ローマ字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/15 20:25 UTC 版)
コンピュータのローマ字入力
パーソナルコンピュータやスマートフォンの日本語入力においてはキーボードのアルファベット入力をローマ字綴りとして解釈し、仮名文字に変換するローマ字かな変換、いわゆるローマ字入力が利用されており、特にQWERTYキーボード入力においては他の入力方式よりも普及している。
概ねヘボン式・訓令式どちらのローマ字綴りであっても柔軟に受け付けるようになっている。ただし表記は一致しない。例えば「東京」は「toukyou」であり、「tokyo」とすると「ときょ」になってしまう。
訓令式の表
- 一般に国語を書き表す場合は、第1表に掲げたつづり方によるものとする。
- 国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り、第2表に掲げたつづり方によつても差し支えない。
- 前2項のいずれにおいても、概ね添え書きを適用する。
- 第1表[()は重出を示す]
あ い う え お (拗音) あ a i u e o か ka ki ku ke ko kya kyu kyo さ sa si su se so sya syu syo た ta ti tu te to tya tyu tyo な na ni nu ne no nya nyu nyo は ha hi hu he ho hya hyu hyo ま ma mi mu me mo mya myu myo や ya (i) yu (e) yo ら ra ri ru re ro rya ryu ryo わ wa (i) (u) (e) (o) が ga gi gu ge go gya gyu gyo ざ za zi zu ze zo zya zyu zyo だ da (zi) (zu) de do (zya) (zyu) (zyo) ば ba bi bu be bo bya byu byo ぱ pa pi pu pe po pya pyu pyo
- 第2表
しゃ sha し shi しゅ shu しょ sho つ tsu ちゃ cha ち chi ちゅ chu ちょ cho ふ fu じゃ ja じ ji じゅ ju じょ jo ぢ di づ du ぢゃ dya ぢゅ dyu ぢょ dyo くゎ kwa ぐゎ gwa を wo
- そえがき
- 前表に定めたものの他、概ね次の各項による。
- 撥ねる音「ン」は全てnと書く。
- 撥ねる音を表すnと次にくる母音字またはyとを切り離す必要がある場合には、nの次に「'」を入れる。
- 詰まる音は、最初の子音字を重ねて表す。
- 長音は母音字の上に「ˆ」をつけて表す。なお、大文字の場合は母音字を並べてもよい。
- 特殊音の書き表し方は自由とする。
- 文の書き始め、及び固有名詞は語頭を大文字で書く。なお、固有名詞以外の名詞の語頭を大文字で書いてもよい。
「昭和二十九年十二月九日内閣告示第一号『ローマ字のつづり方』」では上記の通りであるが、「昭和十二年九月二十一日内閣訓令第三號『国語ノローマ字綴方統一ノ件』」では、『長音ノ符號ヲ附スル場合ニハ okāsama, kūsyū, Ōsaka ノ如ク「¯」ヲ用フルコト』と『撥音 n ト其ノ次ニ來ル母音(y ヲ含ム)トヲ切離ス必要アルトキハ hin-i, kin-yōbi, Sin-ōkubo ノ如ク「‐」ヲ用フルコト』となっていた。
1947年(昭和22年)の文部省通達[42](訓令式とヘボン式の両方を解説していた)ではサーカムフレックスとアポストロフィーを使うとしており、1937年(昭和12年)の内閣訓令が事務的な手違いで誤っていたと言われているが、昭和20年代の教育現場(小学校4〜6年生)ではどちらでも良いと教えるように文部省が指導していた。
日本式の表
あ | い | う | え | お | (拗音) | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
あ | a | i | u | e | o | |||
か | ka | ki | ku | ke | ko | kya | kyu | kyo |
さ | sa | si | su | se | so | sya | syu | syo |
た | ta | ti | tu | te | to | tya | tyu | tyo |
な | na | ni | nu | ne | no | nya | nyu | nyo |
