子実体とは? わかりやすく解説

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しじつ‐たい【子実体】

読み方:しじつたい

菌類菌糸密に集合してできた胞子形成を行う、塊状のもの。形や大きさはさまざまで、大形のものをキノコという。

子実体の画像

子実体

英訳・(英)同義/類義語:fruitiug body

菌類胞子生じ組織集合体大きなものはキノコ俗称される。
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子実体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/25 19:34 UTC 版)

子実体(しじつたい Fruiting body)とは、菌類胞子形成のために作る複合的な構造のことである。大型のものを中心に、いわゆるキノコと呼ばれている。あるいは、それに類似の生物の作る類似の構造を指して使う場合もある。

子実体の一般的な定義

多くの菌類では、その体は糸状になった細胞列である菌糸からなる、菌糸体という構造になっている。菌糸体を構成する菌糸はそれぞれに独立性が高く、菌糸の一部分だけをとりだしても成長し、胞子を作るものが多い。菌類はその種ごとに様々な胞子を作るが、基本的には菌糸の先に胞子を外生するか、菌糸が袋になってその中に胞子を作るかである。多くの菌類が、この様に単独の菌糸の先に胞子を作る能力がある。

しかし、菌類の種によっては、胞子を作るときに複数の菌糸が寄り集まって、より複雑な構造を作り上げる。その中で比較的簡単なものは、胞子形成する菌糸が寄り集まって、胞子形成菌糸の束や、胞子形成をする小さなカーペットとなるものである。さらに複雑なものでは、胞子形成部を覆う菌糸の壁を造り、全体が外見状では壷型や皿状の形をなすものがある。さらに複雑なものでは、胞子形成部を覆う構造が、それ自体に柄を持って立ち上がったり、胞子形成部が複雑に折れ曲がり、それが並んだひだを下面に傘の構造となり、さらに柄を持っているキノコの形などとなる。この様な、複数の胞子形成菌糸や、それを補助する菌糸が組みあわさって、複雑な構造になったものを、子実体と呼んでいる。普通、胞子形成菌糸が寄り集まっただけのものは子実体とは呼ばない。

子実体は、小さいものは肉眼で見ることのできるぎりぎりの大きさから、場合によってはひとかかえもあるキノコのように、巨大なものもある。大きなものであっても、これらはすべて、菌糸から作られている。時には、菌糸を構成する細胞がふくらんで、互いに接触し、一見では菌糸からなるとは思えない、偽柔組織を構成するものもある。

子実体は、胞子を形成するための構造であって、生活をする体ではないので、その存在は一時的なものである。まれに長期に渡って維持されるものもあるが、いずれにせよその生活体は子実体の外にある菌糸体である。時折、キノコとその下につづく菌糸を高等植物の本体と、その根のように見る向きがあるが、これは誤りである。子実体は高等植物に当てはめれば、花か果実に当たるにすぎず、本体はその下の地中や朽ち木などに埋まって存在している。

大型のキノコの背景にはそれだけのバイオマスを形成するのに足りる巨大な広がりを持つ菌糸体が控えており、また菌類の菌糸体はそれだけの量の物質を一ヶ所の子実体に集中することができる高い物質移送能力を持っているのである。

