アラブ音楽とは? わかりやすく解説

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アラブ音楽

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/24 19:07 UTC 版)

アラブ音楽(アラブおんがく)とは、アラビア語を話す人々の音楽である。地域的には西南アジア北アフリカを中心とした広がりを持ち、としては、サウジアラビアアラブ首長国連邦バーレーンクウェートオマーンカタールシリアイラクレバノンエジプトチュニジアアルジェリアモロッコイエメンなどになる。周辺のイラントルコ音楽などとも関わりを持つ。

単旋律的で、メロディーは中国音楽のような5音音階的なものではなく、7音音階的である。中立音程などと言われる音程の使用が特徴的。メロディーには太鼓などによるリズム伴奏が付く事も特徴の一つ。

近年では、アルジェリアのオラン地方に発するライポピュラー音楽としての発展をとげ、中東のみならず欧州をはじめ世界中で親しまれている。

歴史

ジャーヒリーヤ

  • 基本的に声楽。歌を意味するはアラビア語は「ギナーア」。口頭伝承の形で伝えられていった。
    • 狭義の「ギナーア」 - 芸術的なもの
    • ナスブ - 世俗的なうた。
    • シイル - 詩。
    • フダー(フダーア) - 隊商(キャラバン)のらくだ追いのうた。
    • ナウフ - いわゆる哭歌(なきうた)。葬式の時のうた。
  • ムガンニー(男性)、ムガンニーヤ(女性)は「歌をうたう人」の意。
  • シャーイルは詩人(巫)だが、詩(シイル)にはメロディがつくのが普通だった。広義には音楽家といえる。
  • カイナ(複数形キヤーナ)と呼ばれる「芸者」・「歌姫」がいた。

ウマイヤ朝期

  • ダマスカスの宮廷などで活躍した音楽家。
    • イブン・スライジュ
    • マアバド(? - 743年)
    • ガリーズ
    • ワリード2世(カリフ
    • マーリク・アッターイー
    • イブン・アーイシャ
    • ユーヌス・カーティブ
    • イブン・カルビー(? - 763年) - キターブ・アルナガム(旋律の書)、キターブ・アルキヤーン(歌姫の書)の著者。
    • イブン・ミスジャハ - アラブ古典音楽の整備に功。
    • ハリール(? - 791年) - 音楽理論に関する著作があったと言われる(現存せず)

アッバース朝期

  • バグダードの宮廷で活躍した音楽家。
    • ハカム・ワーディー
    • イブン・ジャーミー
    • イブラーヒーム・マウシリー
    • イスハーク・マウシリー - イブラーヒーム・マウシリーの子。優れた音楽家として名声を博した。古典アラブ音楽を守る保守派として、ペルシャ音楽を取り入れようとしたイブラーヒーム・イブン・マフディーと対立。
    • ザルザル
    • イブラーヒーム・イブン・マフディー - カリフ、アミーンのおじ。ペルシャ音楽の取り入れをはかった。古典アラブ音楽を守る保守派としてのイスハーク・マウシリーと対立。
    • ジルヤーブ(ズィルヤーブ) - イスハーク・マウシリーの弟子。
  • 当時の哲学者は博く様々な事柄を考察の対象としたが、音楽理論に関する著作を残した哲学者も多い。

