渦巻銀河



渦巻銀河[1](うずまきぎんが、spiral galaxy[1])は、銀河のハッブル分類における種類の一つ。
特徴
渦巻銀河は以下のような特徴を持つ。
渦巻銀河はディスク内に明るい渦状腕を持っているためにその名が付いている。渦状腕はバルジから外側に向かって螺旋を描くように伸びており、腕に沿ってダーク・レーンと呼ばれる暗い筋状の構造やHII領域などの星形成の盛んな領域が見られる。渦巻銀河の中には羊毛状渦巻銀河と呼ばれる、あまり明瞭でない切れ切れの渦状腕を持つような銀河もあるが、この渦状腕の存在によって渦巻銀河とレンズ状銀河(S0銀河)は区別される。渦巻銀河のディスクは大きな楕円体の銀河ハローに取り囲まれている。銀河ハローには種族IIの星が含まれ、その多くは球状星団として存在し、銀河中心の周囲を軌道運動している。
我々の銀河系も渦巻銀河であり、ハッブル分類では Sb に相当すると考えられていたが、最近の研究では、銀河系は棒渦巻銀河であるという説が有力であり、その場合には SBb に相当するのではないかとされている。
渦巻構造の起源
渦巻銀河の渦状腕がなぜできるかについて初期に研究を行ったのはベルティル・リンドブラッドである。彼は、星が永久に螺旋状に配列していると仮定すると、巻き込みのジレンマによっていずれ腕は何重にも巻き込まれてしまい、現在のような安定した姿を保つことはできないことを示した。銀河ディスクは回転の角速度が銀河中心からの距離によって異なる差動回転をしているため、車輪のスポークのような動径方向に伸びる腕があったとしても、銀河の回転によってすぐに巻きついてしまう。実際の銀河の腕はこのようにはなっていない。
1964年、C. C. リンとフランク・シューがこの問題を解決する理論を初めて提案した。彼らは渦状腕はディスクに生じた螺旋状の密度波が目に見えているものだと指摘した。彼らはディスク内の星の軌道がわずかに楕円軌道を描いており、その楕円軌道の向きが星同士互いに相関を持っていて、銀河中心からの距離に応じて滑らかに少しずつ変化していると仮定した。星の軌道がこのような条件に従っていると、ディスク内に星の密度の高い部分が螺旋状にできることを彼らは示した。 従って、ディスク内の星は現在我々が観測した位置にいつまでもとどまっているわけではなく、軌道運動によって腕の部分を定期的に通り抜けていることになる。
これはよく、所々に渋滞が発生している高速道路に喩えられる。渋滞が発生している箇所が銀河の渦状腕に相当する。渋滞の中にいる自動車はそこにとどまっているのではなく低速ながらも走っており、いずれ渋滞部分を抜け出す。これと同様に、渦状腕を構成している星は常に同じではなく入れ替わっているが、腕自体は星の密度が高い部分として同じ位置に存在し続ける[2]。
出典
- ^ a b 『オックスフォード天文学辞典』(初版第1刷)朝倉書店、38頁。ISBN 4-254-15017-2。
- ^ 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 - 渦状構造密度波理論
外部リンク
渦状腕
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 14:43 UTC 版)
銀河系の各渦状腕は(他の全ての渦巻銀河と同様に)対数螺旋を描いており、その角度は約12度である。銀河系には銀河中心から伸びた4本の渦状腕が存在すると考えられていて、それぞれ以下の名称が付けられている。 3kpc腕 (3kpc Arm)・ペルセウス腕 (Perseus Arm) じょうぎ腕 (Norma Arm)・はくちょう腕 (Cygnus Arm,Outer Arm) みなみじゅうじ腕 (Crux Arm)・たて腕 (Scutum Arm) りゅうこつ腕 (Carina Arm)・いて腕 (Sagittarius Arm) また、これ以外に二つの小さな腕や弧が存在する。代表的なものは以下の腕である。 オリオン腕(Orion Arm 太陽系が属する腕) 銀河系のディスク(銀河円盤)は古い恒星や球状星団からなる回転楕円体の銀河ハローに取り囲まれている。銀河ハローの直径は約25万 - 40万光年である。ディスク(銀河円盤)にはガスや塵が含まれ、いくつかの波長では見通すことができないが、銀河ハローにはそのような物質はほとんどない。ディスク(銀河円盤)のうち、特に物質密度の高い渦状腕の内部では活発な星形成が行なわれているが、銀河ハローでは星形成はほとんど見られない。散開星団も主にディスク(銀河円盤)に存在している。 銀河系の質量のほとんどは暗黒物質で、ダークハローを形成している。ダークハローは銀河中心に向かって密度が高くなっている。 21世紀初頭の発見によって、銀河系の構造についての知識は広がりつつあると共に誤った知識から正しい知識へと変わりつつある。2005年、アンドロメダ銀河 (M31) のディスクがそれまで考えられていたよりもずっと大きく広がっていることが発見され、銀河系のディスクもそれまでの推定より大きい可能性が高まっている。このことは、はくちょう腕がさらに外側に続いていることが発見されたことからも裏付けられている。また、いて座矮小楕円銀河の発見と同時に、銀河の「破片」からなる帯がいて座を中心として極軌道を描いて取り巻いていることが発見され、これはこの伴銀河が銀河系との相互作用によって分裂しつつある姿であることが明らかになっている。同様におおいぬ座矮小銀河の発見に伴って、この銀河と銀河系との相互作用で生じた銀河の小片がリングとなって銀河系のディスクを取り巻いているのも見つかっている。 2006年1月9日、プリンストン大学のMario Juric他はスローン・デジタル・スカイサーベイの北天のデータから、天の川の中に現在考えられている銀河系のモデルに合わない巨大な(満月の約5000倍の面積に広がっている)淡い構造を発見したと発表している。この構造は恒星の集団で、銀河系の渦状腕の面に対してほぼ垂直に広がっている。彼らはこの構造についての可能性の高い解釈として、矮小銀河が銀河系と合体しつつある姿ではないかとしている。この銀河は暫定的にVirgo Stellar Streamと名付けられ、地球から見ておとめ座の方向に約3万光年離れた位置に存在している。 2006年5月9日にはDaniel ZuckerとVasily Belokurovが、同様にスローン・デジタル・スカイサーベイの観測データからりょうけん座とうしかい座の位置に2個の矮小銀河を発見したと発表している。
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