セロニアス・モンクとは? わかりやすく解説

モンク【Thelonious Monk】

読み方:もんく

[1920〜1982米国ジャズピアノ奏者作曲家モダンジャズ開拓者代表曲ラウンド‐ミッドナイト」「ブルーモンク」など。


セロニアス・モンク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/08 15:27 UTC 版)

セロニアス・モンク
Thelonious Monk
セロニアス・モンク(1947年
基本情報
出生名 Thelonious Sphere Monk
生誕 1917年10月10日
出身地 アメリカ合衆国ノースカロライナ州ロッキーマウント
死没 (1982-02-17) 1982年2月17日(64歳没)
ジャンル ジャズビバップハード・バップ
職業 ピアニスト作曲家
担当楽器 ピアノ
レーベル ブルーノートプレスティッジリバーサイドコロムビア

セロニアス・モンク英語: Thelonious Monk [θəˈloʊniəs ˈmʌŋk]1917年10月10日 - 1982年2月17日)は、アメリカノースカロライナ州生まれのジャズピアニストである。即興演奏における独特のスタイルと、スタンダード・ナンバー作曲で知られ、ビバップのパイオニアの一人と評されている[1]

来歴

​1963年5月13日から22日にかけて、モンクは東京、京都、名古屋、大阪、東京、札幌の計6都市でコンサートを行った[2]。写真はホテルの一室。妻のネリーとともに。
ニカ男爵夫人とモンク。1963年5月、新宿の「DIG」にて[3]
1964年

ノースカロライナ州ロッキーマウントで生まれたが、5歳の時には両親とともにニューヨークマンハッタンに転居している。高校は卒業しなかったようである[4]。6歳の時にピアノの演奏を始め、クラシック音楽のレッスンを10歳から12歳まで受けている。しかしジャズ・ピアノに関しては独学と考えられている。

ハイティーンの頃にはジャズ演奏の仕事が見つかり始め、1941年頃のジェリー・ニューマン (Jerry Newman) のレコーディングに参加している。この録音は、ニューヨークのクラブ「ミントンズ」(Minton's) で行われ、モンクはこのクラブのバンドのピアニストとして雇われていた。

1940年代初頭より、ジャズ・ピアニストとしての活動を始める。ブルーノート・レコードプレスティッジ・レコードリバーサイド・レコードコロムビア・レコードなどのレーベルに演奏を残した。プレスティッジの時代まではレコードがほとんど売れず、生活が困窮した時期もあったという。代表曲には「ラウンド・ミッドナイト」「ストレイト・ノー・チェイサー」「ブルー・モンク」などがある[5]。モンクの演奏スタイルは、この頃は「ハード・スウィンギング」と呼ばれる類いのもので、 アート・テイタムのスタイルに近かった。1944年にモンクは、自身の最初のスタジオ録音をコールマン・ホーキンス・カルテットと共に行っている。

1947年にネリー・スミス (Nellie Smith) と結婚し、同じ年にバンド・リーダーとしての初めての録音がなされた。モンクはビバップの誕生を告げたチャーリー・パーカーディジー・ガレスピーの『バード&ディズ』(1947年)に参加した[6][7][8]

1950年代1960年代を通して、ツアーとレコーディングとをこなしたが、1970年代の始めには、表舞台から姿を消した。

1971年11月に最後の録音が行われ、生涯最後の10年間はごく数回の演奏が行われたのみである。モンクの悲劇は、医療の貧困にもあるとされている。彼は精神疾患を発症していたが、病名は特定されなかったという[9]

1982年2月17日、脳梗塞により死去。64歳没。ニューヨーク州ハーツデイル (Hartsdale) にある、ファーンクリフ墓地に埋葬された。

演奏

モンクの音楽には、深い人間性、規律ある節制、均衡のとれた精力、劇的な気高さ、そして無垢に高揚した機転があります。
スティーヴ・レイシー [10]

モンクが「ピアノは間違った音を出さない」と言ったことは有名である。 [11]

トマス・オーウェンズ (英語: Thomas Owens)は、次のように述べている。

モンクのピアノのタッチは大抵、バラードにおいてさえも、耳障りでパーカッシブでした。彼は、レガートに類するものを探すことなく、音符ごと音符ごとに鍵盤を攻撃することがよくありました。メロディー・ラインを装飾し、だれかが作業用手袋を填めて演奏しているような効果を与えることがしばしばです。指を自然に曲げてではなく真っ直ぐなままにして鍵盤を叩き、ほかの指は鍵盤の上高く掲げられていました。ときには一つの鍵盤を複数の指で叩き、シングル・ラインのメロディーを左右の手で分けることもありました。
[12]

