うずまき‐ぎんが〔うづまき‐〕【渦巻(き)銀河】
渦巻銀河
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/20 14:49 UTC 版)



渦巻銀河[1](うずまきぎんが、spiral galaxy[1])は、銀河のハッブル分類における種類の一つ。
特徴
渦巻銀河は以下のような特徴を持つ。
渦巻銀河はディスク内に明るい渦状腕を持っているためにその名が付いている。渦状腕はバルジから外側に向かって螺旋を描くように伸びており、腕に沿ってダーク・レーンと呼ばれる暗い筋状の構造やHII領域などの星形成の盛んな領域が見られる。渦巻銀河の中には羊毛状渦巻銀河と呼ばれる、あまり明瞭でない切れ切れの渦状腕を持つような銀河もあるが、この渦状腕の存在によって渦巻銀河とレンズ状銀河(S0銀河)は区別される。渦巻銀河のディスクは大きな楕円体の銀河ハローに取り囲まれている。銀河ハローには種族IIの星が含まれ、その多くは球状星団として存在し、銀河中心の周囲を軌道運動している。
我々の銀河系も渦巻銀河であり、ハッブル分類では Sb に相当すると考えられていたが、最近の研究では、銀河系は棒渦巻銀河であるという説が有力であり、その場合には SBb に相当するのではないかとされている。
渦巻構造の起源
渦巻銀河の渦状腕がなぜできるかについて初期に研究を行ったのはベルティル・リンドブラッドである。彼は、星が永久に螺旋状に配列していると仮定すると、巻き込みのジレンマによっていずれ腕は何重にも巻き込まれてしまい、現在のような安定した姿を保つことはできないことを示した。銀河ディスクは回転の角速度が銀河中心からの距離によって異なる差動回転をしているため、車輪のスポークのような動径方向に伸びる腕があったとしても、銀河の回転によってすぐに巻きついてしまう。実際の銀河の腕はこのようにはなっていない。
1964年、C. C. リンとフランク・シューがこの問題を解決する理論を初めて提案した。彼らは渦状腕はディスクに生じた螺旋状の密度波が目に見えているものだと指摘した。彼らはディスク内の星の軌道がわずかに楕円軌道を描いており、その楕円軌道の向きが星同士互いに相関を持っていて、銀河中心からの距離に応じて滑らかに少しずつ変化していると仮定した。星の軌道がこのような条件に従っていると、ディスク内に星の密度の高い部分が螺旋状にできることを彼らは示した。 従って、ディスク内の星は現在我々が観測した位置にいつまでもとどまっているわけではなく、軌道運動によって腕の部分を定期的に通り抜けていることになる。
これはよく、所々に渋滞が発生している高速道路に喩えられる。渋滞が発生している箇所が銀河の渦状腕に相当する。渋滞の中にいる自動車はそこにとどまっているのではなく低速ながらも走っており、いずれ渋滞部分を抜け出す。これと同様に、渦状腕を構成している星は常に同じではなく入れ替わっているが、腕自体は星の密度が高い部分として同じ位置に存在し続ける[2]。
出典
- ^ a b 『オックスフォード天文学辞典』(初版第1刷)朝倉書店、38頁。ISBN 4-254-15017-2。
- ^ 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 - 渦状構造密度波理論
外部リンク
渦巻銀河
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詳細は「渦巻銀河」および「棒渦巻銀河」を参照 薄い円盤状の回転する星々や星間物質で構成され、通常は中心部に近くなるほど古い星が多くなる。そして、中央の銀河バルジから比較的明るい渦巻き腕状の構造が伸びている。ハッブル分類では、S で示され、小文字 (a,b,c) で腕の粗密やバルジの規模を表し、Sa(湾曲度合いが大きく個別の識別が不明瞭な腕を持ち、大きなバルジを持つ) やSc(腕は開放的で、そのバルジは小さい) 等と表記される。そのほか、羊毛状渦巻銀河(わずかな腕だけのもの)(または毛ふさ状渦巻銀河)や、グランドデザイン渦巻銀河(しっかりと識別可能で湾曲具合が激しい腕が観察できるもの)などもある。 腕は、一様に回転する星の相互作用から、対数螺旋に近似した形状を持つ。星々と同様に、腕はバルジを中心に回転し、その角速度は一定である。この渦巻く腕は高密度の物質が集まる領域、もしくは密度波と考えられている。星がこの腕の領域に入ると恒星系の宇宙速度が影響を受け、腕部分を抜けると元に戻る。これは、自動車が道路で渋滞にはまると速度が落ち、抜けると早くなる現象と酷似している。そしてこの高密度な状態が星形成を促進するため、腕は輝いて見える。つまりは、腕部分には若い星が多く存在する。 大多数は、バルジから両方向に伸びる直線的な棒状の星の帯を持ち、渦巻構造と接続している。ハッブル分類では SB で表し、小文字 (a,b,c) は渦巻銀河と同様に腕の粗密を表す。この棒構造は、バルジ部分や他の銀河から寄せられた銀河潮汐力(英語版)による密度波によって作られた一時的なものと考えられている。また多くの棒渦巻銀河は、棒構造に沿ってガスがバルジに流れ込むため、活動的である。 天の川銀河は直径約3万パーセク、厚さ約1000パーセクの棒渦巻銀河である。約2000億 (2×1011) の星があり、全重量は太陽の6000億倍 (6×1011) である。 .mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}} Hoag's Object(英語版)、リング銀河の例。 NGC 5866、レンズ状銀河の例。
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