天体物理学とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 方式・規則 > 主義・方式 > 学問 > 学問 > 天体物理学の意味・解説 

てんたい‐ぶつりがく【天体物理学】

読み方:てんたいぶつりがく

天体物理的状態を研究する天文学または物理学一部門。天体光度スペクトルなどをもとに、その組成温度圧力などを導き物理学諸法則から内部構造恒星銀河宇宙の進化などを研究する天文物理学


天体物理学

星の現象物理的特性を扱う天文学一部門。

天体物理学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/23 15:58 UTC 版)

天体物理学(てんたいぶつりがく、英語:astrophysics)は、天文学及び宇宙物理学の一分野で、恒星銀河星間物質などの天体の物理的性質(光度密度温度・化学組成など)や天体間の相互作用などを研究対象とし、それらを物理学的手法を用いて研究する学問である。宇宙物理学とも。天文学の中でも19世紀以降に始まった比較的新しい分野で、天文学の近代部門の代表的な分野と目されている。

例として、宇宙論の研究は、理論天体物理学の中で最も規模の大きな対象を扱う学問であるが、逆に宇宙論(特にビッグバン理論)では、我々が知っている最も高いエネルギー領域を扱うがゆえに、宇宙を観測することがそのまま最も微小なスケールでの物理学の実験そのものにもなっている。

実際には、ほぼ全ての近代天文学の研究は、物理学の要素を多く含んでいる。多くの国の天文学系の大学院博士課程の名称は、「天文学 (Astronomy)」や「天体物理学 (Astrophysics)」などまちまちだが、これは専攻の学問内容よりもその研究室の歴史を反映しているに過ぎない。

歴史

天文学の歴史は人類の歴史そのものと同じくらいに古いが、天文学は長い間、物理学とは区別されてきた。アリストテレス的な世界観では、天は完全な世界であり、天体は完全な球形であって完全な円軌道上を動いているとされていた。一方、この地上は不完全な世界であり、これら二つの世界は互いに無関係であると考えられていた。

太陽惑星地球の周りを回っているという一見常識的な見方(天動説)についても、何世紀にもわたって疑問が投げかけられることはなかった。しかし16世紀になってニコラウス・コペルニクスが、地球と他の全ての惑星は太陽の周りを周回する太陽系を形作っているというモデル(地動説)を提案した。ガリレオ・ガリレイは定量的測定を物理学の中心に据えたが、天文学での彼の観測は、まだ天体物理学的な意味は持っていなかった。

やがて精密な観測データが得られるようになると、観測された天体の振る舞いに対して理論的な説明を追求するという姿勢が生まれてきた。初めのうちは、17世紀初期に発見されたケプラー惑星運動の法則など、場当たり的な経験則が見出されるにとどまっていた。しかし、17世紀の終わりになるとアイザック・ニュートンが、地球上の物体の力学を支配する法則と同じものが惑星や月の運動をも支配していることを発見し、ケプラーの法則とガリレイの力学とを橋渡しすることになった。これが天文学と物理学とを統合した最初の仕事である。

アイザック・ニュートンが『プリンキピア』を出版した後、航海術の分野に変化が起こった。1670年頃から、近代的な緯度測定器具と当時最高精度の時計を用いて、世界中で自分の位置が測定されるようになったのである。航海の必要性が高まるにつれ、より高精度の天文観測や観測器具を求める動きが次第に増してきた。この流れを背景にして、天文学者はより多くの質の良い観測データを得るようになった。

19世紀の終わりには、太陽の光を分光すると多数のスペクトル線(光が弱い、またはほとんど見られない領域)が見られることが発見された。実験室で高温のガスを分光すると同じような線を見ることができ、各々の線はそれぞれ一種類の元素に対応している。この方法によって、太陽のスペクトルに見られる元素(主に水素)と同じ元素が地球上にも存在していることが証明された。実際、ヘリウムは、まず太陽のスペクトルの中から発見され、後になって地上で見つかった。ヘリウム (Helium) という名前はここに由来している。20世紀には、天文学や実験物理学の実験・観測結果の理解に必要な量子物理学が出現したことによって、分光分析学(上記のようなスペクトル線を研究する学問)が発展した。

観測天体物理学

多くの場合、天体物理学的な物理過程は地球上の研究室では再現できない。しかし、電磁波のスペクトル全体を見渡せば、膨大な種類の天体を見ることができる。これらの天体からデータを受動的に集めることによって研究を行うのが観測天体物理学の目的である。

