にほんだいぶんてん【日本大文典】
日本大文典
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/27 02:55 UTC 版)
日本大文典(にほんだいぶんてん、ポルトガル語: Arte da Lingoa de Iapam、現代ポルトガル語:Arte da Língua do Japão)は、17世紀初頭にポルトガル語で書かれた日本語の文法の書である。ポルトガルのイエズス会宣教師であるジョアン・ロドリゲスによって編集された。これは、現存する最古の日本語学書であり、中世後期日本語の貴重な参考資料となっている[1]。
注釈
出典
- 1 日本大文典とは
- 2 日本大文典の概要
- 3 脚注
- 4 関連項目
日本大文典
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 22:29 UTC 版)
戦国時代以降には、各地の方言を記録した書物が現れるようになった。このころには「京へ筑紫に坂東さ」ということわざがあり、当時、中央と九州と東国の3つの方言圏が意識されていたことを物語る。特にポルトガルから来日したキリシタン宣教師ジョアン・ロドリゲスの著した『日本大文典』(1604年)では、各地の方言の特徴が詳述されている。日本大文典では 「'三河'(Micaua)から日本の涯にいたるまでの'東'(Figaxi)の地方では、一般に物言ひが荒く、鋭くて、多くの音節を呑み込んで発音しない」 とあり、これは当時も東日本では子音を強く発音し母音の無声化が盛んだったことを表現したものと解釈されている。さらに、「関東」または「坂東」の特徴として、次の8点を挙げている。 日本大文典による関東方言の特徴 未来を表すのに「べい」を用いる。たとえば「参り申すべい」「上ぐべい」など。 打ち消しの「ぬ」の代わりに「ない」を用いる。たとえば「上げない」「読まない」など。 形容詞で、「良う」「甘う」の形の代わりに「良く」「甘く」の形を用いる。 動詞で、「払うて」「習うて」の形の代わりに「払って」「習って」の形を用いる。 「張って」「借って」の形の代わりに「張りて」「借りて」の形を用いる。 移動の「へ」の代わりに「さ」を用いる。たとえば「都さ上る」。 「しぇ」の音節は「せ」と発音する。たとえば「しぇかい」(世界)を「せかい」など(当時の京都では「せ」を「しぇ」と発音した)。 尾張から関東にかけては、「上げんず」「聞かんず」のように未来形「〜んず」を盛んに用いる。 上記は、現代の関東方言と異なる部分もあるにしろ、万葉集に記された方言と比べると、はるかに現代のものに近くなっている。江戸時代初期の他の文献にも、東国でハ行四段動詞の連用形促音便や、断定の助動詞「だ」、打消の助動詞「ない」が現れている。 日本大文典では、中国地方の方言について、アイをアーと発音すること(「なるまい」を「なるまぁ」)、「上げざった」「参らざった」のように打ち消しの助動詞「ず」「ざる」を使うことを記しており、これは現在の中国地方西部の方言にあてはまる。また備前ではガ行音の前の鼻音がないことを記している。 日本大文典は九州の方言についても詳しい。九州全般の特徴として、合音をウーと発音すること(「一升」を「いっしゅー」)、移動を表す「へ」の代わりに「に」「のやう(yŏ)に」「のごとく」「さまえ」「さな」などを使うこと、推量の助動詞「らう(Rŏ)」「つらう(Tçurŏ)」「づらう(Dzurŏ)」を使うことが記されている(ŏは開音のオー)。九州方言のうち豊後では、エイ・オイをイーと発音し(「礼」を「りい」、「良い」を「いい」など)、打消しの助動詞「ざる」や尊敬の助動詞「しゃる」を使う。肥前・肥後・筑前では、動詞の命令形に「上げろ」「見ろ」のように「-ろ」を用い、形容詞の語尾が「良か」「古か」のようにカ語尾になり、推量の助動詞「いらう(Irŏ)」「やらう(Yarŏ)」を使い、尊敬の助動詞「させめす」「せめす」を使う。また肥前などではアイ、オイがアエ、オエとなる(「世界」を「せかえ」、「黒い」を「くろえ」など)。これらを現在の九州方言と比較すると、「合音→ウー」や命令形「-ろ」、カ語尾などは、現在の方言にそのまま当てはまる特徴で、九州方言を多く採録した『日葡辞書』(1603年)に記録された「かるう」(背負う)などの多数の語彙と合わせると、現在の方言の大枠が当時すでにでき上がっていたことが推察される。
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