一影九拳(いちえいきゅうけん)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 16:46 UTC 版)
「史上最強の弟子ケンイチの登場人物」の記事における「一影九拳(いちえいきゅうけん)」の解説
風林寺 砕牙(ふうりんじ さいが) 異名:一影(初代) 風林寺流武術の達人。一影九拳の長であり、無手組を統括する"闇"の最高幹部。かつては梁山泊の豪傑の1人で、秋雨とは親友だった。38歳。10月25日生まれ。身長190cm、体重98kg。影のエンブレムを持ち、それは「正体がわからないもの」を意味する。武術を能動的な平和に利用する為に、一影九拳に所属している。多数の為に少数の尊き犠牲があるという考えを持ち、その言葉が穿彗に大きな影響を与えた。 作中において一影は二人存在するが、砕牙は元々この異名を冠していた人物である。 美羽の実の父親で、隼人の実の息子。鍛冶摩里巳の師。秋雨の影響から医療の心得がある。暗鶚衆のものを改良した変装術の名人。兼一が使っている手甲はかつて砕牙が使っていたもの。普段は闇の指導者には見えないほど温厚で誠実な人物。弟子の里巳に対して最後に勝敗を決めるのは「心」であると説いている。 母親からの遺伝で、人にものを教えるのが上手い。髪色もロシア系の母親譲り。暗鶚衆の技術を応用した卓越した変装技術を持つ。闇の幹部としてあらゆるジャンルの最新アイテムを入手しており、変装に必要な道具もその一つ。 元々は鳥や動物を愛し、不殺を貫く活人拳の武術家であり、不必要な殺人はしないが、必要であると判断すれば容赦のない攻撃を加える。 我の強い九拳も彼の命令には素直に従うが、隼人以外を格下と断じるジュナザードだけは彼の制御下になく、砕牙の方も、ジュナザードに対しては強く警戒し、慎重な姿勢を貫いている。ジュナザードから美羽を守り抜いた兼一には一目置いており、「信頼に値する」と評して美羽を託した。 久遠の落日においては政府の役人である岡本として行動し、"闇"の拠点に向かう間に兼一達新白連合の武術の指南を行う。拠点に到達後は、"闇"の暗躍を妨害しつつも美羽の危機に際して"闇"の基地へと戻り、自身に扮した宿敵である穿彗と自身の正体を明かし、妻の敵を討つために壮絶な激戦を繰り広げる。なお、親友の秋雨が久遠の落日を仕組んだのが穿彗である真実を知っていた点からも、彼とは密かに連絡を取り合っていた事が伺える。 戦いの末に死を覚悟した穿彗によってミサイルを発射されてしまったものの、直後に隼人がミサイルを破壊したことで結果的に計画の阻止に成功する。ミサイルを破壊してなお生き延びていた父の姿に自身の未熟を感じ取ると共に、"闇"の進撃を食い止めた兼一たちに活人拳の勝利を認めた。 穿彗(せんずい) 異名:一影(二代目) 暗鶚流忍術の達人。暗鶚衆の長にして、砕牙と共に"闇"を統べる、もう一人の一影。元々一影だったわけではなく、暗鶚の乱の後に一影として"闇"に加わった。実質、本作の梁山泊と闇の戦いの真の黒幕でもある。 鍛冶摩里巳の師で、20歳までしか活きられないとされていた程の病弱であった彼の運命を覆させている。砕牙と同等の実力を持ち、暗鶚の変装術によって砕牙に扮した際には砕牙の拳撃をそっくり真似るなど、変装は戦闘スタイルにまで及んでおり、この能力を持ってして美羽の母であり、幼馴染みでもあった静羽を殺害した張本人であった。 かつて、暗鶚の乱において改革派のリーダーとして活動しており、暗鶚の運命を変えるという想いから、婚約関係にあった静羽の事は砕牙に託していたが、実のちちおやを殺してしまったのを機に、その理想は次第に歪んでしまう事になり、最終的には継続派との和平交渉を成立させるために砕牙の姿で改革派の手練れ9人と静羽を殺害した。 戦闘スタイルの模倣のみならず自身も他人から影響を受けやすい性格をしており、自分の父や砕牙、美雲などあらゆる人物からの影響を受けていった結果、最終的には戦いを捨てる事の出来ない宿命を負った暗鶚の解放の為、「久遠の落日」を望むようになり、八煌断罪刃と合流。"