天体物理現象を研究するのに必要な装置や手法には様々なものがある。現在関心を持たれている天体物理現象の多くは、非常に先進的な技術がなければ研究できなかったり、ごく最近まで現象自体が知られていなかったものである。

天体物理学の観測の大半は電磁波スペクトルを用いて行われている。

電磁波の放射以外では、宇宙の遠方からやってくるもので地球から観測できる対象は限られている。重力波天文台がいくつか作られているが、重力波で観測するというよりは、検出が極端に困難な重力波を検出するのが当面の目標である。ニュートリノ天文台も主に太陽を研究する目的で建設されている。非常に高エネルギーの粒子からなる宇宙線が地球の大気と衝突する現象も観測可能である。

天文観測では、その時間スケールにおいても様々な違いがある。ほとんどの光学観測には数分から数時間単位の時間がかかるため、これよりも短い時間で変化する現象は容易には観測できない。しかしいくつかの天体については数百年、あるいは千年以上にわたって歴史上の記録に残されているデータを見ることができる。一方で、電波観測では数ミリ秒の時間スケールのイベント(ミリ秒パルサーなど)を見たり、数年にわたるデータを重ね合わせて調べたりする(パルサーの減速の研究など)ことができる。こういった異なる時間スケールの観測から得られる情報は非常に異なった様相を見せる。

太陽の研究は観測天体物理学の中で特別な位置にある。太陽以外の恒星は全て非常に遠距離にあるので、太陽は他の星とは比べ物にならないほど詳細に観測できる唯一の恒星である。太陽の性質を理解することは、他の恒星を理解する助けとなる。

恒星がどのように進化するかという恒星進化論の話題は、恒星のタイプの違いをヘルツシュプルング・ラッセル図の上の個々の位置の違いで表すことが多い。この図は恒星の誕生から崩壊までの星の状態を表現していると見ることができる。

理論天体物理学

理論天体物理学者は観測結果を再現し、新たな現象を予測するモデルを構築・評価する。彼らは解析的モデル(例えば恒星の振る舞いを近似するポリトロープなど)や計算物理学的な数値シミュレーションといった様々な道具を用いる。

これらの過程のいくつかの例は以下の通りである。

現象予測モデルの構築と評価
物理過程 実験の道具 理論的モデル 説明/予測
重力 電波望遠鏡 自己重力系 恒星系の形成
核融合 分光学 恒星進化論 どのように恒星が輝くか
ビッグバン ハッブル宇宙望遠鏡
COBE
膨張宇宙 宇宙年齢
量子ゆらぎ インフレーション理論 平坦性問題
重力崩壊 X線天文学 一般相対性理論 アンドロメダ銀河の中心のブラックホール

理論天体物理学で研究されるトピックとしては以下のようなものがある。

天体物理学の諸分野

関連文献

外部リンク

以下は英語などで書かれた海外の情報です。
査読制度付き学術雑誌

総覧 Science Resource World.com 作成分のアーカイブ(2012年7月18日)

大学、天文台のサイト

天体物理学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/19 02:12 UTC 版)

金属水素」の記事における「天体物理学」の解説

木星土星新しく発見され太陽系外惑星内部では、重力による圧縮により、金属水素大量に存在する考えられている。新しデータでは、以前考えられていたよりも多く金属水素木星存在することが示唆されている。木星磁場が非常に強く地表面近くにあるのは、金属水素存在一因だとも言われている。

※この「天体物理学」の解説は、「金属水素」の解説の一部です。
「天体物理学」を含む「金属水素」の記事については、「金属水素」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「天体物理学」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

天体物理学

出典:『Wiktionary』 (2021/12/09 14:06 UTC 版)

この単語漢字
てん
第一学年
たい
第二学年
ぶつ
第三学年

第二学年
がく
第一学年
音読み 呉音 漢音 音読み 漢音

発音

名詞

天体物理学 (てんたいぶつりがく)

  1. (天文学, 物理学) 天体物理的性質などを研究する分野

関連語


「天体物理学」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



天体物理学と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「天体物理学」の関連用語

天体物理学のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



天体物理学のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
日本惑星協会日本惑星協会
All rights reserved. The Planetary Society of Japan 2025.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの天体物理学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの金属水素 (改訂履歴)、ヨーハン・マルリェー (改訂履歴)、静水圧平衡 (改訂履歴)、物質移動 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの天体物理学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS