草薙護堂の権能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 08:36 UTC 版)
東方の軍神 (The Persian Warlord) 草薙護堂がゾロアスター教の勝利の神にして《鋼》の軍神ウルスラグナから簒奪した第1の権能。 ウルスラグナの『十の化身』に応じた特殊能力(要は10種類の必殺技)を得る。どれも非常に強力だが発動させる条件がかなり厳しいため、作者は護堂のことを「超必殺技しか持たない主人公」と述べている。ウルスラグナとは違い化身を2つ同時に使用することもできるが、頭が割れるような痛みに襲われるなど身体への負担が大きいため、基本的には1つずつしか使用されない。カンピオーネの権能の中でもとりわけ多彩な能力で、エリカは護堂の「来る者は拒まず」という性格が反映されたものではないかと考察している。 全ての化身に共通して、1度使用したら同じ化身はしばらく再使用できないという制限がある。初期は丸1日は使用不能だったが、護堂が権能を掌握しつつあることにより20巻時点で半日にまで短縮されている。なお、スミスの《超変身》とは違い、途中で権能を解除した場合でも再使用できなくなる。 “正義の守護神”の権能なので、相性的には無自覚に悪行を繰り返すことの多い『まつろわぬ神』にとっての天敵となるが、逆にウルスラグナと同じ『完璧な善の存在』に対しては(顕現後の所業にも依存するが)どれも発動させづらいという難点がある。また、化身の発動条件の関係で比較的「集団戦」が苦手。加えて、この権能1つを封じられるだけで護堂は10種類の武器を失うことになるのも弱点であり、作中ではウルスラグナの智慧の剣、主であるミトラの威光、キルケーの『英雄拘束』などに特に苦しめられた。 化身によっては申し合わせても使えそうな条件の物もあるが、パンドラ曰く「実戦並の緊張感がないとたぶん行使は不可能」。ただ、護堂自身の成長により、一部の化身は戦闘時以外でも使用可能になり、使用条件が緩和されたものもある。強風(Tempest) ウルスラグナ第一の化身。民衆・旅人の守護者としての化身。 どこに居ようとも知人が護堂の名を呼ぶ声が聞こえるようになり、渦巻く風と共に相手の居場所へ瞬間移動する。その際、自身に触れている周囲の人間を同時に移動させることも可能。距離は関係ないため地球外にも転移でき、「幽世と現世の境界」すら飛び越えて異世界へも移動できる。なお、神々は様々な称号を持っているためか、偽名で呼ばれた場合でも発動できる。ただし、この化身を使った瞬間移動は一方通行なので、どれだけ遠くへ行っても帰りは自力で移動手段を確保する必要がある。また、呼び出す側が発声を封じられた状況では使用できない。 発動条件は双方が風の吹く場所にいて、危機に瀕した者が草薙護堂の名を唱えること。ここでいう「危機」がどの程度から発動可能かについては不詳だが、「神やカンピオーネと至近距離で対峙している」レベルの危機であれば確実に発動できる。この性質から権能が発動可能になった段階で知り合いが危険にさらされていることを逆説的に察知できる。 雄牛(Bull) ウルスラグナ第二の化身。 人間の限界を超える怪力を持つものと戦う際、大地を通じて圧倒的な怪力を得る。ウルスラグナは天を支えるほどの剛力を持つ英雄ヘラクレスと絆が深いこともあって、一時的な出力なら羅濠の《大力金剛神功》にも匹敵し、体重の数百倍までの物なら容易に持ち上げて破壊できる。行使対象が大きく重いほどに、その怪力の度合いも跳ね上がっていく特徴があり、超常的なパワーで城や高層ビルなどでも持ち上げ、重量数百トン級の神獣を片手で投げ飛ばせる。格闘戦で相手の筋力に対抗するのが基本的な用法で、銃弾じみた速さ、暴走機関車のような威力のタックルを繰り出せる他、野球経験を活かして岩などを時速100キロメートル以上の速度で投げつける、体重70キログラムの護堂自身を対象に使うことで驚異的な跳躍力などを得る、など応用範囲も広い。 発動条件は戦う相手(生物以外でも可)が人を超える常識外の腕力、力を持っていること。力が強くても人間の枠に入っているもの(ヘヴィー級の格闘家など)は対象外で、少なくとも大型肉食獣や車両が相手である必要がある。