闇"による久遠の落日を主導して日本を含む数ヵ国を滅ぼすことで世界大戦を起こそうとするが、久遠の落日に反対的であった上に自身が静羽や暗鶚の同志達を裏切って殺害した事実を知った砕牙には離反されてしまう事になり、失われた彼の組織への影響力を補う為に、作戦決行の際には砕牙の姿に扮していた。 しかし、梁山泊と親白連合の活躍、一影九拳の離反などにより作戦は妨害され、更に素顔を偽る形で"闇"の基地へと戻ってきた砕牙と壮絶な激戦を繰り広げる。戦いの末に、死合いでは砕牙に敗れるものの、出し抜く形でミサイルを発射することに成功。ミサイル発射の噴射炎に焼かれて死亡した。 実は静羽を殺した際、彼女が雪の中に隠していた美羽の存在に気付いており、雪をかき分けて殺そうとしていたが、想い人の静羽と親友の砕牙二人の面影を宿していた彼女をどうしても殺す事が出来なかった。結局美羽の事は殺さなかった穿彗が去った後、隼人が見つけ出した時には美羽は再び雪に覆われてその上に羽根がかざされており、美羽の存在が分かるよう羽をかざしたのが穿彗であった事が推測される。死の間際にこの事を思い返していた事から、穿彗自身も心のどこかで自らの行いを悔いていたようである。 緒方 一神斎(おがた いっしんさい) 声 - 大塚明夫 属性:動 異名:拳聖 緒方流古武術の達人。28歳。1月2日生まれ。身長182cm、体重78kg。流のエンブレムを持ち、それは「流派の継続」を意味する。目標は武の究極、その深淵に立つこと。一神斎は斎号であり本名は不明。 長い白髪で額に白毫があり、常にフードを被っている。武術家として"動"のタイプを極めた結果修羅道に堕ちた男。巨大なツキノワグマを秒殺する実力を持つ。隼人から手ほどきを受け超人秘技の1つ「数え抜き手」を修得しており兼一の前に梁山泊の弟子になるはずであったが、緒方の目の危険な光を見抜いた隼人の反対により断念。直後の試合中に対戦者を殺害し、闇に堕ちる。 武術という存在を純粋に、狂的に愛しており、武術の為ならば自らに「兇気」の称号を冠することも厭わない武の求道者。武術平等論を提唱しており、いかなる人物も武においては平等であるという思想を持つ。一影九拳のメンバーの中でも弟子育成能力に優れており、大勢の達人級の部下にも指導を施している。武の追求の為には人の命も意に介する事もなく、弟子を実験台にするなどの非情な行為を行っているものの、彼自身は龍斗曰く「最も隙を作る可能性が高い時は弟子の成長を喜びねぎらっている時」で弟子一人一人に付きっきりで修行を施したり、龍斗を愛弟子と発言しているなど師弟愛も確かに持ち合わせている。力をつけた弟子が自らを殺めることを望んでおり、その力を得た時にはいつでも自分を殺すようにとYOMIに教えている。ただし、武に関わらないところでは基本的に善人であるようで、温厚な性格と素顔を覗かせることも多い。幼い頃に殺されかけた夏や闇ヶ谷で飢え死にしかけた兼一を助けたり傷ついた動物を手当てする など、善悪では測れない複雑な人物となっている。 戦う意思や能力を持った相手との戦いにおいては女子供であろうと容赦なく殺すが、それ以外の相手を殺す事はタブーとしている。かつて田中勤の師・御堂戒を武術への好奇心から惨殺するが、その場を目撃した田中の妻である真結も殺害した際に、彼女が体内に宿した子まで死に至らしめてしまい、それにより田中から深い恨みを買っている。意図的ではなかったものの、武術家ではない子供を殺してしまったことを悔やみ、自ら供養の為に山に篭り、仏像を彫り続けていた。 ラグナレク壊滅後は一影の命により、闇の達人やYOMIを梁山泊や新白連合にぶつけるなどの暗躍を繰り返し、その後も日本に残ったYOMIを指揮した。久遠の落日では「静動轟一」を使用して離反したセロとアーガードを圧倒する力を披露し、最後まで美雲と共に戦い続けたが、ミサイルが破壊された事で落日は失敗し、八煌断罪刃と共に戦場から去った。 本郷 晶(ほんごう あきら) 声 - 横島亘 属性:静 異名:人越拳神、人越拳 真地念源流古流空手の達人。