傘 雨傘と日傘

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 06:18 UTC 版)

雨傘と日傘

大まかに避ける対象によって、雨傘と日傘に区別される。

雨傘

『パリの通り、雨』(1877年ギュスターヴ・カイユボット

現在の雨傘は軸と骨が金属製で、防水加工したが張られている物が多く、軽いカーボン製の骨の傘も増えてきた。ただし「匠の傘」と呼ばれる手作りの高級品の軸(シャフト)には天然樹の樫棒が使われる。 手入れ方法は、泥がついたら水洗いする程度で、防水素材なのでとくに洗剤などで洗濯の必要はないが、濡れたままたたんで放置すると骨の部分が錆びてしまうので、家に帰ったら開いて干して乾かしてから閉じるようにする。

UNICODEでは、雨傘は「U+2602」にコードポイントが割り振られている(☂)。

使用され濡れている雨傘を建築物の内に持ち込まないために、出入り口には「傘立て」が置かれていることもある。一部には、誤って持ち帰ることのないように松竹錠などが付けられているものもある、

また、建築物に持ち込むさいには、しばしば使い捨ての「傘袋」が使用されることもある。

日傘

『日傘を差す女』(1875年モネ

日傘は、雨ではなく、強い日差しを避けるためのものであり、地面に軸を突き刺して利用する大判のものもあるが、一般に「日傘」と呼ぶ場合は、雨傘と同じく手にもって使う小型のものを指す。大判のものは「パラソル(フランス語: parasol)」と呼ばれることがあるが、parasol は、フランス語の元来の意味では婦人用の日傘を指す。

日傘はその用途上、防水機能よりも紫外線の遮断・反射機能(以降、UVカット機能とする)や装飾性が求められ、雨傘と比較してサイズが小さめである場合が多いが、大寸のドームパラソルも登場してきた。ガーデンパラソルやマーケットアンブレラのように屋外の一定の場所に固定して用いられるものもある。ビーチで使われるものは日本ではビーチパラソル、英語では beach umbrella が一般的だが、beach parasol も用いられる[注 1]

現代において手持ちの日傘を用いる習慣があるのは、主に日本である[4]。19世紀にはフランスで流行した時期があったもののその後廃れ、紫外線を遮ることに対して関心の薄い欧州では使われなくなった[4]。他に韓国では、使われることがあっても年配者のものという認識が一般的だが[4][5]、若者の間に浸透しつつもある傾向もある[5]。フランスでは往時、扇子と共に、投げキスをする時のアイテム(どちらもおそらく閉じた状態)にもなっていた。

庭園でくつろぐ高橋是清の家族。日傘は当時最先端のアイテムであった(1920年)

日本では、大正から昭和初期にかけて洋風文化が広まるにつれ、和装にも日傘やクラッチバッグなどの洋式服飾小物を合わせることが流行し[6]、その後、女性用のアイテムとして一般化していった。

かつては男性はほとんど利用しないという状況であったが、昨今は男性も熱中症予防、クールビズのアイテムの一つ、また強い陽射しによる皮膚へのダメージ(直射日光及び発汗に伴う皮膚疾患(肌荒れ、メラノーマなど))を懸念した観点からも、愛好家が増えており、売り上げも年々伸びてきている[7]。2011年7月に環境省が発表した「ヒートアイランド現象に対する適応策の効果の試算結果について[8]」の中で『熱ストレスの観点からは男女問わず日傘を活用することが望ましい』『男性用日傘の商品開発・普及等も並行して進める必要があります』と公式に発表している。また2013年新語流行語大賞には「日傘男子」がノミネートされた。沖縄県では「沖縄日傘愛好会」がありパレード等を実施、2017年には埼玉県庁ではJUPA(日本洋傘振興協議会[9])の支援で「日傘男子広め隊」が結成されて男性用日傘の普及に努めている。1999年に結成された「男も日傘をさそう会」も 環境省の支援をうけて普及活動を継続する。

ビーチパラソル

日傘は太陽からの熱線を繊維の内側に蓄え、裏まで熱を通さないように、厚地や二重張りの綿ポリエステルが使用されることが多い。近年は、それらの生地にアルミコーティングなどを施して、さらに熱や紫外線の遮蔽率を向上させている。手に持っている時の負担を軽くするため骨に軽量化されたカーボン素材など使用したものも多い。

レースなど穴あきの生地を用いるのは通気性を持たせるためであるが、その分、陽射しを通しやすい。そのため、紫外線をカットする加工された生地に重ねるなど、見た目にも配慮した商品が好まれる。