は | ha | hi | hu | he | ho | hya | hyu | hyo |
ま | ma | mi | mu | me | mo | mya | myu | myo |
や | ya | yi | yu | ye | yo | |||
ら | ra | ri | ru | re | ro | rya | ryu | ryo |
わ | wa | wi | wu | we | wo | |||
が | ga | gi | gu | ge | go | gya | gyu | gyo |
ざ | za | zi | zu | ze | zo | zya | zyu | zyo |
だ | da | di | du | de | do | dya | dyu | dyo |
ば | ba | bi | bu | be | bo | bya | byu | byo |
ぱ | pa | pi | pu | pe | po | pya | pyu | pyo |
くゎ kwa |
ぐゎ gwa |
- ^ 外国式氏名の場合のみ、ジェ→JIE、チェ→CHIE、ティ→TEI、ディ→DEI、デュ→DEYU、ファ→FUA、フィ→FUI、フェ→FUE、フォ→FUO、ヴァ→BUA、ヴィ→BUI、ヴ →BU、ヴェ→ BUE、ヴォ→BUOも使用される。また、これ以外の方式を使用する場合には、申請書を提出して許可を受ける必要がある(たとえば、「さとう "Sato"」を"Satoh"、「ようこ"Yoko"」を"Yohko"、「おおさわ"Osawa"」を"Ohsawa"とするように、oの後につく長音を"h"で表したい場合)。
- ^ 苗字または名の最後が「オオ」音であり、そのヨミカタが「オオ」の場合、"oo"のつづりとなる(例:「高遠」(たかとお)="Takatoo")。
- ^ a b 英語由来の外来語普通名詞についてはそのまま英語表記が使われる(例:商業施設名などの「○○シティ」="○○ City")。
- ^ 田園調布駅の例:"Den-en-chōfu"
注釈
- ^ 朝鮮語でもラテン文字のことを一般に「ローマ字」(로마자)と呼ぶことが多く、中国語では「國語羅馬字」、「教會羅馬字」のように表記法まで含め「ローマ字」と呼ぶことがある。「國語羅馬字」、「教會羅馬字」は日本語でも通常それぞれ「国語ローマ字」、「教会ローマ字」と訳される。
- ^ 語末の「w」は本項の論旨と無関係。英語 "tomb(墓)" を連想されてしまうのを避けるために付け足された綴りである。
- ^ 在来線路線図および九州新幹線では他のJR各社と同じ表記が用いられる。
- ^ 第一期開業区間(スポーツセンター駅 - 千城台駅)のスポーツセンター駅を除く各駅。2019年の駅ナンバリング導入に伴う駅名標更新の際、通常表記に改められている。
- ^ 細部のデザインが製作を担当した看板業者に委ねられていた時代のもの。
- ^ 駅名標の「群馬」は、本記事「駅名標」の群馬八幡駅の例の通り、「Gumma」が用いられている。
- ^ ポルトガル語: Arte Breve da Lingoa Iapoa
出典
- ^ New Oxford American Dictionary 3rd edition, Oxford University Press, 2010
- ^ 「駅名の英語表記」はなぜこうもバラバラなのか | 実践!伝わる英語トレーニング | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
- ^ Multilingual(箕面市公式サイト)
- ^ 平成21年8月19日開催分意見概要(箕面市公式サイト)
- ^ ヘボン式ローマ字と異なる場合 - 愛知県
- ^ 『公用文等における日本人の姓名のローマ字表記について』(プレスリリース)文化庁国語課、2019年10月25日 。2020年11月10日閲覧。
- ^ 高谷道男「ヘボン博士の偉大なる功績」『標準式ローマ字制定七十周年記念講演集』(標準ローマ字会、1957年) 20〜25頁
- ^ 長岡正利、金窪敏知、「地図におけるローマ字表記の問題点 その経緯と今後」 『地図』1985年 23巻 1号 p.1 - 12、doi:10.11212/jjca1963.23.1
- ^ 松村明編『大辞林第三版』(三省堂、平成18/2006年)「ヘボン式ローマ字綴り」
- ^ ヘボン式綴り方-ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2019年11月15日閲覧
- ^ 参照:Romanisation systems - GOV.UK