化身の中では比較的条件が緩く、戦闘時はまずこの化身になることが多い。対象となる敵が消えると十数分で効果が切れる。 白馬(White Stallion) ウルスラグナ第三の化身。光明神ミスラの馬車を曳き東から西へ太陽を運ぶ、黄金の飾りを付けた馬を表す化身。 東の空に昇る第2の太陽から、超々高熱の太陽フレアをレーザーのような焰の槍として照射し地上の標的を焼き尽くす。「太陽のかけら」を地上に落とす技なので10の化身の中でも最大火力を誇り、カンピオーネの肉体が持つ生命力も強靭すぎる呪法への抵抗力も通じず消し炭になるほどで、単発で連射はできないが、一旦発動すれば視界から消えても自律的に攻撃し続ける。攻撃範囲についてもある程度制御でき、狭めればヨット2、3艘ほど、最大範囲は本人も把握できていないが、『運命神の領域』に存在する運命を概念化した端が見えないほど広大な織物を完全に焼失させることができるほどの宇宙的規模の爆炎を発生させることすら可能なことから、圧倒的な物量が相手の場合に最も有効。ただし、攻撃が直線的なので、攻撃軌道上にある物体を溶解させてしまうという欠点を持つ。また、地母神などの冥府に縁のある闇の神格や、高熱に弱い鋼の神々に対しては極めて有効であるが、光や太陽の属性を持つ神には防がれやすい。 7巻では『戦士』と「融合」させることで、特殊な「剣」を作り出した(詳細は後述)。 発動条件は、攻撃対象が民衆を苦しめる大罪人であること。発動が可能になると、渡り鳥のような超感覚で東の方角が漠然と分かるようになる。10の化身の中でも使用条件が格段に厳しいが、護堂の敵のほとんどが過去もしくは現在進行形で悪行を行っているために使用頻度は割と高く、いざとなれば自分自身を対象に発動することも可能である。 駱駝(Camel) ウルスラグナ第四の化身。大地と深いかかわりを持ち、忍耐と獰猛さを象徴する化身。 接近戦最強の能力で、発動時には蹴りの威力と耐久力・格闘センスが飛躍的に上昇する。蹴り技限定で神々と伍する程の格闘能力を獲得するだけでなく、脚が鋼の硬さとなり、強化された脚力は岩を蹴り砕き、10メートルの跳躍を可能とする。また、神速を見切る心眼を不完全ながらも得られる。本人が正統な武術を何も知らないので、闘志と本能が導き出した「獣の闘法」とでも言うべき我流のスタイルを確立し、飛びかかる直前の猫のような腰を落とした前傾姿勢で構え、いざとなれば地面に寝っ転がって攻撃を回避しつつ、強力な回し蹴りを繰り出していく。 同時に、負っている傷の痛みが緩和され、治癒力も向上する。そのタフネスぶりは胴体を一刀両断寸前にされたり心臓を刺し貫かれてもなお即死せず、しばらく格闘戦を続けられるほどである。化身の同時使用による負担にも耐性ができるため、発動の際は組み合わせの一方に選ばれることも多い。 後に掌握が進み、打突部位に呪力を集中させ打撃の威力を爆発的に高められるようになる。超強化された蹴りは神の肉体を一撃で爆裂させるほどの破壊力を持ち、鋼鉄の肉体を以てしても内部まで衝撃が浸透するので完全に防ぎきることはできない。 発動条件は一定以上の怪我を負うこと。最低でも刀剣で刺される、十数メートルの高さから落下する、猛獣に噛みつかれる、雷に打たれるなどの重傷である必要があり、普通の人間の力で強く殴られた程度では発動できない。加えて、化身を解除した瞬間に痛覚が戻り耐久力を喪失するため、停止直後にダメージと激痛で動けなくなり意識を失うおそれもある。また、接近戦に特化しているので、空を自在に飛び回る相手とは相性が悪い。 猪(Boar) ウルスラグナ第五の化身。ミスラが契約破りの罪人を罰するときに使う化身ともされる。 体長約20メートルの容貌魁偉な黒きイノシシの神獣を召喚する。地面や空中などあらゆる場所から召喚でき、地を駆けることで小規模なマグニチュード5程の地震が発生、咆哮に付随する衝撃波により周囲を破壊し、大きな2本の牙で敵を噛み砕き、突進で対象を完全に粉砕する。水中戦も可能であり、海中で召喚された場合は魚雷のような速さで泳ぎながら戦い続ける。神獣としてはそれほど巨大というわけではないものの、その戦闘能力は自分より巨大な神獣どころか巨大化した神やカンピオーネの顕身とも互角に渡り合えるほど。