眉毛・睫毛
『狼の眉毛』(昔話) 狼はすべての人間を食うわけではない。眉毛を通して人間を見、本当の人間か、人間の形をした畜生かを区別し、後者だけを食うのである。狼から眉毛を1本もらった男が、ある家に宿を請う。ところがその家の婆に断られたので、男は狼の眉毛を眼に当てて見る。婆は牛に見えた(奈良県吉野郡大塔村)。〔*類話である『百物語』(杉浦日向子)其ノ61では、男が狼の眉毛をかざして見ると、往来の人々は化け物ばかりだった。鶏の化け物がやって来るが、それは男の妻だった〕。
『太平広記』巻460所引『逸史』 男が、鶴から「世間には本当の人間は稀だ。お前も人間ではない」と教えられ、睫毛を1本もらう。男がそれを眼にかざして自分を見ると、馬の頭をしていた。洛陽の人々も、みな犬や豚や驢馬などであった。
*人間が動物に見える→〔人間〕5の『モロー博士の島』(ウェルズ,H・G・)
★2.眉毛に唾をつけるのは、狐に化かされないためのまじないである。
『狐塚』(狂言) 主の命令で太郎冠者が、夜、田を荒らす鳥獣を追う。後から次郎冠者が、太郎冠者をねぎらうため酒を持って行く。しかし太郎冠者は、これを狐塚の狐が化けたものと思い、だまされないように自分の眉毛を唾で濡らす。彼は次郎冠者を縛り、さらに、様子を見に来た主までをも、狐と思って縛り上げる。
『名人』(川端康成) 第21世本因坊秀哉名人は、左の眉に特別長い眉毛が1本あった。名人は、なじみの床屋に「この長い眉毛は長命の相だから、切らんで下さいよ」と言い、床屋も「大事にいたしましょう」と答えた。しかし、それからわずか6日後の昭和15年(1940)1月18日に、名人は67歳で病死した。
『荘子』「天運篇」第14 美女西施が病んで眉をひそめた。その表情がたいへん魅力的だったので、村里の醜女が真似をして顔をしかめた。それを見た村人たちは、あるいは門を閉じ、あるいは逃げ出した。
『たね子の憂鬱』(芥川龍之介) たね子と夫は、帝国ホテルでの結婚披露式に招かれる。たね子は「洋食の食べ方を知らないので困るわ」と言い、夫はたね子の訴えを聞きながら、彼女の眉を見る〔*たね子は眉をひそめていたのだろう〕。何とか無事に披露式出席を果たした夜、たね子は鉄道自殺する夢を見た。身体は滅茶滅茶になって、眉毛だけ線路に残っていた。朝、たね子は湯飲みの番茶を飲もうとする。番茶にはあぶらが浮いており、それは彼女の眉そっくりだった。
★4.白い眉。
『蒙求』569「馬良白眉」 蜀の馬氏に5人兄弟があり、皆才能豊かだったが、中でも馬良が優れていた。彼は眉に白毛があったので、「5人兄弟のうち、白眉最も良し」と言われた。劉備が皇帝になった時、馬良は侍中(=侍従)に任ぜられた。
『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)』(スノリ)第8章 神々は、海岸に巨人族の住む土地を与えつつ、巨人族の攻撃に備えて、大地の内部に砦を作った。砦には巨人ユミルの睫毛が使われ、ミズガルズと呼ばれた。
*スサノヲノミコトが眉の毛を抜いて散らすと、それらは樟になった→〔木〕1bの『日本書紀』巻1神代上・第8段一書第5。
『名人伝』(中島敦) 弓の名手・紀昌は妻と喧嘩をした時、威(おど)そうと思い、弓に矢をつがえて妻の目を射た。矢は妻の睫毛3本を射切って彼方へ飛び去った。妻は何も気づかず、まばたきもしないで紀昌を罵り続けた。
眉毛
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眉毛(まゆげ、英語:eyebrow)とは、目の上部に弓状に生える毛のこと。眉とも呼ばれる。
概要