菌類各群の子実体

菌類の各分類群は、それぞれに特徴的な子実体を形成する。それぞれ簡単に述べる。

  • 接合菌門
    • 接合菌綱アツギケカビ(エンドゴーン)目、およびグロムス目(最近はGlomeromycota門として独立させることが多い)のものは、いずれも地中性で、指先くらいの球状の子実体を作る。表面は菌糸に覆われ、その中に有性生殖による接合胞子や無性生殖による厚膜胞子が入っている。
  • 子のう菌門
    • 有性生殖に際して、多くのものは子のう胞子を子実体の中に形成する。子のう菌類の子実体を子のう果という。原始的なものでは、出口のない球形の袋状になった構造の中に、まばらに子のうが入っている。これを閉子のう殻という。コウジカビの仲間の有性世代では、この形の子のう果が見られる。他のものでは、子のうは細長い袋状で、一面にならんで子実層を造り、これを覆う構造が発達する。子実層を覆う構造が子実層をとじ込めており、胞子を出す口を持つ壷状になったものが多い形を子のう殻といい、ほとんどが1mm未満の小さなものである。虫草菌類のように、さらにこの子のう殻を群生する棍棒状の大型子実体を発達させるものもある。子実層を皿状に囲んで主として子実層を外面に見せる形を子のう盤といい、これが大きくなったものがチャワンタケ類である。ノボリリュウアミガサタケは開子のう盤に柄が生えた形である。また、栄養菌糸が子のうの入る空間を形成し、ここに子実層ができる、子のう子座というものを形成するものもある。これの一見子のう殻に似ているものは擬子のう殻とも呼ばれるが、壁ができて中に子のうを形成するのではなく、菌糸の塊の中に空洞ができて、そこに子のうが形成される点が異なる。
    • 多くの子のう菌は無性生殖による胞子、つまり分生子が通常の生活を営んでいる菌糸体の表面に形成される。いわゆるカビに胞子ができた状態である。しかし、中には表面に分生子を形成する複雑な子実体を作るものもある。この分生子を生ずる子実体を分生子果と呼ぶ。
  • 担子菌門
    • 子のう菌と同様、幾つかの型に分かれる。多くのものは傘をもつ、いわゆる一般的な印象としてのキノコを形成する。キノコの傘の裏面には、ひだや管が並び、その側面から有性生殖による担子胞子を放出する。この形からの変形としては、柄がなくて、直接に傘が枯れ木から出るもの、傘の裏面だけが枯れ木の表面に並ぶものなどがある。また、担子胞子と同時に子実体の他の部分に無性生殖による分生子を形成するものもある。イグチ類に寄生するヤグラタケでは、襞に担子胞子を作ると同時に傘の組織が表面から次々と分生子に変化して粉状に分解していく。
    • 傘を作らず、袋状の構造の内部に胞子を作るものもあり、それらをまとめて腹菌類という。胞子は成熟すると袋が破れてできた口から噴出する(ホコリタケツチグリなど)、袋の表面が砕けて出る(ノウタケなど)、胞子を着けた柄が袋から伸び出す(スッポンタケなど)と、様々な方法で放出される。現在では、この群は自然分類群ではなく、襞や管の表面に担子胞子を形成していた通常のキノコの様々なグループから、多元的に出現した多系統と見なされている。
    • このほかに、キクラゲのように吸水性に富んだ軟骨質やゼリー状の柔らかな子実体をもつものがあり、膠質菌と呼ばれる。子実体の形は貝殻状、花びら状など様々。

その他の生物の子実体

菌類ではないが真正細菌粘液細菌原生生物変形菌細胞性粘菌の胞子形成体も、子実体と呼ばれる。

外部リンク


子実体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/23 05:58 UTC 版)

担子菌門」の記事における「子実体」の解説

担子菌類多くは子実体を作るサビキン類クロボキン類は子実体を作らず胞子作る菌糸の層を作る程度である。それ以外のもの多くは、何らかのの子実体作る一般的な印象としてのキノコの形は、柄の先に、傘型の部分があり、その下面にひだがあるものである。これらは一般にハラタケ類と呼ばれる。子実体はそのすべてが菌糸からできており、傘の下面、ひだの側面担子器が並ぶのが普通である。これらのキノコは、柄を縮め、傘を閉じた形で、あるいはそれがさらに皮をかぶった形で形成され一気に柄が伸びて傘が開くことで完成する。傘の裏側のひだは、管状になっているものもある。これらのキノコ肉質で、成熟の後、一週間くらいで腐り早いものはその日のうちにとろけてしまう。 もう一つ、傘を作るキノコ別の型として、非常に堅い子実体を作るものがある。カワラタケサルノコシカケなどであるが、これらのキノコは、傘の裏面に管があり、管の内側側面担子器が並ぶ。子実体は堅く、傘を開いた形で、周囲向かってゆっくりと成長しながら胞子作る。子実体は何ヶ月そのまま残っている。 傘型にならないキノコとしては、スッポンタケホコリタケなどがある。スッポンタケ長い柄の先に閉じたのようなものがあって、その表面胞子を含む粘液付いている。この胞子は、スッポンタケの子実体の柄が縮んだ状態で、袋の中にあるときに形成され、そこで成熟するホコリタケは、袋状で、内部胞子ができる。出来上がる子実体の形は全く異なるが、胞子が袋の中に形成される点では共通している。このようなものをまとめて腹菌類と呼ぶ。 ほかに、キノコらしくないが、キクラゲシロキクラゲなど、寒天質ないし膠質の、ひだの多い子実体を作るものがあり、それらをまとめて膠質菌こうしつきん Jerry fungi)とよぶ。担子器特殊な構造を持つものが多い。 また、ロウタケなどのロウタケ目 Sebacinalesは地上寒天質または膠質不定形な子実体を形成し時には植物などを覆うため変形菌などと間違えられる

※この「子実体」の解説は、「担子菌門」の解説の一部です。
「子実体」を含む「担子菌門」の記事については、「担子菌門」の概要を参照ください。

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