このような非正統的な演奏アプローチとは対照的に、モンクは素晴らしい速度と正確さでアルペジオを演奏することもできた。マーティン・ウィリアムズ英語版ラン・ブレイク英語版は指の独立性の高さを指摘しており、そのため右手でメロディー・ラインとトリルとを同時に演奏することもできた[12]

モンクはしばしば全音音階の一部を使用し、上昇もしくは下降音階で演奏することで、数オクターブをカバーしている[12]。また、かれが作曲したいくつかの曲の主題においても使われている平行六度を特徴とする即興演奏を拡張した[13]。ソロにおいては、無音の空白とロング・ノーツを特徴としている。また、ビバップを基盤とするピアニストには珍しく、伴奏やソロにおいて彼は、左手でのストライド英語版・パターンを採用していた。伴奏者としての特徴には、しばしば演奏を止めてしまいベースとドラムだけにソリストをサポートさせるという傾向もある[14]

モンクは、変ロ長調をとくに好んで用いており、「ブルー・モンク」、「ミステリオーソ」、「ブルース・ファイブ・スポット」、「ファンクショナル」といった、彼が作曲した何曲ものブルースは、全て変ロ長調である。加えて、かれのシグネチャー曲である「セロニアス」の構成は、執拗に繰り返される変ロ長調のトーンに占められている[15]。他のピアニストからの影響については、オーウェンズはアート・テイタムとテディ・ウィルソンデューク・エリントンの名を挙げている[13]

モンクの死後、その音楽はジャズ評論家や聴衆によって再評価され、モンクはマイルス・デイヴィスジョン・コルトレーンなどと並び、ジャズの巨人の一人に数えられている。1988年クリント・イーストウッド製作総指揮による、モンクの生涯と音楽についてのドキュメンタリー映画『セロニアス・モンク ストレート・ノー・チェイサー』が公開された。

ディスコグラフィ

リーダー・アルバム

コンピレーション・アルバム

  • 『セロニアス・モンク・メモリアル・アルバム』 - The Thelonious Monk Memorial Album (Milestone) 1982年
  • マックス・ローチと共同名義, 『ヨーロピアン・ツアー』 – European Tour (Denon) 1985年(ライヴ集)
  • 『アット・ニューポート 1963&1965』 - At Newport 1963 & 1965(1963年、1965年7月録音)(Columbia) 2002年

関連映像作品

脚注

  1. ^ Owens 1996, p. 140.
  2. ^ 林建紀 (2013年3月19日). “第3回 『モンク・イン・トーキョー/セロニアス・モンク・クァルテット』”. AERA dot.. 2025年2月6日閲覧。
  3. ^ スイングジャーナル』1963年7月号、スイング・ジャーナル社、38-41頁。
  4. ^ Robin Kelley (2009). Thelonious Monk: The Life and Times of an American, Free Press. pp. 13, 31. ISBN 978-0-684-83190-9.
  5. ^ 「ブラック・ミュージック アフリカから世界へ」p.209。学研
  6. ^ マーキュリー access-date=2022-02-26
  7. ^ Chell, Samuel. Review of Bird & Diz. All About Jazz. Retrieved on 2022-02-26
  8. ^ Clef Records Catalog - The Jazz Scene, JATP, 100, 500 series: MGC 512 Bird And Diz. Jazz Discography Project. Retrieved on 2022-02-26.
  9. ^ thelonious-monk-bebop-pioneer-and-bipolar-my-interview-professor”. www.psychologytoday.com. 2019年11月23日閲覧。
  10. ^ Weiss, Jason (July 19, 2006) (英語). Steve Lacy: Conversations. Duke University Press. pp. 13–14. ISBN 9780822388586. https://www.google.com/books/edition/Steve_Lacy/poIr4OLF9ZQC 
  11. ^ https://www.goodreads.com/quotes/307789-the-piano-ain-t-got-no-wrong-notes
  12. ^ a b c Owens 1996, p. 141.
  13. ^ a b Owens 1996, p. 142.
  14. ^ Owens 1996, p. 143.
  15. ^ Kelley, Robin (2009). Thelonious Monk: The Life and Times of an American Original. The Free Press. pp. 574 

書籍

関連項目

外部リンク




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