紫外線を通しにくい黒系統(色の濃いもの)、熱が籠もりにくく見た目にも軽やかな白系統やパステルカラーが多く流通している。

晴雨兼用傘

日傘の普及に伴い、特に雨天でも使用可能を謳って商品化された日傘も存在する。通常の日傘よりも布の目が細かく、透水性のない仕様になっているが、あくまで「日傘としても使える雨傘」ではなく、「不意の雨でも使える日傘」といった位置付けがなされており、そのデザインや大きさなどは日傘に準ずるものである。

「晴雨兼用」というキャッチコピーは、雨と晴の両用という誤解を受けやすいため、日本洋傘振興協議会は2007年頃より、業界標準呼称として「晴雨兼用パラソル」という用語を用いるようになった。近年は雨傘をベースにして、日傘のUVカット機能をもたせた「雨晴兼用」と呼ばれるものが出ている。両用語は酷似しているが、ニュアンスは異なる。


注釈

  1. ^ 日本の多くの辞書では和製英語とされているが、本項目英語版 umbrella には beach parasol でもリダイレクトが貼られ、また図版の説明文にも用いられている。

出典

  1. ^ a b 三省堂「大辞林(第二版)」
  2. ^ 小学館「日本大百科全書」
  3. ^ コトバンク -傘”. 2020年1月24日閲覧。
  4. ^ a b c “日傘さす女性は日本だけ!? 中国や韓国など訪日9カ国女性が「使わない」ワケ…アンケートでも「驚き」1位”. 産経WEST (産業経済新聞社). (2016年7月20日). https://www.sankei.com/article/20160720-OCYUT6O4NJK3ZLNO7BFJTAF5WA/ 2016年8月2日閲覧。 
  5. ^ a b “【NOW!ソウル】夏のソウルで日傘韓国女子が急増中!”. 中央日報. (2016年7月21日). http://japanese.joins.com/photo/397/2/159397.html?servcode=800&sectcode=850 2016年8月2日閲覧。 
  6. ^ 小泉和子編 『昭和のキモノ』 河出書房新社〈らんぷの本〉、2006年5月30日。ISBN 9784309727523 
  7. ^ 男の日傘:クールに決める…熱中症対策、売れ行き好調 毎日jp(毎日新聞) 2013年8月7日
  8. ^ https://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14039
  9. ^ http://www.jupa.gr.jp/
  10. ^ 岐阜市歴史博物館展示より。
  11. ^ 長野県商工会連合会 公式サイト 「信州我が市町村、日本一自慢」(2005年12月28日、Internet Archive
  12. ^ 和傘工房・朱夏 公式サイト
  13. ^ 雑貨工業品品質表示規程”. 消費者庁. 2013年5月23日閲覧。
  14. ^ a b 『傘物語』しばた洋傘店(柴田嘉和:『洋傘ショールの歴史』大阪洋傘ショール商工協同組合(昭和43年刊行)を参考)
  15. ^ a b 古い歴史を更に新しく飾った仙女香 洋傘界流行の先駆者万朝報 1919.5.10 (大正8)
  16. ^ 対清貿易影響大阪朝日新聞 1911.11.14-1911.11.21 (明治44)
  17. ^ 日印貿易の大勢大阪毎日新聞 1912.10.22 (大正1)
  18. ^ 長傘(ナガガサ)とは - コトバンク
  19. ^ 洋傘の歴史 - 日本洋傘振興協議会
  20. ^ ビニール傘の消費量世界一No.1の日本。傘をシェアするサービス「アイカサ」渋谷の企業オフィスに無料導入を開始! – Smooth Life Magazine | スムースライフマガジン
  21. ^ 朝日新聞 2011年10月8日夕刊4ページ『昭和史再訪』ビニール傘誕生
  22. ^ TBS系『噂の!東京マガジン2009年11月8日放送より
  23. ^ もう持たなくていい 飛ぶ傘が日本で開発 - Sputnik 日本
  24. ^ “貸し傘に企業広告/久我山など7駅で5社/京王電鉄が試み”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 37(東京). (2003-11-30(朝刊)) 
  25. ^ News Up 傘、どちらに向けて持ってます? - NHK
  26. ^ 金志賢 「相合傘図様の生成 ─菱川師宣『やまとゑの根元』まで時代を遡りながら考える─」『美術史』No.176、美術史學會、2014年3月、pp.355-369。
  27. ^ 『日本庶民文化史料集成 第五巻』 三一書房、1976年、p.364。
  28. ^ 『相合傘』と『貸し傘』”. 洋がさタイムズ. 2008年5月12日閲覧。
  29. ^ 図書カード:No.1809『寛永相合傘』”. 青空文庫. 2008年5月12日閲覧。
  30. ^ 連載・日本語塾”. 日国フォーラム. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月12日閲覧。
  31. ^ Men's Fashion Brand NAVI”. 2019年1月3日閲覧。






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