太陽 太陽の謎

太陽

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/11 14:24 UTC 版)

太陽の謎

三態においての分類

これは太陽だけでなく他の恒星にも言えるが、太陽には固体からなる地球型惑星や衛星、液体が大半を占める木星型惑星天王星型惑星などと異なり、はっきりした表面が存在しない。かつては、太陽を始めとする主系列星や未来の太陽の姿とされる赤色巨星は、気体で構成される、という説が有力であった。しかしながら、内部の重力の影響で、表面は気体だが、内部は液体ならびに固体で構成されている、とする説もある(前述の通り、核ではかなりの高温高圧になっているため、密度も非常に高くなっている)。21世紀初頭では、太陽の内部はプラズマ超臨界流体といった、固体でも液体でも気体でもない第四の状態となっている、とする説が最も有力となっている(中でも、既述したプラズマ説が最も有力)。このため、太陽の内部構造が三態のいずれかに該当するかについては結論は出ておらず、いまだにわかっていない。

コロナ加熱問題

太陽の表面温度は約6000 °Cであるのに対し、太陽を取り囲むコロナは約200万 °Cという超高温であることが分かっているが、それをもたらす要因は太陽最大の謎とされた。1960年代までは太陽の対流運動で生じた音波衝撃波へ成長し、これが熱エネルギーへ変換されてコロナを加熱するという「音波加熱説」が主流の考えだった[22]

1970年代からスカイラブ計画を通じてコロナのX線観測が行われたところ、コロナの形状は太陽の磁場がつくるループに影響を受けていることが判明し、ここから太陽磁場の影響による加熱が提唱された。しかし他にも磁場に伴うアルベーン波説や、フレアによる加熱説などもあり、結論には至っていない[22]

太陽ニュートリノ問題

太陽内部の核融合反応に伴って、太陽からはニュートリノが常時放出されている。これは可視光で調査不能な太陽内部を直接知る手段として注目された。標準太陽モデルで求められた陽子-陽子連鎖反応による太陽ニュートリノは、以下の4種類が想定された[38]

これらの名称およびエネルギー値は上から、p-pニュートリノ (0.42MeV)、pepニュートリノ (1.44MeV)、ベリリウム・ニュートリノ(0.38MeVおよび0.86MeV)、ボロン・ニュートリノ (6.7MeV) である[38]

太陽ニュートリノ観測は1960年代にアメリカ、1985年から日本でそれぞれ行われたが、その結果は、恒星内部の核反応の理論から予測される値の半分程度しかないことが分かった。その後行われた高精度が期待される手法による観測でも理論値よりも測定値が低い結果が再現された。複数の観測法で同じ傾向の結果が出たために、方法的欠陥とは考えられなくなった[38]

1990年代に複数の仮説が提案された。ひとつは素粒子物理学におけるニュートリノ振動が影響するというものであった。ニュートリノが質量を持つと仮定すると、そのフレーバー(電子型、ミュー型、タウ型)が宇宙空間を飛来する間に変化する可能性があり、過去の電子型ニュートリノのみを測定する手法では太陽ニュートリノが減衰したように見えるというものだった。他にも標準太陽モデルにおけるニュートリノ発生比率への疑問も呈され、過去の実験では高エネルギーのボロン・ニュートリノを捉えやすい性質があったため、仮に太陽中心の温度が想定よりも低いとするとp-pIII反応の比率は低くなり、結果として太陽ニュートリノの観測値が低くなるという考えが提案された。他にも「太陽では核反応が起こっていない」という極端な説が飛び出る中、新たな観測方法が求められた[38]

21世紀に入り稼動したスーパーカミオカンデは、同時期に開始されたカナダの観測法よりも比較的電子型以外のニュートリノも捉えることが可能だった。太陽ニュートリノを観測した結果は、理論値よりも低いながらもスーパーカミオカンデの実測値はカナダのそれを上回り、太陽ニュートリノ問題はフレーバーの変化という説で決着した。スーパーカミオカンデは別な観測でニュートリノ振動を実証し、これを受けて「太陽ニュートリノ問題」提唱者レイモンド・デイビスとカミオカンデ実験を主導した小柴昌俊は2002年度のノーベル賞を授与された[38]

太陽に環は存在するか

1966年11月12日に観測された日食の際、アメリカの科学者が赤外線観測によって、太陽から約300万キロメートル離れた地点で数µm程度の微細な塵がリング状に広がっていることを発見した。だが1993年11月13日にインドネシアにおいて観測された日食の際に京都大学の研究チームがを確認して以来、環は見えなくなっており、今後の研究が待たれている[50]


注釈

  1. ^ 2012年5月の金環日食の際の観測に基づく。金環日食直後の速報では、太陽半径として 696010±20 km としていたが、日本天文学会2012年秋季年会での報告値は太陽半径として 696019±10 km
  2. ^ 太陽内部では中心部にある核で生み出されたエネルギーが表面まで伝わるのに、数十万年から数百万年掛かると考えられている。プラズマ状態にある核では核融合反応によってニュートリノとガンマ線が生じている。ニュートリノは周囲の層を構成する物質と相互作用することはほとんどなく、そのまま宇宙空間に出て行く。核内部では生じたガンマ線が原子核に吸収され再び放射されることでジグザグに進むが、それは核の表面から放射層の最下層に達しても同様に原子核によって吸収と放射を繰り返しながらジグザグに進んで容易には外部へ伝わらない。核でエネルギーが生じてから放射層内部を進むのには数十万年から数百万年ほど掛かる。放射層表面に達したガンマ線は対流層の最底部を2百万度程度まで加熱する。対流層の表面は1万度程度であり、温度差によって対流しており、底部から表面まで約10日程度でエネルギーが運ばれる。対流層の外部の光球からは放射光や太陽風となって宇宙空間に出てゆく。
  3. ^ 地球史において太古の海洋の存在を示す地質学的な証拠と相容れないことから「暗い太陽のパラドックス」と呼ばれる。田近(1998)『地球進化論』315-320pによる アーカイブ 2016年6月30日 - ウェイバックマシン広島大学地球資源論研究室のまとめ、岐阜大学教育学部理科教育講座(地学)Web教材 高等学校理科総合B > 暗い初期太陽のパラドックス アーカイブ 2015年9月28日 - ウェイバックマシン、及びカール・セーガンらの原著、Sagan, C.; Mullen, G. (1972). “Earth and Mars: Evolution of Atmospheres and Surface Temperatures”. Science 177 (4043): 52–56. Bibcode1972Sci...177...52S. doi:10.1126/science.177.4043.52. PMID 17756316. オリジナルの2010年8月9日時点におけるアーカイブ。. http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/177/4043/52?ck=nck 2015年9月27日閲覧。. ワシントン大学のサイト上の全文PDF アーカイブ 2015年11月23日 - ウェイバックマシン)を参照のこと。

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