風見伊織の弟子。30歳。4月19日生まれ。身長182cm、体重75kg。空のエンブレムを持ち、それは「空手」を意味する。黒目が小さい事を気にしており常にサングラスで隠している。 九拳でも折り紙付きで恐れられる人物。武人以外を手にかけない信念を持つが、逆に相手が武人として向かって来れば、それが女子供であっても慈悲をかけずに手にかける。かつて逆鬼とは親友にしてライバル関係にあったが、"闇"加入時に決別。現在は空手最強を二分する存在。 叶翔、勢多昇哉、芳養美樹馬の師。弟子育成能力に優れているが、自身の修行以外は放任的な面がある。九拳であるが、自らを最強と驕っていない。寡黙な性格で、かつ相当な頑固者であり一度決めたことは梃子でも譲らない。 主に腕ごと相手を貫く「ねじり貫手」を得意とする。武に対して底知れない信念と執着を抱いており、その武への執念によって実力で自分をはるかに上回るジュナザードさえも、激戦の末に破ることができた。 翔からはまるで肉親であるかのように懐かれており、師弟関係は良好なもので弟子を大切にしている。弟子を実験体とする緒方には不信感を持っており、ジュナザードのことは自分が殺すべき相手と心得ている。 逆鬼との決闘の際にジュナザードの殺気に操られ、戦闘意志のない弟子級である兼一を攻撃させられてしまい、更には美羽を誘拐されてしまうが、この一件を自身の不始末として責任を感じてジュナザードの行方を追う。 その後、ティダードにおいてジュナザードと殺人拳同士の決闘となり、次元の違う実力を持つジュナザードに始終圧倒され続けるが、必殺の一撃を執念で耐え抜き、ジュナザードの隙を付くことだけに専念することで勝利を掴んだ。 久遠の落日ではミハイと組んで行動するが、鍛冶摩と決闘中の兼一を手にかけようとした為にミハイを突き落とした。その後、新島を手にかけようとした一影(穿彗)に反旗を翻し、ジュナザードに行ったように二択勝負を挑むが、正解を引き当てた穿彗によって一方的に戦闘不能に追い込まれた。穿彗がミサイルを発射した際には駆け付けた隼人にミサイルの破壊を促した。 アレクサンドル・ガイダル 声 - 飯田利信 属性:動 異名:殲滅の拳士 エンブレム:氷 コマンドサンボの達人。ロシア人。弟子の呼び名はウチェニーク。28歳。7月28日生まれ。身長180cm、体重73kg。氷のエンブレムを持ち、それは「氷の塊」を意味する。 ボリス・イワノフの師。団結心とは無縁の九拳の中で一影九拳を同志と呼んでいる。ロシア最強のコマンドサンボ使いで、秋雨と同じく武人にして芸術家。移動には内部がアトリエになっている潜水艦を使用する。 元はロシア軍の大佐であり、癇癪から一個中隊を皆殺しにしたことで軍を追われた経歴を持つ。軍人には似つかわしくないウェーブした金髪を靡かせた凄艶な風貌の美丈夫。白目の部分が黒い。普段は紳士的で物静かな口調の優男だが、些細なことで激昂し人格が豹変する。特に銃器に関しては、軍人でありながら「汚え鉄の塊」と呼んで忌み嫌っており、向けられるだけで即激昂する。 ただし弟子であるボリスの前では決してキレない。彼が芸術を好むのは芸術的感性によって狂気を沈めることができるからであり、同時に芸術への造詣の深さも随一である。極度の潔癖症で、常に白い手袋を着用している。しかし弟子を取ってからは大分落ち着いたらしい。夢はロシアに栄光を取り戻す事。 争いの連鎖を断ち切ることができるのは速やかかつ完璧な殲滅のみ、という信条を持ち、殺人を何とも思わない冷酷な性格だが、武人の誇りと師弟愛は強い。緒方一神斎に対しては嫌悪感を募らせており、彼が勝手にボリスを梁山泊に接触させた際は、激昂して攻撃している。 ロシアにおいて"闇"排斥派の軍人達の集会を襲撃し、見せしめのために素手で瞬時に49人も殺害する恐るべき腕前を発揮。その後、ロシアの"闇"排斥派の女性議員の命を奪うために来日し、それを阻止するために来た秋雨と工事現場において激突。互いに芸術と武術を同時に極めた者同士の勝負となり、「柳葉揺らし」で翻弄され、秋雨と引き分ける形で撤退した。