からかさ小僧とは? わかりやすく解説

からかさ小僧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/22 04:14 UTC 版)

映画『妖怪百物語』のからかさ小僧の人形
歌川芳員『百種怪談妖物双六』に描かれている傘の妖怪「一本足」

からかさ小僧(からかさこぞう、唐傘小僧)は日本妖怪の一種で、(からかさ)の妖怪。から傘おばけ[1][2]傘おばけ[2][3]傘化け(かさばけ)[4]一本足(いっぽんあし)[5]からかさ一本足(からかさいっぽんあし)[6][7]おばけかさ[8] などとも呼ばれる。

江戸時代以後に作られた草双紙おもちゃ絵かるた(『お化けかるた』など)歌舞伎に姿が見られるほか、明治大正時代以後も玩具や子供向けの妖怪関連の書籍、お化け屋敷の演出、映画などに見られる。

概要

狩野宴信『百鬼夜行図巻』より、2本足の傘の妖怪[9]
尾上菊五郎 (5代目)による「傘の一本足」[10]

一つ目の付いた傘が一本足で飛び跳ねる姿が一般的に描写される。傘から2本の腕が伸びていることや、目が2つのこともあり[2][11]、長い舌を伸ばしていることもある[3]。2本足で描かれている例もある(狩野宴信『百鬼夜行図巻』[9] など)。

古いものは室町時代絵巻物百鬼夜行絵巻』にも見られるが、同絵巻での傘の妖怪は、たたんだ傘を頭部に頂いた人型の妖怪である[12]百鬼夜行絵巻の項目の画像を参照)。

一つ目・一本足という妖怪の姿は江戸時代以降の絵画に見られ、江戸時代から大正時代にかけてのお化けかるたの絵札にも、一本足の姿が多く見られる[12]歌舞伎舞踊では一本足の姿に役者が扮装して踊ることが行われ(顔は普通に傘の中から出している)、江戸時代後期には変化舞踊『松朝扇うつし絵』(1857年9月 中村座)に一本足[5]明治時代にも『闇梅百物語』(河竹新七1900年)に傘一本足という役名で登場している[6]安政年間に出版された絵双六『百種怪談妖物双六』(歌川芳員1858年)にも「鷺淵の一本足」(さぎふちのいっぽんあし)の名で一つ目・一本足の姿が描かれている[13]

明治から昭和にかけては、印刷物によって享受されたり、お化け屋敷の出し物として使われたり[1][2]漫画アニメ[3]、妖怪を題材とした映画などのキャラクターとしても多用された[4]。室町時代以後、『百鬼夜行絵巻』に数多くの無生物・器物の妖怪が登場している中、著名な妖怪として伝えられているのは傘の妖怪のみと見られており[14]、器物の妖怪の中で最も知られたものであるともいえる[12]

口頭伝承

境港市水木しげるロードに設置された「傘化け」のブロンズ像

大変有名な妖怪である反面、地域などに即した具体的な伝承はほとんど残されていないとも言われており、妖怪関連の書籍によっては「絵画上でのみ存在する妖怪」として分類されたり[12]、伝承を伴わない創作話のみに登場する妖怪とする説もある[15]。また、この妖怪も書籍によっては付喪神(つくもがみ、歳月を経た器物が化けた妖怪)であり、その一例としているものもあるが[3][16]、それを証明する古典などの文献は確認されていない[2]

確認されている伝承には、以下のものなどがある。

新潟県笹神村(現・阿賀野市)の伝承では、三十刈という場所にカラカサバケモン(唐傘化け物)という妖怪が出たと伝わっている[17]

1762年(宝暦12年)の浮世草子奇談集『咡千里新語(ささやきせんりしんご)』収録の「三之巻 第一 茶碗児(ちゃわんちご)の化物」に、奈良県興福寺の伝承とされる7種類の妖怪の一つとして「南部興福寺にいろいろの化物あり 東花坊(とうかぼう)のからかさ」と記述があることで[18][19]、興福寺にからかさ小僧の伝承が存在していた可能性も示唆されているが、その詳細は不明である[20]

脚注

  1. ^ a b 初見 2009, p. 73
  2. ^ a b c d e 造 2007, p. 76-77
  3. ^ a b c d 一柳 2008, p. 77
  4. ^ a b 水木 1994, p. 144
  5. ^ a b 『続歌舞伎年代記』広谷国書刊行会 1925年 716頁
  6. ^ a b 渥美清太郎 編『日本戯曲全集 歌舞伎篇 河竹新七及竹柴其水集』春陽堂 1929年 323頁「闇梅百物語」
  7. ^ 南條武『妖怪ミステリー』有紀書房、1974年、122頁。 
  8. ^ 湯本豪一『今昔妖怪大鑑』パイインターナショナル、2013年、166頁。ISBN 978-4-7562-4337-9 
  9. ^ a b 湯元 2005, p. 88
  10. ^ 時事新報社『尾上菊五郎自伝』1903年 185頁(『闇梅百物語』の扮装か)
  11. ^ 村上健司編著『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、119頁。 ISBN 978-4-620-31428-0 
  12. ^ a b c d 村上他 2000, p. 54
  13. ^ 人文社研究部 編『江戸諸国百物語 諸国怪談奇談集成』 西日本編、人文社〈ものしりシリーズ〉、2005年、2頁。 ISBN 978-4-7959-1956-3 
  14. ^ 阿部主計『妖怪学入門』雄山閣、1968年(原著1968年)、128-129頁。 NCID BN02798932 
  15. ^ 『アニメ版 ゲゲゲの鬼太郎 完全読本』 田神健一・奥津圭介・中村亜津沙編、講談社ISBN 978-4-06-213742-3
  16. ^ 多田克己『幻想世界の住人たち』 IV、新紀元社Truth In Fantasy〉、1990年、303頁。 ISBN 978-4-915146-44-2 
  17. ^ 笹神村『笹神村史 資料編4 民俗』2002年 464頁
  18. ^ 咡千里新語”. 東京大学学術資産等アーカイブズポータル. 東京大学. p. 35. 2020年11月4日閲覧。
  19. ^ 吉田幸一、倉島須美子 編『伊達髪五人男 付、咡千里新語』古典文庫、2002年2月20日、259頁。 NCID BA58999201 
  20. ^ 』 vol.0040、KADOKAWA〈カドカワムック〉、2013年11月30日、196-197頁。 ISBN 978-4-04-130054-1 

参考文献

関連項目

外部リンク


からかさ小僧

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「どろろ」の記事における「からかさ小僧」の解説

花柄着物纏い片手白い杖をつき、きのこの傘のような頭部から市女笠周囲垂れ下がっている『虫の垂れ衣』を垂らした妖怪この手塚治版からかさ小僧は、他のからかさ小僧とは異なった容姿になっている

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