また、厳密には『召喚獣』ではなく護堂の破壊衝動から生み出される分身に近い存在なので、発動中は護堂自身も『猪』の影響を受けて突進力が強化され、護堂の高揚感が伝わると大興奮してより激しく暴れだすなど、相互に影響をあたえ合う。 聖獣でもあるため咆哮に破邪の力が宿っており、13巻では力を溜め口から衝撃波を大砲のように発射する技を習得、狙いが正確で弾切れもスタミナ切れもない超音波砲台として強力な対空砲火の能力も得る。さらに、全身に衝撃波の壁を纏い近づく物を迎撃する技も身に付け、17巻では衝撃波だけを先に呼び出すことも可能となった。 発動条件は、巨大なもの(目安は10トン以上)を『猪』の生贄に捧げること。その性質上、護堂が起こした破壊活動の中でも大きなウェイトを占める化身である。目標が人間大だった場合など巨大でない敵を倒す際には別の物を破壊対象に指定し、そこへ目標を巻き込む形をとるか、「おあずけ」にして先に敵を倒させるかといった誘導が必要になる。また、猪自身にも意思があるため、新たな目標が出現した場合、猪の合意があれば途中で破壊対象を変更することもでき、破壊対象にも好みがあるので動かない建造物よりは神獣などを倒したがる。 陸海空全ての戦闘に対応し、建造物・地形・天体なども破壊対象に指定できるので実質あらゆる状況下で召喚可能と、10の化身の中でも特に自由度が高く、『雄牛』と並び発動条件が緩いため“手っ取り早く呼び出せる”切り札として多用される、破壊力と使いやすさを兼ね備えた最強の化身。呼び出したあとの行動、能力の両面でフレキシブルすぎることから、「破壊許可とひきかえに召喚できる魔神」にも例えられる。一方、生け贄を破壊し終えると満足して消えてしまううえ、対象とした物体を破壊させずに帰らせようとしても言うことを聞かないといった欠点も持ち、足場の悪い山道などでは実力を発揮しきれず、意外に打たれ弱く守勢に回ると脆い側面もある。 少年(Adolescents / Youth) ウルスラグナ第六の化身。ウルスラグナが地上に降臨し罪なき民衆を庇護する際に使われた、加護と祝福、支配を司る《英雄》の化身。 仲間にウルスラグナの加護と力を与えることが出来る。加護を授かった者は一時的にカンピオーネと同等の頑強さを得、呪力や霊力も劇的に増加することで呪的耐性も向上する。さらに絶大な活力を吹き込まれることによって体力は完全に回復し、毒などの状態異常も解消され、瀕死(あるいは死亡直後)の状態からであっても即座に蘇生させることが可能である。加護を与える方法は口移しか、対象者の傷口に護堂の血を接触させるかの2通り。発動時、世に正義と奇跡を顕すための力が光輝となり、全身から白い聖なる光としてあふれ出る。 5年後には、発動中に流した自分の血による聖痕を託した者たちに加護を与え、集団を効率的に勝利の軍団とする手法を編み出している。使用時には物品に付着した血痕が黄金に光り輝き、その光に包まれた仲間を一時的に庇護して、神の攻撃からしばらく持ちこたえることすら可能となる。 発動条件は、護堂のために戦った大切な誰かが傷つき、倒れていること。加護を与える際には永遠の従属を誓わせる必要があり、さらに行使時には対象に強烈な苦痛を伴う。なお、副作用なのか、化身を発動すると心が澄み渡り、強引にキスをする、結婚しても構わないと口にするなど、日頃とは打って変わって女性に対し積極的になる。5年後には使用条件が緩和され、事前に加護を授けておいて、護堂のために命を懸ける時に発動させられるようになっている。 鳳(Bird of Prey / Raptor) ウルスラグナ第七の化身。 神速を発動し、電光並みのスピードと身軽さを得る。荷物の重さが0になる効果もあるため、人間ひとり程度なら抱えたままでも10メートル以上跳躍できる。最初から最高速度で動ける反面、身体への負担が大きいのか、時間経過で胸に激しい痛みが走り、限界を超えると金縛りを起こしてしばらく行動不能になるという反動がある。一度金縛りになると、化身を交換しても行動不能をキャンセルできない。ただし痛みに関しては回復魔法で軽減することが可能。また、速すぎるため細かい動きは難しく、動く敵を攻撃してもずれやすい。アレクの《電光石火》とは違って飛行能力は獲得できないため、神速で空を飛ぶためには天叢雲のコピー能力を併用する必要がある。 