その後、ロシアに帰還して、大佐の地位に復帰し、兼一達が臨海学校へ出発した際に好機と見越して、ボリスに兼一ら関係者全員の抹殺を命じるが、基地内でボリスの生還を待ち望んでいる間にロシア政府の依頼によって自身を捕らえに軍基地へ潜入してきた秋雨と再び激突し、基地を崩壊させるほどの激闘となる。秋雨の「柳葉揺らし」を一度見ただけでわずかな期間で体得し、前回以上の実力を見せ、最後は活人拳と殺人拳の誇りを賭けて互いに最大の力を出した激突となり、秋雨を相当に追い込むも空中で締め落とされて2秒間意識を失ったことにより、武人として負けを認める。ボリスへの最後の命令として、YOMIの任と師弟関係を解き、自分を捜すことを禁じた。 敗北後、勝者に従って大人しく捕縛され、軍を無断で動かした罪や数々の犯罪容疑で、ビッグロックに収監された。ビッグロックから抜け出せる実力を持つものの、武人の誇りとしてあえて幽閉され続け、音楽を嗜む等、芸術に耽っていた。また、その中でディエゴとは交友関係を深め、牢から抜け出しては2人で散歩に行っていた。 久遠の落日にはディエゴと共に自分の潜水艦で死合いの邪魔をさせないという理由から梁山泊への援護を行う。 シルクァッド・ジュナザード 声 - 辻親八 属性:静 異名:拳魔邪神 プンチャック・シラットの達人。一人称は「我」。語尾に「〜わいのう」とつける独特な老人口調で話す。享年90歳以上。10月23日生まれ。身長165cm、体重60kg。所持するエンブレムは「王」。美雲と並ぶ一影九拳の古参。かつて風林寺隼人と引き分けた人物であり、隼人が苦戦すると言われる数少ない武人の1人。嵐のような殺気を放つが、普段は神話の生物と見紛う者もいる程に神聖な気の持ち主でもある。 奇怪な仮面を身に付けた怪人物。夢は人間の限界を捨て去り、神と戦う事。風林寺隼人以外の武人を格下と見なしており、一影にも制御しきれない状態となっている。その為、"闇"の統制を乱す者として美雲に危険視されている。 ラデン・ジェイハン及び風林寺美羽の師。弟子を気分次第で容易く葬るが、弟子の方からは慕われている。極限の強さを得るには大切な物の破壊が必要不可欠という持論を持つ。本郷曰く、活人拳はおろか殺人拳ですらない真性の外道。弟子には武器格闘術も指南しており、武器組の弟子が存在するなど、武器組とも交流を持っている。 血みどろの戦歴を積み重ねた強大な達人。その戦闘力は凄まじく、一瞬の隙で一影九拳クラスの達人を数回殺すと評される最高位の達人級。いわゆる平民出身であり、武人としての血筋も平凡だが、ジュナザードには才能があった。 仮面の下は美しい少年の顔をしているが、これは独自の延年益寿法により顔だけが少年のままで固定された結果である。果物が大好物で、「結実した完璧な物を取り込む」ために、種も残さず食す。 数十年前、西洋列強の連合軍による侵略をシラットゲリラ部隊を率いて打ち負かし、ティダード王国を滅亡の危機から救った事で、歴史書に「救国の英雄」としてその名を刻む。数々の偉業により、ティダード国民から神と崇められたジュナザードは後に邪神に変貌し、ティダードを裏から支配した。 ジェイハンの後釜として美羽に目をつけ、記憶を奪って誘拐しティダードの居城へ帰還。インダー・ブルーと名付け、素顔を利用し山岳民族の少年ユディスを装い、シラットを習得させる。その後、美羽を救出するために城を急襲した本郷を迎え撃つ。別次元の強さを見せつけ、本郷を終始赤子扱いして圧倒するが、自らの強さ故の慢心と本郷の持つ「武への執念」により、最後の最後で無傷を通してきた身体を貫通されて生涯で唯一の敗北を喫する。決着後、怒りと憎しみのみを植えつけたにも関わらず彼自身の身を案じて助けようとする美羽の姿に、かつて自分が忘れ去ったものを思い出すが、既に手遅れだと笑いながら直立したまま息絶えた。その後、回収された遺体は影響力を利用されないようにジェイハンだけが知る場所に埋葬された。 