現代物理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/15 02:06 UTC 版)
概要
19世紀の物理学の存在や時空に対する立場は、その当時共有されていたニュートン力学的な直感、物体の運動やあらゆる事象は常に定まっておりそれらは原理的に予測可能であること、時間の流れは一様で普遍的であることなど、という立場の中に概ね収まるものであった。しかしその一方で、19世紀に起こった電磁気学、熱力学および統計力学の技術的・理論的発展の中で、それらの理論では説明不可能な現象があることが実験的・理論的に知られるようになってきた。
19世紀の物理学における困難としては、ニュートン力学がガリレイ変換に対する対称性を持っているのに対し、電磁気学の理論はガリレイ変換対称性を持っていなかった。このことはニュートン力学の立場では、ある基準系に対して電磁気現象はマクスウェルの方程式によって記述されるが、基準系に対して運動している別の系では方程式の形が変化してしまうことを示していた。 別の困難として、統計力学におけるエネルギー等分配の法則の問題がある。真空中の電磁場の振動を、振動の波数成分によって分類すると、それぞれの波数に関する振動は、他の波数成分と互いに独立な調和振動子の運動として力学的に翻訳することができた。これをエネルギー等配分の法則と組み合わせることで、平衡状態における電磁場の放射のエネルギー密度を決定することができた。しかしながら、これによって得られる電磁場のエネルギーの体積密度は発散してしまい、各振動数に関する分布も実験とは一致しなかった。
これらの困難は、相対性理論や量子力学といった、ニュートン力学的な直感とは一見して相容れない理論の構築によって解決され、これらの理論体系が新たに自然の本質に据えられることになった。これらの新たな理論体系に基づく現代物理学、特に量子力学は、物理学・化学をはじめとした自然科学全体に爆発的な進歩をもたらし、工業的にも極めて重要なものとなった。現代物理学は数学と相互に発展しあい、哲学にも重要な問題提起を投げかけた。
微視的(ミクロ)

観測という行為が対象物に何らの変化ももたらさない立場に立っている古典物理学[1]に対して、量子力学は観測によって対象物の状態が変化するという立場をとる。 なお、量子力学的効果は、電子や原子核などの微視的な粒子において顕著となる。
量子力学は、粒子と波動の二重性や確率解釈、不確定性原理、シュレーディンガー方程式等の、それまでの古典物理の常識が通用しない理論体系からなっている。量子力学における
といった古典物理のパラダイムが転換されたことに文脈上重きを置く場合、古典物理学と現代物理学をこの狭義の意味合いで区別する。
巨視的(マクロ)
一方、相対性理論は、時間と空間が相対的なものであるという立場をとる。 光速に近い速度での運動では特殊相対性理論による効果が、強い重力場においては一般相対性理論による効果が顕著となる。特殊相対性理論からは「時間の進み方は絶対的なものではなく観測者に依存して決まる」、一般相対性理論からは「重力の正体は時空に生じる歪みである」といった結論が得られ、これらもまたニュートン力学を前提とした概念を大きく変更する。
現代物理学の特質
一般に現代物理学の中核に関連すると考えられる話題としては、以下がある。
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出典
- ^ 都築卓司『不確定性原理』講談社、1995年、143頁。ISBN 4-06-117755-9。
関連項目
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現代物理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 15:56 UTC 版)
詳細は「現代物理学」を参照 1905年、アインシュタインは特殊相対性理論を発表した。アインシュタインの相対性理論において、時間と空間は独立した実体とは扱われず、時空という一つの実体に統一される。相対性理論は、ニュートン力学とは異なる慣性座標系間の変換を定める。相対速度の小さな運動に関して、ニュートン力学と相対論は近似的に一致する。このことはニュートン力学の形式に沿って定式化された相対論的力学において明確になる。 1915年、アインシュタインは特殊相対性理論を拡張し、一般相対性理論で重力を説明した。特殊相対論によって、力学と電磁気学の理論は整合的に説明できるようになったが、重力に関してはニュートンの万有引力の法則以上の満足な説明を与えることができなかった。一般相対論によって、重力の作用を含めた包括的な説明ができるようになった。一般相対論において、ニュートンの万有引力の法則は低質量かつ低エネルギーの領域における近似理論と見なすことができた。 1911年に、ラザフォードの下で原子の研究が進展し、その時の散乱実験から、電荷を持つ物質を核とする原子像(ラザフォード模型)が提唱された。原子核を構成する正電荷の粒子は陽子と呼ばれる。電気的に中性な構成物質である中性子は1932年にチャドウィックによって発見された。 1900年代初頭に、プランク、アインシュタイン、ボーアたちは量子論を発展させ、離散的なエネルギー準位の導入によってさまざまな特異な実験結果を説明した。1925年にハイゼンベルクらが、そして1926年にシュレーディンガーとディラックが量子力学を定式化し、それによって前期量子論は解釈された。量子力学において物理測定の結果は本質的に確率的である。つまり、理論はそれらの確率の計算法を与える。量子力学は小さな長さの尺度での物質の振る舞いをうまく記述する。 また、量子力学は凝縮系物理学の理論的な道具を提供した。凝縮系物理学では誘電体、半導体、金属、超伝導、超流動、磁性体といった現象、物質群を含む固体と液体の物理的振る舞いを研究する。凝縮系物理学の先駆者であるブロッホは、結晶構造中の電子の振る舞いの量子力学的記述を1928年に生み出した。 第二次世界大戦の間、核爆弾を作るという目的のために、研究は核物理の各方面に向けられた。ハイゼンベルクが率いたドイツの努力は実らなかったが、連合国のマンハッタン計画は成功を収めた。アメリカでは、フェルミが率いたチームが1942年に最初の人工的な核連鎖反応を達成し、1945年にアメリカ合衆国ニューメキシコ州のアラモゴードで世界初の核爆弾が爆発した。 場の量子論は、特殊相対性理論と整合するように量子力学を拡張するために定式化された。それは、ファインマン、朝永、シュウインガー、ダイソンらの仕事によって1940年代後半に現代的な形に至った。彼らは電磁相互作用を記述する量子電磁力学の理論を定式化した。 場の量子論は基本的な力と素粒子を研究する現代の素粒子物理学の枠組みを提供した。1954年にヤンとミルズはゲージ理論という分野を発展させた。それは標準模型の枠組みを提供した。1970年代に完成した標準模型は今日観測される素粒子のほとんどすべてをうまく記述する。 場の量子論の方法は、多粒子系を扱う統計物理学にも応用されている。松原武生は場の量子論で用いられるグリーン関数を、統計物理学において初めて使用した。このグリーン関数の方法はロシアのアブリコソフらにより発展され、固体中の電子の磁性や超伝導の研究に用いられた。
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