掌握が進んだ結果、加速能力のみならず減速能力にも目覚め、緩急をつける技術を得たことで高速近接戦闘には向かないという欠点も克服しつつあり、『駱駝』と同時発動することで神速の肉弾戦も可能となる。さらに神速の行使に心身が慣れたことで持続時間が延び、短時間の発動であればデメリットである使用後の行動不能をキャンセルできるようになった。化身を発動させたまま神速をオフにすることも可能で、攻撃を見切るために感覚のみを加速させる、悪路を走破するため身軽さだけを引き出すなど応用範囲も広い。 発動条件は、高速の攻撃を受けること。剣戟や銃弾の速度でも条件を満たすので、高速の攻撃手段を持つ神々やカンピオーネたち相手の戦闘では『猪』『牡牛』に次いで発動しやすい。 雄羊(Ram) ウルスラグナ第八の化身。生命力と富を象徴する聖獣で、王権の守護神としての化身。 どんな怪我でも短時間(およそ2時間ほど)で快復する能力。全てのダメージを昏睡中に治癒するため、死の呪詛を直接体内に吹き込まれても、打撲や刺傷によって心臓をはじめとする重要な臓器を損傷しても、全身を消し炭になるまで焼かれても元通りに復活を果たした。ただしパンドラが「甦る前って一回きっちり死んでいる」と語っているとおり、正確には一度死亡した後、肉体を再生させた上で蘇生するという能力である。蘇生時間により権能の掌握具合が分かってしまい、人間離れの度合いを自覚させるため護堂はあまり使いたがらないが、戦闘でしばしば死にかけるので使用頻度は高い。 発動条件は自身が瀕死の状態であることと、瀕死の時に「黄金の毛皮を持つ羊」をイメージすること。その性質からどれだけダメージが大きくても致命傷を負っていなければ負傷を癒やすことはできず、瀕死の時に自分の意思で発動する必要があるため即死では発動できないという弱点がある。昏睡中は無防備になるので、信頼できる者に体を守ってもらう必要がある。 山羊(Goat) ウルスラグナ第九の化身。印欧語系の騎馬民族が稲妻の化身として崇拝した、祭司の特殊な呪力を象徴する「角」を持つ聖獣。 化身の発動によって強い精神感応力を獲得し、生死を問わず周囲の仲間や民衆の想い(負の精神エネルギー)と生命力を集めて魔力へ変換することにより、雷雲を呼び寄せ電撃を武器として操る。魔術の才能が無い護堂でも如何なる大魔術師をも超える魔導力が宿り、呪力の扱い方やセンスが格段に向上、他者が生み出した雷雲の支配権を奪取する、雷をボール状にまとめて投げつける、ドーム状に展開するといった細かい制御が可能となる。魔導力の底上げに加えて能力が雷の制御に特化しているため、雷に関しては天候全般を操作するヴォバンの《疾風怒濤》以上の影響力を発揮する。十分に呪力を集めれば、大都市すら呑みこむほどの雷雲で天地を満たして無尽蔵の稲妻で全て打ちのめし、単発でもカンピオーネの魔術耐性を突破するほどの威力を連発できるが、多数の人々から力を分けてもらえない状況での一撃は小型の神獣1体をなんとか殺せる程度にまで落ちる。また、集団戦向きな化身の1つだが、爆発力では『白馬』や『猪』に及ばないため圧倒的な物量が相手だとやや分が悪い。加えて、周囲の者から生命力を奪う関係上、この化身が発動している間、人によっては意識が遠のくなどの影響がある。 発動条件は、集まった群衆が「不幸」「苦難」「不安」「恐怖」にさらされ、怒りや恐怖、混乱で心を乱していること。対象を民衆からも敵として認定させなければならないため『白馬』と同じく発動は難しいが、一旦発動さえしてしまえばその力で民衆の心に干渉し扇動することで恐怖心を束ね、周辺一帯から精神エネルギーを吸い上げてほぼ無限に攻撃し続けることが可能。ただし、大勢から力を集める際にはある程度の精神集中が必要となり、味方や人口密集地から引き離されると十分に力を発揮できなくなる。 戦士(Warrior) ウルスラグナ第十の化身。「まつろわす神」としての権能を体現した化身で、人間の戦士が持つ黄金の剣の具現。 相手となる神の知識を詳らかにすることで、神を切り裂く言霊の剣を創り出す。無数の黄金に輝く光球が神力を切り裂く智慧の剣となり、標的本体に当てればダメージと共にカンピオーネや神の権能を一時的に封じることができる。