洗脳を除けば美羽には優れた修行を行っており、美羽はジュナザードの修練により動の気の開放を修めた。 ディエゴ・カーロ 属性:動 異名:笑う鋼拳、怒る鋼拳 メキシカンプロレスルチャリブレの達人。39歳。1月1日生まれ。身長192cm、体重120kg。鋼のエンブレムを持ち、それは「プロレス(ぶつかり合い)」を意味する。 レイチェル・スタンレイの師。レイチェルの他にもミートマンなどの弟子が多数いる。常に笑顔に見えるマスクを被っている覆面レスラー。そのマスクの下には怒り顔に見える二枚目のマスクを被っており、怒りが頂点に達した時のみ一枚目のマスクを脱いで上記の「怒る鋼拳」となる。異名、エンブレムに恥じぬ鋼の肉体を持ち、その頑強さとタフネスは一影九拳随一である。"闇"を悪だと承知しており自身をヒールと名乗る。愛弟子と称するレイチェルとは趣味・嗜好・感性において極めて相性が良く、自身の行動理念の判断を委ねることさえあり師弟愛は深い。 タイトルを差し替えたり、読者に向かって話しかけたりするなど、かなりコメディタッチなキャラクター。 「ルチャリブレこそ史上最強」を掲げつつも、「強さ」以上にプロレスの根底にある「凄さ」を重視している。 ボディプレスなどの隙は大きいが派手な大技で周囲を沸かせる「魅せる」戦闘を好んで行うが、大技を確実に決めるために正確無比な小技を駆使したり、レスラーに有利な空中戦に持ち込み主導権を確保したりと、その実は基本を活かした理に適った戦いとなっている。「何時如何なるときでもエンターテイナーであれ」という鉄則を貫き通し、優れたエンテーテイナーに対しては一切の他意を挟むことなく正当な評価をして惜しみない称賛を送る。その理念は自身の敗北の間際にさえ発揮される。モットーは「戦いの美のためならなんでもすること」。また、これらを言い表して「ディエゴクオリティー」と称する生粋のエンターテイナーである。 殺しの依頼を遂行する殺し屋稼業も行っているが、これも観客の前でド派手な殺戮ショーにするなど常にエンターテインメントは欠かさない。また、高名な演技指導者でもあり、世界の名だたる演者が彼の元に足を運んでいるという。 DオブDではフォルトナのスポンサーとしての資金援助の礼として、エグゼクティブプロデューサーとして闇を代表して参加した。 本郷晶には一目置いており、本郷の弟子だからという理由で叶翔の身勝手な行いも大目に見ているが、本心では翔を嫌っていた。 覆面レスラーとしてとしてマスクを付けている事に誇りを持っており、入浴中や就寝中も決してマスクを外さないのが当然だと思っている。また、レイチェルが学校に潜入する際あっさりマスクを取ったことに愕然とし、「私ならマスクを付けたまま学園に溶け込めるのは言うまでもない」と自称している。 他の九拳を出し抜き、独断でレイチェルと二人で梁山泊に勝負を仕掛け、師弟タッグマッチという演目で豪華客船に招待した剣星と勝負する。その鋼の肉体を以って剣星に張り合い、中盤には笑いマスクを脱ぎ捨てることで怒る鋼拳に変貌してリミッターを解除するが、根が演者のために周囲の目を意識しすぎた闘い方をしたがために技を外され、最後は内部と外部を同時に破壊する「浸透水鏡双掌」に耐え切れずに敗北する。敗北後は「ヒールは敗れたら潔く散る」として敗れた自分を殺すことを剣星に懇願するも聞き入られず、ルチャドールの礼儀としてマスクを差出して倒れる。自身の行動を不審に思ってその場にやってきた櫛灘美雲に処刑されかけるも隼人によって助けられ、ビッグロックに収監された。 ビッグロックから抜け出せる実力を持つものの、武人の誇りとしてあえて幽閉され続けている。その間にアレクサンドルとは交友関係を深めたらしく、たまに牢を抜け出しては共に気分転換の散歩に出たりもしていたらしい。『少年サンデー』の愛読者であった事実も判明し、アンケートの記入も律儀に行っている。 久遠の落日にはアレクサンドルと共に駆けつける(ディエゴ自身は梁山泊に味方したほうが目立つという考え)。弟子の1人であるミートマンをカメラマンに仕立て、久遠の落日の全てを全世界にネットを含む全ての媒体で公開した。 