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フリー‐ジャズ【free jazz】


フリー・ジャズ[free jazz]


フリー・ジャズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/02 04:11 UTC 版)

フリー・ジャズ
Free jazz
様式的起源 ジャズ実験音楽アヴァンギャルド・ミュージックアヴァンギャルド・ジャズ
文化的起源 1950年代後半、アメリカ合衆国
派生ジャンル ノー・ウェイヴフリー・ファンクパンク・ジャズポストロック
地域的なスタイル
ヨーロピアン・フリー・ジャズ
関連項目
アヴァンギャルド・ジャズフリー・インプロヴィゼーションエクスペリメンタル・ロック
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フリー・ジャズ: Free jazz)は、1950年代末にビバップなどのそれまでのジャズの演奏形態を否定、革新した当時の新しいジャズのジャンルであり、1960年代に隆盛となった。

歴史

フリー・ジャズは、1950年代末に、クラシック音楽のような白人西洋音楽の理論や様式に従わないという理念と、ビバップハード・バップモード・ジャズなどが限界に達したという認識により誕生した。アフリカのルーツを重視した黒人音楽の正統なルートだけで、白人中心のジャズ音楽界をひっくり返せるというのが、一つの見解だった。南部テキサス州出身のオーネット・コールマン[注 1]は、ニューオーリンズバトン・ルージュで演奏したり、ロサンゼルスへ演奏旅行をしたりしていた。そのオーネットが、ドン・チェリーチャーリー・ヘイデンとともにニューヨークのジャズ・クラブ「ファイヴ・スポット」でフリー・ジャズを演奏し始め、ジャズ界に一大センセーションを巻き起こした。オーネットのジャズはブルーノートを多用し、カントリー・ブルース・シンガーのようだとも形容された。ジャズ評論家ベーレント、油井正一、アミリ・バラカらは、オーネットの音楽の本質をよく理解し、フラットする音、ブルーノート、ブルースの塊などと的確な表現をした[1]。オーネットの革新的フリー・ジャズに続いたのが、サン・ラ[注 2]アルバート・アイラー[注 3]らのジャズマンだった。他にもファラオ・サンダースアーチー・シェップ[注 4]セシル・テイラーアート・アンサンブル・オブ・シカゴ[注 5]らのフリー・ジャズを演奏するアーテイストが登場した[2]

  • フリー・ジャズは、「モード・ジャズまでのモダン・ジャズの理論の束縛からの自由」、ジャズにおける「表現の自由」などとも指摘される。
  • ピアノを拳で叩くように弾く「パーカッシブ奏法」や、サックスの絶叫奏法ともいうべき「フリーキー・トーン」なども、この流れの中で出てきた演奏法である。
  • 自由な即興演奏を「フリー・インプロヴィゼーション」と呼ぶが、ジャズのジャンルでは、フリー・ジャズ、前衛ジャズなどで見られる。フリー・ジャズの全盛期は1960年代であり、1970年代半ばのフュージョンの登場による保守化、商業化も一つの要因となり、フリー・ジャズは停滞期を迎えた。ただしオーネットのアルバム『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』や『ボディメタ』は、1950年代、1960年代の彼のカントリー・ブルース的なアルバムよりも、よりアフリカに接近して新境地を開いた。フランク・ザッパ大友良英巻上公一らは、異なる分野からフリー・ジャズ的なアプローチを試みた。

フリー・ジャズが登場した当初、古典的、伝統的ジャズを支持する聴衆の中には、「理解できない」「音楽として認めない」という者もかつてはいた。だが、やがてハード・バップほかの行き詰まりを打開したジャズの流れとして、広く認知され世界中にフリー・ジャズ・ファンも多く存在する。

類似表現

アヴァンギャルド・ジャズ(前衛ジャズ)
同時期に発生したジャズのうち、現代音楽的手法に基づいた演奏スタイルで、メロディや和音、リズムが自由なジャズ。フリー・ジャズと重なる部分が多いが、完全に同じジャンルというわけではない。[3][4]
ロフト・ジャズ[5]
やや年代が下って、当時の若手前衛ジャズ演奏家たちなどによって演奏された前衛ジャズを指す。音楽傾向に関係なく、別ジャンルとして差別化されている。