神格にある程度の類似点があれば発動中でも剣を切り替えて対応できるなど、利便性も高く柔軟な運用にも耐え、加えて名を隠している相手に対しては通常より強大な威力を与える。護堂は主にマシンガンの弾丸のように飛び道具として操るが、光球を束ねることである程度形を変えることも可能で、実体化させ本物の剣にすることもでき、天蓋状に展開して敵の攻撃を防いだり、全てを『蛇』状に融合させて操り、その頭に乗って空を飛んだこともある。また、7巻では『白馬』の太陽と「融合」して特殊な「剣」を作りだした(詳細は後述)。発動させている間は身体能力が向上し、対峙する敵を深く理解できる洞察力・神々の本質や呪力を見抜く眼力・『山羊』同様の魔導力により、神が使おうとした技やカンピオーネが使用した未知の権能の素性まで理解できるなど、霊視にも似た能力を獲得する。なお、ウルスラグナ自身の神力を封じることもでき、『白馬』をはじめとする他の化身による自滅覚悟の戦術をとる場合には、言霊の壁で自分自身を守るといった応用も可能。 神相手なら最強の盾であり最強の剣でもある攻防一体の武器なのだが、一方で決定力に欠けるのが最大の難点で、神獣のような神の眷属程度なら一太刀で滅ぼせるものの、この化身だけでまつろわぬ神を殺すことはまず不可能。その他、使い続ければ実際の剣同様に消耗し光球の数が減少していく、カンピオーネの場合は基本的に一つの権能しか封じることはできない、神々が別の神に由来する力を使った場合もうまく効力が現れない、不朽不滅の神具はごく短時間しか機能を封じられない、対象変更は神格の差異が大きくなるほどその効果は弱まり体への負担も大きくなる、体内に宿せば対象となる神の攻撃をある程度緩和できるがこうした消極的な用法にはあまり向かない、変身能力を持つ神や複合的な神格を持ちそれぞれを分離できる神とは相性が悪いなど欠点も多い。これらの特性から、護堂は敵の厄介な力を封じることで劣勢をひっくり返す手段としてこの化身を使うことが多い。 さらに、光球同士を凝縮・結合させることで形と重量を与え、より強力な効果を持つ最高の武具「ウルスラグナの聖剣」を作り上げることも可能。刃渡りは180センチメートルほどと長大、サーフボードさながらに幅広で鋼板のように分厚く、数は8つにまで減少するが、攻守ともに能力が通常時の数万倍に上昇、他の神々の力を上乗せした程度の小細工では破ることもできず、直撃すれば従属神クラスなら一撃で戦闘不能になる。通常の剣と同様、一度きりだが斬り裂く神の対象を変更できる。 発動条件は相手の神またはカンピオーネの権能の源である神について深い知識を得ること。普通の高校生である護堂は周囲の魔術師から「教授」の魔術によって知識を得るのだが、カンピオーネの体質的にその手段が口移ししかないため、エリカ・恵那はともかく護堂・祐理・リリアナには抵抗感が大きい模様。幽世で霊視のまねごとをして自力で発動したこともあるが、その時は頭に焼きごてを入れられたような激痛が走ったため、以降はその使い方はしていない。『白馬』と『戦士』の融合 『白馬』で作った第2の太陽に『戦士』の千刃を混ぜ合わせることで、神速でも回避困難な光速の武器を無数に生み出す。斉天大聖との戦いで使用し、彼の権能で猿に変えられた日光一帯の人々をわずか5分ほどですべて救済した。しかし強力である反面、化身の同時発動以上に負担が大きく、使用中は脳が沸騰するほどの激痛に襲われるため、裕理の精神感応で負担を半減させてなお防御に気を回す余裕すらなくなり、護堂自身がその場からほとんど動けず無防備になるのが最大の弱点。 天叢雲劍(あまのむらくものつるぎ, Ama-no-murakumo) 草薙護堂が三種の神器の1つにして征服神の神格と《鋼》の属性を持つ日本神話最高峰の神刀・天叢雲劍から簒奪した第2の権能。 右腕の『鞘』から神刀・天叢雲劍を呼び出す能力。天叢雲は器物でありながら自らの意思を持ち、戦闘時には普段と打って変わってかなりおせっかいになり、護堂へ積極的にアドバイスやフォローをするようになる。 さらに、数々の異民族をまつろわせる過程で富・民・技術・知識を奪い取ってきた伝説から、主と同じく偸盗の能力を持つ。第1の能力は、「まつろわぬ神やカンピオーネの権能1つをある程度コピーし、一時的に自らの力とする」というもの。