櫛灘 美雲(くしなだ みくも) 属性:静 異名:妖拳の女宿 櫛灘流柔術の達人。一影九拳の紅一点。一人称は「わし」。90歳以上。12月24日生まれ。身長179cm。3サイズB108-W62-H99。水のエンブレムを持ち、それは「明鏡止水」を意味する。ジュナザードと並ぶ一影九拳の古参。 櫛灘千影の師。力を使わず技のみで投げるという櫛灘流の達人。女性的な美意識が高く、露出度の高い巫女装束と袴を着用し、首から大きな数珠を下げている。 合気による相手の力を利用した投げを得意とする。気当たりの扱いにも長けており、気の爆発と実際の動きをずらす事により、分身して戦う事ができる。柔術流派は櫛灘流1つで十分と考えている。 一見妖艶な容姿の美女であり、超弩級の巨乳の持ち主でもあるなど、その肉体は20代並みの艶を保っている。外見が変化しない理由は櫛灘流の秘伝の1つ、不老長寿法により老化が防がれているためである。その見た目と裏腹にスーパーカーを愛車にしているといった面も持つ。 かつては"闇"の暗躍を阻止するため隼人とともに第二次世界大戦の中で戦っていたが、「人を真に突き動かすは恐怖」だと説き、最終的に隼人と袂を分かった。当時は、隼人と好い仲でもあった。 己の弟子である千影の実力には自信があるようで、彼女を一なる継承者にするべきと一同の前で発言している。千影に対しては甘い物を禁止する以外は寛容に見ており、兼一との決闘をすっぽかし、さらに禁じてある甘味物まで食べていた千影を特に叱責するでもなかったが、「心が弱い」と言い放つ事で、千影を自らの信念である「恐怖」によって御している。千影を惑わす存在になり得る梁山泊の弟子である兼一のことは、内心でそれなりに脅威を感じている模様で、千影にイーサンと兼一の戦いの立ち会いをさせて、兼一がイーサンに殺される光景を見せることでより闇の世界に傾倒させようと画策したが、兼一の勝利という形で失敗に終わった。 会議結果を無視して梁山泊に手を出したディエゴを殺そうとするなど、同じ九拳であっても"闇"の足並みを乱す者は排除しようとする。また、ジュナザードの暴走を危険視し、美羽の情報を渡し誘拐させる事で、風林寺隼人が美羽を助けるべく、ジュナザードと再戦するよう目論んだ事もある。その一方で、美雲自身も緒方と同様に腹に一物抱えている節があり、かねてよりの計画である「久遠の落日」の目的に関しても、他の一影九拳達とは考えの異なるビジョンを持っているようで、それが後の一影九拳の内部崩壊につながる事になる。無手組と反目し合っている武器組にも顔が利く。 久遠の落日に際しては、他の無手組の達人達とは異なって一対一にはこだわらず、ミルドレッドによる矢を雨のように降らせた援護射撃で撹乱しながら、他の達人達と交戦している達人に横槍を入れる形で攻撃する等、合理性を重視とした複数戦に持ち込む戦法で梁山泊を圧倒したが、陽炎を仕留め損ね、彼によって有利な地形を破壊されてしまう。弟子達同士の戦いでも、特に千影を始めとする兼一と深く関わった無手組の弟子達から、多勢に無勢での戦いを「流派を汚す戦い」と見なされたことで無手組の弟子達が武器組の弟子達と衝突し、無手組の師匠達に影響を与える予想を超えた事態に発展する。業を煮やし、しぐれを人質として利用した脅迫によって戦いを制しようとする武人に反する手段にまで出たが、それなりに気の合っていたセロの怒りまでも遂に買ってしまった結果、彼にまで反旗を翻されてしまい、梁山泊や反旗を翻した無手組に、隼人の面影を見たことで遂に逆上。作戦の第二段階としてミサイルの発射を穿彗に求めた。その後、穿彗が砕牙との戦いの末に自ら発射したミサイルによって死亡したために基地の状況を悟って逃亡を図るが、剣星により衣服を奪取され、海へ落ちて行った。 セロ・ラフマン 属性:静 異名:拳を秘めたブラフマン カラリパヤットの達人。弟子の呼び名はシシャ。59歳。7月30日生まれ。身長193cm、体重115kg。無のエンブレムを持ち、それは「無から生まれた武術」を意味する。 