and Their Music, 1917–1935 (Ph.D. dissertation). Northwestern University. pp. 470–473. https://books.google.com/books?id=nvskngEACAAJ 
    9. ^ Hennessey 1973は、いずれの形式もヨーロッパ系アメリカ人の音楽とアフリカ系アメリカ人の音楽を起源に持つと説明している。
    10. ^ 9シングズ・ユー・メイ・ノット・ノウ・アバウト・ルイ 2021年9月3日閲覧
    11. ^ Biography”. DukeEllington.com (Official site). 2021年7月8日閲覧。
    12. ^ 「リズム&ブルースの死」p.45 著者 ネルソン・ジョージ
    13. ^ “Jelly Rolled into Vancouver”. CBC Radio 2. http://www.cbc.ca/radio2/programs/2010/03/jelly-rolled-into-vancouver.html 2022年2月1日閲覧。 
    14. ^ 下川耿史 家庭総合研究会 編『明治・大正家庭史年表:1868-1925』河出書房新社、2000年、413頁。ISBN 4-309-22361-3 
    15. ^ 参考文献:小学館日本大百科全書(ニッポニカ)』「ジャズ<語源>」(著・青木啓、2018年11月19日)
    16. ^ チャーリー・パーカー バイオグラフィBiography.com 2021年1月14日閲覧
    17. ^ The Beat Generation – Literature Periods & Movements. ビート・ジェネレーション2021年2月1日閲覧
    18. ^ Beat Down to Your Soul: What was the Beat Generation?| Charters Ann Penguin Books | isbn = 0141001518
    19. ^ ドキュメンタリー映画『ブルーノート・レコード ジャズを超えて』より
    20. ^ 「フリー・ジャズ」の誕生と存在意義”. uDiscoverMusic. 2020年9月17日閲覧。
    21. ^ 山下洋輔「魂の音楽 ジャズの魅力」”. KEIO MCC. 2020年9月13日閲覧。
    22. ^ 坂本龍一インタビュー後篇 「音楽に力はあるか」”. WHAT’s IN? tokyo. 2020年9月17日閲覧。
    23. ^ a b c d 斎藤眞 他(監修)『アメリカを知る事典』(平凡社、1986年)pp. 210-217
    24. ^ http://www.nps.gov/jazz/learn/historyculture/bolden.htm
    25. ^ a b 岩浪洋三『これがジャズ史だ〜その嘘と真実〜』(朔北社、2008年)pp.65-68、291-292
    26. ^ https://www.allmusic.com/artist/count-basie-mn0000127044
    27. ^ http://www.jazzradio.com/bebop
    28. ^ http://www.allmusic.com/artist/charlie-parker-mn0000211758
    29. ^ http://www.npr.org/nat-king-cole-the-singer
    30. ^ 相倉久人『新書で入門 ジャズの歴史』(新潮社、2007年)pp.116-127
    31. ^ http://www.allmusic.com/subgenre/free-jazz-ma0000002598
    32. ^ 『フリー・ジャズ』レビュー(All Music Guide)
    33. ^ http://www.discogs.com/Billie-Holiday-Ella-Fitzgerald
    34. ^ 「ブラックミュージック」p.199。学研
    35. ^ a b 『音楽CD検定公式ガイドブック上巻』(音楽出版社、2007年)p.131, 220
    36. ^ http://www.allmusic.com/subgenre/fusion-ma0000002607
    37. ^ Chart Beat, Billboard, April 9, 2009
    38. ^ Gregory Porter: Prohibice by mi nevadila”. Novinky.cz. 2022年5月28日閲覧。
    39. ^ 田中まり 「第三帝国とジャズ」北陸学院短期大学紀要 32, 237-248, 2000-12-28
    40. ^ ジャズライブKOBE神戸とJAZZ|NHK神戸放送局(2015年8月24日閲覧)
    41. ^ 兵庫県/神戸県民局7月のメッセージ(神戸県民局長平野正幸)(2015年8月24日閲覧)
    42. ^ 流線型ジャズ~特別企画!作曲家・服部良一の世界~第七夜”. たけ平の名曲への招待・昭和編. 2020年12月31日閲覧。
    43. ^ 情報局・内務省共編「出版警察報」138号、1941年7月p64
    44. ^ みつとみ俊郎 『音楽ジャンルって何だろう』 新潮社〈新潮選書〉、1999年12月25日、p.40
    45. ^ 『jazzLife』(2010年7月号)p.57
    46. ^ 『jazzLife』(2010年7月号)p.55 ファンキー・ブームは世界のいくつかの国で起こり、フランスでのブームが最初。
    47. ^ 『jazzLife』(2010年7月号)p.56, 57 日本のミントンズ・プレイハウスといえるのだという。
    48. ^ 植草甚一のレコード、タモリが買い取る ”. 2020年9月17日閲覧。
    49. ^ ルパン三世×ジャズの魅力 ハードボイルドな世界構築”. NIKKEI STYLE. 2020年9月15日閲覧。
    50. ^ https://news-postseven.com 高木里代子
    51. ^ ジャジー[jazzy](音楽用語辞典)”. ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス. 2020年9月17日閲覧。
    52. ^ ジャズに関する意識調査①”. ローソンエンタテインメント. 2020年9月12日閲覧。






    ジャズと同じ種類の言葉


    英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
    英語⇒日本語日本語⇒英語
      

    辞書ショートカット

    すべての辞書の索引

    「ジャズ」の関連用語

    ジャズのお隣キーワード
    検索ランキング

       

    英語⇒日本語
    日本語⇒英語
       



    ジャズのページの著作権
    Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

       
    ウィキペディアウィキペディア
    All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
    この記事は、ウィキペディアのジャズ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

    ©2024 GRAS Group, Inc.RSS