星団 cluster of stars(またはstarcluster)
星団
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/17 23:39 UTC 版)
星団(せいだん、star cluster)は、同じガスから誕生した、互いの重力相互作用によって結びついた恒星の集団[1][2]。その特徴から散開星団 (英: open cluster) と球状星団 (英: globular cluster) に分類される。
星団の種類
散開星団
数十から数百の恒星が最大で50光年ほどの範囲に集まっている星団[3]。銀河円盤の渦状腕に存在することから galactic cluster とも呼ばれ[3]、地球からは天の川の近くに多く見られる。同じ星間分子雲から誕生して数百万年から数千万年しか経っていない「種族I」の恒星で構成されている[4]。よく知られている散開星団として、プレヤデス星団[5]やヒアデス星団が挙げられる[3]。
散開星団の分類には、「星団中心部の集中度」「星団に属する星々の明暗の幅」「星団に属する星の数」の3つの要素で分類する「トランプラー分類 (英: Trumpler classification)」が用いられる[6]。
ヒアデス星団やおおぐま座運動星団のように、収束点 (英: convergent point) と呼ばれる天球上のある一点に向って動いているように見える恒星からなる散開星団は「運動星団 (英: moving cluster, moving group)」と呼ばれる[7][8]。おおぐま座運動星団は、おおぐま座α星とη星を除く北斗七星の5つなどが属する、地球に最も近い星団である。
名称 | 別名 | 星座 | 視直径 | 距離 | 年齢 | 恒星の数 | 画像 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
M45 | プレヤデス星団 Pleiades |
おうし座 | 2° | 約430 光年 | 1億3500万歳 | 50 | ![]() |
M44 | プレセペ星団 Praesepe Beehive |
かに座 | 70′ | 約610 光年 | 7億2900万歳 | 70 | ![]() |
Melotte 25 | ヒアデス星団 Hyades |
おうし座 | 5.5° | 約150 光年 | 7億8700万歳 | 55 | ![]() |
M7 | トレミー星団 Ptolemy's Cluster |
さそり座 | 80′ | 約300 光年 | 2億9900万歳 | 120 | ![]() |
Melotte 111 | かみのけ座星団 Coma Berenices Cluster |
かみのけ座 | 2° | 約310 光年 | 4億4900万歳 | 863 | ![]() |
球状星団
数万から数百万の恒星が直径100-300光年のほぼ球状の領域に密集している星団[10]。銀河ハローに分布しており、銀河形成の初期段階、あるいは銀河同士の衝突合体に伴って生成されたと考えられている[11]。主に「種族II」に分類される金属量[注 1]の少ない年老いた星で構成されており、誕生から100億年以上経過した星も多い[11]。天の川銀河内にある球状星団までの距離決定と年齢の推定には、球状星団によく見られることから「星団型変光星 (cluster variables)」とも呼ばれていたこと座RR型変光星の周期-光度関係が用いられる[12][13]。
球状星団の分類には、星団中心部への恒星の集中度によって12段階に分類する「シャプレー・ソーヤー集中度分類 (英: Shapley-Sawyer Concentration Class)」が用いられる[14]。
- 主な球状星団
研究対象としての星団

散開星団や球状星団は、恒星進化の理論を検証するために重用されており、「星の進化の実験室」と呼ばれることもある[15]。これは、
- 同じ星団に属する星は、どれもほぼ同じ時期に誕生したと見なせる。
- 同じ星団に属する星は、地球からの距離がどれもほぼ同じと見なせる。
- 同じ星団に属する星は、同じ分子雲から誕生したため、誕生時の金属量もほぼ同一と見なせる。
といった、星団に属する星に共通して見られる特徴による。すなわち、星団では様々な質量を持つ星が同じ分子雲からほぼ同時期に生まれたと見なせるため、現在の光度やスペクトルを観測することで、異なる質量を持つ恒星がそれぞれどのように進化するのかという恒星進化の理論を検証するのに都合が良い[16]。また、同じ星団の星はどれも地球からほぼ同じ距離にあると見なせるため、HR図の縦軸の絶対等級を見かけの等級に、横軸の有効温度を色指数に置き換えた「色-等級図 (color magnitude diagram)」を用いて、星団までの距離や年齢を推定することができる[16]。
脚注
注釈
出典
- ^ Ian Ridpath 2018, p. 861.