当初は傷を与えた者からでなければ使用できなかったが、後に掌握したためかその過程を経ずともコピーできるようになる。コピーに失敗することはまずなく、《救世の神刀》すら模倣に成功しているが、それほど強い能力ではないので大がかりな奇跡は真似しきれず、コピーした能力を長時間維持することもできない。第2の能力は、「護堂の《東方の軍神》を吸収し、自らの神力と掛け合わせることで強化・発展させ、新たな異能を発現する」というもの(それぞれの能力は後述)で、第1の能力とも併用できる。初使用時は昂ぶった戦意に任せて使っていたが、恵那の協力で天叢雲の本質を理解したことで戦闘中以外でも一部の力は使えるようになった。ただし、この能力は天叢雲への負担が大きいため、1度使うと日を空けなければ再使用できず、全ての化身を適用させられるわけでもない。『強風』との融合 使い手に風の速さと颶風の破壊力を与える『風の劍』となり、瞬間移動に匹敵する高速移動と神の肉体を切断できる攻撃力を得る。使用時は主に恵那に貸与され、『神がかり』と併用することで従属神クラスと戦えるほどに力が底上げされる。 『白馬』との融合 刀身が黄金の輝きを放つ“太陽のかけら”となり、魔王殲滅の力を得た救世の神刀に匹敵する攻撃を繰り出せる。 『猪』との融合 黑金の装甲となり、《鋼》の肉体を持つ「猪の形をした生ける神刀」に化身させる。鋭い刃と化した一対の牙は敵に向けて射出することも可能で、アレクの《電光石火》をコピーして射出速度を神速にしたこともある。なお、性格の一致によるものか、両者とも普段よりテンションが上がり生き生きとした状態になった。 『山羊』との融合 右腕に落とした雷撃の大電流により、磁鉄鉱に磁力を帯びさせることで即席の電磁砲を作り上げ、敵を超高速で打ち出す秘術・電磁鉄鋼が可能となる。鋼鉄の肉体を持つ神を超音速で宇宙へ放逐し、熱圏の空気摩擦による高熱で大ダメージを与えられるが、相手の重量が大きすぎる場合は撃ち出すまでに時間がかかる。 『戦士』との融合 滅ぼしたい神具を理解することで神具破りの「智慧の劍」となり、黒い刀身はウルスラグナの剣と同じ「輝く黄金の刃」へ変わる。不朽不滅の神具であろうと、斬られれば少なくとも数日間その機能を停止する。また、《運命の担い手》との最終決戦では運命の糸でできた織物を破壊するために、運命を断ち切る言霊だけでなく《黒の劔》の力を同時に刀身に収めた黄金の剣を構築した。 その他にも破邪の力をはじめとする数々の霊験を有しており、その神威で魔術を強化するための触媒ともなることから、短時間なら《黒の剱》の制御を単独で行うことも可能。また、誕生の経緯から竜蛇の肉体と同じ素材から鍛えられたとも言えるため、使い手次第で堅牢な竜の腕を一太刀で切断できる。さらに護堂の腕を鞘としていることから、腕の中に仕込んでいる時は右手が救世の神刀に匹敵する鋼の硬度を得、剣を肉体の延長と解釈することで天叢雲に体の動きを任せ、剣の素人である護堂でも達人並みの剣技を振るえるようになる。 護堂に所有権が移った後も元の使用者である清秋院恵那と共有している状態で、護堂が貸与の意を示せば彼女も直接使用でき、分身して恵那と護堂の2箇所で同時に戦うという器用な真似も可能。そのほか、ドニやランスロットにも一時的に貸し出されたことがある。護堂と恵那の思念を中継する通信機の役割を果たすこともできるが、戦闘と関係ない扱いに関しては消極的な態度をとる。また、何らかの原因で護堂が呪力を封じられると活動を休止してしまうのが弱点。 黒の剱(くろのつるぎ, Storm Bringer) ギリシア神話の智慧と戦いの女神アテナの原形となった「原初のアテナ」が、破滅と新生の秘術を天叢雲劍に注いで作り上げた大法。 小惑星ほどの大きさがある巨大な疑似ブラックホールを作り出し、中心に向かってあらゆるものを引き寄せ押しつぶす重力嵐を生み出す。上空に発生させた暗黒星を時速数百キロメートルの速度で敵に向けて落下させる事や、暗黒星を《天叢雲劍》の刀身に収め、突き立てた対象に重力嵐の破壊力を全てたたきこむことも可能。パワーではモデルにした本物の『白き恒星』には劣り、擬似天体と正面からぶつかって競り勝つほど強力ではないが、降り注ぐ救世の雷を吸い込んで被弾のリスクを下げることはできる。 