粘液細菌とは? わかりやすく解説

粘液細菌 [Myxobacteria]

 滑走細菌群の中の粘液細菌目に属す細菌総称で、子実体形成滑走細菌ともよばれる。ミキソコッカス科のほかに3科がある。粘液細菌類は病原性はなく、通常腐食した植物やその土中動物の糞などに生息している常在菌である。粘液細菌は全て従属栄養営み好気性のグラム陰性菌で、栄養分充分ある環境では桿状栄養細胞二分裂で増殖し固体表面ではゆっくり滑走または匍匐(ほふく)運動をする。しかし、環境条件悪化する真核生物粘菌(変形菌)のように個々細胞集合して、ゆっくり粘液分泌しながら固体表面移動し、やがて粘液細菌特有の子実体(fruiting body)を形成し、その中に多数粘液胞子(myxospore)が生じる。この粘液胞子1種休眠細胞(休眠胞子)で、栄養条件良くなる子実体から放出され発芽によって桿状栄養細胞生じる。子実体形態粘菌のようにそれぞれ特徴があり、通常黄色ないし橙黄色あるいは黄褐色色素としてカロテノイド系のサプロキサンチン(saproxanthine)またはゼアキサンチン(zeaxanthine)を含んでいる。また、液体培地中では栄養細胞分散状に増殖する種もある。このように粘液細菌は原核生物ありながら粘菌似た特有の生活環があるので、一般細菌とは異なり通常はその生活環子実体形態によって分類されている。粘液細菌は現在、ミキソコッカス属のほかにアルカンギウム属、シストバクター属、メリッタンギウム属、スチグマテラ属、ポリアンギウム属、ナッノシスチス属およびコンドロマイセス属の8属に分けられている。その中でミキソコッカス属の数種(Myxococcus xanthusやM.virescens)については詳しく研究され欧米では発生生物学研究材料として用いられている。

粘液細菌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/10 04:13 UTC 版)

ミクソコックス目
Myxococcus xanthus
分類
ドメイン : 細菌 Bacteria
: プロテオバクテリア門
Proteobacteria
: δプロテオバクテリア綱
Deltaproteobacteria
: ミクソコックス目 Myxococcales
学名
Myxococcales Tchan et al. 1948
下位分類(亜目)
  • シストバクター亜目
  • ソランギウム亜目
  • ナンノシスティス亜目

粘液細菌(ねんえきさいきん、slime bacteria、Myxobacteria、Myxococcales、ミクソコックス目、ミクソコッカス目)は、土壌細菌のひとつで、多細胞的な行動を起こすグラム陰性真正細菌である。

グラム陰性、好気従属栄養性。鞭毛は無く、滑走による移動能力がある。高度に社会的な性質を持ち、多数の細胞が協調して細菌、植物遺体を捕食する[1]。増殖は栄養状態が良い時は単純に二分裂で増えるが、飢餓・個体密度増加・光照射などの刺激があると1~100万もの菌が集合し、0.1~0.5mm程の子実体と粘液胞子を形成する[1]。この子実体は種により色、形などの特徴がある。一旦子実体を形成すると数十年の保存が可能である[1]。栄養状態が良くなると再び栄養細胞を放出して元に戻る。生育環境や生活環は細胞性粘菌に似たところがある[1]

コロニーの先端部では、アリの行列のような社会性のある行動 social motility(S-motility)のある部分と、単独で動く独立心・冒険心のある細菌の行動 Adventurous motility英語版 (A-motility)が見られる[1]

狩りを行うために、プロテアーゼペプチダーゼなどのタンパク質分解酵素や、グルカナーゼ英語版などの細胞壁(多糖)分解酵素などの溶菌酵素を生成する[1]

代表的な種Myxococcus xanthusは比較的詳しく調べられている。いくつかの生理活性物質が発見されている。ゲノムサイズは軒並み900万bpを上回り、解析済みの原核生物の中では最大規模である。2014年に報告されたMinicystis roseaのゲノムサイズは1604万0666bp[2]真核生物である出芽酵母(1200万bp)を上回っている。ORFは14,018ヶ所で出芽酵母の2倍を超え、動物であるキイロショウジョウバエ(13,931ヶ所)すら超えている。

分類

参考文献

脚注

  1. ^ a b c d e f (不藤2013)
  2. ^ https://www.kegg.jp/kegg-bin/show_organism?org=mrm



粘液細菌と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「粘液細菌」の関連用語

粘液細菌のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



粘液細菌のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
微生物管理機構微生物管理機構
Microbes Control Organization Ver 1.0 (C)1999-2025 Fumiaki Taguchi
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの粘液細菌 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS