かく‐ぶつりがく【核物理学】
原子核物理学
(核物理学 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/28 16:15 UTC 版)
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放射性崩壊 核分裂反応 原子核融合 |
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原子核物理学(げんしかくぶつりがく、英語:nuclear physics、単に核物理とも言う):強い相互作用に従う粒子の多体問題を研究する学問領域。主に原子核の核構造、核反応(核分裂反応、核融合反応)などを扱う分野のこと。また、核物質・ハドロン物質の性質を調べるハドロン物理学も、この分野の一部である。
構成要素が2種類(注・ハイパー核はさらに数種類の構成要素が加わる)であるにもかかわらず、陽子・中性子それぞれの数や励起のさせ方により、様々な構造を取るのが特徴である。核子の主要な相互作用である「強い相互作用」が未だ完全に解明されていないこと、物性理論のように構成粒子が無限であるという近似が許されないこと、表面の効果が重要であること等により、発見から1世紀近く経つにもかかわらず、未知の部分が残されており、理論実験ともに盛んに研究が行われている。
原子核物理学における理論
対象とするエネルギー領域によって、狭義の原子核物理学、ハドロン物理学に大別される。
低エネルギー領域における現象を記述する原子核物理学では、核子の自由度から原子核の構造を記述する「微視的核構造理論」の構築に力が注がれている。 近年ファデエフの方法やその拡張、あるいはモンテカルログリーン関数法などによって非相対論的な核子少数多体系の厳密解が得られるようになった。 また、この微視的核構造理論を基にした核反応物理学の構築にも力が注がれている。 ここで培われた方法はハイパー核の研究などにも適用されている。 より核子数の多い原子核の記述のために平均場理論を基にした集団運動模型が整備され、着々と精密化が進んでいる。 また大規模な殻模型計算を数値的に行う手法も飛躍的に発展し、模型の範囲内では満足な計算結果を得られるようになった。 一方量子分子動力学を基にしたAMD模型等により核構造の記述が試行されているが、その理論正当性はいまだに判然としない。
中間エネルギー領域の現象を記述するハドロン物理学では量子色力学(QCD)に基づく記述が目標とされている。 理論的に疑問点の少ない摂動論を用いた現象の記述は、摂動的に記述できる部分と非摂動的に記述しなければならない部分との因子化分離が可能な場合にはよく理解されている。 しかし非摂動領域での有効模型やQCD和則による研究は、永年月にわたる多大な努力にもかかわらず芳しい進展を見ない。 一方で模型に依らない格子QCD数値計算の方法は急激かつ長足の進歩を見せている。 現在主な研究内容としては、相対論的高エネルギー重イオン衝突時等におけるQGP(クォークグルーオンプラズマ)生成の機構やその性質、高密度核物質におけるカラー超伝導状態の記述、またカラー超伝導相からダイ・クォーク凝縮相へのBCS-BECクロスオーバー、更に中性子星内部における中間子凝縮等が挙げられ、広い温度・密度領域における核物質の多様性に関する研究を相転移(カイラル相転移、クォークの閉じ込め・非閉じ込め相転移)という概念の下、活発に行われている。
原子核物理学における実験
現代の原子核に関する実験には大雑把に言って原子核をくっつけて(核融合反応)自然に存在しないより大きな原子核を作る実験(超重核の探索など)、ぶつけて壊す(核破砕反応)事によって天然に存在しない核を作り性質を調べる実験(中性子過剰核や陽子過剰核の実験)、陽子・中性子以外にストレンジネスを持つバリオンであるハイペロンを混入してその振る舞いを調べる実験(ハイパー核)、重い原子核同士を高エネルギーで衝突させて新しい物質状態を探索する実験(相対論的重イオン衝突)などがある。
測定の手法としては励起状態から基底状態へ移る際に放出されるγ線のエネルギーとその揺らぎを測定する実験(原子核分光)、原子核崩壊の生成物のエネルギーとその揺らぎを測定する実験、原子核に高エネルギーの光子や電子を入射してその変化を調べる実験、その他原子核から放出される種々の粒子を測定する実験がある。
最近取り沙汰される話題
関連項目
核物理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 02:54 UTC 版)
AdS/CFT対応を用いて研究されている対象の一つに、クォークやグルオンが閉じ込めから開放されたクォークグルーオンプラズマ(quark-gluon plasma)という物質がある。この物質は実験的には素粒子加速器によって、金や鉛のような重いイオンを高エネルギーで衝突させることによってごく短い時間の間発生する。そのような衝突実験においては原子核はおよそ 2 × 10 12 {\displaystyle 2\times 10^{12}} Kに至りクォークが閉じ込めから解放される。この温度はビッグバンのおよそ 10 − 11 {\displaystyle 10^{-11}} 秒後の温度とほぼ同じである。。 クォークグルーオンプラズマの物理においては量子色力学が支配的寄与をなすがこの理論は数学的に取り扱いにくい。2005年、Kovtun、SonおよびStarinets(以下Kovtunら)は弦理論のことばの中で表すことによりクォークグルーオンプラズマのいくつかの側面を理解することができることを示した。 Kovtunらはまずゲージ重力対応を持つ幅広い理論がある仮定を満たす限りにおいて流体のずれ粘性 η {\displaystyle \eta } とエントロピーの体積密度 s {\displaystyle s} の比率が次のある普遍的な定数に等しくなることを示した。 η s = ℏ 4 π k {\displaystyle {\frac {\eta }{s}}={\frac {\hbar }{4\pi k}}} ここに ℏ {\displaystyle \hbar } はプランク定数であり、 k {\displaystyle k} はボルツマン定数である。さらにKovtunらはハイゼンベルクの不確定性原理及び超対称ヤンミルズ理論における計算結果を根拠にこの普遍的定数が幅広いクラスの系で η / s {\displaystyle \eta /s} の下限を与えると予想している。この予想は、ブルックヘブン国立研究所の相対論的重イオン衝突器(英語版)を用いて2008年に行われた実験により現実と無矛盾である可能性が示唆された。 クォークグルーオンプラズマのもう一つ別の重要な性質として、プラズマの中を動く非常に高いエネルギーのクォークは、たった数フェムトメートル(10-15m)動いた後に止まったり、「折れ曲がったり(quenched)」したりする。この現象はジェットクエンチング(英語版)パラメータと呼ばれる数値 q ^ {\displaystyle {\widehat {q}}} により特徴付けられる。ジェットクエンチングパラメータは、プラズマを通って動く距離の二乗に、クォークの失うエネルギーが関係付いていることを示している。AdS/CFT対応に基づく計算は、理論家が q ^ {\displaystyle {\widehat {q}}} の値を見積もることを可能とし、その結果がこのパラメータにほぼ一致していることが分かり、この現象のより深い理解のために、AdS/CFT対応が有益であることを明らかにしている。
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