イーサン・スタンレイの師。瞳孔、虹彩がない。一影九拳ではあるが、師弟共に"闇"の目的である「最強の弟子の打倒」には興味が無い。額にティラカの装飾を施している。カラリパヤットを極めた肉体に加えて、マントラを唱えて脳を揺さぶり精神錯乱に陥らせるなど医術に基づいた技も修得している。ある経穴を突くことで相手を爆散させることもできる。 思慮深い仙人然とした穏やかな様相をしているが、「リング上の敵は瞬殺しろ」「非情の拳こそ"闇"の資質」などの発言や、時間稼ぎのために警察の特殊部隊の隊員の心臓を停止させ足止めに利用するなど、冷酷な一面が垣間見られる。その一方でブラフマンの化身と崇められているヒンドゥー教の指導者でもある。 うっかり者であるが確かな観察眼の持ち主。また、殺人拳の使い手ではあるが武人としての信念や誇りも持っている為、ただの悪人とはいえない人物でもある。美雲に恐怖で諌められた千影が自身を罰しようとしていた際は、それを諌めて優しく諭しており、これを機に千影からは良い人と認識され、千影が見た幻覚の中に「カルマンさん」という名前で現れた。ジュナザードとは親しい間柄で、美雲から一目置かれているが、セロは恐怖によってコントロールしようとする美雲の千影への扱いには兼ねてより疑問を抱いていた。 ジュナザードと共に"闇"の施設から撤退中、レイチェルを救出するためにヘリコプター内に侵入した逆鬼と交戦する。しかし、喧嘩のような逆鬼の空手に少なからず翻弄され、痺れを切らしたジュナザードが逆鬼を強襲。元々ジュナザードの意識がレイチェルから逸れることを狙っていた逆鬼に、これ以上の勝負は無用と判断され、逆鬼がヘリコプターから飛び降りたため勝負は中断された。その後、ジュナザードが弟子育成よりも逆鬼との戦いに興味を移したことから、レイチェルを自分の保護下に入れる事に成功し、兼一との勝負に敗退した弟子のイーサンを鍛え直すためにインドへと渡った。 久遠の落日では、武器組の弟子達と対立したイーサンから今回の作戦への違和感についてを聞き入れ、その直後に人質を持ち出して戦いを有利に進めようとする武人としての誇りさえも捨て去った美雲の行動に対して不満を爆発させ、千影への教育方針や武への誇りを説いて梁山泊側に付く決意をする。 馬 槍月(ば そうげつ) 声 - 玄田哲章 属性:動 異名:拳豪鬼神 中国拳法の達人。馬剣星の兄。友の魯慈正に九拳の座を預け放浪していた。45歳。10月27日生まれ。身長180cm、体重95kg。月のエンブレムを持ち、それは「謎めいた」を意味する。 谷本夏の師。化剄を得意とする剣星とは対照的な剛拳の使い手で、かつて中国では「剛の槍月」「柔の剣星」として剣星と共に最強の拳士として並び称された。大の酒好きで最高級の酒34ダースと2本を報酬に谷本夏に劈掛拳と八極拳を指導した師父でもある。谷本夏を「類稀なる武芸の才と、地獄の修行に耐える強い意志を持っている」と讃え、弟子としても認めている。 チャイニーズマフィア・紅獄会の用心棒として雇われていたころに噂を聞きつけた剣星と対峙。剛拳と呼ばれる圧倒的攻撃力で剣星に攻める間を与えず、ビルが崩れた際に生じた隙を突いた肘打ちで勝利したかのように思えたが、友との修行により格段に腕を上げていた剣星にあと一歩及ばず敗れる。敗戦後は燃え盛るビルと共に焼死することを望んでいたが、これを良しとしない兼一に引き止められ「剣星も可笑しな弟子を育てたものだ」と苦笑ながら兼一をその場から退かせ、行方不明になった。 弟である剣星とは、彼の人望に対する劣等感や武術への考え方の違いもあり、20年前に決別している。その後、槍月は裏社会に身を投じ、劇中で剣星と再会した時には兄弟で命のやり取りをするほど険悪な関係となっていた。しかし弟子の夏からは「酔うと長々と弟の自慢話をするのが悪い癖」と皮肉られており、剣星に対する感情は愛憎入り混じった複雑なものになっている。馬家の血筋だけあって気まぐれで自分の好きなことにだけ忠実。 剣星との戦いの後はしばらく行方をくらませていたが、フォルトナに金で雇われてデスパー島に渡り、そこで弟子の夏との再会を果たし、技を伝授している。