音楽理論

1950年代末から1960年代

オーネット・コールマンジョン・コルトレーンにより、ビバップ・スタイルの行き詰まりを打開するために、既成の概念(形式調性メロディコード進行リズム4ビートなど)を否定するスタイルが模索、創造された。この試みは、既成の概念を否定し、革新的なジャズを誕生させた[2]

1970年代から21世紀

1970年代半ば以降は保守化と商業主義により、フリー・ジャズは冬の時代を迎えた。しかしその逆風の中でも、オーネット・コールマンはモロッコのジャジューカの演奏家たちと優れたアルバムを制作し、注目された。さらにオーネットは1988年に意欲作『ヴァージン・ビューティ』を発表し評価された。1970年代の理論は以下の通りである。

ポスト・フリー・ジャズは、現代音楽や前衛音楽、ヒップホップ・ジャズ、ジャズラップ、スペース・ミュージック、スペース・ロック的なアプローチをあげることができる[6]

主なアーティスト 

脚注

注釈

  1. ^ 『ジャズ来たるべきもの』はフリー・ジャズの誕生を告げた歴史的なアルバムとなった。
  2. ^ ファンクのジョージ・クリントンなど、異なるジャンルの音楽家にも影響を与えた。
  3. ^ ゴスペルなどの影響を受けたフリー・ジャズを演奏。若くして溺死した。
  4. ^ マルコムXに捧げた曲や、ボーカリストを起用したアルバムも発表。
  5. ^ 『エインシャント・トゥ・ザ・フューチャー』などの代表アルバムがある。

出典

  1. ^ A Brief Guide to the Black Arts Movement”. Poets.org. 2 Augusut 2022閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。
  2. ^ a b http://www.allmusic.com/style/free-jazz-ma0000002598
  3. ^ Experimentalisms in Practice: Music Perspectives from Latin America. Oxford University Press. (2018). p. 8. ISBN 978-0190842765 
  4. ^ Hyams Ericsson, Marjorie (1965年4月8日). “'Experimentation' in Public: The Artist's Viewpoint”. DownBeat : pp. 15 
  5. ^ http://www.ucpress.edu/book/9780520285415/loft-jazz
  6. ^ http://www.cosmologic.org/press.html

書籍

関連項目

外部リンク


フリー・ジャズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/26 13:53 UTC 版)

1960年代のカウンターカルチャー」の記事における「フリー・ジャズ」の解説

フリー・ジャズは、1950年代と1960年代発展したジャズ音楽へのアプローチである。フリー・ジャズの作曲家作曲した音楽はさまざまだが、彼らは1940年代から1950年代にかけてのビバップ、ハード・ボップ、モーダル・ジャズ限界飽きたらなかった。フリー・ジャズ・ミュージシャンはそれぞれ独自の方法で、従来ジャズ変更拡張、または解体しようとした。固定されコード変化テンポのようなジャズ不変特色を採らないことがおおかった。通常、フリー・ジャズは実験的前衛的であると考えられているが、オーネット・コールマンの曲を聴けばジャズルーツ再発見し集団的な即興重視する試みであることがよくわかる。 フリー・ジャズは、1950年代オーネット・コールマンセシル・テイラー革新サックス奏者ジョン・コルトレーン後期作品に深く関係している。他の重要な先駆者には、チャールズ・ミンガスエリック・ドルフィーアルバート・アイラーアーチー・シェップジョー・マンリーサン・ラ含まれている。今日の「フリー・ジャズ」は一般的に使用されている用語だが、「アバンギャルド」や「energy music」、「The New Thing」など、ゆるやかに定義されムーブメント表現するために使用されている。1960年代初期1960年代全盛期には、「ESPディスク・レコード」や「BYGレコード」などのインディペンデスレーベルと同様に、「プレスティッジ・レコード」、「ブルーノート」、「インパルス!」などの既存レーベルから数多くのフリー・ジャズがリリースされた。

※この「フリー・ジャズ」の解説は、「1960年代のカウンターカルチャー」の解説の一部です。
「フリー・ジャズ」を含む「1960年代のカウンターカルチャー」の記事については、「1960年代のカウンターカルチャー」の概要を参照ください。

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