万物を大地に引きつける重力操作の権能の応用で、鋼の軍神と大地母神の霊力を無理矢理に融合させた剣であり、護堂がアテナとともにランスロットに挑んだ際に、グィネヴィアが『救世の神刀』のレプリカから作り上げた「神槍エクスカリバー」が発生させた『白き恒星』を模して、アテナの地母神の力と秘術をかけ合わせ天叢雲に吸収させて作ったもの。その様が宇宙の星の始まりと終わりを示していることから『天地開闢の劍』、『はじまりと終わりの剱』とも呼ばれる。発動中、天叢雲劍の刀身は冷気を発する青い炎をまとっている。 対外的には第3の権能とされているが、正確にはアテナが死の間際に残した遺作とも言える秘術なので、厳密な意味での権能ではない。キルケーとの戦いで扉が開き、祐里が精神感応で制御を助けたことによって不完全ながらも発動し、キルケーの住む迷いの島を消滅させた。当初は天叢雲と護堂両方とも負担の大きい危険な術だったが、キルケーから叡智の権能《暁の秘録》を授かったことで完全に掌握できるようになった。これによりアテナ、キルケー、天叢雲劍の3柱の神々の権能が複雑に絡み合ったため、智慧の剣でも瞬時に斬り裂くのは難しくなっている。 護堂の他の権能と比較しても圧倒的な破壊力を秘めており、対多数との戦闘には非常に役立つ術であるが、全力発動にやや時間がかかるため1対1の戦いにはあまり向かず、仲間を対象外にすることはできるが多数の中から特定の目標を狙い撃つのも苦手としている。ただし、完全発動させなくても、微弱な重力によって敵の武器を吸い寄せるなどで相手の妨害は可能である。また、天叢雲の相棒だった恵那から呪力供給のサポートを受けることで威力上昇に必要な時間を短縮でき、5年後には『通常使用時の倍近くも呪力をそそぎこむことで、暗黒星の本格起動を早める』という裏技を覚えている。 ラーマとの3度目の戦いにてアテナの転生体である《神祖》パラス・アテナと共闘したことで、天叢雲を地中に転移させたまま待機させられるようになり、準備しておいた暗黒星を一瞬で地上へ出現させたり、地下から重力を発生させて敵を地面につなぎ止め移動を阻害することも可能となった。ただ、これらの用法は護堂が地上にいることが前提で、上空にいる間は使用不能。 暁の秘録 草薙護堂がギリシア神話の暁の魔女神キルケーから贈られた第3の権能。暁の紋章を刻んだ神代の呪文書。一時的に魔女の魔導力を操る叡智の言霊であり、アテナの秘法《黒の剱》を運用するために利用される。 権能と呼ぶにはささやかな力だが、これは護堂と戦った時点でキルケーが既に重傷を負っていて万全の状態ではなかったことが原因。故に「パンドラが納得する勝利」は達成できておらず、本来であれば権能は得られないはずだったが、キルケーが自身の意思でパンドラに要望したため例外的に護堂に力を託すことが許された。 白き騎士の突撃(Lance of White Knight) 草薙護堂が槍の軍神ランスロット・デュ・ラックを名乗るアマゾネスの女王から簒奪した第4の権能。 言霊を唱えることで護堂の守護騎士となったランスロットに実体を与え、10分間だけかつての呪力と権能を甦らせる。権能非使用時には護堂の近くに控えるか、上空で風雲と一体化したまま待機しており、戦闘中は機を待って雲中にひそみ、稲妻と化した超威力の一騎駆け「隕石落とし」で敵に大打撃を与える戦法を得意とする。護堂から天叢雲劍を借りて竜殺しの剣技を振るうこともできる。ただし、従属神になったランスロットは呪力の蓄積量が減っており、呪的耐性が生前より低下している。また、5年後にはランスロット本人を実体化させず長槍だけを借りることも可能となり、上空から落下させて槍が大地に突き刺さった際の爆風で雑魚を一掃するという用法も身につけた。 実体化していない霊体状態では雷鳴を起こす程度のことしかできない。ランスロットの性格は生前と変わらず、護堂自身も彼女の行動を制御できているわけではないので、戦闘中に自分をなかなか召喚しなければ雷を落として急かすこともある。なお、護堂が神速で移動していてもついて来られるだけの機動力を持っているが、上空にいる間に主が瞬間移動すると同行できないため、追いつくまでの間は使用不能となる。