去勢
「去勢」とは、生体の生殖器を切除あるいは摘出することで生殖機能を失わせることを意味する表現である。いわゆる不妊の処置である。転じて、気力や勢力を全く削いで積極性や能動性を全く失っている状態を指す比喩的な表現としても用いられる。
「去勢」は本来は性別の区別なく使える表現ではあるが、犬や猫をはじめとするペットの扱いに関しては「オス=去勢」「メス=避妊」と呼び分けられることが多い。
多くの場合「去勢」という語は愛玩動物や畜産動物に関連する文脈で用いられる。歴史あるいは民俗学に関する文脈では、「人間を対象として行われる去勢」が扱われることもある。たとえば古代中国の「宦官」や、中世ヨーロッパの「カストラート」は、去勢した男性のみが就ける職業であった。
なお「虚勢を張る」という言い回しに用いられる「虚勢」は、「去勢」とは別の言葉である。
ペットの去勢
動物には生殖本能がある。生殖能力を持った犬や猫を雌雄ともに飼っている場合、あるいは妊娠可能な雌を戸外に出られる環境で飼っている場合、飼い主の意思にかかわらず交尾を行い妊娠・出産する可能性が高い。犬や猫は一度の妊娠で複数匹の仔を出産する。去勢(避妊)を行わず放置してしまうと、あっという間に(ねずみ算式に)数が増えてゆく。数世代で手に負えない数に増えることになる。そのような不本意な増殖を抑止するため、去勢(避妊)の処置は欠かせない。
去勢(避妊)されたペットは発情しなくなり、生殖系ホルモンの分泌等に伴い生じやすい乳腺腫瘍をはじめとする病気の発生リスクが抑えらる。これはペットの健康や長寿につながる。また、発情に伴い生じがちな攻撃性やマーキング行為、求愛の鳴き声なども抑えられ、飼い主がストレスを抱えにくくなる。
去勢の方法
「去勢」の方法は複数ある。代表的な方法としては、いわゆるパイプカット(精管切断・精管結紮)、睾丸摘出、あるいは陰茎の切除などが挙げられる。ペットの去勢として主に行われる手法は、パイプカットか睾丸摘出である。
いわゆるパイプカットは、精巣と睾丸を繋ぐ管(精管)を切除もしくは結紮する(縛る)ことで、精液に精子が含まれないようにする処置のことである。生殖機能をなくす方法としては最も手軽な処置といえる。ただし睾丸では精子が産出されるため、睾丸が将来的に肥大したり、ホルモンが気性を荒くしたりする可能性は残る。
外科的処置を伴わず薬品の投与によって性欲等を低減させる手法は「化学的去勢」と呼ばれる。化学的去勢は人間の性犯罪者に対する再犯防止策としての活用も検討されている。2019年には、アメリカのアラバマ州で小児性犯罪者に対する仮出所の条件として化学的去勢を義務づける州法が成立し、注目を集めた。
「去勢」を含むその他の用語の解説
「去勢牛」
「去勢牛(きょせいぎゅう)」とは、去勢が行われた牛のことであり、とりわけ精巣を取り除かれたオスの肉牛のことである。去勢することで肉質が柔らかくなったり、脂肪が付きやすくなったり、性格がおとなしくなったりしやすい。そのため、肉牛として肥育される雄牛の多くは去勢される。農耕用の牛も、気性の荒さを抑えておとなしく(御しやすく)するために去勢する場合もある。
「去勢転生」
「去勢転生」は、宮月新原作、おちゃう作画のマンガのタイトルである。最愛の恋人をレイプ魔によって犯し殺された男が、その復讐として大勢の性犯罪者を去勢(性器切断)し、死刑となるが、刑死したはずが異世界に転生し、あたらな物語がはじまる。「去勢抵抗性前立腺癌」
去勢抵抗性前立腺癌は、前立腺がんの治療中に抵抗反応として生じるがんのことである。前立腺がんの細胞は、精巣で作られる男性ホルモンの刺激によって増殖する。そのため、通常は男性ホルモンの産生を抑える治療が行われる。しかし治療の効果が出なかったり、がんが再発してしまったりする場合もあり、そのようながんが去勢抵抗性前立腺癌と呼ばれる。前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌に発展した場合の余命はおおよそ3年程度と言われている。
きょ‐せい【去勢】
読み方:きょせい
[名](スル)
1 生殖腺(せいしょくせん)を除去し、機能をなくさせること。もとは雄の精巣(せいそう)除去をいった。第二次性徴の発現する前に行うと、中性的な体つきとなる。家畜では、闘争心をなくして群飼育できるようになり、脂肪の適度な肉質になる。
きょ‐せい【去声】
読み方:きょせい
⇒きょしょう(去声)
きょ‐せい【巨星】
きょ‐せい【挙世】
きょ‐せい【虚勢】
きょ‐せい【虚声】
きょ‐せい【虚静】
去勢
きょせいと同じ種類の言葉
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