フォルトナが雇った達人集団の中では最も高額のギャラを受け取っていたが彼に仕える気は毛頭無く、あっさり裏切って他の雇われた達人集団を一人で全滅させると、夏と共に再び姿を消した。その後、旧友の慈正に任せていた一影九拳の座に復帰する。 現在は弟子を本人よりやや強いものと闘わせることで早く上達させる育成方針をとっている。 久遠の落日には元々乗り気ではなく、弟子の谷本や剣星の説得を受けて梁山泊に味方する アーガード・ジャム・サイ 属性:動 異名:拳帝肘皇/裏ムエタイ界の魔帝 ムエタイ、古式ムエタイ(ムエボーラン)の達人。タイ人。36歳。3月18日生まれ。身長198cm、体重118kg。炎のエンブレムを持ち、それは「熱い」を意味する。 ティーラウィット・コーキンの師。ソムバットの弟子。褐色肌に刺青を施し、モンコンを巻いた巨漢で米印のような瞳孔を持つ。考古学に精通しており、趣味は遺跡巡り。 達観した思想と超然たる威圧感を有しており、全くの赤の他人である闇人でさえも初対面で完全に帰順させ、憧れすら抱かさせるほどのカリスマ性を持つ英傑。礼節を重んじる性格。民衆から広く敬慕されていたり、敵側の弟子である兼一の人格を見定めて褒め称えるなど高い人間力を持つ。その一方で、自らの強さ故に凡庸とは相容れないと割り切っており、自分と対等な力を持つアパチャイに対し「初めて気を許せる友を得た」と喜び勇んでいたが、同時に頂点を目指すためにはアパチャイをいずれは殺さなければならないという相克に悲嘆しつつも決意を固める。"闇"の武人としての素質と強者を屠ることを至上の喜びとする野獣の如き精神を持ち合わせるが、弟子級の者や女子供を手にかけるといった外道の所業は非難している。自分の武術故の戦場意識のためか武術家を武芸者と呼ぶ。 弟子のコーキンに対しては冷血な師弟関係でのみ接してきたつもりであったが、コーキンからしてみればそれは絶対の恩義以外の何物でもなく、彼が倒されたことによって常に冷静なコーキンが憤りを露にした。 少年時代はロムタイフンジムに所属するムエタイのジュニアチャンプであり、アパチャイとは裏ムエタイの競技施設で知り合った。優れた素質ゆえに不遇な扱いを受けていたアパチャイを引き取り、兄弟子にして無二の友としてムエタイを教え、親しまれていた。その後、時代の移り変わりに呑まれていく裏ムエタイ界に人質としてアパチャイを利用され、チャンピオン戦にて八百長による敗北を余儀なくされる。しかし試合中に密かに与えたダメージで、新チャンピオンを御立ち台で計画的に死亡させるという離れ業で劇的に殺害。試合後、己の本当の居場所を求めてジムを去り、"闇"との邂逅を果たす。後にアパチャイと雌雄を決するために帰還するも、アパチャイが未だムエタイを極めていないことを知り勝負を預ける。その際、自分の実力を確かめるべく各地のジムや裏ムエタイの本部を襲撃し、裏ムエタイ界の頂点に位置する3人の真の実力者達と本部のムエタイ使い達を纏めて殺害し、失踪する。 久遠の落日へ向けて武器組と友好関係を築くために久賀舘弾祁を拉致し、闇人へと墜とすために暗躍するも計画は武器組の失態により失敗する。 その後、沖縄の"闇"の拠点にてアパチャイと対決し、共にムエタイの頂点に君臨した者同士の死闘となり、最後の一撃でアパチャイを殺害するが、同時にアパチャイからの攻撃を受けたことで動けない程のダメージを負って倒れた。コーキンが敗北した際にはその見事な闘い振りから兼一を称賛した。戦闘後はその場に乱入してきた蛮刀使いから兼一の命を守るために様々な支援を試みるも効果は乏しく、最終的には死の淵から蘇ったアパチャイが兼一を救ったことに嘆声を漏らして彼を勝者とする。決戦場が"闇"の基地であったことから、ビッグロックへの連行を免れた。 久遠の落日ではアパチャイと拳で語り合った末にアパチャイと共に戦う道を選ぶ。
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