セルジューク朝期

モンゴルの征服

オスマン帝国期

  • ハサン・エフェンディ Hatip Zakiri Hasan Efendi(1545年 - 1623年)
  • ガーズィー・ギライ Gazi Giray(16世紀末) - クリミア・ハン国のハン。作品にマーフル・ペスレヴ(Mahur pesrev)など。
  • ソラックザーデ Solakzade(17世紀前半) - 作品にニーシャーブール・ペスレヴ(Nişâbur pesrev)など。
  • ハーフィズ・ポスト Hafiz Post(? - 1693/1694年)
  • ブフーリーザーデ・ムスタファー・ウトリー Buhurizâde Mustafa Itrî(1640年 - 1711/1712年) - ハーフィズ・ポストの弟子。
  • アフメト・チェレビー Ahmed Çelebi(17世紀後半) - 作品にセギャーフ・セマーイー(Segah semai)など。
  • デルヴィーシュ・ムスタファ Derviş Mustafa(17世紀後半) - 作品にニハーヴェンド・ペスレヴ(Nihavend pesrev)など。
  • カンテミルオウル Kantemiroğlu(1673年 - 1723年) - モルダヴィア(ルーマニア)公ディミトリイ・カンテミル Dimitrie Cantemir のトルコ名。公子としてイスタンブール滞在中に数々の曲を作曲。独自の楽譜を考案、自作曲を書き残した。のちにロシアに亡命。ラテン語で優れたオスマン帝国史書を残したことでも有名。
  • タンブーリー・ムスタファ・チャヴシュ Tanburî Mustafa Cavuş(18世紀前半)
  • シェリフ・チェレビー Şerif Çelebi(18世紀前半) - 作品にラースト・ペスレヴ(Rast pesrev)など。
  • セリム3世 Sultan III. Selim(1761年 - 1808年) - オスマン帝国の第29代スルタン。オスマン古典音楽を数多く作曲し「セリム3世楽派」の祖とみなされた。
  • ハマーミーザーデ・イスマイル・デデ Hamamizade İsmail Dede(1777/1778年 - 1845/1846年) - オスマン古典音楽最高の作曲家で、「デデ・エフェンディ Dede Efendi」として知られる。オスマン帝国第31代マフムト2世の宮廷に仕えた。
  • ハンパルスム・リモンジュヤン Hamparsum Limonicuyan(1768年 - 1839年) - アルメニア人。ハンパルスム譜を考案。
  • デッラールザーデ・イスマイル・エフェンディ Dellalzade Ismail Efendi(1797年 - 1869年) - イスマイル・デデの最も著名な弟子で、師につぐ大作曲家。美声で知られ、宮廷声楽家になった。
  • タンブーリー・オスマン・ベイ Tanburî Büyük Osman Bey(1816年 - 1885年)
  • ゼカーイ・デデ Zekai Dede(1824年 - 1897年)
  • ハジュ・アリフ・ベイ Hacı Arif Bey(1831年 - 1884年)
  • シェウキ・ベイ Şevki Bey(1860年 - 1890年)
  • レミ・アトル Lemi Atlı(1869年 - 1945年)
  • タンブーリー・ジェミル・ベイ Tanburi Cemil Bey(1871年 - 1925年(1916年とも))

近現代

音楽理論

楽器

研究者

西洋社会で最初にアラブ音楽研究を本格的にした人物に、フランシスコ・サルバドール・ダニエル(Francisco Salvador-Daniel、1831-1871)がいる。ユダヤスペイン人移民の子としてフランスに生まれ、パリ音楽院で学んだ彼は、1830年代にエジプト、パレスチナ、トルコを巡って東方音楽を研究したフェリシャン・ダヴィに憧れて、1853年にフランスの植民地アルジェリアに渡り、バイオリン教師の傍ら、アラビア語を習得してアラブ音楽を研究、1863年には『アラビア音楽(La Musique Arab)』を出版し、パリの楽壇を騒がせた。1865年に帰国し、1867年に自作のアラブ・オペラ『ファンタジー・アラブ』を初演した。その後社会主義思想に傾倒し、音楽評論などを手掛け、普仏戦争により第二帝政が終わると、コミューンの一員として政治運動に参加し、1871年にパリ音楽院の院長に就任したが、就任11日目に正規軍に射殺された。[1][2]

関連項目

脚注

  1. ^ 結論『西洋音楽史概説』飯田忠純、音楽世界社、1937
  2. ^ パリ国立音楽院とピアノ科における教育(1841~1889) : 制度、レパートリー、美学上田 泰、東京芸術大学学位論文、2016-03-25

参考資料

  • 平凡社音楽大事典 - 西アジア項
  • New Grove Music Dictionary「Turkey項第4節Art music内3のComposers」
  • CD「TURKEY SPLENDOURS OF TOPKAPI」(OPUS 111,1999年,OPS 30-266)

外部リンク




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