子実体形成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 02:28 UTC 版)
やがて偽変形体は、柄 (stalk, stipe) と胞子塊 (sorus, pl. sori) からなる子実体 (fruiting body, fruit body) を形成する (形態形成期、子実体形成期 culmination) (上図3c, d, e)。この際に、個々の細胞はセルロースを含む細胞壁を形成する。子実体においても個々の細胞の独立性は維持されており、このような子実体は累積子実体 (るいせきしじつたい、ソロカルプ sorocarp) ともよばれる。子実体形成時には最初に柄を形成し、その伸長と共に残りの部分が柄に沿って上昇して胞子塊を形成する。子実体は単生するものと、群生するものがいる。子実体形成時に屈光性を示すものもいる。すでに移動体の段階で、柄の形成が始まっている種もいる (上記)。子実体の高さはふつう 0.2–10 mm ほどであるが、まれに 40 mm に達する。柄はふつう多数の細胞からなるが (上図1a)、エツキタマホコリカビ属などでは非細胞性でセルロース性の管からなる。柄が細胞性の場合、完成時にはこれを構成する細胞は死ぬ (キイロタマホコリカビでは偽変形体を構成する細胞の20%ほどが柄になる)。この行動は柄となることで他の細胞 (胞子) の散布を補助することから利他的行動とも見なされ、そのためタマホコリカビ類は社会性アメーバ (social amoeba) ともよばれる。柄は分枝しないものから、不規則に疎に分枝するもの、多数の輪生枝をもつものがあり、それぞれ枝の先端には胞子塊をつける。柄の先端が膨潤しているものと、尖っているものがある。また種によっては、柄の基部に basal disk や holdfast、crampon が存在することもある。胞子塊は白色のものから黄色のもの (例:キイロタマホコリカビ)、紫色を帯びたもの (例:ムラサキタマホコリカビ) まである。変形菌とは異なり、胞子塊を包む明瞭な構造はないが、共通の粘液質で覆われている。胞子は3層の細胞壁に囲まれ、ふつう楕円形だが一部の種では球形、多くは 2.5–3.5 x 6.5–8.0 µm ほどである。胞子の両極にデンプン性の目立つ顆粒 (polar spore granules) が含まれることがあり、分類形質に用いられている。胞子には粘着性があるため、胞子散布は風ではなく、塊としておもに動物 (線虫、ミミズ、節足動物、両生類、鳥、齧歯類など) または水によって散布されると考えられている。胞子は発芽し、アメーバ細胞 (粘菌アメーバ) が生じる。
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