必殺の「隕石落とし」は一撃で救世の勇者が電撃体を発動するほどの痛手を与える切り札だが、短期決戦しかできないこともあって発動のタイミングを見極める必要があり、無理に粘らせるのは得策でないので不利と分かれば即撤退させるようにしている。 護堂がランスロットを撃破したのは高校1年の11月だが、その際には神具『鏃の円盤』に封じられ、翌年2月の戦いで復活したランスロット自身の合意もあって獲得したという特殊な経緯がある。『白馬』の化身に並ぶ最強の“飛び道具”の片割れとして活躍したが、簒奪から6年後、『ユニバース492』に残した子供達を守護するために、契約を自分から《バレンシアの聖杯》へと移したことで使用不能となっている。 太陽を喰らう者(Sun Stealer) 草薙護堂がラーマ王に仕える古代インドの鉄風の白猿神ハヌマーンから簒奪した第5の権能。 暴風と共に逞しい大猿の形をした眷属『ハヌマーンの影』を呼び、熱エネルギーを吸収するという能力で、幼少期にハヌマーンが太陽を奪おうとして飛び立ち、雷神インドラの手で空から叩き落とされた逸話を再現している。太陽・焰・稲妻・高熱・閃光のかたまりなどの「ぴかぴか光るやつ」全般に有効で、『救世の神刀』が生み出す魔王殲滅の雷や体から高熱を発し続ける太陽神の本体ですら、ごく短時間なら封印してしまう。黒い影は変幻自在で、直径100メートルの擬似天体を呑みこめる程まで巨大化させられる。さらに、攻撃者より護堂の方が呪力で勝っていた場合、熱や焰の制御権を奪い自由に操ることが出来る。 忠実な知恵者であった生前の名残か、護堂からの細かい指示がなくとも気の利いたことを色々とやってくれる。簒奪から十数年が経過した『神域のカンピオーネス』では、火の鳥である梨於奈を呑みこんで人質にする、護堂を抱えて空に飛び去るといった応用も可能になっている。 反運命の戦士(Anti-Fatal Champion) 草薙護堂が《運命の担い手》と呼ばれる源印欧語族の創始した運命神の原典から簒奪した第6の権能。 運命による束縛をほどき、断ち切り、呼び寄せて任意の対象に結びつけることができる運命改変の力であり、運命にあらがうという神殺しにとってはあまりに当たり前な行為を実行するための権能。護堂自身も効くという確証が常にあるわけではない不安定な能力だが、成功例としてアリスの『病』の運命を断ち切り健康を回復させたことがある。さらに世界の理を理解する力もわずかに高まり、幽世でパンドラと交わした会話の内容を思い出せるようになった。 また、護堂の存在を源にして多元世界の隅々まで波動を広げ、もろもろの事象をひきおこす因果の糸を消し去り、運命という壮大な織物の模様を“無地”に帰せしめ、運命の軛を砕いて世界と宇宙の在り方を変えることもできる。自分でも何が起こるか全く分からず、何も起こらないことの方が多いという大博打の能力だが、ズルワーンとの戦いでは次元を超えてラーマ兄弟の助力を得ることができた。 護堂が運命の女神を倒したご褒美として自分で選び取った権能であり、運命神は倒せても運命そのものはたたき壊せないと考えて、並行世界に英雄ラーマを導く運命にあらがって彼を縛っていた『魔王殲滅の運命』を解くために習得した、パンドラも今回限りの特例として与えた「本当ならダメ」と言うほど強力な力。だが、本来の運命神の権能よりは部分的な力となっており、《盟約の大法》などは使えない。その運命の糸を自分自身に絡みつかせたことで護堂は救世主の役目も担うことになり、並行世界からの救援要請を聞く力や、アストラル界からなら「運命神の領域」へ自在に転移できる能力も獲得し、並行世界からの呼びかけを受けるだけで容易く世界移動ができるようになる。なお、「運命に逆らえる」権利も持つことから気に入らない仕事なら断ることもできる。ただ、護堂は“聖なる存在”である救世の勇者とは対極の魔王であったことから、『神域のカンピオーネス』の頃より前にもっとふさわしい誰かを探して《運命》が去ってしまい、そのため異世界へ行く手段を一つ失っている。 ヒューペルボレアで『反運命の気運』が高まっているのはこの権能の影響らしく、運命修正の秘力すら歪ませるほどの脅威とされる。
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