- ^ “星団”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2018年4月20日). 2022年3月6日閲覧。
- ^ a b c Ian Ridpath 2018, p. 699.
- ^ “散開星団”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年9月30日). 2022年3月6日閲覧。
- ^ 日本大百科全書(ニッポニカ). “プレヤデス”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2022年3月12日閲覧。
- ^ Ian Ridpath 2018, p. 912.
- ^ “運動星団”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2018年4月11日). 2022年3月12日閲覧。
- ^ Ian Ridpath 2018, p. 666.
- ^ “Catalog of Optically Visible Open Clusters and Candidates”. OPEN CLUSTERS AND GALACTIC STRUCTURE. 2022年3月13日閲覧。
- ^ Ian Ridpath 2018, p. 472.
- ^ a b “球状星団”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年9月30日). 2022年3月6日閲覧。
- ^ “星団型変光星”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年9月8日). 2022年3月10日閲覧。
- ^ 安田直樹 著「6.2.2 1次距離指標」、谷口義明、岡村定矩、祖父江義明 編 『4 銀河I』〈シリーズ現代の天文学〉(第2版第1刷)日本評論社、2018年8月25日、199頁。ISBN 978-4-535-60754-5。
- ^ Frommert, Hartmut (2014年2月19日). “Concentration Classes of Globular Clusters”. SEDS Messier Database. 2022年3月12日閲覧。
- ^ 有本信雄 著「5.1.2 銀河の進化の実験室」、祖父江義明、有本信雄、家正則 編 『5 銀河II』〈シリーズ現代の天文学〉(第2版第1刷)日本評論社、2018年3月15日、181頁。ISBN 978-4-535-60755-2。
- ^ a b 沢武文 著「23 星団の色-等級図」、福江純、沢武文、高橋真聡 編 『極・宇宙を解く-現代天文学演習』(初版)恒星社厚生閣、2020年2月10日、95頁。ISBN 978-4-7699-1643-7。
参考文献
- Ian Ridpath, ed (2018-04-26). A Dictionary of Astronomy (3rd ed.). Oxford University Press. ISBN 9780192542618
関連項目
星団
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 20:51 UTC 版)
シリウスが星団の一員であるという説は、1909年にアイナー・ヘルツシュプルングによって初めて提唱された。ヘルツシュプルングは、天球上でのシリウス星系の固有運動の観測から、シリウスがおおぐま座運動星団の一員であるとした。おおぐま座運動星団は固有運動を同じくする220の恒星からなり、かつては散開星団であったが現在は互いの重力に束縛されていないグループである。しかしながら、2003年と2005年にかけての研究では、シリウスがこの集団の一員である可能性は疑問視されている。おおぐま座運動星団は5±1億歳程度と見積もられているが、シリウスはこの半分程度の年齢でしかなく、この集団の一員としては若過ぎるためである。これとは別にオリン・エッゲンによって、ぎょしゃ座β星、かんむり座α星、コップ座β星、エリダヌス座β星、へび座β星からなる Sirius Supercluster の一員であるという説が提唱されている。この星団は太陽系から500光年以内に位置する3つの大きな星団のうちの1つである。他の2つはヒアデス星団とプレアデス星団で、いずれも数百の恒星により構成されている。
※この「星団」の解説は、「シリウス」の解説の一部です。
「星団」を含む「シリウス」の記事については、「シリウス」の概要を参照ください。
「星団」の例文・使い方・用例・文例
- 私は星雲や星団を観測するために屈折望遠鏡が欲しい。
- 星団.
- 乙女座の星団はアンドロメダ星雲の 16.5 倍も遠い.
- 球状星団
- 星座か星団を形成する
- 星団(あるいは小さな星座)
- ケンタウルス座にある球状星団
- おうし座にある星団
- プレアデス星団の星の1つ
- 7つのプレイアデス星団のうちの1つ
- 昴星という星団
- プレアデスという星団
- 小星団
- プレアデス星団という,牡牛座の散開星団
- ヒアデス星団という天体
- 百万から千万個の恒星が直径100光年ほどの大きさに密集している星団
- 数十から数千個の恒星が直径10光年程の大きさに集まった星団
- 主として天の川に沿って分布している星団
星団と同じ種類の言葉
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