- ^ ANSI (1972年). “ANSI Z39.11 - 1972 System for the Romanization of Japanese”. National Information Standards Organization. 2013年7月19日閲覧。
- ^ a b “新田原駅の駅名標のローマ字が訂正される”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2019年1月18日). 2019年1月19日閲覧。
- ^ 「駅名標の発掘 神戸駅・裾野駅を中心に」レイルNo.109 エリエイ、2019年
- ^ 「駅名標こぼれ話 第3回」『レイル』No.106 エリエイ、2018年
- ^ ヘボン式ローマ字綴方表 外務省
- ^ 道路標識のローマ字(ヘボン式) の綴り方 KICTEC
- ^ 上森鉄也「基礎演習でのローマ字教育」『教養センター紀要』、流通科学大学、1-11頁、NAID 120005327910。
- ^ 群馬(ぐんま)のローマ字表記について、群馬県公式ウェブサイト、群馬県企画部国際戦略課、2015年5月10日閲覧
- ^ a b “Sinzyuku?それともShinjuku?ローマ字表記混在の現状改善へ…ヘボン式有力 : 読売新聞”. 2024年1月31日閲覧。
- ^ [1]
- ^ "ISO 3602:1989 - Documentation -- Romanization of Japanese(kana script)" ISO
- ^ 大島明秀「細川家のローマ字印文書二種:熊本の歴史資料(二)」『文彩』第15巻、熊本県立大学文学部、2019年3月、32 - 36頁、2022年11月14日閲覧。
- ^ ロドリゲス『日本大文典』土井忠生訳、三省堂、1955年、3頁
- ^ ロドリゲス『日本語小文典(上)』池上岑夫 訳、岩波書店(岩波文庫)1993年、20頁、ロドリゲス『日本語小文典(下)』池上岑夫 訳、岩波書店(岩波文庫)1993年、243頁
- ^ Arte da Lingoa de Iapam、ロドリゲス『日本語小文典(上)』池上岑夫 訳、岩波書店(岩波文庫)1993年、259頁の脚注
- ^ ロドリゲス『日本大文典』土井忠生訳、三省堂、1955年、224頁
- ^ ロドリゲス『日本語小文典(上)』池上岑夫 訳、岩波書店(岩波文庫)1993年、45〜73頁
- ^ 立教史データベース 『聖公会 修史夜話 (其四)前島生/ヘボン式羅馬字の始 ―リギンズ長老の業績―』 基督教週報第69巻第18号 1935年01月11日
- ^ 東京大学大学院人文社会系研究科・文学部 『英学会話書による近代語研究』 常盤智子
- ^ 常盤 智子「J・リギンズ著『英和日用句集』から『英和通弁手引草へ』」『国文白百合』第38巻、白百合女子大学国語国文学会、2007年3月、79-96頁、ISSN 0389-8660。
- ^ 鈴木 英夫「J ・リギンズ『英和日用句集』の国語学的研究(一)」『国文白百合』第37巻、白百合女子大学国語国文学会、2006年3月、1-10頁、ISSN 0389-8660。
- ^ a b 杉田幸子『ヘボン博士の愛した日本』いのちのことば社フォレストブックス、p.72. ISBN 978-4264024231
- ^ 黒川真頼 撰『横文字百人一首』、朝倉久兵衛、明6.3. 国立国会図書館デジタルコレクション
- ^ 川副佳一郎 著『日本ローマ字史』、岡村書店、1922年(大正11年)
- ^ 土岐善麿 著『日本式になるまで』5頁、東京ローマ字会、1931年(昭和6年)
- ^ 内閣訓令第3号 SANZYUSSEIKI-NO-MORI
- ^ 『国語シリーズNo.23 ローマ字問題資料集 第1集』1955年(昭和30年)3月30日、p.175.
- ^ 各種看板、地図、外務省発行の日本国旅券の名前・本籍地都道府県表記、総務省の市区町村表記や無線従事者免許証の名前表記等。実例「属性型(組織種別型)・地域型JPドメイン名登録等に関する技術細則」
- ^ 中川かず子「今なお落ち着かないローマ字表記をめぐる議論」 北海学園大学附属図書館報
- ^ このマーク、憶えていますか? けっこう移り変わっているマツダのロゴマーク。MAZDA LOGOモーターファン(2019年4月11日)2019年5月23日閲覧。
- ^ 文部省 小冊子『ローマ字教育の指針 ローマ字文の書き方』1949年(昭和24年)
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