眉毛は顔面に左右一対あり、まぶたの上の、目の上にそれに沿って隆起する部分に目の幅とほぼ同じくらいにわたって生えている体毛である。一般の体毛と異なり、より太く色濃くなっている場合が多い。それぞれの毛は立ち上がらず左右の外側、やや下向きに寝るものもある。眉毛の位置は多少の差はあるが、左右非対称で生えていることがほとんどである。左右の眉の間-眉間(みけん)-の毛がない部分の幅には個人差があり、ここに毛が生えることにより二つの眉がつながった状態になることがあり、その形状からカモメ眉と呼ばれる。
眉毛は機能的には額から落ちる雨水や汗が目に入らないようにする役割を担う。それぞれの毛の方向はそれに対応するものと考えられる。同様に、雨水やほこりや小さなゴミが目にはいるのを避ける役割も担っている。
他方で、眉は人の表情を作る重要な役割を担っており、それによるコミュニケーションにおいても重要な役割を果たしている。
眉毛は目元のみならず顔全体の印象を左右するパーツであるため、古くから化粧の一環として眉毛を任意の形に整える、引眉などの行為が行われてきた。歌舞伎など世界の古典的な舞踊において、目や口元と同様に眉を強調する化粧を行う例は数多い。現代では主に女性が眉毛を抜いたりカットしたり、剃ったりして眉毛の形を整えることがある。女性の場合は眉毛を描くため、全て抜いたり剃り落としている人もいる。また、逆に薄い眉や不揃いな眉の場合は眉のラインを描きたすこともある。髪を染めている人の場合は、髪の色に合わせて眉毛を染めることもある。眉毛には生理的役割はないので、頭髪と同様、美容として加工することにあまり抵抗感はないと言える。眉の化粧については眉墨の項目で詳述している。
動物学的眉
眉はほぼヒトに独特のものである。まつげは多くのほ乳類に見られるが、そもそも多くの哺乳類では顔が毛で覆われており、眉は区別できない。顔面に毛がなくなるのはサル目における進化の傾向であり、チンパンジーやゴリラでは人並みの顔面があるが、眉毛はない。
また、ネコの眼の上から顔の横にかけてある長い毛を「眉毛」と俗称されることがあるが、これはひげ(洞毛)の一種で、人間の眉毛とは異なる感覚器としての性質を持っている。
漫画表現における眉
眉毛の形は感情表現において非常に重要である。漫画やアニメでは、それを利用し、眉の形を大げさに変化させることで感情表現を明確にすることができる。例えば、両端をつり上げ、眉間にしわを寄せれば怒りが、両端を下げて目を細めれば安楽さを演出できる。あるいは眉をねじれさせて困惑を示す、と言ったあり得ない形でさえ、表情を表すのに使われる。
呼称
- 眉間(みけん)…左右の眉と眉の間
- 眉頭(まゆがしら)…眉の内側の部位
- 眉山(まゆやま)…弓状の眉の屈折部
- 眉尻(まゆじり)…眉の外側の部位
慣用表現
眉毛
「眉毛」の例文・使い方・用例・文例
- 眉毛を抜いたりカットして、眉毛の型を整える。
- 眉毛を描く
- 彼の眉毛は太いです。
- 眉毛が太い。
- あなたの眉毛は格好良い。
- 私とあなたの顔の違いは眉毛だ
- 彼は今まで見た中ではもっとも大きな眉毛をしている。
- 彼は眉毛が濃い
- 眉毛を落とす
- 人の眉毛を読む
- 眉毛を読まれる
- 眉毛に火のつくような問題
- ゲジゲジ眉毛
- 毛虫のような形の太くて濃い眉毛
- 眉毛のこめかみに近い方の端
- 眉毛の色や形を整えたり,人為的に眉をかくための化粧料
- 眉毛の顔の中心に近い方の端
- 眉毛を落とした遊女
- まつげと眉毛
- 眉毛の形を整えること
眉毛と同じ種類の言葉
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